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フィギュアスケーター・鈴木明子選手をソチオリンピックに向かわせた「逆境に打ち勝つ力」

フィギュアスケーター・鈴木明子選手をソチオリンピックに向かわせた「逆境に打ち勝つ力」

ひとつひとつ。少しずつ。』(鈴木明子著、KADOKAWA/中経出版)は、フィギュアスケート日本代表としてソチオリンピックに出場し、2大会連続入賞を果たした著者が、自身の体験に基づいて不安や恐怖を乗り越える方法を明かした書籍。

32キロまで体重が減った摂食障害を克服し、足の痛みなどを乗り越えながら多くの栄冠を獲得。3月の世界選手権を最後に引退した彼女ならではの思いが、素直につづられています。第2章「逆境が人を強くする」から、いくつかのポイントを引き出してみましょう。

夢があったからがんばれた

大学入学直後、著者は摂食障害のために、スケート選手としてなにもできないどころか、普通の生活すらままならなくなってしまいます。摂食障害になると、食べ物を受けつけることができなくなり、目標を見失い、精神的にどんどん落ちていってしまうとか。しかも1日や2日で治るものではなく、いつ元通りになれるのかは不明。だから療養しているうちに、いろいろな夢が断たれていくのだといいます。

しかし、そんななかで著者を支えてきたのは、「絶対にまたスケートをする」という思い。おかげで、「治るまで3年はかかる」といわれていたにもかかわらず、1年ほどでスケートの練習をはじめられるようになるまでに回復。精神力が、不可能を可能にしたわけです。(72ページ)

「できない」自分を受け入れる

しかし、困難だったのはそこから先。それまで当たり前にできていたことが、まったくできなくなっていたのだそうです。氷の上に立つことはできても、前のように滑れない。そんな現実は、著者に大きな打撃を与えることに。

にもかかわらず、「いろいろな噂がひとり歩きしている」ような状況を乗り越えることができたのは、「できない」自分を受け入れることができたから。「絶対に戻れるから」というコーチの言葉が、背中を押してくれたといいます。(79ページより)

「できない」からつくりなおせる

興味深いのは、なにもできなくなっていたことを、著者が「幸運でもありました」と記している点です。一度染みついた癖をなおすのは難しいけれど、すべてを失ったからこそ、「つくりなおせばいい」というのがその理由。そして、時間はかかったものの、決して遠回りではなかったとも。とりわけ心に残るのは、次のフレーズです。

「やってきたこと」を変えるのは難しい。(中略)

「なくしたもの」をつくりなおすのは、大変だけど、楽しい。

(85ページより)

病気を抱えたことで、他の選手から腫れ物に触るような扱いを受けたため、それはやはり苦しかったといいます。けれどもマイナスからのスタートだったぶん、「できた!」が増える日々のうれしさは格別だったとか。(84ページより)

「遠回りじゃないこと」を結果で証明

当時、オリンピックに出ることなど想像もできなかったという著者は、努力を重ねる過程で「過去ではなく、未来を見るようになった」といいます。

「もどる」んじゃなくて「進む」んだ、と思ったときに、一歩前に進めた気がします。(91ページより)

大切なのは、「いまの自分がどうなのか」。「人間は思考に左右されるものですが、思考は自分で変えられますから」という言葉からも、強い意志を感じることができます。

それからもうひとつ印象的だったのは、「遠回りして、もったいなかったね」といろいろな人に言われた際に彼女が思ったこと。

「遠回りしたって、言わせない。遠回りしたかどうかは、これからの私次第だ。いつか絶対にあそこに立つ」(92ページ)

強い意志がどれだけ大切なものであるかを、著者の思いから感じ取ることができます。(90ページより)

自分が決めたことを信じる

自分でなにかを決めれば責任が伴い、ことが大きいほど責任も重くなるもの。しかし著者はいつも、そのときの自分が決めたことは「ベストだ」と思っているそうです。もしも間違ったことがあったら、修正すればいい。そして、命を落とすところまでいく選択でないと、あまり怖くないともいいます。それは、どん底でもがき苦しんだ経験があるから。(96ページより)

本書に書かれているひとつひとつのことがらは、すべてのビジネスパーソンにとってのヒントにもなるように思えます。なにかヒントをつかめる可能性があると思うので、ぜひ一度、手にとってみてください。

(印南敦史)

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