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顧客を育てるコツのひとつは、裏側に隠れた"真の欲求"を見つけること

顧客を育てるコツのひとつは、裏側に隠れた"真の欲求"を見つけること

今、日本は、顧客が企業から商品そのもの、サービスそのものを買うのではなく、その企業が提供している価値や世界観を買う新しい消費の時代を迎えています。(中略)このような時代に中小企業が利益を出し続けるために必要な視点は、お客様に商品を売るのではなく、「商品の価値や世界観をお客様に伝える」という、言わば師弟関係の経営思考です。(「はじめに」より)

10年後もつきあってくれる新規の顧客をゼロから育てるマーケティング』(濱田将士著、総合法令出版)の冒頭には、このような主張を確認することができます。ここからも想像がつくとおり、本書のターゲットは中小企業の経営者やマーケティング担当者。そんな方々に向け、大手企業との価格競争に巻き込まれず、10年後もつきあってもらえる顧客を「ゼロから育てる手法」を紹介しているわけです。

ちなみに著者は、船井総合研究所を経て独立し、現在は経営コンサルタント・集客コンサルタント・未開拓客開拓コンサルタントとして活躍している人物。これまでに日本全国で136社の業績アップコンサルティング、41店舗の立ち上げプロデュースを行ってきたそうです。

本書ではそんな実績を軸に、「新たに想像戦略(ワン・アンド・オンリーマーケティング)を持って多くの会社の新規顧客の開拓と、離脱客をなくすための顧客化の手法」を紹介しているということ。きょうは第3章「買ってもらえる商品価値を創る方法とは?」のなかから、「マズローの欲求5段解説」をクローズアップしてみたいと思います。

他人の「欲しい」はつくれない

お客様の「欲しい」をリサーチする方法として、なによりも効果的なのはお客様にインタビューすること。そして、このテンプレートには、有名な「マズローの欲求5段階説」が適していると著者はいいます。ご存じの方も多いかと思いますが、これは人間の欲求を5段階に分けたもの。

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【レベル1】生理的欲求

低次の欲求は、いわゆる動物的な生物の根源となる欲求。すなわち

・食欲

・睡眠欲

・排出などの生理的欲求

・性欲

など

【レベル2】安全欲求

・安全な場所に留まりたい

・生きられる環境に身を置きたい

・命の保証

など

【レベル3】社会的欲求

・友だちが欲しい

・家族が欲しい

・コミュにティに参加したい

など

【レベル4】承認欲求

・仕事を褒められて手柄にしたい

・出世したい

・人から慕われたい

・専門家として認められたい

・リーダーになりたい

など

【レベル5】自己実現の欲求

・社長になってお金持ちになりたい

・大きな家に住みたい

・好きなことを仕事にして楽しく暮らしたい

・フェラーリに乗りたい

など

この、マズローの欲求5段階説は、著者の言葉を借りるなら「とても古典的な理論」。ビジネスの世界では、すでに語り尽くされてもいます。しかし、その具体的な意味をきちんと行動に落とし込んで解説している人や書籍は、意外に少ないというのです。

そんなマズローの欲求5段階説における最大のポイントは、多くの人が下の欲求を満たし切れていないにもかかわらず、上の欲求にアプローチしているという点なのだとか。

たとえば日本に住んでいる一般的なビジネスパーソンであれば、生理的欲求と安全欲求は満たされていて当然。会社勤めもしていて、家族も持っているのなら、社会的欲求もクリアしているということになるでしょう。そればかりか仕事でも現在のポジションに満足しているため、承認欲求も問題なし。だから、「趣味の旅行に行きたい」というようなイメージを持つことも可能。

ところが現実的には、多くの人が生理的欲求すら満たせていないというのです。それどころか成功者は、「安全欲求を満たそうとして、それ以上の欲求をすべて持たずに働く時間が長い人が多い」という特徴もあるのだと著者。少しわかりにくいので、例をあげましょう。

たとえば、Aさんが一人旅に行きたがっているとします。一人旅の目的は、日常から抜け出してリラックスすること。しかしこれは視点を変えれば、「日常の生活における社会的欲求を達成できていないストレス」だということになるわけです。別な表現をするなら、「旅行」という非日常によるリラックスをしなければ、「危ない!」と心が叫んでいる状態でもあるというのです。

それはつまり、安全欲求を求めているということになるでしょう。もしかしたら、Aさんはリラックスできずにまともな睡眠がとれていないかもしれず、つまりは生理的欲求にすら満足できていないという可能性があるわけです。

だから、もしもこのAさんと話している相手が「寝具を販売しているお店を経営している人」だったとしたら、Aさんは間違いなくお客様になるという考え方です。もともとは、「旅行に行きたい人」でしかなかったにもかかわらず、突き詰めていけば、それがビジネスにつながっていくということ。

いいかえればマズローの欲求5段解説は、表面的な行動や発言の根本にある本質的な痛みや悩み、欲求を判断することに使えるというわけです。(72ページより)

インタビューで欲求を引き出す

「欲求は低次の欲を満たしていないのに、高次の欲を満たすことはできない」(80ページより)

これがマズローの欲求5段解説。そして、この5つの段階をそれぞれ意識しながら、お客様にインタビューすることが大切なのだと著者は主張します。いうまでもなく、なるべくレベルが下の欲求や悩みを引き出すことがインタビューの目的。

とはいっても当然のことながら、お客様が欲求や悩みを簡単に教えてくれるはずもないでしょう。そのため、これを聞き出すにはテクニックが必要なのだそうです。その実例として、ここでは著者が開催する講座に参加したK部長という方に著者がインタビューしたときの模様が紹介されています(会話中の「私」は著者のこと)。

私「Kさんは、どうしてマーケティングを学びたいと思ったのですか?」

K部長「定年まであと10年なので、それまでに何か残したいなと思いまして(自己実現欲求)」

私「なるほど、どうして何かを残したいのですか?」

K部長「会社に今までお世話になったので、貢献したいです」

私「貢献すると、K部長は、どうなりますか?」

K部長「多分、取締役くらいにはなれると思います(承認欲求)」

私「取締役になると、何かが大きく変化するとか、いいことが増えるんですか?」

K部長「はい、給与が増えますから、定年後に家族でのんびり過ごしたいなと思いまして、そのためにも定年するまでにもう少し貯金したいなと思っているんですよ(社会的欲求)」

私「いいですね! でも、もし結果が出なくて、部長のままで定年になってしまったらどうなりますか?」

K部長「のんびり過ごすどころか、知り合いのところで働かせてもらったりするかもしれませんね。いやあ、ゆっくりしたいな(安全欲求)」

私「じゃあ、あと10年でゆっくりした生活が手に入るように、取締役になって、それ以降は、ご家族とゆっくりできるように今頑張って結果を出すしかないですね!」(81ページより)

もちろん現実的には、ここまでトントン拍子には進まないでしょうが、大まかな流れはこのような感じなのだそうです。つまりK部長はマーケティングを勉強したいのではなく、取締役になって老後にゆっくり生活するための手段を求めているということ。マズローの欲求5段解説を活用すれば、そこに気づくことができるわけです。そして、実際に気づけるかどうかが、ビジネスパーソンとしての最大の腕の見せどころだと著者は記しています。(80ページより)


中小企業をターゲットにしているとはいえ、会社の規模に関係なく、マーケティング基礎を学ぶためにも役立ちそうな内容。視野を広げるという意味でも、読んでおくべき内容だといえそうです。

(印南敦史)

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