特集
カテゴリー
タグ
メディア

「写真家からドローンデザイナーに転向してしまった男」が語る、ドローンレースの魅力

「写真家からドローンデザイナーに転向してしまった男」が語る、ドローンレースの魅力

ニューヨーク、マンハッタン在住のアンディー・シェンさんは、独学でドローンデザインを学び、2014年ドローン専門サイト「Shen Drones」を設立。そこで自身で作ったドローンを販売しています。

長年プロの写真家として活動していたアンディーさんですが、ドローンに出合って以来、彼の情熱は180度転換し、物を撮影することから、未来の可能性に満ちた新しい物体「ドローン」を飛ばすことに傾いてしまったといいます。今や余暇はもっぱら、FPV(1人称視点)ドローンレーシングの練習に勤しむというアンディーさん。(FPVとは、小型カメラと無線、ヘッドマウントディスプレイを利用してドローンと視点をドッキングし、あたかもドローンのコックピットに入ったかのように操縦することを意味します)

今回は、現在ドローン・デザイナーとして活躍しているアンディさんに、ドローンとドローンレースの何がそこまで彼を惹きつけたのかをうかがいました。

Andy Shen(アンディー・シェン)
ニューヨーク在住のドローン・デザイナー。約20年間、スチールフォトグラファーとして活動し、2012年ごろから独学でドローン・デザインを学び始める。2014年ドローン専門サイト「Shen Drones」を設立し、自身で作ったドローンを販売開始。デザイン、組み立て、梱包、配送作業、カスタマーサービスに至るまですべて自分で行うため、毎日の労働時間は18時間! 忙しい日々の合間にドローンを飛ばすのが、貴重な息抜きの時間だとか。

写真家から転身。今は情熱のすべてをドローンに注ぎ込む

── ドローンとの出合いから教えてください。

アンディー:もともと私の職業はフォトグラファーで、趣味で自転車レースをしていました。2012年ごろから、自転車レースの動画をドローンで撮影できたらおもしろそうだなぁと思い始めました。

それでまずはドローンを買って、飛ばすことから練習し始めました。ドローンで撮影し始めると、動画をうまく撮ることより「もっとうまく飛ばしたい」という欲が強くなり、だんだん撮影ではなく、ドローン自体に夢中になっていきました。

アンディーさんが2014年にドローンで撮影した自転車レース。Supercross '14 Masters and Elite Women from Andy Shen on Vimeo.

アンディー:ドローンを飛ばすことに夢中になると、今度は早く飛ばしたいという欲が生まれ、早く飛ばすには既製品ではなく、自分の腕に馴染むものを自分で作ってカスタマイズした方がよいのではないかと思い始めたんです。それがドローン作り(デザイン)のスタート地点です。デザイナーとしてはレース用・撮影用共に作っていますが、個人的にやるのはドローンレースだけです。

ドローンレースの面白さとは?

アンディーさんがスポンサーをしている2人のパイロットによるドローンレースの様子。

── 仕事を変え、撮影からも手を引いてまでドローンレースにのめり込んでしまったということですね。どこにそれほどまでの魅力があるのでしょうか?

アンディー:まずレース抜きにして、ドローンは飛ばすこと自体が楽しいんですよ。飛ばしている間はまるで自分が鳥になったかの気分でいられます。何とも言えないフリーダム(自由、開放感)をもろに感じられるというか。

ドローンを始めて、最初はスピード感というよりその開放感に魅了され、はまっていきました。でもドローンレースを始めると、自転車レースとはまた違ったワクワク感があるなってことに気づきました。なんてったって「3次元の世界」ですからね。

マンハッタンにあるアンディーさんの自宅兼スタジオ(広い!)内を縦横無尽に飛び回るドローン。Messy House = DRL Course from Andy Shen on Vimeo.

── どういう意味ですか?

アンディー:たとえば、レーシングカーは道路に沿って走りますよね。でもドローンは垂直にも行くし、空中を縦横無尽に飛びます。レース中は限りなく地面に近い空中をできるだけ速く飛ばす。このスピードの限界への挑戦はとても難しいからこそ、楽しさやスリルも倍増するんですよ。

── ニューヨークでドローンレースはどこで開催されているのですか?

アンディー:2016年の8月に、マンハッタン島の最南端からフェリーで行くガバナーズ島というところで、全米ナンバーワンを決める「全米ドローンレース・チャンピオンシップ大会」が開催されました。私は出場こそしませんでしたが、3人のドローンパイロットのスポンサーとして参加しました。

── ガバナーズ島ではいつもドローンを飛ばすことができるのですか? ドローンの飛行は制限されているのではないかと思いますが。

アンディー:この島は夏季の週末だけオープンする島で、ドローンレースができたのはこの大会の日だけです。通常はドローンを飛ばせる場所ではありません。

私たちが通常、練習で飛ばしているのは、マンハッタンから北部のブロンクス区にあるFerry Point Parkです。本格的なドローンレースの場合、マンハッタンから東部にあるロングアイランドというところにあるコーラム(Coram)という、私が所属しているクラブ「FPV アディクション」の管轄のフィールドで行います。

約2年前まではそんなに遠くまで行かなくても、マンハッタンの自宅からすぐに行けるEast River Parkでよく飛ばして、ドローンをクラッシュさせながら腕を磨いていたものですが、今はドローン規制が特に厳しくなったので、マンハッタン内ではもう飛ばせなくなってしまいましたね。飛ばせるフィールドの情報はドローン仲間から教えてもらっています。

── それらのフィールドは誰でも練習で利用できるのですか?

アンディー:はい。事前登録などはいっさい不要で、気軽に誰でも(編注1*)ドローンを飛ばせます。

(編注1*)ニューヨークでは、ドローンを購入する際にすべての人がFAA(連邦航空局)に登録する義務があります。また商業用の目的でドローンを飛ばす場合も、事前にライセンスを取得する必要があります。

日本ではドローンの購入に資格等は必要ありませんが、ニューヨークと同じように飛ばせる場所は制限されています。国土交通省によれば、以下に該当する場所でドローンを飛ばすためには国土交通大臣の許可が必要とのこと。必ず確認の上で飛ばすようにしましょう。

  • 航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域
  • 人又は家屋の密集している地域の上空
  • 150m以上の高さの空域

また、数は少ないながらもドローン飛行場も存在しているので、足を運んでみるのも良いでしょう。

andy_shen_2.jpg

アンディーさん作、上級者向きレース用ドローン。スムーズに空中を抜けるフォルムを追求した「Mifuneモデル」($110)。近年、テクノロジーの進化でコンポーネント(ドローンの各部品)の小型化が実現し、ドローン自体限りなく小さく軽量化している。ちなみにネーミングの由来は「黒沢明の映画ファンだから!」とアンディーさん。

自分に合ったドローン、どう見つける?

アンディー:ドローンユーザーには2つのタイプがいます。1つは、私のようなタイプです。つまり、興味があるものは何でも独学で覚えていく。こういうタイプは、ドローンも自分好みにカスタマイズしたい人です。私はこのタイプの顧客に向けて、ドローンのフレームだけを作って販売しています(下記写真)。あれこれ考えながらスピードを限りなく追求できる、それが楽しいんです。

自分で組み立てるのに特に興味がない人は、一般的に販売されているようなGPSコントロール付きのドローンがいいでしょう。それらのドローンはすでに完成された状態で売られていますから、購入後すぐに飛ばせるのが利点です。

andy_shen_3.jpg

「Shen Drones」で注文すると、商品はこのような状態で届く。これだと、カスタマーはほかのコンポーネントを自分で購入し、好きなように組み立てられる。GPSコントロールは付いていないので、マニュアルで操作する。

andy_shen_4.jpg

アンディーさん作、初心者用ドローン。「撮影用ドローンだけど、早く飛ぶのでレース用としてもオススメ」という「TWEAKER 5" モデル」($65)。写真のものは3〜4年前にアンディーさんがビデオ撮影で使っていたもの)。

andy_shen_5.jpg

練習用に最適なのはこれ! 超初心者向けドローン「Liberty Ducted Quadモデル」(120ドル)は、ぶつかったり墜落を繰り返しても大丈夫なように特に頑丈な作り。「もともとはニュージャージー州の博物館、リバティー・サイエンスセンターで開催された子供たちを対象にしたドローン練習のために開発したものです」とアンディーさん。

ドローン飛行の規制について

── ドローンを飛ばすフィールドの安全面はどう守られているのですか?

アンディー:墜落することはありますが、人に当たったなどの重大な事故は起こったことがないです。ドローンファン同士は顔見知りになっていることが多く、お互いの技術を信用し合っていますし、初めて飛ばそうという人が来たらみんながその人は初心者だとわかりますし、上級者が教えたりしますから。その人が初飛行するときだけは、皆が一瞬、木の影に隠れたりはしますけど(笑)。

andy_shen_6.jpg

andy_shen_7.jpg

アンディーさんのスタジオにある、3Dプリンター。これでドローンのフォルムを作っている。

── 最後に、ドローンレースに興味のある日本の読者にメッセージをお願いします。

アンディー:私もそうでしたが、ドローンを見たことも使ったこともない人が、最初からいきなりFPVドローンを使いこなせるはずがありません。ドローンレースに興味はあるけどまったくドローンを飛ばしたことがないという方は、まずこのようなクアッドコプターから使いはじめてはいかがでしょうか? 小さくて大変コントロールがしやすく、手始めとしておすすめです。


ドローンに夢中になり、写真家として20年のキャリアを捨て、ドローンデザイナー/レーサーとして新たな道を歩いているアンディーさん。「自分は決してレースはうまくない」と謙遜していましたが、きっとそんなことはないはず! 次回はドローンレーサーとしてのアンディーさんに会ってみたくなりました。日本ではあまり知られていないドローンレースですが、今回の記事でその魅力が少しでも伝わったらうれしいです。

(文・写真/安部かすみ)

swiper-button-prev
swiper-button-next