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「リモートワーク」で世界を旅する前に知りたかったこと

「リモートワーク」で世界を旅する前に知りたかったこと

私は過去14カ月のうち2カ月間しか家にいませんでした。残りの12カ月は、ノートパソコンで仕事をしながら、東京、香港、パリ、バルセロナなど世界中を旅して回っていたのです。

とても素敵な話に聞こえますよね? もちろん私も、そんなふうに暮らせることをありがたく思っていましたが、すぐに良いことばかりではないことに気づきました。仕事をしながら世界を回り続けるのは、心と体の両面において、かなりハードなことだとわかったのです。

前置きとして、少し背景を説明しておきます。私はフリーランサーで、すべてをオンラインで完結できる仕事をしています。その前は、大企業の会社員をしていて、当時は今のような根無し草の生活が自分にできるとも、続けられるとも思っていませんでした。

ですが、1年ちょっと前に、思い切ってフリーランサーになり、この仕事はインターネットがある限り世界のどこでもできるのではと気づいたのです。そして私は旅の人となったのです。

もっとも、実際はそれほど単純な話ではありません。たまたま自分が置かれた状況がそうなっていたということです。安定した収入があり、扶養家族はおらず、大きな借金もなく、私を引き止めるいかなる事情もありませんでした。ですので、気兼ねなく旅立つことができたのですが、当然ながらどんな生き方にも一長一短があるものです。

どこでも眠れる工夫が必要

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地球の端から端まで移動し、タイムゾーンが目まぐるしく変わると、睡眠の質やスケジュールを保つことが非常に難しくなります。

たとえば、ここから9時間の時差があるパリを訪れたときには、時差ボケがあまりにひどく、1週間半の間、本当に2日に1度しか眠ることができませんでした。

これはほんの一例に過ぎません。こういうとき、人はすぐに旅行の興奮からくるアドレナリンで乗り切ろうとします。結果、不規則で質の悪い睡眠が長く続くことになり、結局は体にそのツケが回ってきます。私の場合も体重が増えたうえに、2,3カ月の間に3回も病気にかかってしまいました(ふだんは2,3年に1回程度)。つまり、健康的な生活ではなかったということです。

眠りが浅いタイプなのも災いしました。トイレに行くために夜中に何度も目が覚めたり、頭の中に雑念が駆け巡って寝付けなくなったりしました。

そもそも、頻繁に気候が変わり、寝る場所も変わり、ベッドや枕も変わる状況では、眠りづらくなるのは無理もありません。いつも環境が変わるのであれば、どんな場所でも眠れるような何らかの工夫が必要になります。

ここで、私の"どこでも眠れる"セットをご紹介しましょう。当たり前のものばかりですが、間違いなく効果はあります。

まず、アイマスク、耳栓、それから睡眠用のポッドキャスト。フライト中もいつもこの3つを試すのですが、残念ながら、私はまだ飛行機の中で眠れる技をマスターできていません。

食事について考えておく

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旅行に行き、その土地の名物や郷土料理を一度も口にせずに帰ってくるなんて、誰ができるでしょうか?

最初の頃は私も食べる量を気にかけていました。でも、ふだんより気持ちがゆるんでしまったことは否定できません。日本の完璧な半熟タマゴが入った豚骨ラーメン、バターたっぷりのクロワッサンなど、この場所でこの料理を食べるチャンスは二度とないかもしれないと思うと、誘惑に抗うことができなくなります。

短期の旅行ならそれもいいかもしれませんが、長期となると1日に2度も3度もレストランで食事をとれば、心は喜んでも、体は栄養不足になる危険があります。

たとえば、十分なタンパク質を摂るのはなかなか大変です。また、日本では、意識して野菜を摂らないかぎり、野菜不足になりがちです。日本では野菜は高価なので、ほとんどのレストランが野菜の量を減らしています。

また、私が過信していたことも事態を悪化させた原因です。私は昔から食事日記をつけているので、どんな場所でもバランスを考えた食事ができると考えていました。

思い立てばいつでも"正しい食事モード"に戻せるという自信もありました。そしていつしか、おいしそうなものを見ると、「家に帰ったらまた元のモードに戻せばいいのだ」と自分に言い聞かせるようになっていたのです。

この考え方は、多くの人がダイエットに失敗する典型的な「合理化」です。その結果、明日から、来週から健康的な食事を始めればいい、と先延ばしをすることになります。自分は意志が強いと過信している人ほどこの罠に陥ります。この結末がどうなるかは容易に想像がつくでしょう。

結局、私はきちんと食事計画を立てるという基本に戻ることにしました。朝食とランチは自炊し、夕食は自由に食べることにしました。

とはいえ、旅行中はそれほど簡単ではありません。まず、宿泊先を決めるときはキッチンが使える場所を選ぶ必要があります。私が宿選びで最もこだわるのもこの点です。また、地元で手に入る食材をうまくアレンジする技術も必要となります。

この習慣を始めると、事態は改善していきました。また、自炊した分、お金の節約にもなりました。

環境が変わると「ルーチン」の維持が難しくなる

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外国にいると毎日新しいことだらけです。何を食べる? どこを観光する? でも、どうすればそれができる? このコーヒーショップで仕事ができる? 安定したWi-Fiがある? こうした未知なる要素は楽しさでもあるのですが、いいことばかりではありません。

こうした不確実性や障害に対処しているうちに、いつしか疲れ切ってしまい、次に何をすればいいかわからなくなったりします。別の言い方をすれば、毎日、きちんとした習慣に従うことで、エネルギーの消耗が抑えられるわけです。そうした習慣がなければ、精神的、感情的にたくさんの助けが必要となります。

慣れた環境では、生活は必然的にルーチンとなり、とくに意識せずとも日常を営むことができます。ルーチンがなければ、食べ物をどこで買うか、どのコーヒーショップが仕事に適しているかなど、いちいち時間をかけて考えなければなりません。ルーチンができていれば、健康面でも仕事面でも、何が必要で、いま何をすればいいのか、時間をかけずに判断することができます

よく馴染んだ習慣でも、環境が変わるとそのとおりにできなくなるので、その場の環境に合わせて習慣を組み直す必要があります。

たとえば、あるルーチンがある環境ではうまく機能したのに、別の環境では機能しないこともあります。

最近では、初めての場所に着いたら、最初の数日間を費やして、周囲の状況を調べ、ルーチンをセットアップすることにしています。安定したWi-Fiがあるのはどこ? どんな食べ物がどこで手に入る? 交通の便は? 運動はどこでできる?

このように、最初に集中して周囲の環境を調べておくことで、ルーチンを築くための基礎を整えることができます。結果、集中力や生産性が高まるのは言うまでもありません。

それは孤独な道

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運良く旅の伴侶が見つかりでもしないかぎり、道中は孤独なものとなります。昨年は、あまりに長く旅に出ていたので、親や仲の良い友人でさえ、1回か2回しか会えていません。ほかにもまったく会えなかった友人が何人もいました。とはいえ、オンラインでは話していましたが。それができることが、21世紀のすばらしさの1つです。

この問題は私だけの問題ではないこと、また、自分でそうなることを選んだのだということは痛いほどわかっています。だから、自分でなんとかしなければいけないのですが、ときどき、自分の選択の結果に、打ちのめされることがあります。

私と同じようなリモートワーカーたちが、こうした孤独をドラッグやアルコール、馬鹿騒ぎなどでごまかしているのをよく見てきました。

私の場合は、仕事や観光、フィットネスでいつも忙しくすることで、なんとか気を紛らわしています。また、よく友人たちにポストカードを送っています。私がいつも彼らのことを考えていることを知ってもらうことで、寂しい気持ちがいくぶん和らぐのです。

もちろん、本当に一人ぼっちというわけではありません。地元の人やほかの旅行者とおしゃべりすることもあるし、友人の友人と遊んだり、疎遠になっていた親類に会いに行くこともあります。そうした出会いや再会は本当にうれしいものです。そして、もちろん、いつだってFacebookがそばにあります。

どこでも仕事ができて、外国に何カ月も滞在できると聞くとつい興奮してしまいますが、決して万人向けのやり方ではありません。私自身、今後もずっとこのスタイルのままでいいのか疑問に思うことがあります。とはいえ、当面は続けるつもりです。このスタイルが、謙虚さや、規律、自尊心、自信を高めてくれると考えているからです。

Stephanie Lee(原文/訳:伊藤貴之)

Photo by Pixta, Stephanie Lee, BVStarr, Karen Hong Photography, Muffet, and Patryk Kosmider.
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