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「無制限休暇制度」を利用して猫カフェを創業してしまったNYビジネスウーマン。アメリカの新しい起業スタイルとは?

「無制限休暇制度」を利用して猫カフェを創業してしまったNYビジネスウーマン。アメリカの新しい起業スタイルとは?

雇用主・従業員の双方にメリットがある「無制限休暇制度」がテック系のトレンド

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「猫のいない人生は考えられない!」」と言うほど大の猫好きのエリンさん。仕事中も猫について利用客と話しだすと自然と笑みがこぼれる。

── アメリカではバケーションは2カ月くらい簡単に取れるものなのですか?

エリン:それぞれの会社の規定によって異なりますが、Bonobosでは「アンリミテッドバケーション」(無制限休暇)制度を採用しています。これは所属する部署のマネージャーの承認が取れさえすれば、何日でも休みを取っていいというものです。

── すごい制度ですね! たとえば極端な話、6カ月休暇も可能なんですか?

エリン:マネージャーの承認が取れさえすれば可能だとは思いますが、おそらく6カ月ものお休みでも問題ないとなると、もはや会社側はあなたを必要な人材とは捉えていないということになるでしょう(笑)。Bonobosでは一般的に、たとえば数日お休みしてまた少し経ってからお休みして、夏にまとめて休暇を取って...というのが多いかな。

── こういう日数制限のない有給休暇はアメリカで一般的なんですか?

エリン:テック系の割と新しい企業を中心に採用されていると思います。以前働いたGuiltでもそうでしたし、ほかにLinkedInやEvernoteもそうだと思います。

このアンリミテッドバケーション制度というのは、従業員にとってもちろん魅力的ですが、企業側にもメリットがあるんです。たとえば、この制度を会社の魅力としてアピールができ、離職を防ぐ効果があると言われています。特にテック系において素晴らしい才能や経験豊富な人材は限られており、企業同士の取り合いですからね。

また、そのようなフレキシブルな休暇制度というのは、事前に決められた一般的な有給休暇制度より、バケーションライアビリティ(有給休暇の債務)を免除できるメリットがあります。無制限休暇制度を採用している企業では、もしその従業員が退職もしくは従業員をレイオフした場合に、使わなかった有給休暇分の支払いをする必要がないので、お金を節約できるメリットがあるのです。

Bonobosでは、アンリミテッドバケーション制度を利用して休暇をもらうにはマネージャーの承認が必要になってくるので、その承認さえ降りれば長期休暇を取得することが可能です。私ははじめのころ、実は少し体調的な理由もあって休暇の申請をした結果、マネージャーが承認してくれて長期休暇をもらえるに至りました。

責任の重いオーナー業から本職に戻るとリフレッシュした気分に

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猫のモチーフなどがインテリアに取り込まれた落ち着いた店内。ニューヨーク市衛生局の規定で、飲食スペースと猫スペースを隔てなければならないので、ドリンクや軽食は隣のカフェで注文するシステム。

── そのバケーションを終え、職場復帰したのはいつですか。

エリン:2016年4月28日です。

── 本職に戻ってどんな気持ちですか?

エリン:リフレッシュした気分です。職場での責任という面でも、自分が代表の猫カフェに比べると会社員はより軽いですから。

── 2つの仕事をどんなスケジュールでこなしているのですか?

エリン:平日はみんなより少し早く出社し、朝7時から午後4時までBonobosで働いています。その後に猫カフェに移動して、午後4時30分ごろから閉店の8時までそこで働きます。掃除などをして帰路につくのは毎日午後8時30分ごろです。週末は朝から夜までずっとお店にいます。

店にいないときも実は働いていて、自宅では商品の発注や会計、ペイロール(給料の支払い)など事務作業が待っています。

── 事務作業もご自身で!

エリン:大学で経済学を勉強し、卒業後に就職したコンピュータ系の企業で必要な経費について分析するコストアナリストとして働いた経験があり、財務や会計のことが少しわかるのです。大企業だと無理ですが、うちぐらいの規模だとこれくらいは自分でやれますから。

── ということは、休日も休憩もなく働き続けているということですか!?

エリン:今はそうですね...(苦笑)。オープン当初とBonobos復職時は両親がカリフォルニアから手伝いに来てくれていたのですが、今は私とスタッフ数名で運営しているので休みはないですね。ただ、マネージャー候補者のメドがなんとなくたってきたので、この過酷な日々も数週間の辛抱だと思っています。

起業に寛大なのは、若いテック系スタートアップという土壌ゆえ

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どの猫も穏やか。「たくさんの人に触られることは猫にとってストレスなので、猫10匹に対して入場者数は15人までにしているの」とエリンさん。入店には事前予約を推奨しているが、空きがある限り予約なしでも入店できる。

── 日本では、会社員が副業を持つことが社会的に認められていない風潮なのですが、アメリカでは普通ですか? たとえば、会社員をしながら週末はバーテンダーやDJをしている人などをたまに聞いたりしますが。

エリン:確かにそういう人もいますね。昼間にテクニカルな仕事をしていて、サイドジョブとして週末や夜間にアーティスティックな活動とかね。でも私の周りで2つの仕事を持っている人はいないです。特に私みたいに会社員をしながら別の会社を創業した人は私の知り合いには皆無なので、普通か普通でないかと聞かれれば普通ではないと思います。

伝統的な大企業で働いていたらほぼ無理だったでしょうが、私のこういう状況が許されているのは、働いている業界がテック系のスタートアップというのは大きいと思います。Bonobosは創業から10年弱の比較的若い会社で、現在37歳のCEOはこの会社を20代でスタートしました。スタッフもみな新しいマインドを持った人が多いので、本職のパフォーマンスに影響がなく、また2つ目の仕事が同業種でなければ、副業を持つことを寛大に見てもらえる傾向にあると思います。

── 職場の人は、エリンさんが創業したことについて何と言っていますか?

エリン:最初に猫カフェを思いついたのは2013年ごろで、私は「Guilt」でストラテジー・プロジェクトマネージャーとして働いていました。上司にそれとなく話すと「いい案だ」と応援してくれました。そして2014年4月、Little Lions, LLCとして法人登記しました。

オープンに辿り着くまでは、仕事が終わった後に開業資金などを集めるための作業をしたり店舗の場所を探したりしていたのですが、少しずつやっていたのでそんなに大変ではなかったです。そしてその間に私は今のBonobosに転職しました。ここでも自分の夢について徐々に周りに知られることになりましたが、自然に受け入れてもらえました。

4月末にはバケーションを終え職場復帰したわけですが、温かく迎え入れてもらえました。特に、デスクが近い同僚の1人はこのLittle LionsがあるSOHOから近いチャイナタウンに住んでいるので、「今度週末にお店に遊びにおいでよ」と招待したところです。

── もし、今の会社が副業を禁止していたとしたらどうしたと思いますか?

エリン:う~ん、どうでしょう。私はBonobosでの仕事に不満を持っているわけではないので考えたくないですが、もしそうだったとしたら...おそらく会社を辞めることを選んだでしょう。ニューヨークにはたくさんのテック系スタートアップがあり、辞めたとしてもほかに就職先が見つかるでしょうから。

── ニューヨークは家賃や人件費などが高いので莫大な開業資金が必要だったと思うのですが、それはどう捻出したのですか?

エリン:2014年10月ごろ、クラウドファウンディングを利用して2カ月で6万5000ドル(約716万円)を調達しました。しかしそれだけでは到底足りないので、自分の貯金を費やし、そして残りは借金をしています。

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(文・写真/安部かすみ)

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