
スマホやノートPCがあれば、どこでもネットワーク上にアクセスできる便利な時代。しかし一方で、常にオンラインでいなければならないという強迫観念から、「デジタル疲れ」「つながり疲れ」のようなものを感じることもあるのではないでしょうか。
そこでライフハッカー[日本版]編集部では、『デジタルデトックスのすすめ「つながり疲れ」を感じたら読む本』の著者でもある米田編集長とともに、一泊二日の"デジタルデトックス・キャンプ"を企画。筆者もライターとして参加しました。
今回、デジタルデトックスの舞台にキャンプを選んだ理由は2つ。第一に、スマホの電源を切ってしまったまま長時間を過ごすということに一抹の抵抗感を感じる"デジタル人間"の僕たちでも、アウトドアという非日常空間であればそんな精神的なハードルも下がるのではないかということ。第二に、キャンプにはデジタル生活で失いがちな五感や身体感覚を蘇らせてくれる刺激がたくさんあるからです。
デジタルデトックス前に、周囲にアナウンスを。

とはいえ、自らを「オフライン」にするという非日常に飛び込むには、やっぱりちょっとだけ勇気が必要ですよね。そこで、きちんと事前準備をすることで周囲の理解を得ておきましょう。
例えば、FacebookやTwitterの背景画像を「ただいまデジタルデトックス中です」というメッセージ入りのものにしたり、仕事メールでは、海外出張をするときのように「○月○日にお返事します」と、自動返信の設定をしたりしておくのはいかがでしょうか。デジタルデトックス中であることを伝えることは、仕事相手への気遣いであり、自分の気持ちを整理するためにも大切なマナーです。
キャンプ開始は、スマホの電源を切ることから。

今回、デジタルデトックスの舞台に選んだのは、静岡県富士宮市にある田貫湖キャンプ場。東京から車で約2時間半、湖のほとりにある芝生のキャンプサイトは、富士山を臨む素晴らしいロケーションです。テントや寝袋、調理器具などのキャンプ道具に、ハンモックやくつろぎチェアなどを用意して、いざ、デジタル断食の旅へ。
早朝5時に都内を出発して、朝8時頃にキャンプ場に到着しました。デジタルデトックスキャンプの開始合図は皆でスマホの電源を切ること! スマホはもちろん、ノートPC、スマートウォッチなど、デジタルデバイスはまとめて回収し、触れないように保管しておきましょう。僕たちは、タープの支柱に下げた網の中にスマホやスマートウォッチをまとめ、高々とかざしておくことにしました。ここから翌日のキャンプ終了まで「オフライン生活」のはじまりです。

まずはキャンプのベース場所を決めて、テント、タープ、クッキングスペースなどのセッティングから。編集部員一同、インドア派ばかりなので、「スマホで調べずに、はたしてセッティングできるのか...」という不安がありましたが、キャンプ道具はどれも、割と直感的に組み立てられるのだなと感じました。説明書のサポートも受けながら、1時間弱で完璧なベースが完成。

「森林ウォーク」で、心のスイッチをオン。

キャンプベースを組み立てた後は、湖畔の近くへ森林ウォークに出かけました。普段のアスファルトとは違う、土の柔らかい感触。草木の匂いや、野鳥の声...。スマホの通知にたえず急かされ、これから送るメールのことで頭がいっぱいの都会生活では見過ごしがちな、「今目の前で起こっているささやかなものごと」に対して、心のスイッチが入ったかのように五感が研ぎ澄まされます。そこにあることにきちんと気付く、ということも、デジタルデトックスの醍醐味なのかもしれません。
ウォーキングを終えた後は、夕食まで、それぞれの自由時間を満喫しました。ハンモックに寝転んで、心地よい風を感じながら昼寝をしたり、近くの渓流まで釣りに出かけたり、太陽の光を浴びながら瞑想したり。ひとりの時間と向き合えることもデジタルデトックスの魅力です。



「サイレントごはん」で五感をより刺激する

今回のキャンプでは、ライフハッカー[日本版]でもたびたび取り上げている"マインドフルネス"の要素も取り入れてみました。「今この瞬間」に意識を集中する瞑想メソッドで、インテル社やGoogle社も公式に取り入れているストレス・マネジメント術です。僕たちは、あえて一言も言葉を交わさずに、「今食べているもの」に意識を集中する"マインドフル"(意識的)な「サイレントごはん」にチャレンジしてみました。

この日のメニューは、みんなで作ったカレーと、昼間に近くの渓流で釣った魚。テレビもスマホも見ずに黙って食事に集中することが普段はあまりないので、澄み渡る静寂が新鮮でした。自分で釣った魚を口にすると、頭の中を巡るのは、命や食物の連鎖についてのこと。「食べる」という行為に意識を集中すると、食べ物=命としっかり向き合えるようになります。
この「サイレントごはん」のように、あえて制限を加えることで目の前のことに集中し、それによって、新たな発見を見いだすことが、"マインドフルネス"の魅力のひとつなのかもしれません。心がまわりの静寂と同調していく"サイレント"な感覚もひとつのスパイスになって、いつもよりカレーがおいしく感じられました。
「焚き火アイデアソン」で編集会議

日没間際のマジックアワーが始まる頃には、編集部メンバーで焚き火を囲んで即興のアイデアソンを行いました。普段はオフィスでPCやタブレットを見ながら企画会議をすることが多いのですが、目の前にあるのは自然と焚き火のみ。リラックスした雰囲気の中での会議は、いつも以上にみんなが自由に意見を交わせて、若手のメンバーも積極的に話していたのが印象的でした。また、お酒を飲みながら焚火を囲んでいると、プライベートの話などもしやすいので、より深いコミュニケーションが実現できるのではないでしょうか。帰ってからの仕事に活かせそうな新しいアイデアの種を見つけた後、この日はテントに戻ってそれぞれ就寝。
「朝ヨガ」で心を整える。
翌朝6時。普段の生活では、スマホを眺めながら寝てしまい、スマホのアラームで起きることもしばしばですが、この日は、アラームなしで目が覚めました。そしてテントから一歩外に出れば、澄んだ空気と朝の光が迎えてくれます。

編集部一同は朝食前に、米田編集長の指導のもと、「朝ヨガ」を体験しました。湖畔にあるウッドデッキにマットを敷いて、身体を伸ばしながら、朝の光を吸収。普段使い慣れていない筋肉が悲鳴をあげるのを実感しつつも、新鮮な空気が体内に充満して、脳が目覚めていくのがわかります。大自然に囲まれた中で、朝日とともに行うヨガはとても贅沢な時間でした。芝生についた朝露のきらめきや、葉の1枚1枚の瑞々しさに目が奪われ、たった1日過ごしただけなのに、五感が鋭敏になっていることを実感しました。

ヨガの後は、ホットサンドを食べながら読書をしたり、コーヒーを飲みながら湖を眺めたり、出発までの時間を存分に堪能しました。仕事中であればあっという間に過ぎる時間も、キャンプ場では少しだけゆっくり流れてくれるのかもしれません。

一泊二日のデジタルデトックス・キャンプを終えて。

一泊二日、正味30時間ほどのオフラインの時間。まず感じたのが、一泊二日であれば、スマホやPCがなくても、そこまで仕事に支障をきたすことはないのではないか、ということです。決して長い時間ではないのですが、オンライン上の「つながり」からちょっとのあいだ距離を置けたことで、「オフラインでもありのままの自分でいられる」という自信を得られました。

そして何より、自然の中に身を置くキャンプは、身体感覚を取り戻し、日々のストレスを和らげる最高の自己管理術だと思います。リラックスできる最高の環境でデジタルデトックスを実践すると、また新たな気持ちで日常を迎えることができます。
「デジタル疲れ」しているかもしれないと感じる方は、この夏にトライしてみてはいかがでしょうか?
(編集/松尾仁、文/大島佑介、写真/木原基行)
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