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本当の仕事とは嫌いな仕事のこと。アメリカの漫画家Bill Wattersonに学ぶ仕事論

本当の仕事とは嫌いな仕事のこと。アメリカの漫画家Bill Wattersonに学ぶ仕事論

Bill Watterson氏は、『Calvin and Hobbes』という歴史的な連載コミック漫画を描いた、アメリカの漫画家です。Wattersonさんは、少し世捨て人のような人でしたが、彼の描く漫画や思想は読者に大きな影響を与えました。今回は、そんなWattersonさんの人生訓を、漫画と漫画以外の両面から探ってみましょう。

自分の仕事を楽しむ

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Bill Wattersonさんのような人が、仕事を楽しむことを勧めていても、何もおかしなところはないと思うでしょう。結局、漫画を描くのが楽しくなくなった時、Wattersonさんは漫画を描くのをやめました。自分のやっていることを楽しむというのはどういうことか、Wattersonさんの説明をご紹介しましょう。

1990年ケニオン大学の学位授与式のスピーチで、Wattersonさんはなぜ仕事を楽しんだ方がいいのかを話しました(上の画像は、このスピーチの内容を表している漫画家Gavin Aung Thanさんのイラストです)。

毎日のルーティンワークや何とかこなしているような仕事で、起きている時間があまりにも早く過ぎていくと思ったことはないですか? 考えたり探求したりすることよりも、習慣の方が大切だと思ったことは? 他人の期待に応えるだけの人生を送っていると、どれだけ人生の時間が早く過ぎ去っていくか考えたことはあるでしょうか。

「本当の仕事」というのは、自分が嫌いな仕事のことです。私は、コンビニエンスストアの地下にある窓のない部屋で、車やスーパーの広告をデザインしていました。私はその仕事場にいる450万分(約8.5年)がずっと嫌でした。職場の同僚は、何も仕事をぜずに20セント余分に稼ぐために、いかに完ぺきな時間にタイムカードを押すかということを、いつも考えていました。自分の仕事に何の興味もないと、人生は空虚でロボットみたいになるのだと気付いた時は、かなりショックでした。その時、職場に行く理由は、ただお金をもらうためだけだったのです。

一夜にして成功するものは何もない、ということに気付くのはとても大事なことです。成功や失敗の外にある、自分に幸せをもたらすような才能を育てた方がいいです。ほとんどの人が自分が辿り着いた時にやっと目的地を知る、というのは事実です。その時、振り返ってこう言うのです。「そう、間違いなくここに来ようと思っていた」と。少しは回り道することになるでしょうから、その景色を楽しもうとするのもいいと思います。

いつも好きな仕事だけをすることはできません。しかし、自分のやっている仕事やその過程を楽しむことはできます。時には、好きではない仕事やくだらない上司の相手をすることも楽しむことができます。しかし、常にクリエイティブで幸せでいたいと思うなら、その時はくだらない仕事をやめて、何か新しいことを始める時です。

自分のために作る

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自分の仕事を楽しむというのと同じような文脈になりますが、Wattersonさんは、何かを作っている時は誰のために作っているのかを知らなければならないとも言っています。『Stripped』というドキュメンタリーの中で、Wattersonさんは、漫画『Calvin and Hobbes』を誰のために描いているのか、かなり率直に語っています。

正直言って、私は読者がいることを忘れようとしていました。私は自分の描いている漫画に対して、ささやかで親密な気持ちを持ち続けたかったのです。ただ私の妻を笑わせるのだけが目的でした。その後、その漫画を世に出し、それを世間が受け入れるか受け入れないか、それだけのことです。

読者もある意味大事ですが、何か新しいものを生み出そうとしている時に、常に読者のことを念頭においていると、自分や自分のクリエイティブなビジョンの妨げになることがあります。Wattersonさんは、読者のことを念頭に置いていなかったので、結果的に彼の漫画は希望通りささやかで親密な感じのするものになりました。

心をさまよわせる

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ケニオン大学のスピーチに再び戻ると、Wattersonさんは、他にも創造性に関して大事なことを言っています。それは「自分の心をさまよわせる」ということです。

自分のためだけに仕事をしていると、それがいかに大変なことか驚きます。イギリスの哲学者John Stuart Millには恐れ多いですが、功利主義は過大評価されています。私が漫画家になって学んだのは、創造性や幸せには遊びが重要だということです。私の仕事は、基本的に1年のうちに365個のアイデアを思いつくことです。

「自分は本当におもしろくない人間だ」と気づきたいなら、思考の質が評価される仕事に就けばいい。私の場合、何年も毎日描き続けるには心を新しい領域にさまよわせないとダメだと気づきました。そうするために、私は自分の遊び心のようなものを伸ばさなければならなかったのです。

遊び心は好奇心旺盛で、学ぶことは楽しいです。自分の自然な好奇心のままに、新しい経験を楽しむ感覚を持ち続けていれば、それが凸凹道を進む時の衝撃緩衝材のような役割を果たすでしょう。

くつろいだり、ぼーっとしたり、自分の心をさまよわせたりするのは、すべて生産性の敵だと思われています。しかし、何か面白いものを作り出そうとしているなら、ぼんやりと白昼夢に浸ることも必要です。

無理に創造的にならない

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何も先延ばしにしない世界でも生きられると思うかもしれませんが、毎日新しい仕事を生み出している時は、それは不可能です。Wattersonさんは、漫画『Calvin and Hobbes』の中で上の画像のように言っています。「四六時中クリエイティブでいることはできません。時にはちょっとしたスランプも良いものです」

Thorin Klosowski(原文/訳:的野裕子)

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