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仕事で生き生きできなくなったらどうする? ドラッカーの答え

仕事で生き生きできなくなったらどうする? ドラッカーの答え

経済界に大きな影響力を及ぼしたドラッカーに関する著作は少なくありませんが、『われわれはいかに働き どう生きるべきか―――ドラッカーが語りかける毎日の心得、そしてハウツー』(P.F.ドラッカー述、上田惇生訳、ダイヤモンド社)は少しばかりタイプが異なるようです。

ドラッカーとは、現代社会最高の哲人であって、かつマネジメントを生んだマネジメントの父である。1970年代、AMACOM(全米マネジメント協会出版部)が、そのドラッカーに依頼してマネジメントの極意をテープに吹き込んでもらった。本書は、その翻訳であり、書籍化である。(「訳者まえがき イズムでなく、サイエンスでなく、実践」より)

注目すべきポイントは、対話形式になっている点。「マネジメントとはイズムでなく、サイエンスでなく、実践である」と何度も説いたという、ドラッカーの考え方に基づいているわけです。第7章「生き生きと、生きるために」から、いくつかの要点を抜き出してみましょう。

仕事で生き生きできなくなったら

ここで強調されているのは、生き生きと働き、最前線で活躍し続けることを、もっとも重視しなければいけないということ。しかし問題は、変化が急になったことではなく、定型的な仕事が多すぎることにあるのだといいます。そのため、疲れ、飽き、眠くなっているということ。

──仕事で生き生きできなくなったら、どうすればよいでしょうか。

この問いに対してドラッカーは、そのとき、仕事しかなければ問題だと答えています。しかし、そのことがあまり問題になっていない国や産業もあると主張しており、そこで引き合いに出されている国が日本です。

日本では継続学習に力を入れており、学習曲線(注:学習に投入した時間や回数に対する、その効果を示すもの。ラーニングカーブ)が横ばいになることがありません、たとえ1度カーブが横ばいになっても、ふたたび階段状に登っていく。(124ページより)

日本では、そういう職場を多く見かけるとドラッカーはいうのです。継続学習が、工場、事務所、マネジメントの各層で一般化しているということ。果たしてその考えが現代日本に当てはまるかどうかは難しいところでもありますが、原点に立ち戻ろうとする際には役立ちそうな考え方かもしれません。(122ページより)

成功する転職、行き過ぎた転身

継続学習と並んで必要とされているものに、転職が挙げられるといいます。ふたたび栄養を吸収するためには、自らを新しい環境に植え替えることが重要であるということ。

ここで例として示されているのは、玩具メーカーの市場調査部の部長が45歳になったときのケース。部長になって16年、環境を変えるべきタイミングだということです。そこで、「地域の病院協会の市場調査部長に転職してみてはどうか」とドラッカーは提案します。玩具メーカーと病院とではだいぶ違うように思えますが、病院も、市場調査を必要とするもの。つまり、使うスキルは同じだということです。

玩具の代わりに、まったく違う製品、市場、顧客を相手とするわけですが、仕事の仕方は、ほとんど変わりません。ただ、仕事の舞台が違うだけです。

それでも彼自身が、まったく生まれ変わるのです。意欲がみなぎってきます。(129ページより)

にもかかわらず、そのような転職をする人は、まだ少数派だといいます。なぜなら、中年のマネジャーというものは、基本的に臆病だから。なにかと理由をつけて、ためらってしまうということです。しかし、おそらく必要なのは、「居場所が違うのではないか」といって背中を押してくれる友だちか、上司か、家族ではないかといいます。

──これまでそのような転職は、危険なこととされていました。

この意見に対しては、「しかし、労働可能年限が伸びているのです」とドラッカーは反論しています。そのうえ、現在の仕事や能力に関わりのある転職ならば、成功の確率はぐんと上がるともいいます。そのため、受け入れてくれた組織の期待にも、楽々と沿うことができるというわけです。

とはいえ、たとえば法人担当の副頭取をやっている大銀行のマネジャーが、若いころの夢だった医者を目指そうとするようなケースについては、あまり賛成できないとしています。理由は簡単で、転職を含め転身に成功した人たちは、それまで身につけてきたこと、学んだことを使っているものだから。だからやさしいうえに、期待にも応えられるという考え方です。

でも、もし彼が、医師ではない事務長として病院に転職するならば、それまでの反省と決別するリスクを冒すことなく、医療の現場でマネジメント能力を発揮しつつ、金融のスキルまで駆使できるわけです。(128ページより)

パラレルキャリアの構築

──現在の仕事に興味を失ったというのであれば、ボーイスカウトの役員としてパラレルキャリアを構築してもよいのではないでしょうか。

仕事以外の関心事がなんであるかによって事情は変わってくるものの、現在の仕事に関心を失ったのであれば、まず、なにをおいても転職を考えるべきだろうとドラッカーは答えています。

したがって大切なのは、日ごろから、現在の仕事以外のものへの関心を育てておくこと。ところが、とりわけ企業組織には、仕事以外に関心を持つことを歓迎しないケースがあるといいます。ドラッカーはそれを「愚かなことです」と指摘していますが、実際のところ、仕事以外のものに関心を持つ人は、挫折しにくいがゆえに、仕事でも優秀なことが多いのだそうです。

質問者にとってのボーイスカウトの役員としての仕事がそうであるように、「現在の仕事以外の仕事」は、毎日を生き生きとさせてくれるということ。だからこそ、仕事以外のものへの関心は、企業として歓迎すべきだということです。

──デュポン社のCEOクロフォード・グリーンワルトのハチドリの写真は有名です。

ご存知のとおり、ここで質問者が引き合いに出しているのは、デュポン第10代目経営者であるグリーンワルトが、ハチドリの研究家であり写真家でもあったということ。

つまりそのケースにおいても、明らかにデュポンでは、仕事以外のものへの関心はマイナスには作用していないわけです。さもなければ、CEOになれるはずがないのだから。そして、彼はハチドリの写真に、仕事並みのエネルギーを注いだだろうとドラッカーは推測しています。仕事以外への関心で一流となる人は、趣味の域を超えた境地にあるものだから。

つまり質問者は、ボーイスカウトのリーダーとなることによっても、仕事とは別の世界を知ることができるという考え方。それが人間を磨き、心豊かな、仕事のできる人間をつくり上げる。そしてなによりも、生き生きした人間をつくり上げるということです。(131ページより)

外の世界が支えとなる

仕事を中心に年齢を重ねていけば、挫折も失意もあって当然。しかしそんなとき、心の支えとなるのが「仕事以外のものへの関心」だといいます。たとえばグリーンワルトがカメラ片手に追いかけたハチドリが、彼に、デュポンのことなど知らず、関心も持たない学者や、画家や、ミュージシャンのコミュニティを運んできてくれた。デュポンよりも大きな世界、デュポンよりも大きな自分という世界観を与えてくれたということです。

われわれは、個を大事にする何かを必要とします。仕事の外への関心は、明らかにその何かとなるでしょう。(134ページより)

これは、仕事と、それ以外のなにかを両立させているすべての人にいえることではないでしょうか?(133ページより)


他にも「仕事で成果をあげる」ために心得ておきたいことから、マネジメントの方法、人事の行い方など、さまざまなアドバイスが詰め込まれています。どこからでも読める形式になっていることもあり、文字どおり実践的な内容だといえるでしょう。

(印南敦史)

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