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成功するプレゼンのスライド技術、そして「3大要素」の活かし方

成功するプレゼンのスライド技術、そして「3大要素」の活かし方

slide:ology[スライドロジ―]―プレゼンテーション、ビジュアルの革新』(ナンシー・デュアルテ著、熊谷小百合訳、BNN新社)の著者は、プレゼン制作やデザインにおけるリーダー的存在として高く評価されるデザイン会社、デュアルテ・デザインのCEO。本書では、アカデミー賞を受賞したアル・ゴア『不都合な真実』のプレゼン制作など幾多の実績を持つ著者が、プレゼンテーション・ビジュアルについての考え方を著しているわけです。

アイデアの発想法から、図表作製法、ストーリーテリングに至るまで、そaのアプローチは広範囲にして深淵。きょうは「Chapter 1 スライド技術を身につける」のなかから、スライド作成に関する基本的な部分を拾い出してみます。

プレゼンこそキャリアの要

私たちは本来、ビジュアル・コミュニケーターです。

子どもの頃を思い出してみてください。

私たちの表現の原動力は

ワープロや表計算ソフトではなく、

クレヨンや自分の指、粘土だったはずです。

(22ページより)

こう語る著者は、子どものころの「素朴な道具で語られる物語」は、いまの私たちがコンピューターソフトで生み出す物語に勝るとも劣らないものだったと主張しています。「物語とは『世界をどのように解釈し、どう関わるか』ということであり、私たちはそうした物語を適切なビジュアル・イメージと結びつける習性がある」とも。

ただし、ビジュアル・コミュニケーションについて劣等感を抱く瞬間は、やがて誰にでも訪れるもの。結果、大人になるとチャレンジを放棄する人も少なくないといいますが、それはあまりに皮肉なことでもあります。なぜなら「コミュニケーション・スキル」こそ、会社や同僚が私たちを評価するときの判断基準だから

目指すものがなんであれ、効果的なコミュニケーションは仕事における不可欠な要件のひとつ。使いこなせるかどうかにかかわらず、仕事上はいやでもビジュアル・ツールを使ってコミュニケーションをとらざるを得ないわけです。ところが、創造的思考、分析、データ同化、ビジュアル表現能力などデザインの基礎を教えている学校はほとんど見当たらないのが現実。

だからこそ私たちは出来の悪いスライドをつくり上げ、キャリアにマイナスの影響を与えてしまいがち。しかしそれでは本末転倒ですから、スライドにお金をかけるのではなく、ビジュアル・スキルを磨くことにお金をかけるべきだと著者。さもないと、キャリアを棒に振ることにもなりかねないからです。(22ページより)

なぜプレゼンが重要なのか

企業は、広告・マーケティング・PRに大金を注ぎ込んで消費者を引きつけようとしますが、高価な広告手段は、購買(契約)への単なる導入でしかないといいます。取引の成立を最終的に左右するのは「効果的なプレゼン」です。

では、多くの企業がスライドによるプレゼンを軽視するのはなぜでしょう? その原因は、「彼らのブランドに対する姿勢にある」と著者は説いています。ブランドとは会社のイメージを反映した社名、ロゴ、キャッチフレーズのことではなく、「顧客の心のなかにある会社のイメージ」。大抵の企業はブランドのそういった本質を理解していませんが、業績を上げるために必要なのは、顧客との間に「心のつながり」を築くこと。

プレゼンの多くは、取引が成立する直前で、顧客の印象を最後に左右するもの。つまり、どのような企業であれ、プレゼンを通じて自社のブランド(と支持者)にしかるべき敬意を払えば、簡単にライバル企業に差をつけることが可能。いわばそこに、プレゼンの重要性があるということです。(24ページより)

では、どこから手をつける?

スライドの文字量が一定の限度を超えると、そこから失われるのはビジュアルエイド(視覚資料)としての価値。「聴衆はひたすらスライドを目で追うだけで、プレゼンターには見向きもしない」という状況になってしまうわけです。しかし、それならば文書やメールを使ってわかりやすく説明したほうがいいということになります。

考えてみてください。聴衆は「スライドを読む」か「話を聞く」かのどちらかで、その両方はできません。人は複数の言語コミュニケーションを同時にこなすことが苦手だからです。「読むこと」と「聞くこと」は相反する行為なのです。(26ページより)

一方で私たちは、「言語コミュニケーション」と「ビジュアル・コミュニケーション」を同時にこなすことには抵抗がないもの。だからこそ、優れたスライドはビジュアルエイドの役割を果たし、話し手のメッセージを浮き彫りにしてくれるわけです。

著者によれば、75ワード以上のテキストを含んだスライドは、もはや「ドキュメント(文書)」。こうしたスライドをつくってしまった場合は文字量を減らし、要点以外はノート機能で記録するか、スライドではなく配布資料として利用するか、のどちらかにすることが大切だそうです。

50ワード程度のテキストを含むスライドは、「テロップ」の役割を果たしているもの。この方法に頼るプレゼンターは、たいてい聴衆に背を向けたまま話そうとするのだとか。また聴衆はこの場合、テンポが遅いと感じるそうです。理由は、先にスライドを読み終わってしまい、プレゼンターの説明が追いつくのを待たなければならないから。

それらに対する真のプレゼンテーションとは、「話し手」と「伝えたいビジョンやメッセージ」の双方に重点を置いたもの。すっきりしたスライドはコンテンツを視覚的にアピールするため、聴衆は「話し手」と「メッセージ」のどちらにも意識を向けられるわけです。このようなプレゼンを作成するには多くの時間が必要ですが、その成果は「苦労を補って余りあるもの」だと著者はいいます。(26ページより)

成功するプレゼンのための3大要素

プレゼンターがよりどころにすべきは、「メッセージ」「ビジュアルストーリー」「デリバリー(伝え方)」の協調関係。「メッセージ」のみを重視し(つまり、あらゆる情報をスライドに詰め込み)、「ビジュアルストーリー」と「デリバリー」をおろそかにすると、プレゼンの趣旨やテーマの重要性が伝わらないといいます。

スライドを、メッセージを際立たせる「ビジュアルストーリー」へと昇華させるには、かなりの努力が必要。しかし多くのプレゼンターは、箇条書きのテキストをそのまま読み上げてしまうとか。またプレゼンのグラフィックも、画面がごちゃごちゃしていて聴衆の注意を妨げる傾向に。こうしたプレゼンターは、聴衆の関心が「話し手がどんなメリットをもたらしてくれるのか」にあるということに気づいていないと著者は指摘しています。

また、聴衆のニーズを予測し、それに合わせて「デリバリー」を微調整するのもプレゼンターの役割。プレゼンは「対面コミュニケーション」から「マスコミュニケーション」へと急速に変化しているため、(のちにオンラインで公開されるなどの場合は)コンテンツを修正し、ウェブ上の聴衆に向けたプレゼンに仕立てなおす必要があるというわけです。

「メッセージ」「ビジュアルストーリー」「デリバリー」の3要素はデリケートなバランスのうえに成り立っているだけに、各要素の調和を保つことが重要。話し手は自分のプレゼンが上手くいっているかばかりを気にする傾向があり、コンテンツやビジュアル、デリバリーが相手の目にどう映っているかについてはあまり考えようとしないものだからだそうです。(30ページより)

見開きごとに1テーマとなっているため見やすく、ビジュアルも効果的。ページをめくっているだけでも、さすがは著名プレゼンターの著作だなと感じます。プレゼンの機会が多い人にとっては、間違いなく役立つはず。デスクサイドに置いておきたい一冊です。

(印南敦史)

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