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「やらない姿勢」と「抜き取る力」が、ビジネスを成功に導くブランドをつくる

「やらない姿勢」と「抜き取る力」が、ビジネスを成功に導くブランドをつくる

みんなまじめだから、「あれもやろう、これもやろう」とする。

また、大企業のベストプラクティスを真似しようとする。

いずれも、経営リソースが限られている中小企業や小さなお店にとっては、やってはいけないこと。(「プロローグ」より)

繁盛したければ、「やらないこと」を決めなさい』(阪本啓一著、日本実業出版社)の著者は、冒頭でそう断言しています。つまり、なんでもかんでも取り入れようとするのではなく、「自社の強みはなにか?」と考えた上で、「やらないこと」をまず決める。そうすれば、おのずと「強み」が見えてくるというわけです。

では、なにを「やらなければ」いいのでしょうか? CHAPTER 4「旗を立てよう(顧客の頭の中にある椅子取りゲーム)」から、ヒントを探してみたいと思います。

ほかと同じことを「やらない」

人の頭のなかに椅子が一脚だけある状態、それが「ブランド」だと著者は説明しています。「ピザを食べるなら◯◯だね」「中華なら◯◯でしょう」など、みんなそれぞれ、「好み」や「ひいき」を持っている。1脚しかない椅子に、それぞれの店名が座っている状態です。

そして「ブランドの旗を立てる」「ブランドをつくる」とは、顧客または潜在顧客の頭のなかに、椅子を1脚用意すること。その場合、同じカテゴリーのなかに似たようなブランドがあったとしたら、「1脚」というわけにはならなくなります。

また、ブランドは「旗を立てる」ことでもあるとか。何色の旗なのか、赤か緑か、くっきりしていればそれだけ遠くからも見え、そのブランドは強いことになるというわけです。そして「1脚だけの椅子」「くっきりした色の旗」を言い換えれば、「違い」ということに。「違っている」ことが大切で、逆にいえば、ほかと同じことを「やらない」姿勢が大切だという考え方です。(84ページより)

記憶に残らないパッケージは「やらない」

目に見える製品の場合は、製品自体のデザインももちろん重要ですが、包装というパッケージで顧客の記憶にアピールすることが重要。たとえばいい例として、ここでは赤い縞模様が透明パッケージに印刷された「キューピーマヨネーズ」を例に挙げています。あの赤い縞模様があるからこそ、マヨネーズの棚が他のブランドで混み合っていても、キューピーマヨネーズを瞬時に見分けられるというわけ。包装を無味乾燥な「包むもの」として位置づけるのではなく、ブランドを印象付けるためのフックとして利用するということです。

同じように、レストランなどの店舗であれば、建物や入居しているビル、エリアの空気感がパッケージになることに。それは、オフィスでも同様だそうです。たとえば著者は、経営コンサルタントとして独立してニューヨークにオフィスを構えるとき、なにがなんでも一等地のマンハッタンにこだわったのだそうです。他のエリアに比べると家賃や物価は高かったものの、「ブランド」のためには必要経費と考えたということ。

立ち上げたばかりの会社で、扱う商品は目に見えないコンサルティング・サービスだから、目に見える「本社の立地エリア」は顧客や潜在顧客に与える印象として重要だと、少ない手元資金で歯を食いしばった。(90ページより)

日本に星の数ほどいる「ブランド&マーケティング・コンサルタント」のなかで「選ばれる」ためには、人との違いを打ち出すしかないという考え方。そこで著者の場合は、「ニューヨークからの逆輸入」というパッケージをチョイスしたということです。

そして、9.11テロの影響で帰国してからもこだわりを持続させ、「神奈川県の葉山に住んで、代官山のオフィスに通う」という「ちょっとほかにはないワークスタイル」を「違い」として出したのだといいます。その後、オフィスを都内から横浜へ移転したのも、「みなとの見える丘公園へ向かう坂の途中にオフィスを構えるコンサルティング会社は珍しいだろう」という意図によるものだったとか。さらには独立したばかりのころ、セミナー会場にTシャツとデニムパンツで登壇したのも、「コンサルティング&講演者=スーツにネクタイ」という常識を破って目立つための「やらないこと」だったのだそうです。(89ページより)

ベストプラクティスの真似ごとは「やらない」

ブランドをつくろうというときには、他のブランドの成功事例やベストプラクティスを参考にしたくなるもの。しかし著者は、「その気持ちはわかる」と認めながら、「しかし、それでは意味がない」と切り捨ててもいます。なぜなら、現在のビジネスは「サーフィン」であり、前提がころころ変わってしまうから。経営は生き物であり、環境も、条件も、すべて違うものだからです。

成功のエピソードを聞くとテンションが上がるものですが、それは「1回きり」の話として割り切った方がいいと著者。なぜなら、「天地人」すべて条件が違うからです。

同じように、成功した経営者の話も、そのままでは使えない。私たちは松下幸之助やスティーブ・ジョブズではないし、今からGoogleを創業するわけではないからだ。こう書くとミもフタもなくなるけれど。(110ページより)

では、どうしたらいいのでしょうか?(109ページより)

「抜き取る力」をつけろ

神戸のイタリアンレストラン「ピノッキオ」でピザを注文すると、1962年の創業以来の累計枚数をナンバリングした小さな三角形の紙が添えられてくるそうです。つまり、ピノッキオのピザは顧客の人生の思い出と共にあるわけで、著者はこれを「時間資産」と定義づけています。

しかし、お店を経営している人が、「おもしろいから」といってこれを真似たとしても無意味。大切なのは、ピノッキオの事例の本質である「時間資産」を、自らはどう演出するかについて考えることだからです。そして、このことについてみんなで考えれば、それは「リピート客を増やすにはどうすればいいか」について会議しているのと同じことになる。これが自分たちの方法を探るための「抜き取る力」だと著者は説明しています。そして、「抜き取る力」を整理すると、次の2つになるといいます。

1. 4つの視点で見る:顧客の目線、店の目線、競合店の目線、仕入れ先の目線

2. ブランドの視点から見る

(113ページより)

ものごとをさまざまな角度から見て客観的に判断し、「やるべきこと」と「やらないこと」を整理するのが大切なのでしょう。(111ページより)

これらの内容からも推測できるように、本書は中小企業や小さなお店の経営者をターゲットにして書かれたものです。そのぶんニッチではありますが、それ以外の組織に属する人にとっても意外なヒントが見つけられそうだとも感じました。

(印南敦史)

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