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イノべーションを起こすためのキーは「QPMIサイクル」

イノべーションを起こすためのキーは「QPMIサイクル」

世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(丸幸弘著、日本実業出版社)は、理工系大学生・大学院生のみによって2002年に設立されたベンチャー企業「リバネス」の代表取締役CEOによる著作。

リバネスの事業は科学教育/教材開発、メディア開発、人材育成研修、研究者支援、イベント・セミナー、調査・マーケティング、コンサルティング、商品開発・技術導入と多岐におよぶそうですが、たとえば「ミドリムシで世界を救う」でおなじみの株式会社ユーグレナなどのビジネスをプロデュースし、成功させてきた企業だと説明すれば、その実体をイメージしやすいかもしれません。

本書ではそんな実積を踏まえ、「社員一人ひとりの『個』の力を最大限に引き出しつつ、世界を変えるビジネスを生み出すための方法と組織のつくり方」を解説しているわけですが、そこで重要な意味を持つのがリバネス独自の仕組みである「QPMIサイクル」。はたして、それはどのようなものなのでしょうか? 第2章「『QPMI』〜イノベーションを起こす魔法のしくみ〜」を見てみましょう。

「PDCA」ではなく「QPMI」

言うまでもなくPDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)というサイクルを回していくことにより、生産管理や品質管理の質を高めていく手法。しかし著者は、この言葉が大嫌いなのだそうです。やるべきことがはっきりしている仕事の質を上げていくのには効果があるとはいえ、PDCAを回しているだけでイノベーションが生まれるはずがないから。

イノベーションとは、世の中を動かす新しいなにかを生み出すこと。つまりイノベーションを生み出すには、もっと自由で、フレキシブルなしくみが必要だというのが著者の考え方。そこで考案されたのが「QPMIサイクル」だというわけです。

Q:Question(クエスチョン)

P:Passion(パッション)

M:Mission(ミッション)

I:Innovation(イノベーション)

「質(Quality)の高い問題(Question)に対して、個人(Personal)が情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間たち(Member)と共有できる目的(Mission)に変え、解決する。そして諦めずに試行錯誤を繰り返していけば、革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことができるという考え方です。

QPMIサイクルは、このイノベーションが生まれる過程全体を指しているのだとか。その中身は、次のようになるそうです。

Q:さまざまな事象から課題を見出す

P:課題解決に対して情熱を抱く

M:課題をミッションと捉え、チームを作り取り込む

I:チームの推進力により新たな価値の創出を目指す

(58ページより)

なおQPMIサイクルがうまく回るかどうかは、クエスチョンをなんとしてでも解決しようとする熱いパッションを持った個人がいるかどうかにかかっているといいます。(56ページより)

すべての研究者は「QPMIサイクル」を利用している

QPMIサイクルは全然むずかしいものではなく、すべての研究者がやっていることだそうです。つまり、研究者が持っている研究テーマは、それぞれがクエスチョン(Q)。そして自分自身で選んだテーマだからこそ、答えをなんとかして見つけたいという強いパッション(P)を持っている。つまり研究者は、イノベーションを起こすビジネスパーソンとして欠かせない要素を、すでに身につけているわけです。

そして研究者は自分の研究に周囲を巻き込む必要があるので、そのためにはミッション(M)を掲げて周囲に共感してもらわなければならない。そしてQとPとMが揃えば、あとはQを解き明かすための研究を進めていくのみ。いろいろな試行錯誤を経て、イノベーション(I)を見出していく。すると、また新しい「Q」が生まれ、新たなQPMIサイクルが回っていくということです。(71ページより)

社員のパッションにクエスチョンを

QPMIサイクルの4要素でいちばん大切なものはパッション(P)だと著者は断言しています。パッションはパーソナルなものなので、「みんなでイノベーションを起こす」ということは難しい。ひとりがパッションを持って、「これをやらなければならない」と強く思ったところに人が集まってくる。つまり、情熱が人を呼び寄せるということです。

そして、熱いパッションを持った人間に対しては、できるだけクオリティの高いクエスチョンを示すべきだといいます。いわば上司の役割は、パッションの大きさにふさわしいクエスチョンを示してあげること。そうすれば、QPMIサイクルは自然に回っていくといいます。(73ページより)

科学者の言葉というと、それだけで冷徹な印象があるかも知れません。が、少なくとも著者はタイトルどおりとても情熱的で、そのマインドがここにはあふれています。そして科学を前提としたその考え方は、すべてのビジネスパーソンにも応用できるものだと思います。

一人ひとりの社員が強い「熱」(passion)を持って動いてぶつかり、互いに化学反応を起こし合う状態を集団化することで、世界を変えるチェンジメーカーになれる。(3ページより)

つまり本書は、個人の熱をぶつけあうことによって、組織を活性化させるためのメソッドだというわけです。

(印南敦史)

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