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宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩が「宇宙に近づくために今やっていること」

宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩が「宇宙に近づくために今やっていること」

「宇宙に行きたい」----その夢を実現すべく、私はタレントという職業をしながら、JAXA宇宙飛行士になることを目指しています。

「宇宙に行きたい」「宇宙に関わる仕事をしたい」そう具体的に思ったのは、中学生のとき。夏休みに書いた作文がコンクールで賞をいただき、その副賞としてアメリカ航空宇宙局、つまりNASAの施設・マーシャル宇宙飛行センター(アラバマ州ハンツビル)を訪れたことがきっかけでした。実物大のロケットの大きさに目を奪われ、水中訓練している宇宙飛行士を目近で見て心を奪われました。

「かっこいい、かっこよすぎる...!」

この旅での衝撃は、私の人生に大きな影響を与えてくれました(このときの様子はSENSORS「宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩--私が宇宙に惹かれる理由」でも詳しく記載しています。合わせてご覧ください)。

その後、大学では宇宙のことを知るために必要な物理学を学ぶべく、物理学科に進学しました。一方で、高校時代にダンス部の活動でステージを作り上げた時の楽しさ・表現することの楽しさに取りつかれ、大学進学と同時に芸能活動も始めました。たった一度の人生。やりたいと思ったことは全てやりたい、その結果が私にとっては「宇宙」と「タレント」でした。

そして近年では、宇宙の魅力を伝える番組への出演など、その二つの要素が重なり合う機会も増えてきました。さらに昨年2016年には、自分が宇宙飛行士になるための、そして宇宙の魅力をもっと多くの方に伝えるための会社も設立しました。

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NASA・ジョンソン宇宙センター(テキサス州ヒューストン)に隣接する、スペースセンター・ヒューストンにて

昨日より今日の方が宇宙に近づくために、今日自分は何ができるのだろう?2017年はそれを毎日積み重ねて、宇宙への階段をしっかりと、着実に歩みたいと思っています。

宇宙に行ったら伝えたいこと

「宇宙飛行士になりたいんです」と言うと、必ず聞かれる質問がいくつかあります。そのひとつが、「宇宙に行って、何をしたいの?」ということ。

人とちょっと違うことを言ってみたい...! とも思いますが、まずはやはり「地球を見てみたい」です。今は宇宙飛行士の方がISS(国際宇宙ステーション)から撮った地球の写真がTwitterにアップされたりもして、気軽に地球の様子を見ることができます。でも、百聞は一見に如かず。日常でも、近所のまだ行ったことのないお店ですら、ネットで調べて実際に行ってみたら、ああこういう料理だったのね、こんなに素敵な場所だったんだ、と開拓した気分になることはたくさんありますよね。歴代の宇宙飛行士の方が、宇宙に行かれて、偉大な美しい言葉をたくさん残されていて、今の時代はそれらをすぐに知ることが出来ます。でも私はネットや本の世界を超えて、やっぱり生の地球を見てみたい。その大きな星に相対したとき、私は何を思うのだろう。それを知りたいんです。

他にもたくさん、宇宙に行ってみてやってみたいことがあります。

もしも宇宙で泣いたとき、目の周りに涙がまとわりつくのだそうです。ということは、ゴーグルをかけずにプールに入ったような視界になるんでしょうか?また私は書道が好きなので、微小重力空間で書き初めもしてみたいですね。そんな空間の中でも墨を瞬間的に吸着するような紙や下敷きが生まれたら...大きな筆で力強く書を嗜みたいです。微小重力でだからこそ生み出せるアートも作りたい。それは身体表現を伴ったものかもしれないし、様々な色の液体を飛ばしてできる絵かもしれないし、感じるものを詩やメロディーにしてできた宇宙の音楽かもしれないですね。想像しただけでワクワクします。

そしてやっぱり月にも行ってみたいです。月から地球が太陽を隠す"地球版日食"を見たとき(地球の立場からは月食になります)、太陽が赤いリングに見えるのだそう。その景色はまだ人工衛星でもとらえたことがなく、誰も見たことのない景色なのです。視点を変えると見える新しい景色。その景色を、ぜひ見てみたいものです。

また宇宙に行って、帰ってきた後にしたいこともよく考えます。「宇宙でこんなことがあった」とたくさんの方に伝えたくなるのは想像ができますが、きっと同時に感じること----地球という場所がどれほど素晴らしいか----それを私は伝えたいです。普段の生活の中にキラキラとした宝物があるのに、それが見えないことってありますよね。宇宙という極限状態を体験したそのあと、きっと地球での日常がより一層愛おしく思えると思うのです。

そして私はこの人生をもって確認してみたいことがあります。それは、タレントという伝える職業の人間が宇宙に行くことでどのように役に立てるのかということ。実はこのように考えられるようになったのは大きなきっかけがあったのですが(後述しますね)、宇宙飛行士は、宇宙の魅力を全世界に発信していく立場でもあります。また宇宙のことだけでなく、日本の文化を同僚である各国の宇宙飛行士にはもちろん、世界中に伝えていきます。実際に、宇宙飛行士の訓練の中にはメディア対応のトレーニングもあるそうです。タレントが宇宙に行ったとき、どのような化学反応が起こるのか、自分が宇宙飛行士になることで、その可能性を広げたいです。

宇宙飛行士にはどのようにしたらなれるのか

日本では現在、宇宙飛行士になるための道はJAXA宇宙飛行士の試験を突破するということになります。その試験は定期的にあるわけではなく、ここ20年あまりでは10年に1度くらいしかありません。前回が2008年でした。当時の募集要項(大学卒業以上・実務経験3年以上)に当時大学在学中の私は満たしていませんでしたが、思いだけでも伝えたいという一心で志望動機を書き、応募しました。そのとき印象的だったのは、"家族からの推薦文"という項目があったこと。宇宙に行くということ、そこを目指すということは、自分ひとりだけのことではなく、周りの人を巻き込んでいくことなのだなとそのとき感じました。

近年では宇宙飛行士の方と、お仕事でお会いする機会をいただくこともありますが、やはり宇宙飛行士は私にとってのヒーローです。直近では2016年10月、ISS国際宇宙ステーションに滞在されていた大西卓哉宇宙飛行士とJAXA筑波宇宙センターが交信をする「KIBO SCIENCE 360」というプロジェクトで、宇宙と地上がつながる様子が生中継される番組のMCを務めさせていただきました。そのときの特別解説員が星出彰彦宇宙飛行士。当日は、星出さんにお会いして大興奮! 宇宙との回線がつながった瞬間大興奮、さらに大西宇宙飛行士に宇宙から「黒田さん」と呼ばれたことに大興奮でした。私はこの時が、宇宙とつながった初めての瞬間。まさに体内に電気が走ったような、目の前の視界が一気に広がり明るくなるような感覚になったのです。自分が持つ宇宙への思いは間違いないものだと気づき、宇宙へ行きたい気持ちが加速しました。

JAXA | 宇宙航空研究開発機構 YouTubeチャンネルより

私が今考えている、宇宙飛行士に必要な要素

今の自分の目指す山の頂はJAXA宇宙飛行士。その山を登る途中で、色々な人との出会いがあったり、何が必要なのか気づいたりします。

「宇宙飛行士になるには、何が必要なの?」この質問もよく聞かれます。学力、知力、体力、精神力、忍耐力...などがベースにあって、さらにコミュニケーション能力や表現力なども求められます。宇宙ではいろんな文化・国籍の方と閉鎖空間で共同生活をするので、英語も必須です。つまり、一言で言うと「超人」に見えます。とても高い水準でバランスのとれた方々が今までJAXA宇宙飛行士に選ばれてきました。

宇宙飛行士には専門分野での「実務経験」も必要です。これまで、さまざまなバックボーンの方が宇宙飛行士になられてきました。例えば、山崎直子宇宙飛行士はエンジニア、大西宇宙飛行士はパイロット、金井宣茂宇宙飛行士は医師の経験を経て宇宙飛行士になられています。芸能活動を職業として生きてきた私の実務経験は「タレントとして宇宙の魅力を発信すること」。そのためにできることをこれから積み重ねていきたいと思っています。

実は、このようにタレントとしての活動と、宇宙への関心が結びつき、自信を持って言うことができるようになったのには、ある出来事がありました。2008年に宇宙飛行士試験の応募書類を出した数年後、山崎直子さんにお話を伺う機会があったのです。このとき、「これからは黒田さんのような"伝える"仕事をされている人が宇宙飛行士になることで、より多くの方に宇宙のことを知っていただけると思いますよ」と言っていただいたのです。その当時、私は宇宙への関心は持ち続けながらも、宇宙飛行士になることは自分にはできないことだと思い始めていました。それは、宇宙飛行士になった方のこれまでの経歴を知れば知るほど、研究者や設計製造などの職業の方が多いということ。宇宙とタレント、やりたいことをやるべく両立を目指してきたものの、それは現実として難しいものだと向き合わざるを得なくなってきていたのです。

でもその山崎さんの言葉によって、"自分なんて"が"自分だからこそ"に変わり、自分も宇宙飛行士を目指していいんだと自信を持てました。私はそれから、内に秘めがちだった「タレントとして宇宙飛行士になる」ことを、周りの人に公言し始めました。

周りの人の反応はさまざまです。面白がってくれる方、本気にしてくれない方、宇宙飛行士を知らないから言えるのだと指摘してくださる方...、私はその反応すべてを自分の糧にしながら、どのような道のりを歩めば宇宙飛行士になれるのか動いていきたいと思っています。いま私が考えている宇宙飛行士に必要な要素----、やりたいことを口に出すことや、周りを巻き込んでいくこともきっと重要なものでしょう。

これから、宇宙飛行士を目指す為には何が必要なのか、実際に宇宙飛行士になれるのか、その過程を皆様に現在進行形でお伝えしていけたら嬉しいです。

宇宙飛行士を目指すタレントとして、どんなことに取り組んでいくのか

宇宙を遠いものと思う方は多いのではないでしょうか。ほとんどの人類が行ったことのない場所。そしてそれを学問としたとき、難しくて理解しがたいものと思えるかもしれません。

私は、タレントとして宇宙飛行士を目指す、つまり宇宙の魅力を伝えるということを掲げているからには、そんな遠くて難しい宇宙のことを、近くてやわらかいものにしてみなさんにお届けしたいです。そのために、昨年は宇宙と音楽を組み合わせることにもチャレンジしました。クラウドファンディングで宇宙の魅力を知っていただくための楽曲を制作するというプロジェクトを行ったのです。その楽曲は、プラネタリウムで挿入歌として聴いていただけることが実現しました(つくばエキスポセンターにて1/14より上映『わくわく惑星ツアー 太陽系最前線』にて)。この楽曲には私が宇宙に対して描いているイメージを込めています。宇宙は音楽のように自分を包み込んでくれ、許してくれるもの-この楽曲を通して、そのような宇宙観を感じていただけたらと思っています。

また今年は、自分が宇宙飛行士として宇宙に行ったら実際に使えるプロダクト、さらには他のさまざまな国の宇宙飛行士とのコミュニケーションの種になりえるプロダクトを開発していきたいと考えています。伝える職業がバックボーンですから、他の宇宙飛行士の方からもコミュニケーションの面では一目置かれるようになることが目標です。また、日常生活においても、それらのプロダクトを使って頂くことで、みなさんに宇宙のことや宇宙に関する技術の発展を知っていただけるのではないかと思っています。何があったら便利だろう、楽しいだろうと考えることで、またより一層宇宙に近づきたい。現在、妄想と打ち合わせを重ねています。形になればまたお伝えしますね。

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スペースセンター・ヒューストンにて

そして、私が小さい頃、科学・宇宙にワクワクしたように、今の子どもたちにもそのワクワクを伝えたい。そんな番組やイベントを自分で作っていきたいとも考えています。

もちろん宇宙飛行士試験のために、体力や語学などの能力も、日々磨いていきたいと思います。

私は、宇宙というのは"すべてである"と考えています。つまり、日常の中にも宇宙がある、と。

宇宙飛行士を目指す過程、それは決して特別なことではなく、その本質的な部分は日常における必要な力とかけ離れていることでもないと私は思います。私の宇宙飛行士を目指すという山登りの様子、これからもお伝えしていきます。

黒田有彩(くろだ・ありさ)

宇宙飛行士を目指すタレント。1987年生まれ・お茶の水女子大学理学部物理学科卒。中学時代のNASA訪問をきっかけに宇宙に魅せられ、現在、JAXA宇宙飛行士受験を目指している。昨年、個人事務所兼宇宙に関するプロダクトやコンテンツを開発する株式会社アンタレスを設立。NHK Eテレ「高校講座 物理基礎」MC、読売テレビ「ハッカテン」出演、誠文堂新光社「月刊天文ガイド」連載、「宇宙女子」(2015年・集英社インターナショナル)共著など。

活動情報は下記より

公式ブログ:http://ameblo.jp/kuroari-19871029/

Facebook:https://www.facebook.com/arisa.kuroda.official/

Twitter:https://twitter.com/KUROARI_RTTS

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