
敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回は、サイト「How-To Geek」を運営するロウェル・ヘディングス(Lowell Heddings)氏にインタビューしました。
ライフハッカー読者ならおなじみの「How-To Geek」。ぱっとしない情報が巷にあふれていることに業を煮やしたヘディングス氏が、独自のテクノロジーアドバイスやHowToガイドを共有し始めたのが数年前。それ以来、ライフハッカーでは彼の記事を何度となく引用してきました。
ヘディングス氏が率いる「How-To Geek」は、今や一大ビジネスに成長しました。そんな彼の仕事術には、学べるところがたくさんあるはずです。
氏名:ロウェル・ヘディングス(Lowell Heddings)
場所:バージニア州オークトン
現在の職業:「How-To Geek」創設者、編集長、プログラマー、システム管理者、兼CEO
現在のコンピューター:MacBook Pro (2015)、OS X Yosemite
現在のモバイル端末:iPhone 6
仕事スタイル:慎重に
── 最初に、「How-To Geek」について教えてください。
ライフハッカー読者の多くは、「How-To Geek」のことを知っているかもしれません。でも、私の仕事を理解してもらうには、もう少し情報が必要だと思います。
サイトを始めたのは、2006年のこと。マイクロソフトのウェブサイトで、ある記事を読んだのがきっかけでした。そこのヘルプ情報がとにかくひどくて。なぜ、いま目の当たりにしている状況を理解するための写真もないんだろうと憤った私は、自分でサイトを始めようと思い立ったのです。タイミングとしては最高でした。ちょうど、Windows Vistaがリリースされていたので、あの腹立たしさへの対処法について、どこよりもたくさんの記事を書いたのです。もちろん、理解しやすいように、写真を付けて。Vistaが本当にひどかったおかげで、私たちのトラフィックは一夜にして急上昇しました。つまり、マイクロソフトの失敗が、私を助けてくれたのです。
副業として何年か続けたあと、十分サイトが大きくなったので独立しようと決めたのが、今からおよそ5年前のことでした。
それから私たちは、1カ月のユニークユーザー数1400万人、メルマガ登録者10万人、従業員10人と、非ニュース系テクノロジーサイトとしては最大級に成長を遂げました。
私は編集長なので、公開する記事のトーンを決め、ライターが出してきたトピックを承認し、記事の公開前、いや執筆前に社内基準を満たしていることを確保する役割を担っています。
「How-To Geek」を始める前の10年間プログラマーをしていたので、たくさんのサーバーのシステム管理者も兼任しています。さらに、複雑なセットアップのためのコードを書くのも私です。そのほかにも、CEOとしてビジネスの契約やら戦略やらに対処しつつ、インターネット広告というひどい世界で倫理感を保ちながら、お金を稼ぐ算段もしています。
── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?
何よりも手放せないものは「Slack」です。どこにいるときでも、毎日それを使って、ライターやアシスタントのチームと連絡を取っています。チームとの連絡の半分以上は、Slack経由でiPhone上で行っています。
2番目に重要なのが「Trello」。アイデアの蓄積、ブレインストーミングのメモ、プロジェクトのトラッキングなどに使っています。「Trello」をToDoリストだと言う人もいますが、それはあまりにも単純化しすぎです。Evernoteも含めたほかのツールと比べても、アイデアの保存においてこれに勝るものはありません。なぜなら、ボード、リスト、カードを使って整理ができて、さらにチェックリストやコメントなどまで詳細に設定できるからです。
その他のツールは、ほかでも代替可能なものばかりです。「Chrome」と「Safari」は行ったり来たりですし、テキストエディターとメモツールもいろいろです。OSですら、そんなに気にしてません。それでも、「OS X」と「iOS」が好きなので、「Windows」や「Android」に戻ることはないでしょう。
── 仕事場はどんな感じですか?
Ikeaのデスク「Galant」と、どこかで買った快適なイス、そしてMacBookを使っています。でも、キッチンテーブルやカウチ、あるいはホテルの部屋で仕事をすることも多いです。
── お気に入りの時間節約術は何ですか?
経験から学んだ最高の時間節約術とは、信頼できる優秀な人材を雇うこと、彼らが好きな仕事をしてお金を稼げるようにすること、そして彼らが最高の仕事ができるような環境を整えることです。そうすることで、私の仕事はかなりシンプルになります。私がすべきは、彼らが方向性を間違わないようにハンドルを握ること、彼らの仕事を承認すること、必要に応じて建設的な批判をすることだけ。
個人レベルでは、朝起きたらやりたい仕事をやること。働きたくなければ働きません。でも、そんなことはあまりありません。なぜなら、好きなことを仕事にしているからです。ですから、毎朝仕事を始められることにワクワクして、モチベーションをもって物事に取り組むことができています。それこそがトリック。つまり、好きなことをして生きることこそ、究極のライフハックだと思います。
── 愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?
「Trello」です。あまりToDoリストとしては使ってませんが。どちらかというと、やりたくなったらやるアイデアリストという感じです。特定の日にしなければならないタスクがあるときは、だいたいiPhoneのリマインダーアプリを使っています。
── 携帯電話とPC以外で「これは必須」のガジェットはありますか?
夜にテレビを見ながら使ったり、旅先で使ったりするためのiPadを持っています。それが唯一のガジェットですね。でも、この記事が公開される前にApple Watchが届くはずなので、どう変わるかが楽しみです。
── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?
自分では答えにくかったので、妻に聞いてみました。妻によると、私の隠れた才能は、毎日妻や子供と過ごす時間を取りながらも、仕事をこなしていることだそうです。
私は毎日、午後1時には仕事を終えて、家族で残りの時間を過ごすことにしています。その間も、チームとは連絡が取れるように、iPhoneではSlackを使っています。誰かからダイレクトメッセージが来たら知らせてくれるので便利です。そして夜には、メールやその他のことに追いついてから寝ることにしています。
1日のベストな仕事時間をムダにするなんてと思うかもしれません。でも、発想を変えて、1日のベストな時間を家族と過ごすことに充ててもいいんじゃないでしょうか。
社会が工場のマインドセットから逃れられないという理由で、毎日決まった時間で働くのはナンセンスです。多くの人が仕事から帰るころには、家族と過ごせる時間はほんの数時間しかありません。しかも、みんな疲れている。幸いなことに私たちは「情報労働者」なので、仕事をするのに太陽が出ている必要はありません。
── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?
ほとんどの場合、仕事中は何も聞きません。なぜなら、音楽とつきあう時間もエネルギーもないからです。ホワイトノイズとして好きなのは、Netflixマラソンをテレビで見ながら仕事をすることです。ばかげていると思うかもしれませんが、私にはそれが効果的なんです。集中すると、何がかかっているかはまったく気になりません。
── 現在、何を読んでいますか?
「Ars Technica」と「Serious Eats」のFood Labコラムは毎日欠かさずチェックして読んでいます。現在、Guy Kawasaki著の素晴らしいビジネス書『The Art of the Start 2.0』を読んでいます。しかし、私が読むのはたいてい、Twitter経由で見つけた記事やPocketに保存した記事ですね。
── 読書といえば、紙の本と電子書籍、どっちが好きですか?
どちらも好きですが、旅先ではコンパクトな電子書籍のほうが好きですね。暗いところでも、妻を邪魔することなく読めますし。
── あなたは外向的ですか、内向的ですか?
どちらかというと内向的だと思います。相手のことを本当に理解しない限り、話す理由がなければしゃべりません。
子どものころ、自分の言おうとしていることが本当に正しいと確信できるまで口を開くなと言われていました。なぜなら、賢い人でも間違ったことを言うとバカに見られる。逆に、バカでも口を閉ざしていれば賢く見えるから。
── 睡眠習慣はどのような感じですか?
私の睡眠コーディネータに聞いてみないと。言葉を覚えてからですが。彼は「だー、だー」としか言えませんが、1歳児は驚くほど注文の多いタスクマスターです。朝は彼と一緒に6時30分に起きます。信じられないかもしれませんが、彼は朝に私を見るといつも笑ってくれるので、それが1日で最高の時間帯です。
── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?
同じ質問をしてみたい人はほとんど故人です。
── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください
何年も前に、Matt Tabriziという名の賢い男性がこう言いました。
とにかくスタートすることだ。動いているほうが、向きを変えやすいから。
「StackExchange」の共同創設者であるJeff Atwoodも、同じようなアドバイスをしています。
とにかく速く進め。何かに道を妨げられたら、向きを変えるんだ。
何年もかけて、このアドバイスは正確で、無視できないことを学びました。
話すのをやめ、あれこれと詳細まで計画するのをやめ、ToDoリストの整理や自己啓発本を読んで生産的なふりをするのをやめましょう。何も言わずに、ただ仕事を終わらせることが大事なのです。
── ほかに読者に伝えたいことがあればどうぞ。
公の場で感謝をしたい人を1人あげるとすれば、米Lifehackerの初代編集長ジーナ・トラパーニさんです。立ち上げたばかりのころ、彼女に「How-To Geek」を頻繁に取り上げてもらわなければ、ここまで成長することはできなかったでしょう。
Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)
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