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人に仕事を任せる上で知っておきたいこと

人に仕事を任せる上で知っておきたいこと

部下が絶対、目標達成する「任せ方」』(中尾ゆうすけ著、PHP研究所)の著者は上場企業の人事部に在籍していたころ、やる気に満ちた、たくさんの課長昇進者の姿を見てきたのだそうです。しかしその一方、職場のエースが課長になったとたん、期待に応えきれずモチベーションを落としていくという現実も目にしてきたのだとか。

課長になる人は、もともとその職場で活躍し、課長に推薦され、一定の試験や社内選考を経て、会社幹部に認められ人選された優秀者であるはず。にもかかわらず、なぜそうした差が生まれてしまうのでしょうか?

当然ながら、組織の目標達成のために課長がひとりでがんばるには限界があります。そこで部下に適切な業務を与え、目標を持たせ、「絶対部下に目標達成してもらう」ためのマネジメントを行うことが必要になるわけです。だからこそ、課長になる以前となったあととでは、仕事が大きく変わると考える必要があり、いままでの延長で考えていると、会社が求めるミッションに応えられなくなるというわけです。

とはいえ同じ課長職にも、2つのタイプがあるものだと著者は分析しています。ひとりは、部下をマネジメントし、組織の成果を最大化することで会社に貢献していく「マネージャー」タイプ。もう一方は、管理職の権限を持ち、高い専門能力を発揮しながら実務を中心に活躍し、個人の成果を最大化していく「プレーヤー」タイプ。では、両者の違いはなんなのか? 第1章「なぜ、あなたは任せられないのか?」から、いくつかの要点を抜き出してみます。

「成果」についての考え方

課長というポジションに就き、そこで認められるには、自分自身のミッションを理解することが必要。では、課長になる前となったあとに、会社が求めるミッションとはどちらでしょうか?

「自分の成果を最大化し、会社に貢献すること」

「自分以外のメンバーを含めチームの成果を最大化し、会社に貢献すること」

(25ページより)

課長となったからには後者であるべきだとわかってはいても、「自分はどちらか?」という視点で考えると、現実的には前者であるという人も少なくないはず。しかし前者は、プレーヤーに求められることです。自分で自分をマネジメントし、仕事をコントロールすることによって、自身の成果を最大化するということ。いわば、課長になる以前に求められていたことです。

対する後者は、マネジメントを行うマネージャーに求められるもの。課長は組織のリーダーとしてチームメンバーを導き、まとめ、成果を最大化していくことが求められます。そのためにはマネジメントする時間をつくる必要があるため、仕事を部下に任せていかなければならないのです。

では、課長が部下に仕事を任せられず、プレーヤーになってしまった場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか?

1. プレーヤーとしての成果を出さなければならない

→時間に追われ、新しいことができない

→アウトプットはがんばってもせいぜい1.5人分

→自分自身も成長しない

2. 仕事が属人化してしまう

→部下が育たない

→自分が休めない

→自分になにかがあったときに業務がストップする

3. 長期的なマイナス

→技術やスキル・ノウハウが残らない

→後継者が育たない

→部下に主体性が生まれない

(以上27ページより)

現実的には、プレーヤーとしての職務も果たす「プレイングマネージャー」と呼ばれる人たちもいます。たしかに一時的にであれば、それもかまわないかもしれません。けれど「プレーヤーとマネージャー、どちらが会社のためになるか」と長い目で見た場合、問われるのはマネジメント能力だということです。(24ページより)

「メリット」と「デメリット」

課長である以上、マネージャーとして部下に仕事を任せることが重要だとわかりました。では具体的に、仕事を任せると職場はどう変わるのでしょうか?

1. 自分自身に時間ができる

→上からの仕事を任せられるようになる

→マネジメントに注力したり、部下のフォローができるようになる

→新しいことに取り組むことができる

2. 人材が育つ

→仕事の質が上がり、スピードも増す

→組織の成果が上がる

→後継者が育つ

3. マネジメントに注力することで、チームワークが育つ

→チームワークが増す

→チームとしての成果が最大化する

→部下がイキイキとやりがいを持って働く環境ができる

(以上31ページより)

このように任せることには多くのメリットがあるわけですが、もちろんデメリットも。たとえば仕事を任せる場合、「教えるための時間がかかる」「仕事の効率が落ちる」「任せることへの不安や失敗」「間に合わないなどのリスク」「部下がうまくできない場合や能力不足の場合に、モチベーションがダウンする」などが想定されます。しかしどれも一時的なもので、課長がフォローしてリスクを最小限にとどめることができれば、長期的にはメリットのほうが圧倒的に多いといいます。

「任せるのが苦手だ」という課長が多いことも理解したうえで著者は、「もしかしたらデメリットにばかりとらわれていて、視野が狭くなっていないでしょうか?」と問いかけています。もしもそうだとしたら、いつまでたってもプレーヤーのまま。マネージャーとして活躍するには、リスクをとって、それを最小限にする努力が必要。それも課長の責任のひとつだということ。(29ページより)

「問題」に対する視点

多くの課長を見てきたなかで、著者がわかったのは、「多くの方は任せるべきだと考えている。しかし任せられない現実がある、その理由は人それぞれにある」ということだったのだとか。でも、なぜ理由がわかっているのに対策を打てず、任せられないのでしょうか? それは、表面的な理由しか理解しておらず、対策を打ってもうまくいかなかった過去があったり、時間がないことを理由に放置したり、あるいは部下との人間関係による問題など、第二・第三の理由や、もっと深い理由があったから。

しかしマネージャーにとって大切なのは、次々と起こる問題を解決しながら、チームメンバーの成果を最大化していくこと。問題解決能力は、立場が上がれば上がるほど必要となる能力。課長がマネジメントを行ううえで必須の能力といえると著者は断言します。

そして問題解決においてまず重要なのは、原因を特定すること。先に触れたとおり、多くの課長は任せられない理由をなんとなく理解はしているもの。ただし、なんとなくでは対策が打てず、対策の方向性を間違ってしまう可能性もあり、効果が出てもまた次の問題が生まれる可能性も。いわば、次の弊害を呼んでしまうわけです。しかし根本的な理由さえわかっていれば、的確な対策を打つことができるはず。

1. 任せたいけれど任せられない(部下が引き受けてくれない)

2. 安心できない、不安である

3. 信じていない、信頼していない

4. 自分でやったほうが楽で早い

5. 任せ方がわからない

6. 失敗させたくない

7. メンタルダウン(うつ病や精神疾患)で部下を失いたくない

(38ページより)

任せられない理由は大きく分類するとこの7つになるといいますが、だからこそ「任せられない理由」を共有し、根本的な理由を見つけることが大切だという考え方です。(34ページより)


このようにマネージャーとプレーヤーの二択で解説されているため、両者を比較しやすいところが最大の特徴。つまり、「マネージャーとしてすべきこと」を無理なく身につけることができるわけです。

(印南敦史)

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