被害者意識から抜け出すには障壁に立ち向かわなければならない
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Crew Blog:被害者の国へようこそ! ここは、誰もが長居してしまう、陰鬱なテーマパーク。
この国では、不満、批判、非難、噂話、他者との比較などが存在しない日はほぼありません。
筆者も、その世界でもがいています。
私は、娘を幼稚園に迎えに行く前の30分間を、ジャーナルまたは瞑想の時間に充てています。その後、車に乗り込むと、お迎えに向かう車の列で、運転の基礎も知らない人たちに、ひそかに悪態をつくのが日課になっています(いや、ひそかにではないかも)。
急にピリピリしたりイライラしたり、ときにはあからさまに激怒することも。せっかく出発前に30分かけてやってきたマインドフルネスの効果はどこへやら。瞑想で、1日を穏やかに過ごすことができたはずなのに。
これは些細な例ですが、私たちは自分の反応を正当化するために、つい「私はこう感じる。だから真実に違いない」という感情的な根拠づけをしてしまいます。しかし、いくら努力をしても、感情のコントロールには困難が伴うのです。
でも、やってやれないことはありません。
他人や出来事に対する反応は、それが習慣から来るものであれ、意識的に考えたものであれ、自分で選ぶことができます。「自分の行動に責任を持つ」か「他人のせいにする」かの2択です。
つまり、人生を自分でコントロールしているのか、他人にコントロールされているのかを決めるのは、自分自身なのです。
果たしてあなたは、自ら1日を動かしているのでしょうか、それとも、1日に動かされているのでしょうか?
被害者意識の存在
被害者意識(自分の行動や境遇は自分のせいではないという考え)の存在は、文字通り天地創造にさかのぼります。アダムは、禁断の果実を食べたイブを責めました。そしてイブは、自分をそそのかしたアダムを責めました。
現代では、インターネットやSNSのおかげで、非難や批判などの他人を受け入れない行為が日常化しています。
学校や職場は、さまざまなことに過敏になっています。コメディアンは大学のキャンパスでは演じなくなっています。なぜなら、学生が「ジョークを理解できない」から。宿題で読書が出されることはありません。なぜなら、苦痛を与えるかもしれないから。
社会学者で、「小さな差別発言」と被害者意識の文化を研究しているBradley Campbell氏とJason Manning氏によると、現代人は些細な攻撃にも反応するように教育されていると言います。問題を自力で解決するのではなく、自らを被害者のように見せることで、他人に被害者として認めてもらおうとしているのです。
しかし、それでは無力感しか生まれません。
他人を責めたり状況を嘆いたり自分を憐れんだりしても、誰のためにもなりません。
Xだったらよかったのに。
どうして私じゃなくて彼女なの?
私が担当者だったら...。
David Emerald氏は、著書『Power of TED』において、被害者意識を「恐怖のドラマ三角形」と呼びました。これは、Steven Karpman博士が1960年代に打ち立てた、誰しも以下の3つの役割のどれか(あるいはすべて)を演じているというコンセプトにちなむものです。
やがて、私たちは救助者(rescuer)に救いを求めます。それは、他人や悪習慣など、自分をまひさせる、あるいは気を紛らわせる何かという形で訪れます。
文句を言うことが強力な自己防衛メカニズムになるのはそのためです。
文句は、何かがうまく行かないとき、「こんなはずじゃなかった」と自分に言い聞かせるのに最適な方法なのです。創造や指導や行動よりも、文句や批判を言っているほうがずっと楽だから。自分の状況を外的な要因のせいにすることは、自分を奮い立たせて前に進む必要がないと自分に言い聞かせているようなもの。
それでは失敗から学び、成長し、成熟することができません。優れたリーダー、起業家、クリエイターになるには、その逆をしなければならないのです。
私たちは、継続的な成長のために投資をしなければなりません。自分の弱みや過ちを認識し、自分の運命は自分の責任であることを受け入れる必要があります。
被害者意識を避けるには
ドラマ三角形への対抗措置が、エンパワーメントダイナミックと呼ばれるものです。
犠牲者が問題に執着するのに対し、創造者(creator)は自分のやりたいことを明確に理解し、自分のためになる成果を生み出す力を得ることができます。
迫害者は挑戦者(challenger)になり、自己分析の過程で学び成長していくお手伝いをします。
そして、救助者は指導者(coach)になり、目指す成果に向けて突き進むクリエイターを支援します。
このように考えることで、問題、課題、出来事は同じでも、それを見るレンズが変わります。
犠牲者モードから抜け出すには、内省の時間を取る必要があります。
理想的な成果とは何か。
自分の反応の背後にある意図は何か。
自分に起こったことの責任を誰に追及しているのか。
「救い」を求めて誰に頼ろうとしているのか。
人生の障壁をこのように力強くとらえ続けるための哲学は、マルクス・アウレリウス、セネカ、エピクテトスなどのストア派に見ることができます。
ストア哲学は、「自分に起こることはコントロールできないが、それに対する反応はコントロールできる」という考えに基づいています。
自分の考えや行動を、論理的かつ合理的な考えとは対極にある感情に任せていると、私たちは人生に不満を抱くようになります。
障壁や不運が学びと成長のチャンスであることを、いつの間にか忘れてしまうのです。
ライターでありマーケターでもあるRyan Holiday氏の著書『The Obstacle is the Way: The Timeless Art of Turning Trials into Triumph』は、このストア哲学の原理を用いて、セオドア・ルーズベルト、ローラ・インガルス・ワイルダー、ユリシーズ・S・グラント、トーマス・エジソンなどの歴史上の偉人のストーリーを解説しています。彼らはみな、失敗や課題を、成長の糧とした人たちです。
Holiday氏は、こう記しています。
障壁に圧倒されないこと、くじけないこと、動揺しないこと。これができる人はあまり多くありません。でも、ひとたび自分の感情をコントロールできるようになり、ぶれずに客観的な視点を持つことができれば、次なる一歩を踏み出すことができるでしょう。それは、気持ちの切り替えです。つまり、障壁を見るのでななく、その中にあるチャンスに目を向けられるようになります。ローラ・インガルス・ワイルダーはこう言いました。「うまく探せば、何ごとにも必ずいい面があります。ただ、私たちは見るのが苦手。せっかくのいい面に、目を閉じてしまっているのです」
私たちは性質上、物ごとの「あるべき姿」を信じていて、そうでないものを受け入れることができません。
迷惑な同僚がいても、愚痴を言うだけ。そこから学び、我がふりを直すことだってできるはずなのに。
被害者意識から抜け出すためのシンプルなエクササイズは、「文句を言わない」期間を作ること。ここで言う文句とは、噂話、批判、悪態などを含みます。私自身、文句を言うという悪習慣を断つことで、言葉が自分の思考に与える影響力を実感しています。
私たちは、言葉で考えます。ですから、口にする言葉は、考える言葉に影響を及ぼします。それと同じで、肯定やポジティブな合言葉は、脳による情報の選別や解釈に影響を与えます(2012年に行なわれた研究では、ストレス軽減、意思決定の改善、難しいタスクでの成績向上が見られました)。他人について話すときの話し方を意識することで言葉を注意深く選べるようになり、自分がネガティブにとらえがちなことを認識し、解決策やポジティブな反応に集中できるようになります。
ですから今では、「こいつらみんな運転の仕方を学ぶ必要があるな」ではなく「お迎えってこんなもの。だから、待っている間のお供として、オーディオブックを2つダウンロードしておかなくちゃ」と思うようにしています。
正直な話、自分の不健全な反応に気がつくまでの私は、前者のような考え方をしていました。でも、後者のように考えることで、自分の言葉と思考に、より意識を向けられるようになりました。
毎日のイライラや困難などに直面するたびにこれを実践することで、ストレスフルな状況でも気持ちを静めてポジティブでいるための能力を高めることができます。
ブッダは言いました。
私たちの人生は、私たちの心によって創造されます。
アリストテレスは言いました。
受け入れずして思想をたしなむことができれば、それが教育された精神の証である。
苦難や不安を避けることはできません。そして、それらから身を隠しても、自分(および次世代)のためになりません。そう、障壁には立ち向かわなければならないのです。ソクラテスが2500年前に教えてくれたように、私たちが成長し成功を収めるには、経験と継続的な探求、そして内省が必要なのだから。
どんな状況にも、反応を選ぶのはあなたです。怒りと成長、あなたならどちらを選びますか?
The obstacle is the answer: How to take control of every situation | Crew blog
Rosanna Casper(訳:堀込泰三)
Photo by Shutterstock.ランキング
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