電子レンジは栄養素を壊す?:健康神話を検証する(4)
- カテゴリー:
- HEALTH

インターネット上に溢れている健康神話を検証し、その真相を確かめていく連載の4回目です。
・「脂肪や炭水化物で太る」は本当?:健康神話を検証する(1)
今回は最終回。米Lifehackerが3人の専門家に話を聞いた、最後の5つの"神話"です。
- 神話6:レンジでチンすると食品の栄養素が失われる
- 神話7:グルテンフリーの食品は健康に良い
- 神話8:3500kcal消費すれば脂肪を1ポンド(約450グラム)落とせる
- 神話9:部分トレーニングで特定箇所の脂肪を燃焼できる
- 神話10:体重計は体脂肪の管理に役立つ
神話6:レンジでチンすると食品の栄養素が失われる
電子レンジは電磁波を使っていますが、食品に含まれる栄養素に影響はあるのでしょうか? Nadolsky博士は、次のように話してくれました。
電子レンジで失われるとされている栄養素も、いくつかあるようです(ブロッコリーに多く含まれ、抗酸化作用が期待されるスルファラフォンもそのひとつです)。ただ、すべての栄養素に同じことが当てはまるわけではありません。どの成分が損なわれたり不活性化したりするかについてのわかりやすい目安はありません。そのため、ある食品を電子レンジで調理して良いか、それとも避けるべきかについては、ケースバイケースで判断する必要があります。でも全般に、電子レンジでの調理は大した問題ではありません。
電子レンジはたいていの食品の栄養価には大きな影響を与えないとしても、ほとんどの食品について均等に温められず、食感を台無しにしてしまう、という不満のある人は少なくないはずです。電子レンジを使いたくない理由があるとすれば、そうした問題点のほうが大きいでしょう。
なお、ブロッコリーのスルフォラファンについては、どう調理したところで失われてしまいます(少なくとも、消化吸収が大幅に遅くなります)。つまり、栄養素を失わせる犯人は電子レンジだけではないのです。
神話7:グルテンフリーの食品は健康に良い
このところ、グルテンフリーダイエットが流行しています。グルテンフリーの食品が山ほど売られるようになりましたが、本当に体に良いのでしょうか? その答えは、ひとりひとりのカラダの状況によって変わります。一部の人がグルテンフリーの食事を必要としているからといって、あなたにも効果があるとは限りません。グルテンを避けるべきケースと、食べても問題ないケースについて、Bellattiさんが説明してくれました。
セリアック病の患者やグルテン過敏症の人では、グルテンが問題になります。それ以外の人の体には、グルテンを消化する機能が備わっています。グルテンフリーだからといって、その食品が自動的にヘルシーになるわけではありません(たとえば、炭酸飲料もグルテンフリーです)。グルテンフリーのパンの多くは精製でんぷんで作られていますが、これはヘルシーとはいえません。
たいていの人はグルテンに対する耐性を備えているはずですが、「グルテンを食べないほうが具合が良い」という人がいても、別に心配はしません。グルテンを抜いても、栄養上のリスクが生じるわけではありませんから。
Stewart博士もおおむね同じ意見です。
健康のためにグルテンフリーの食品を選ぶべきなのは、グルテンに対するアレルギーがある人だけです。そうでない人の場合、グルテンフリー食を実践すると、摂取できる食物繊維やビタミン、ミネラルの量が限られてしまいます。全粒穀物(小麦、ライ麦、大麦など)を豊富に含むさまざまな食品にも、グルテンは含まれていますが、そうした食品は、ヘルシーな食生活には欠かせません。そもそもほとんどの人は、グルテンを問題なく消化することができるのです。
どうしてほとんどの人はグルテンを問題なく消化できるのでしょうか? Nadolsky博士はこう説明しています。
通常口にする量の穀物レクチン(グルテン)では、腸の組織が明らかな損傷を受けることはありません。例外は、腸の再生能力に機能障害のある人の場合で、これをセリアック病と呼びます。おそらく、グルテンに対して「過敏」な人にも同様の傾向があるでしょう。それ以外の人の場合、グルテンなどのストレス要因を摂取しても、腸がきちんと回復するようにできています。ですから、グルテンについて心配する必要はありません。
セリアック病患者が「グルテンを抜いて健康が大きく改善した」と言うのを聞けば、自分もグルテンを抜くべきだと勘違いしてしまう人がいるのも無理はありません。ですが、セリアック病患者の場合は、そもそも体内でグルテンを処理することができないから、グルテン断ちの効果が出るのです。幸い、セリアック病の患者数は多くないので、たいていの人はグルテンの入った食品を摂っても問題ありません。ただし、どんなものでもそうですが、バランス良く食べることを心がけるようにしましょう。
神話8:3500kcal消費すれば脂肪を1ポンド(約450グラム)落とせる
誰だって、シンプルな方程式に従えば脂肪を落とせる、と思いたいものです。単にカロリーを消費するだけで体重が減るのだとすれば、理論的には、カロリー消費量をこまごまと積算することで、減量の成果を予測できるはずです。効果が明快な数式になるという点から、この神話は、数値的予測に絶大な信頼を寄せる人の間で受けています。
ところが、これはあまり信頼のおける代物ではありません。この数式の扱っている事象には、科学的といえるほどの根拠がないのです。Nadolsky博士が次のように説明してくれました。
ではなぜ、幅があるのでしょう? Stewart博士によると、体重が1ポンド減ったとして、すべてが脂肪の燃焼によるものではないからだそうです。計算上、3500kcalを消費すると体重は1ポンド(約450g)減るはずだし、エネルギーの消費量と摂取量の計算法が完璧ならば、減量効果の計算は可能なはずです。しかし残念なことに、現時点でこの数式は完璧とはいえません。脂肪1ポンドに約3500kcalのエネルギー量が含まれているのは間違いありません。しかし、実際に体脂肪が1ポンド減るのは、エネルギーの消費量が摂取量を2000~5000kcal上回った場合、と幅があります(つまり、計算をどこかで間違えていることになります)。
この主張は、部分的にしか正しくありません。一般的にいえば、3500kcalを消費するごとに体重は1ポンド程度減るかもしれませんが、減った分がすべて脂肪というわけではありません。減った体重の内訳は、脂肪と少量の水分、そして細胞組織などです。
体重の減少を見積もるためなら、この数式はある程度の目安になります。でも、体脂肪の減少が目的ならば、予想通りにならなくてがっかりするハメになります。
神話9:部分トレーニングで特定箇所の脂肪を燃焼できる
体の特定の筋肉群や部位を集中的に鍛えると、その部分の脂肪を燃焼できると思い込んでいる人たちがいます。これはある意味、筋が通っている気がします。体の特定部分をターゲットにして努力すれば、その部分の脂肪を撃退できるように思う人もいるでしょう。ですが残念なことに、脂肪の消費はそのようには行われません。Stewart博士が説明してくれました。
腹筋運動(または別のタイプの部分トレーニング)をすれば腹筋は鍛えられますが、特にその部分の脂肪が消費されるわけではありません。脂肪の燃焼と消費は、全身にわたって平均的に行われます。そして、脂肪の燃焼に有効なのは、筋トレよりも有酸素運動(カーディオエクササイズ)です。脂肪の増減パターンは、個人差に大きく影響され、どの有酸素運動を選ぶかはあまり重要ではありません。
もちろん、「部分やせ」神話にもそれなりの根拠があるはずです。ところがNadolsky博士によると、その根拠はかなり拡大解釈されたもののようです。
都合の良い事例だけピックアップしたとしても、局所的に脂肪が落ちたというのはたかだか1グラム程度のことです(参考までに、コーラ1缶には40グラムの砂糖が含まれています)。脂肪は全身から落ちるものです。それに、部分的な脂肪吸引手術をしたあとに、脂肪がまた均等に行きわたったという事例も山ほどあります。とはいえ、男性も女性もそれぞれ脂肪の落ちにくい部位があり(男性なら腰まわり、女性ならお尻と太もも)、そこについた脂肪は最後まで残りがちです。
とはいえ、特定部位をターゲットにしたトレーニングをするなと言っているわけではありません。ダイエットをするなら運動メニューはバラエティ豊かなほうが良いのです(ちなみに、食事メニューにも同じことがいえます)。ダイエットの目標達成を急いでいる時は、筋トレは脂肪の燃焼にはあまり役立たないからといって後回しにしたくなるかもしれませんが、それは得策ではありません。しなやかで美しい体のためには、全身を鍛えるさまざまな運動をバランス良く行う必要があるのです。
神話10:体重計は体脂肪の管理に役立つ
ダイエットのために食事制限や運動をしたら、その努力がどれだけ報われたか、数字で裏づけが欲しくなるものです。従来は、体重計に乗って体重がどれだけ減ったか確かめ、それを成果だと考えていました。
けれども、体重だけでは判断を誤ります。人の体は、脂肪だけでなく、水分を筆頭にたくさんの物質で構成されています。体重が1ポンド(約450g)減ったからといって、ダイエットが順調だといえるかどうかはわからないのです。Stewart博士は次のように説明しています。
体重計は、食事制限や運動の効果を確かめる唯一最高の方法ではありません。体重計は、脂肪も筋肉もひとくくりにして測定します。1ポンドの脂肪も1ポンドの筋肉も同じ扱いなのです。運動で筋肉を鍛えているなら、体重は減るどころかむしろ若干増えるかもしれませんが、これは悪いことではありません。食事制限と運動の効果をチェックするもっと良い方法は、自分の体調と外見をいつも気にしておくことです。近所のフィットネスセンターに行けば、体脂肪率の測定もできるでしょう。
より効果的なチェック方法を知りたいのであれば、以前の記事でガイドラインを掲載しています。
お忘れなく:私たちの知識は限られています
健康については、まだわからないことがたくさんあります。科学は新しい発見をもたらし、私たちも少しずつ学んでいきますが、時々、ニュースや口コミで、新しい研究が都合の良い部分だけ取り上げられるケースを目にします。この記事で紹介した神話も、それが一人歩きした結果です。
とはいえ私たちには、現時点で入手できる最善の情報に頼ることしかできません(だからこそ、この記事の執筆にあたっては、医師や栄養士に相談したのです)。中途半端な知識をもとに、食事や健康法について思い悩んでも仕方ありません。きちんと調べて、専門家に相談することが大事です。世間に広まるような神話は、一見、筋が通っていて合理的に思えるためそのまま根づいてしまいがちですが、科学的な裏づけはありません。
今回は、もっともらしいいくつかの神話の真相を明らかにできましたが、これからも、そうした神話を見聞きすることでしょう。常に学習し続けること、そして、現時点では健康に関する揺るぎない正解はわずかしないことを、どうか忘れないでください。
Adam Dachis(原文/訳:梅田智世、風見隆/ガリレオ)
Photos by IainBuchanan, Dominik Schwind, Nina Hale, John Fischer, Tony Alter, Orin Zebest, gleam_df, The U.S. Army, davidd, Igor Zh, and Leremy (Shutterstock).ランキング
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5