大切なことは刑務所で学んだ。どん底から復活した女流作家
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cafeglobeより転載:婚約者と幸福に暮らしていた女性がある日突然、警察に逮捕され、刑務所に入れられたらーー。
これは、実際にあるアメリカ人女性に起きた話。悪夢のような状況ですが、賢い彼女は、転んでもただでは起きませんでした。出所後、女性刑務所での暮らしを本にして出版したところ、テレビドラマ化されて大ヒット。そんな彼女のたぐいまれな逆転人生を紹介します。
彼女が犯した「過ち」
アメリカで大人気となったこのドラマが『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 塀の中の彼女たち』です。日本でも「amazonビデオ」や「ネットフリックス」で視聴できます。
女性受刑者間の人間ドラマやジョークを赤裸々に描いていて、海外ドラマ好きにおすすめです。
原作者は、ブロンド美人で知的なパイパー・カーマン。1970年にボストンの良家の娘として生まれ、名門女子大を卒業後、キャリアを築いていました。
20代の頃、年上の女性とつきあっていた彼女。恋人から頼まれ、ベルギーまでバッグを運ぶことになりますが、その中身がじつは麻薬取引のための大金だったのです。5年後、女性の恋人とは別れて男性と婚約していた彼女のもとに、突然警察が現れます。
先に捕まっていた元恋人が「運び屋は彼女」と供述したため、パイパーは逮捕されることになってしまいます。若い頃には、誰もが間違いを犯しがちとはいえ、彼女が払った代償は刑務所暮らしという大きなものでした。
刑務所で学んだサバイバルスキル
白人でミドルクラス出身の彼女は、刑務所では例外的な存在でした。麻薬や詐欺などで捕まった女性たちが大勢いる異次元の世界に放り込まれ、パイパーは恐れ、戸惑います。ところが、ここから彼女は持ち前の聡明さを発揮していくのです。
刑務所で学びました。現実を正しく捉え、状況から距離を置いたスタンスを取らなければ、失うものは大きいと。(中略)刑務所では、状況を分析し、システム内の力関係の差や、ここで自分が他の人にはできない何を提供できるのかを考えることが重要なのです。
「FAST COMPANY」より翻訳引用
刑務所という特殊な環境にありながら、彼女が身を持って学んだのは、ビジネススキルともいうべき社会でのサバイバル術。人が集まる場所では、利害関係の衝突は避けられません。
状況を冷静に把握し、人間関係に深入りしすぎないようにすること。そして、自分の立ち位置を知り、他者とは違う存在感を示すこと。キャリア形成に必要なスキルをフルに使って、人生のピンチを彼女は生き延びたのでした。
女性受刑者たちのたくましさ
刑務所内での希望は何だったかという問いに対し彼女は、
女性たちが独特のずる賢いやり方で、いかに挑戦的になるかを知れたことです。そして、彼女たちがありとあらゆることをして、人間性を維持しようとしていたことが希望でした。
「Mother Jones」より翻訳引用
きわどいジョークを飛ばし、たくましく生き抜く女性たちの姿は、ドラマの中でも描かれています。
現在でも、同じ刑務所にいた女性たちと連絡を取っているというパイパー。彼女に「出所したら刑務所生活についての本を書くように」と勧めたのも、同じ棟にいた女性受刑者なのだそうです。
最悪の出来事から人生を逆転する
出所後は、辛抱強く待っていてくれた婚約者と結婚し、出産。彼女は現在、コミュニケーション・コンサルタントとして活躍するほか、本の売上を使って刑法制度の改革のためのアクティビストとしても活動しています。
今でも新しいことに挑戦するとき、彼女は刑務所での体験を思い出し、こう考えるようにしているそうです。
私が以前に犯した過ちよりは、ましなはず。私はあれをくぐり抜けたのだから、こんなのできるはずよ。
「FAST COMPANY」より翻訳引用
人生の中で、取り返しのつかない失敗をしたり、不本意な状況に陥ることは誰にでもあります。そこで命運を分けるのは、状況から何を学び、どう盛り返すか。
目の前が真っ暗になるような最悪な出来事に遭遇したときに、ただ不運や自分の愚かさを嘆くのではなく、周囲の状況を冷静に分析する。学んだことを生かして生き抜くパイパーのたくましさは、あっぱれとしか言いようがありません。
私も大いに学び、お手本にしたいと思います。
[Piper Kerman, FAST COMPANY, Mother Jones]
(田上晶子)
Photo by shutterstock.ランキング
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