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新たなビジネスモデルの構築を実現する「マクロウィキノミクス」とは?

新たなビジネスモデルの構築を実現する「マクロウィキノミクス」とは?

マクロウィキノミクス』(ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ著、 夏目 大訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ベストセラーとなった前著『ウィキノミクス』の著者による新刊。ウェブを通じたコラボレーションによって成立する「ウィキノミクス」の発展型である「マクロウィキノミクス」の実像を、新たなビジネスモデルを築こうとしている個人や企業の実例を挙げつつ紹介しています。

その原点を再確認するために、第2章「あらゆる知がつながる時代に、守るべき五つの原則」から「ウィキノミクスの原則」をご紹介しましょう。

コラボレーション

世界の経済環境が複雑に絡み合うようになって露わになったのは、身分に応じて肩書きや責任を定義するという旧来の制度の欠点。そしてトップダウン方式の企業経営や計画策定といったビジネスモデルが弱体化するなか、賢明な企業は、社外の人々とのコラボレーションを通じて業務を進める手段にシフトしているといいます。

つまり、いまやコラボレーションは非常に効果的なビジネスモデルのひとつ。ただしそれは、人々が楽しげに集まって一緒になにかを生み出すということではないのだとか。グーグルがそうであるように、新しい発想を生み出し、商品やサービスをつくり、問題を解決する能力を持つ人々をまとめあげることだそうです。(49ページより)

オープン

これまで、ほとんどの組織が示していたのは「秘密主義を貫くのが当然」という態度。しかしデジタル時代の到来により、賢明な企業は「オープン」の意味を見直しはじめているのだとか。そして著者はこれを、従来のビジネスの常識に疑問が呈され、数々の重要な機能や制度が変わろうとしている証拠だと主張しています。

それは、世界が透明性を高めていく方向に進んでいるなか、組織に選択の余地がなくなっているから。消費者に商品やサービスの適正価格が伝わり、社員は会社の戦略、経営方針、抱えている問題などを知ることができるというのは、これまでには考えられないことだったといいます。あらゆる情報が偏在するという状態には不安な一面もあるものの、オープンにすることがコラボレーションに不可欠な要素として受け入れられつつあるということです。(52ページより)

共有

組織にとっての「オープン」が利害関係者に適切な情報を開示することだとすれば、組織が保有する資産の開放や譲渡を意味するのが「共有」。方法としては、誰もが使える「公共の場」にそれらを配するか、使用量の発生を条件に使用を認めるかが一般的。

これまでの定説は「組織が所有する資源や技術、とりわけ知的財産は、特許、著作権、商標の取得というかたちで管理・保護すべき」というものでしたが、いまでは知的財産権をかたくなに守ろうとすることが、かえって価値の想像を疎外することになると考える企業が増えてきているのだといいます。(55ページより)

倫理

昔と違い、現代の企業においては「善い行いをしていればうまくいく」という考え方は現実のものとなりつつあるといいます。たとえば不正をはたらく企業が破綻するケースが目立つのは、企業や非営利組織に倫理が求められるようになったから。そして複雑なネットワーク化の時代が到来したことによって、倫理観にのっとった行動や透明性を要求する声が世間でも高まっているそうです。

また、それ以上に注目すべきは、「正しい価値観を持てば正しいビジネスセンスも養われる」と信じはじめた経営者が増えているという点だというのが著者の考え方。(59ページより)

相互依存

金融システムの崩壊が教えてくれたのは、世界が密接にかかわり合っているということ。あらゆるもの、あらゆる人がネットワークでつながっている時代に、孤立している人間もいなければ、孤立している企業、組織、政府機関、国家、社会も存在しないという考え方です。

現代に見られるほど広範囲に、あらゆる方面を取り囲んでグローバリゼーション(グローバル化)が進められたことはない。広大な商取引ネットッワークや世界レベルでの交流のなかで、人、金、技術、商品、サービス、文化、アイデアが、何の躊躇もなく国境を越えていく──そんな今の時代を反映する特徴の一つが、世界規模の相互依存である。(63ページより)

たしかにこれも、現代社会を俯瞰するうえでの重要なポイントではないでしょうか。(62ページより)

多くの事例を交えて主張が展開されているためわかりやすく、翻訳も質が高いのですらすらと読み進めることができます。ちなみに、個人的に大きく共感できたのは第12章「音楽業界がマスコラボを先取りする」。現在の音楽業界の脆弱性を鋭くえぐった論調は、痛快さすら感じさせてくれました。

(印南敦史)

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