【週末に寝だめしたい人のための睡眠診断】会社に行くのがつらいのは「眠り方が不規則」なせいかも...
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2016年7月13日の日本睡眠学会第41回学術集会にて、田中秀樹氏(広島国際大学)・濱崎洋一郎氏(株式会社ねむログ/帝人株式会社)らが「平日と休日で眠り方が異なると、休み明けに心身のパフォーマンスが低下する」という共同研究結果を発表しました。忙しい平日は睡眠時間を削り、週末に寝だめをして帳尻を合わせるという人もいるかと思いますが、この研究はそうした「不規則な眠り方」が引き起こす悪影響を明らかにし、睡眠習慣を改善する方法を調査したものです。
眠り方によるパフォーマンスの低下は自分では気づきにくいのが特徴です。そこで今回は、共同研究者の1人である濱崎洋一郎氏に研究の詳細についてお話をうかがい、それをもとに適切に眠れているかをチェックする診断を作成しました。知らず知らずのうちに不調に陥っていないか、まずは以下の診断に回答してみてください。
寝だめしたい人のための睡眠診断
※就寝時刻が日をまたぐ方は以下のように入力してください。
就寝時刻0:00→24:00
就寝時刻1:00→25:00
就寝時刻2:00→26:00
(診断が表示されない場合はこちらから)
結果はいかがでしたか? この診断では「睡眠時間」と「就寝時刻」をもとに、パフォーマンスを損なわない、適切な睡眠が取れているかを判定しています。悪い結果が出てしまった人は、以下に研究の概要と改善方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
休日に長時間寝すぎると「ソーシャルジェットラグ」が発生しがち
今回紹介する研究では、インターネット上で1860名の勤労者に対して平日と休日の睡眠時間・就寝時刻を尋ねるとともに、ストレスチェック(ストレスに関する質問票)で用いられている項目についてアンケートを実施し、平日と休日の眠り方の違いが人間の体調にどのように影響するのかを調査しました。研究結果を簡単にまとめると「休日に寝だめをすると、休日だけではなく、平日もなんとなく体調が悪く、やる気も出ないという状態に陥りがち」ということになります。以下では、そのメカニズムをご紹介します。

研究結果によると、睡眠時間が短いと不調を感じやすくなります。具体的には、睡眠時間が7時間未満で眠気が増加し、6時間未満で睡眠の質が悪化します。5時間未満になると疲労感・不安感・抑うつ感が増加し、「頭が重い」「疲れがとれない」といった身体愁訴が増加します。
もう1つ明らかになったのは、「休日と平日で眠る時間"帯"がズレても悪影響が生じる」ということです。共同研究者の濱崎氏は以下のように研究結果を解説してくれました。
濱崎:研究チームでは「平日の睡眠中央時刻と休日の睡眠中央時刻の差」をソーシャルジェットラグと呼んでいます。睡眠中央時刻とは、就寝時刻と起床時刻の真ん中の時刻のことです。調査結果を分析したところ、ソーシャルジェットラグが1時間を超えると(=平日と休日で眠り方に違いがあると)、休み明けに時差ボケのような状態になってパフォーマンスが低下してしまうことがわかりました。
以下の図で濱崎氏の言う「ソーシャルジェットラグ」を簡単に解説します。

例として、平日は0時に寝て6時に起き、休日は0時に寝て11時に起きる(5時間寝だめする)という人の場合を考えてみましょう。平日の睡眠中央時刻は3時、休日の睡眠中央時刻は5時30分です。ソーシャルジェットラグは「平日の睡眠中央時刻と休日の睡眠中央時刻の差」なので、ソーシャルジェットラグは2時間30分になります。
ソーシャルジェットラグが2時間30分あると、休日明けには、東南アジアのタイやベトナムから飛行機で帰ってきたときのような「時差ボケ状態」になってしまい、ベストな状態で活動することができなくなってしまうのです。
ソーシャルジェットラグが1時間以上あり、時差ボケ状態になった場合に感じる可能性のある不調は以下の通りです。
- 睡眠の悪化
- 眠気の増加
- イライラ感・疲労感・不安感・抑うつ感の増加
- ワークエンゲージメントの悪化
- 創造性の悪化
注目してほしいのが最後の2つです。「ワークエンゲージメントの悪化」は、仕事へのモチベーションや作業への集中力の低下を意味します。また、「創造性が低下する」ので、企画などの発想力が求められるアウトプットがしにくくなってしまいます。これらは睡眠不足では起こらず、ソーシャルジェットラグによってのみ発生するのがポイントです。休日の睡眠時間が平日よりも極端に長い(≒寝だめをする)と、休日明けに仕事のエンジンがかからないだけではなく、モチベーションや発想力までもが奪われてしまうことがあるのです。
この症状は「休日明けの月曜日にとても憂うつになる現象(マンデーブルー)」を思い起こさせますが、研究によって「休日だからと長時間眠る・夜更かしをする」といった不規則な眠り方との関連性が確認されたのです。
ソーシャルジェットラグを回避する方法は「休日も平日に近い眠り方をする」
上述したように、目を覚ましたときにソーシャルジェットラグで時差ボケ状態になるのは「平日と休日の睡眠中央時刻の差が1時間以上のとき」です。そのため、休日も平日と同じ時刻に眠り、睡眠時間を延ばすにしても2時間未満に収めるように心がけてみるとよいでしょう。
睡眠改善のポイントは「続けられる改善行動」にあり
とはいえ、仕事をしながら睡眠を改善していくのは簡単なことではありません。しかし、濱崎氏らはそれを踏まえて、「睡眠改善を成功させるポイント」についても調査を実施しました。
濱崎:今回は、「アプリを使って睡眠を整えてもらう」という実証実験も行いました。睡眠が悪化している人72名に2週間、睡眠生活日誌をつけてもらいました。また、睡眠改善のための行動を3つ設定してもらい、アプリの機能で改善行動を毎日実践できたかを記録してもらいました。比較対象として、アプリを使わない人27名の睡眠状況も調査しました。
この調査からはおおまかに2つの知見が得られました。1つ目は、「アプリなどを利用して自分の睡眠を見える化することで、自然と改善する力が働く」ということ。自分が何時から何時まで眠ったかをノートなどに記録することで、自分の課題が自然と浮き彫りになります。
次に、アプリを使って睡眠を改善した人たちからは、「どんな改善行動であれ、自分が選んだ行動を継続出来たかどうかが重要」という傾向が読み取れました。
以下に調査対象者たちが自分に課した睡眠改善行動の一覧を示しますが、「多くの人が選んだ改善行動が必ずしも維持率が高いわけではない」ということに注意してください。自分にとって維持しやすい改善行動を選び、継続することが成功の鍵なのです。



1990年帝人株式会社入社。医療IT事業の企画開発に従事。2001年インフォコム・アメリカの設立に参加。米国のライフサイエンス系ベンチャー企業とJV設立など、主に、ヘルスケア、ライフサイエンス領域における、新規事業の立上げ、育成に従事。2011年よりインフォコム株式会社経営企画室室長。グループ全体の投資戦略、海外展開戦略などの策定、実施を進める。2014年より現職。2015年4月より株式会社ねむログ代表取締役を兼務。寝つきをサポートするウェアラブルセンサー&アプリ「2breathe(ツーブリーズ)」を2016年3月に発売。
濱崎氏は上手に睡眠を改善するコツについて、以下のように語りました。
濱崎:夜型が染みついている方は、平日も夜型を通したほうがいいかもしれません。社会人で夜型を通すのは難しいことではありますが、無理に朝型にしても、週末に夜型に戻ってしまい、ソーシャルジェットラグの悪影響を受けてしまうことになるでしょう。この研究からわかるのは、「7時間は眠ったほうがよい」「同じ時刻に、同じ時間眠ったほうがよい」ということ。必ずしも朝型にする必要はないわけです。自分の眠りを記録しながら、自分に合った規則正しい眠り方を見つけることが重要です。
診断で悪い結果が出た人は平日と休日の眠り方にギャップがあり、ソーシャルジェットラグの悪影響を受けている可能性があります。心当たりがある方は、上で紹介した改善方法を試してみてください。
(神山拓生)
神山拓生
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