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最悪でなければ、それで幸せ。逆転の発想から生まれた「ネガポジ・メソッド」とは?

最悪でなければ、それで幸せ。逆転の発想から生まれた「ネガポジ・メソッド」とは?

この本でお伝えする「ネガポジ・メソッド」とは、僕が自分自身の最悪・どん底の状況=超ネガティブな半生から得た学びをまとめ上げた、「もっと楽に生きる方法」「悲惨な状況をサバイブする思考術」です。(「はじめに」より)

最悪から学ぶ 世渡りの強化書──ネガポジ先生 仕事と人間関係が楽になる授業』(黒沢一樹著、日本経済新聞出版社)の冒頭には、こう書かれています。もしかしたら「大げさだな」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、読み進めていけば間違いなく、大げさでもなんでもないことがわかるはずです。

母親が17歳の高校生だったとき、逆子で早産というギリギリの状態で生まれる

父親が4人

3人目の父親から虐待される

極貧状況のなか、万引きで食料を調達

働いてお金を得たかったから、高校は入学式にも出席せず退学

板前を目指すものの、原因不明の病のため断念

知人に誘われインドネシアで仕事を始めるも、こっそり1000万円の保険をかけられていたことが判明

飛び降り自殺をするが、奇跡的に打撲ですむ

19歳のときには腎臓がウィルスに感染し、生死の境をさまようことに

バーの経営を任させるが、ボヤ騒ぎを起こして焼死しかける

トラブルで閉店に追い込まれ、借金生活スタート

ホストの世界で修羅場を体験

飲食店専門のコンサルティング会社でスーパーバイザーとして働くが倒産

結果的には、転職を50回も繰り返したというのですから驚きです。しかし注目すべきは、これだけの体験をしていながらも、ありがちな「不幸自慢」で終わっていないこと。語弊はあるかもしれませんが、「ポジティブな不幸」。その証拠に、この体験のあとは、ある思いを軸として巻き返しを図ります。

知らないことは、教えたい

これらの体験から著者が行き着いたのは、「なにかに依存していても誰も助けてはくれない」という思い。そして、「じゃあ、自分で会社をやってやろう」と考えるようになり、簿記の資格を取得し、税理士事務所に勤務することに。ちなみにここで税理士事務所を選んだのは、「かつてバーの経営がうまくいかなかったのはなぜだろう?」と考えた結果、「『数字』の意識が弱かったからだ」と思ったからだといいます。

そしてそんなある日、税理士事務所で掃除をしながらテレビを見ていると、大学生たちがインタビューに答えている映像が流れたのだそうです。

「仕事がないんですよ」

「やりたいことが見つからないんですよ」

そのときは「こいつら甘いな~。世のなかナメてるよね」と感じたそうですが、それが「仕事のない若者たちと、人材がほしい企業をつなげられないか」という思いにつながり、NPO法人「若者就職支援協会」の主宰につながっていったのだといいます。かくして現在は、キャリアコンサルタントとして多くの若者と対話しているのだそうです。(32ページより)

最悪でなければ、それで幸せ

不幸体験を経て現在の仕事に就き、仲間に囲まれ、若い人たちと前向きに会話し、家庭を築いて幸せに暮らしている。そんな著者の反省はまるで映画かドラマのようです。では、なぜ「不幸な人生」から脱却できたのでしょうか? そのことについて著者は、強靭な精神力があったからでもなく、世間への復讐心があったからでもなく、メンターとの出会いがあったからでもなく、ポジティブシンキングのせいでもないと断言しています。

...そうではありません。

いくつもの不幸経験を経た結果、「幸せを追求しよう」と考えるのを、やめただけです。

「やりたいこと」は、できない。

「夢」や「希望」も、持てない。

ならば、「絶対にこれだけは嫌だ!」というものだけを設定して、そこから逆説的に考えれば、幸せだと思えることの選択肢が広がる...と考えたんです。(35ページより)

つまりそれが本書のコンセプトであり、就職支援の基本概念でもある独自の幸福論「ネガポジ・メソッド」だというわけです。(34ページより)

「最悪のモデルケース」を想定する

著者はこの項で、「ネガティブ→ポジティブ反転の仕組み」という考え方を紹介しています。まずはネガティブ(最悪)なことにフォーカスすれば、それ以外のすべてを「ポジティブなもの」ととらえられるようになるということ。そして、それは対人関係にもいえるといいます。

誰しも、「こんな嫌なヤツにはなりたくない」と思える存在を必ず持っているもの。だとすれば、「その人のようになることだけは嫌だ!」と願うことが、「ネガティブ以外=ポジティブな選択肢」となる。「最悪な人間ではない自分」だから、自分はOKだということ。

だからこそ、もしも「幸せじゃない」「思いどおりにいかない」と考え、心が折れそうになっているなら、無理やりにでも「最悪のモデルケース」を想定する。そして、「そうじゃない自分」を自覚する。それこそが大切だと著者は記しています。

「あの先輩みたいには絶対なりたくない」

「この上司みたいには絶対なりたくない」

そう考えると、「あの先輩」「この上司」以外の生き方は、すべてが選択肢になるということです。(49ページより)

「やりたいこと」はいちばん後回し

1.できないこと

2.やりたくないこと

3.できること

4.やりたいこと

(67ページより)

就職支援を行っている著者は、自分の就くべき仕事を考える際には、この順序で考えてみるべきだと主張しています。1の「できないこと」については、そもそも仕事選びの選択肢には挙がらないもの。逆に4の「やりたいこと」は、そうそう多くは思いつかないものなので、考える優先順位は最後だということ。

そして、探すべきは2の「やりたくないこと」だといいます。具体的な職種でなくても、

「毎日知らない人を相手にすること(は、やりたくない)」

「一日中デスクに向かってパソコンをいじっていなければならないこと(は、やりたくない)」

「人前で大きな声を出さなければならないこと(は、やりたくない)」

などと、「作業」や「行動」にフォーカスして考えればいいということです。さらに、その「やりたくないこと」以外のもののなかで、3の「できること」を探せばいいと。これが、自分が就く仕事の選択肢を増やす最良のやり方だと著者はいいます。別な角度から見てみると、「やりたいことが、ない」「できることが、ない」というのは、考える順序が逆だということです。(67ページより)

ここで著者が強調しているのは、「選択肢はいっぱいある」ということ。それを実感するために、「やりたくないこと」を挙げる。やりたくないこと以外で「できること」、それが仕事選びの選択肢だといいます。

もちろん、生きていくうえで「やりたいことをやる」という希望は持つべきもの。でも、それをメインに考えて「そうでない(やりたいことをやっていない)自分なんてダメだ」と絶望する必要はなし。なぜなら、できることを積み重ねていくなかで、やりたいことが見つかるというのも、よくある話だから。

本書が教えてくれるのは、どれだけ最悪な状況に陥ったとしても「人生はなんとかなる」ということ。これだけハードな半生を送ってきたにもかかわらず、現時点での著者が笑ってそれを語れること、その事実がすべてを代弁しています。

読んでみればきっと、心がスッキリするはず。ぜひ、手にとっていただきたいと思います。

(印南敦史)

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