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知っているようで知らない、実は複雑な妊娠の科学

知っているようで知らない、実は複雑な妊娠の科学

読者のみなさんの中には、学校で「女性はいつでも妊娠する可能性があるのでセックスをしてはいけません」と教えられた人がいるかもしれませんね。

でもこれは、若者がむやみやたらにそうした行為に走らないよう戒める、いわば方便のようなものです。実際問題として、子どもを作るのはそんなに簡単ではありません。

いつでも妊娠するわけではない

あなたと異性のパートナーが丸々1年間、せっせと子作りに励んだとしても、1年後に見事に受胎にこぎつけている確率はせいぜい85%です

これは多くの人にとっては周知の事実ですし、妊娠するのが難しい、あるいは無事に出産を迎えるのが困難な人もたくさんいます。

こうした人の数は、定義にもよりますが、アメリカでは女性の約10%にのぼるとの統計もあります(ただし男性に関しては信頼できる数字がないのが現状です)。

とは言え、カップルの身体的な能力に問題がない場合でも、妊娠する可能性は一般に思われているよりもかなり低い。「妊活」という言葉があるのもそのためです。

ではここで気がかりな事実をお伝えしましょう。

学術誌『Perspectives on Sexual and Reproductive Health』に掲載されたある調査結果によると、自分は不妊だと回答した人の割合が、若い女性で19%、若い男性で13%に達したそうです。

そして彼らの多くは、そう信じる根拠について、避妊具をつけずにセックスをしたけれど、その結果として妊娠しなかった体験を挙げています。

この結果について、研究の筆頭著者を務めたChelsea Polis氏は、「受胎の可能性に関する私たちの認識には、大いに問題があることがわかりました」と述べています。

Polis氏の調査では大半の人が、女性が任意の日に妊娠する確率は50%以上あると回答していました。しかし実際には、妊娠の確率は平均で約3%です。

しかもこの数字は日によって変わり、女性の生理期間前後には0%なのに対し、排卵日直前には10%に上昇します。つまりタイミングが重要だということです。

生理の時期以外にも女性に影響を及ぼす月経周期

女性には約1カ月サイクルの生殖周期があり、この周期の一環として血に似た外見の子宮内膜を体外に排出する月経(生理)があるのはみなさんご存じかと思います。これは間違ってはいません。

でも、これ以上の知識はないというならば(残念ながら、女性でない人たちにとってはここまでが知識の限界ということが多いのです)、以下の説明を読んでください。

生理が終わり、次の生理が始まるまでの約3週間は、単なる穏やかな時間というわけではなく、女性の身体の中ではさまざまなホルモンが演出する「ダンス」が繰り広げられています。

これを無視するのは、バレエの公演が行われている劇場を外から眺め、「なるほど、土曜の夜11時になるとたくさんの人が建物から出てくるのだな」と言っているようなものです。

外から見てわかる現象が起きるのは、中で行われている興味深い事柄の結果にすぎません。

月経周期では、女性の生理開始日を1日目とカウントします。ここを起点とするのは、1カ月のサイクルの中で確実に気付く事象がこれだけしかないからです。

ではここで時計をリセットしましょう。

月経周期の前半は、卵胞期と呼ばれます。

これは卵巣の中で、卵子が卵胞に包まれて成熟していくところからつけられた名前です。

実際、この時期には複数の卵胞が増殖を始めるのですが、排卵にまで至るのは一番成長が早かったものだけです。

さて、こうして成長した卵胞は、28日の月経周期であれば14日目前後に卵子を放ちます。

これよりも月経周期が長い人の場合は、おそらく卵胞期が長引いていると考えられます。卵胞が破れると排卵が起き、放たれた小さな卵子は卵管を通って子宮にたどり着きます。

人によっては排卵時に痛みや出血が生じる場合もありますが、まったく自覚症状がないのもごく普通です。

排卵以降の約14日間が黄体期です。

卵子が子宮に放たれる一方で、その卵子を育てていた卵胞は黄体(ラテン語の「黄色い塊」からついた名前)へと姿を変え、各種ホルモンを分泌し続けます。

具体的には、子宮を妊娠に備えさせるためのホルモンが分泌されます。ここで月経前症候群(PMS)により、妊娠初期の状況と酷似した症状が起きる場合もあります。

さきほどは、女性の体内で起きている現象をさまざまなホルモンが演出する「ダンス」だと言いましたが、これはかなり美化したたとえです。

もう少し詳しく知りたいという方には、より詳しい説明がこちらにあります。もっと突っ込んだところを知りたいなら、自分の身体の変化を記録するのが一番です。

『ルナルナ』や『ラルーン』といったアプリを使うか、あるいは生理期間や身体の症状を普通のカレンダーに書き込んでみるだけでも良いでしょう。

記録をつけ始めると、とりわけ不快な症状の多くが月経周期の後半に起きることに気付くはずです。ゆえにこうした症状は「月経前症候群」(PMS)と呼ばれています。

デリカシーに欠けた世の男性陣にここで言っておきますが、女性が怒りっぽいときに、「彼女はあの日なんだろう」などと言うのは、たとえ冗談であっても無礼ですし、それどころか無知をさらけ出していることになるので十分注意してください。

生理が始まればPMSは終わり、女性は再び卵胞期に入ります。

女性の妊娠可能期間は、実は短い

ここまで読んで、学校の性教育の授業で身につけた中途半端な知識(性教育の時間があった場合の話ですが)を思い出している人もいるでしょう。

女性は月経周期のどの時期でも妊娠の可能性があるので、用心に用心を重ね、毎回ちゃんと避妊具を使わなくてはならない、という話です。

でも実際には、あなたか相手が生理中であれば、妊娠の確率はほぼゼロです

先生たちが授業でこの事実を強調しないのには、もっともな理由があります。自分が月経周期で今のどの時期にいるのかを記録するだけでは、多くの人にとって十分な避妊の手段にはならないからです。

特に月経周期が毎月まちまちで当てにならない10代の若者にとってはなおさら。

一方で、自分の月経周期を把握しておけば、女性が自分の身体を理解するのに役立つのもまた事実です。

とはいえ、日付から排卵日を推測するだけの「リズム法」では、あまり効果が期待できないとの警告を見聞きしたことがあるはず。

そのほかの手がかりや身体症状を根拠に妊娠可能期間を判別する方法は、「妊娠可能期間を把握する方法」あるいは「自然な家族計画」と呼ばれます。

妊娠を避ける目的であれば、コンドームなどの以前からある避妊手段のほうが、今挙げた女性の月経周期から判断する方法よりもかなり確実です。

だからといって、ほかの避妊手段を使わなくても大丈夫だと言っているわけでは決してありません。

ただ、1カ月のサイクルの中で女性の身体に何が起きているのか、理解を深めてもらいたいのです。

排卵日前が一番妊娠しやすい

一方で、子どもが欲しい人にとっては、自分の排卵時期を把握することは、妊娠に向けた大きな後押しになります。ではここで、排卵が起きるその日に注目してみましょう。

排卵日は妊娠するのに非常に適した日なのでは、と思うかもしれませんが、実はこの時点で、妊娠可能期間はすでに終わりに近づいています。卵子と精子が適切なタイミングで出会うためには、排卵の数日「前」にセックスしておいたほうが良いのです。

精子は数日間、女性の生殖器官内で生存が可能で、卵管を奥へと進んだ精子はその間、卵巣近くの部分にとどまっています。

排卵の時期が近づくと、女性の生殖器系が何らかの方法で精子を活性化させ、これにより卵子は卵胞から放たれた直後に受精できる仕組みになっているのです。

というわけで、妊娠したい人にとって一番可能性が高いタイミングは排卵前の1週間、特にこの期間の終盤2、3日ということになります。

学術誌『Human Reproduction』で発表された研究には、月経周期に合わせて女性の妊娠する確率が1日ごとに記載されています。

生理中の1週間は、妊娠の可能性はほぼありません。

セックスが妊娠につながる確率を描いたグラフは、最初の1週間はほぼゼロで推移した(完全にゼロになっていないのは、本当にこの時期に妊娠可能だったわけではなく、もともとの記録のほうに問題があったのでしょう)のち、大多数の人にとって妊娠可能期間とされる時期に入ると跳ね上がります。

グラフを見ると、中には月経周期の14日目以降に妊娠した人もいます。ただしこの調査は多数の人を対象としているため、14日以降に妊娠した人は月経周期が比較的長く、妊娠可能期間が遅い時期に現れる人と考えられます。

妊娠可能期間を把握するための注意点

妊娠可能期間を把握する方法は、避妊の手段として使えないことはないのですが、これには重要な注意事項がいくつかあります。

  1. 女性の月経周期がほぼ規則的であることが第一条件。そうでない場合は、不規則であることを常に頭に置いておく必要があります。
  2. 性感染症を防ぐ手段がほかにない以上、素性を知っていて信頼できるパートナーが相手でなければなりません。
  3. 妊娠可能期間を把握する方法は、避妊に失敗する確率が高いことも知っておいてください。

ルールさえきちんと守っていれば、コンドームと同程度に妊娠を防ぐ効果がありますが、自分の子宮(あるいはパートナーの子宮)の状態を「毎日欠かさず」気にかけておくことができる人は、現実問題として非常に少ないのです。

排卵を知る手がかりは?

身体の状態を記録するといっても、ただカレンダーを眺めているだけではありません。排卵を知る手がかりとしては、以下のようなものがあります:

  • 排卵日には基礎体温が0.5度程度、急上昇します。
  • 膣に指を入れると触れることができる子宮頸部は、排卵直前の妊娠可能期間に入ると、それ以外の時期よりも柔らかくなります。(ただしこの方法は自分の性器に触れることに抵抗がある人にはお勧めしません)
  • 「おりもの」と呼ばれる子宮頸粘液の状態が変化します。妊娠可能期間に入ると、これが濃くなり粘りけが出てきます。
  • 排卵検査キットを使えば、実際の排卵の1~2日前に排卵日が予想できます。

これらの手がかりを記録するのもなかなか大変です。

たとえば体温の場合は、毎日同じ時間に同じ条件で計測しなければ、排卵時に起きるごくわずかな体温上昇を検知できません。そのため、布団から出る前に、朝の最初の日課として体温を測るのが一般的な方法になっています。

では朝寝坊したい日はどうするかというと、普段起きる時間に目覚ましをセットし、体温を測り、記録して、それから二度寝するわけです。

そう聞いてなかなか面白そうだと思えるのなら、『Ovia』や『Fertility Friend』のような高機能アプリを活用し、データを管理してみるのも良いかもしれません。

とはいえ、かなり多くのデータを集めたとしても、月経周期に関して得られた情報を用いて妊娠を「避ける」のは簡単ではないことを忘れないでください。

生理が始まってからの数日間であればおそらく問題はないですが、自分の妊娠可能期間がいつになるのか、常に正確に予測するのは難しいのです。

一方、妊娠を希望する人にとっては、妊娠可能期間を把握する方法の有効性はずっと高いと言えます。

妊娠を確認するまでにかかる時間は?

さて、めでたく妊娠したとしても、お腹の中の小さな胎児の月齢を計算するのは、思っているほど簡単ではありません。

まずは、よりわかりやすい、妊娠期間の終わりについて説明しましょう。標準的な妊娠期間は40週間とされており、赤ちゃんが妊娠37~42週の間に生まれれば早産や過期産ではない「正期産」とされます。

言い換えれば、出産予定日はおおよその目安であり、この日までに生まなくてはならない期限ではないということです。

(最後の一文は、私が予定日を聞かれて「昨日だった」と答えたときに、中傷じみた発言や不快な目つきをした人たちにぜひ読んでもらいたいと思って書きました)

しかし、妊娠の始まりとなると、話はずっとややこしくなります。

まずは驚くべき事実をお知らせしましょう。「妊娠1週間」という状況は存在しないのです。

というのも、妊娠期間は、実際に受精したところからカウントするわけではなく、妊娠した女性の最終月経開始日を起点として数えるからです。

こちらに、28日間の月経周期を持つ人の場合の時系列が説明されています。

というわけで、卵子が精子と出会ったときは「妊娠2週間」、受精卵が着床したところで「妊娠3週間」、妊娠が最初に判明する時点で「妊娠4週間」という計算になります。

(妊娠がわかるのが、通常であれば生理が始まるのと同じ日だということに注目してください。月経周期の終わりには、生理が来るか妊娠検査薬で陽性になるか、どちらかの現象が起きるわけです)

こうしたタイミングの問題があるので、女性は常に、最後に生理が始まった日を把握しておくと良いでしょう。それがわかっていれば、たとえ予期せぬ妊娠でも、胎児の月齢を推測するのに医師による超音波診断を待つ必要はなく、最終月経開始日を伝えるだけで済みます。

また、X線検査などを受けて「あの時妊娠していたらどうしよう」と心配する事態も避けられます。これで、子どもができるタイミングについてはおわかりになったかと思います。

子どもが欲しいなら、排卵日の直前に避妊手段をとらないでセックスをすれば良いのです。

逆に妊娠を避けたい場合は、妊娠可能期間にかかりそうな日を慎重に避け、さらに前後数日間も念のためやめておきましょう。

できれば、こちらの記事で紹介されている、避妊成功率の高い方法を活用するようお勧めします。こちらなら、女性の月経周期に関係なく、妊娠を防ぐ効果があります。

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Heather Yamada-Hosley(原文

訳:長谷 睦/ガリレオ

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