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オイシックス流のリーダー論は、メンバーの「強み」を観察することから始まる

オイシックス流のリーダー論は、メンバーの「強み」を観察することから始まる

オイシックスは、文字通りバラバラのチームで始まりました。

「こんなチームで勝てるわけない」

今だから言えますが、そう思ったことも、一度や二度ではありません。

創業してすぐに壁にぶち当たり、やることなすことすべてがうまくいかず、当然ながらオイシックスも、「チーム」としては、まったく機能していませんでした。

(「はじめに」より)

生鮮食品のネットビジネスを手がけるオイシックスの代表である著者は、『ぼくは「技術」で人を動かす――今いるメンバーで結果を出す{チームリーダー}のレシピ』(高島宏平著、ダイヤモンド社)の冒頭で意外なエピソードを明かしています。

そこで「早くいいリーダーにならなければ」と、さまざまなリーダー本を読み、リーダーの方に話を聞き、自分の性格的な欠点をなおし、正しく振る舞おうと努力したのだとか。なかなかうまくいかなかったものの、そんな中、あることに気づいたのだそうです。

リーダーシップを人間性の問題として捉えるのではなく、リーダーシップのスキル的な側面と人間性を切り離して考えればいいということ。その結果、スキルであれば後天的に身につけることができるという思いに至り、そこから歯車がまわりはじめたといいます。

つまり本書では、そのような経験から著者が学んだ「チームで勝つためのスキル」が紹介されているわけです。PART.1{観察のレシピ}「今いるメンバーの本当の「強み」を知る」から、いくつかを引き出してみたいと思います。

「積極的受信」のススメ

リーダーにとって、「観察」がいかに大切であるか。そのことを、著者は本書で強調しています。もちろん、チームリーダーがメンバーとコミュニケーションをとる際も同じ。チームができたばかりのときは、観察こそが重要なリーダーのアクションになるというわけです。そして観察とは、言葉を変えるなら「積極的受信」といえるのだとか。

リーダーのコミュニケーションというと「いかに語り」「いかに伝え」「いかに導くか」といった発信型のコミュニケーションばかりが意識されがちですが、「受信」も等しく重要だということ。メンバーの言葉も、言葉にならないメッセージも、観察によって積極的に受信すべきだという考え方です。

・指示をしたとき、うなずき方が普段と違っていないか?

・「大丈夫です」と答えながら、不安な表情をしていないか?

(6ページより)

など、著者も自分がなにか話している間のメンバーのリアクションを、念入りに観察しているそうです。なぜなら、人は想像以上に思っていることを顔に出すものだから。ちょっとした発言、うなずき方、表情、仕草など、メンバーが発信してきたものをリーダーがいかに受信していくかが、チームをつくっていくには大切だということです。(5ページより)

なにをしているときにイキイキしているか

普段の雰囲気を見て「きっとアイデアマンに違いない」と予測したチームメンバーに新製品のキャンペーン企画を任せたら、どこかで聞いたことのあるようなアイデアしか出てこなかった...こういうことは、決して少なくないはずです。では、なぜそうなってしまうのか? この点について著者は、「雰囲気=その人の適性ではない」と断言しています。

私たちはつい、第一印象やその人のイメージで、性格やスキルまでわかると考えてしまう。でも大切なのは、雰囲気に惑わされないこと。そして、メンバーの適性を見抜く最良の方法も、観察だと著者はいいます。具体的には、漠然と日常の態度を眺めるのではなく、その人の仕事のプロセスを見る。きちんと、じっくり、よく観察する。

ちなみに著者はメンバーの仕事のプロセスを観察する際、「なにをやっているときにイキイキしていて、なにをやっているときにつらそうなのか」に注目しているそうです。(8ページより)

まずはメンバーの「1」を知る

チームを立ち上げたばかりのメンバーにとって、「どの部下に、どのくらいの仕事を任せればいいのか」は大きな悩みの種。「気軽に仕事を振ったつもりが、パンクしてしまった」などということになったら大事だからです。

この点を考えるにあたり、著者が引き合いに出しているのは、「筋肉痛にならないと筋肉が発達しない」という話。仕事も同じで、負荷を与え、ある程度の痛みを感じる状態で仕事をしないと能力は上がらないということです。ただし負荷が大きすぎると、成長どころか怪我につながってしまうもの。

そこで適度な負荷を考えることがリーダーの仕事となるわけですが、著者の場合は、実力の1.2倍くらいが適切な負荷だと考えているそうです。20代であれば1.5倍くらいでもいいでしょうが、「多少ぐらついても立ち続けていられる背伸び」という感覚。

しかし、そうなると重要ポイントになってくるのは、正確にメンバーの「1」を見抜くこと。この点について著者は、メンバーの「1」を知るには、いくつかの種類の「短く終わる仕事」を振るのが有効だと記しています。1時間から1日くらいの細かい仕事の出来によって、「なにができて、なにができないのか」を把握するわけです。(10ページより)

メンバーの得意なコミュニケーションスタイルを知る

対面から飲み会、メールまで、コミュニケーションスタイルはさまざま。しかしスタイルはどうあれ、リーダーは「自分はこのコミュニケーションスタイルを磨こう」と意識し、「自分の得意」を研ぎ澄ますことが重要だと著者。さまざまなチームメンバーと会話し、彼らを成長へと導かなければならないリーダーは、ときには厳しいことをもいわなければならないもの。そんなとき、得意なコミュニケーションが武器になるというわけです。

そこで、まずは自分の得意なコミュニケーションスタイルを確立する。そしてそのうえで、「メンバーが得意なコミュニケーションスタイルはなにか」についても知っておいたほうがいいといいます。「このメンバーにはメールでいうより、直接話した方がいいんだな」「1回で10のことを伝えるのではなく、1回に1つずつ、10回に分けて伝えた方がいい」など、情緒的にならず、実験のように確かめていくことが大切だということ。

またコミュニケーションにとどまらず、「どういうやり方だとこの人は強みを発揮するか」「この人が同時並行で仕事ができるのは3つまでで、4つになるとクオリティが落ちるな」などと確認すれば、仕事のスタイルも見えてくるとか。そして理想的なのは、メンバーの得意なコミュニケーションツールに合わせられる柔軟性を持つことだといいます。(13ページより)

本書の言葉に力があるのは、冒頭で触れたように、それらすべてが著者自身の苦悩のなかから導き出されたものだから。だからこそ、リーダーとしてのあり方に迷いを感じている人の背中を、強く押してくれることでしょう。

(印南敦史)

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