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今さら聞けない、消費者のメリットを最大化する「オムニチャネル」の基礎

今さら聞けない、消費者のメリットを最大化する「オムニチャネル」の基礎

オムニチャネルとは、企業が場所を問わず消費者と接点を持つことができるインフラのこと。購入方法、受け取り方法、決済方法、商品のピッキング方法および渡し方などのチャネルが複数用意されているため、商品をほしいと思った消費者は、いつでもどこでも注文することが可能。それだけでなく、希望する場所で受け取ることができるわけです。

現在、ネット店舗がリアル店舗にとって代わるように思われがちですが、実際にはオムニチャネルを活用することによって、リアル店舗のビジネスチャンスがより広がっていくと考えられているのだとか。

2時間でわかる 図解オムニチャネル入門』(角井亮一著、あさ出版)は、そんなオムニチャネルの入門書。物流企業経営者であり、アメリカのオムニチャネル事情に詳しい著者が、基本的なことから最新活用事例までをわかりやすく解説しています。

オムニチャネルという言葉にはじめて触れたのは、2011年のアメリカで参加したあるセミナーでのこと。オムニチャネルの話は新鮮で、これからの小売業のあるべき姿だと確信しました。(中略)小売業で注目されがちなオムニチャネルですが、実はメーカーにもプラスの効果があります。(中略)メーカーも、オムニチャネルで販売力を高められるのです。(「はじめに」より)

なお導入にあたっての重要なポイントは、店員教育だそうです。現場の教育なくして成功はないということで、だからこそ本書を通じて勉強しておきたいところ。第2章「オムニチャネル戦略とは何か」から、いくつかの要点を抜き出してみます。

イオン、セブンのオムニチャネル

現在、日本国内には、無店舗販売を含め約100万軒の小売店舗・事業者があるといわれているそうです。そのなかでダントツの売上実績を持つトップ2が、イオン(8兆円超:2016年決算)とセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン。6兆円超:同)。そして注目すべきは、いま、この2社がオムニチャネルを積極的に推し進めていることなのだと著者はいいます。

イオンが展開するオムニチャネルは、ショッピングセンター内に用意された専用のタブレット端末を使用し、店舗にない商品を取り寄せ、それらを店舗や自宅で受け取れるというもの。

一方、セブンの場合は「omni7」と呼ばれるグループ共有のネット通販プラットフォームやタブレット端末から、オリジナル商品を含むグループ企業の商品を購入でき、受け取り方法も希望する店舗または宅配から選べるというスタイル。ほぼ全国に散らばる24時間営業のセブン-イレブンの強みを生かそうとしているわけです。(44ページより)

急成長するECは見逃せない市場

ではこの2社は、なぜオムニチャネルを進めているのでしょうか?

日本の小売市場は、急速に進む少子高齢化、生産年齢人口(15~64歳)の減少などの影響を受け、21世紀に入ってからほぼ一貫して縮小し続けています。ここ数年はインバウンド(訪日外国人旅行客)需要による売上拡大もあったものの、為替相場は先行きがわからずあてにならない状態。しかし、そのような状況下でも年々売上を伸ばし続けているのがEC(インターネット通販)です。

そして、いうまでもなく、こうした成長を後押ししているのがスマートフォンやタブレット型端末の普及。電車に乗っているときでも、散歩をしている最中でも、あるいはどこかの店舗で実物を見ながらであっても、ECを利用して簡単に買い物をできるわけですから、その利便性が評価されるのは当然であるといえるでしょう。

また、購入商品の受け取り方にも変化が現れているのだといいます。従来、ネット

通販の商品は宅配便で受け取るものでした。しかし「自宅を知られたくない(見られたくない)」「荷物が届くまで待っていられない」などのニーズから、店舗受け取りや、24時間いつでも可能なコンビニ受け取りも広まってきているというのです。

つまりイオンとセブンの2大小売りは、そのような消費者に対応するため、そして商機を見出すために、オムニチャネルの導入を進めているのだと著者は解説しています。(45ページより)

オムニは「あらゆる」の意

ではここで改めて、経済産業省による「オムニチャネルの定義」を見てみましょう。

オムニチャネルとは

「消費者が複数のチャネルを縦横どのように経由してもスムーズに情報を入手でき、購買へと至るための、販売事業者によるチャネル横断型の戦略やその概念、および実現のための仕組み」

出典:経済産業省「平成27年度電子商取引に関する市場調査」より

(48ページより)

オムニ(omni)とは「すべての、あらゆる」という意味。スマートフォンの登場によって、消費者が商品の購入に至るまでの過程で、実店舗、PCサイト、モバイルサイト(スマートフォン用、タブレット型端末用)、ソーシャルメディア(SNS)、従来型メディア(新聞・雑誌・テレビ)、カタログ、DM等、あらゆる販売チャネル・情報流通・物流チャネルを経由する時代になったわけです。

なお、買い物の入り口が複数用意されただけの「マルチチャネル」と混同されることがあるものの、オムニチャネルは、お客様が複数のチャネルを行き来しながら、自分で満足度を高めることができる仕組みを持つもの。スマートフォンやタブレット端末が普及したことから、いつでもどこでもインターネットに接続できるようになり、買い物環境も大きく変化したということです。(48ページより)

オムニチャネルの本質

オムニチャネルは「ネット通販で購入した商品の受け取り方法として、宅配便以外に、いろいろな選択肢から選べるサービス」だと思われがちですが、それは受け取り場所の自由度が高まっただけのことです(企業からすると、商品の受け渡し場所を増やしただけ)。しかし本来のオムニチャネルは、もっと高度なもの。

いってみれば、あらゆる買い物プロセスのなかから制約を受けることなく、自分の都合や好みに合わせて選べる、自由気ままな買い物行動を可能にする仕組み。著者はそれを「シームレスな買い物体験」と表現していますが、いつでもどこでも意識せず、ITを利用して買い物ができる、ユビキタスな世界だということです。

お客様を囲い込む

購入金額によって貯まったポイントを活用でき、とてもお得なポイントカード。その接点はほぼ商品購入時に限られますが、オムニチャネルでは顧客接点、タッチポイントをいくつもつくることが可能なのだそうです。なぜならオムニチャネルは、お客様が店舗といつでもどこでも自由に接点を持てるから。

店で、PCのショッピングモールで、専用スマホアプリで、店頭受け取りカウンターやコンビニ受け取り、宅配便受け取り、電話やメール、チャットによる問い合わせなどがオムニチャネルという大きなプラットフォームで有機的に結びつけば、店はあらゆる接点でお客様と繋がることができるわけです。

タッチポイントが増えれば、それだけお客様のことをより深く知ることが可能。そうした試みにより、商品ミックスの最適化、販促効果の向上、既存顧客との関係性の深化も可能になるといいます。

そればかりか、商品情報の収集、来店による問い合わせなどの接点がありながらも購入に至っていない潜在顧客に対しても、買い物体験をしてもらえるよう働きかけることも難しくないかもしれないと著者。

従来はポイントカードによる顧客情報をもとにCRM(顧客分析システム)を築いていたわけですが、オムニチャネルを通じて得られるものは、究極のCRMだということです。(68ページより)


「入門」と銘打っているだけあり、手取り足取りレクチャーしてくれるような非常にわかりやすいアプローチが魅力。オムニチャネルについて知りたい人には、うってつけの1冊だといえるでしょう。

(印南敦史)

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