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"悪ガキ"本田宗一郎のリーダーシップの本質は「ほとばしり出る感情」

"悪ガキ"本田宗一郎のリーダーシップの本質は「ほとばしり出る感情」

こんなリーダーになりたい 私が学んだ24人の生き方』(佐々木常夫著、文春新書)は、2012年6月から1年間にわたる「週刊文春」での著者の連載「こんなリーダーになりたい」に加筆修正したもの。

「逆境を生き抜け」「成功は自己の内面にあり」と2つのテーマに分かれており、前者では土光敏夫からマザー・テレサ、西郷隆盛、徳川家康ら、後者ではウィンストン・チャーチル、吉田松陰、坂本龍馬らと、時代を超えた24人の人物の生き方が紹介されています。

著者も「リーダーとして最初に取り上げたいと思った企業経営者」だという本田宗一郎に焦点を当てた、「ホンダフィロソフィーの一丁目一番地は『人間尊重』」を引き出してみましょう。

悪ガキがそのまま大人に

著者は、「宗一郎のことを知れば知るほど取り上げることを躊躇してしまう」のだそうです。理由は、普通リーダーとなる人は沈着冷静だったり、自制心が強かったりするのに、宗一郎は子どものようで、悪ガキがそのまま大人になったような面があるから。

押し寄せる感情の量が人より多く、それを抑えようとはせずいつも感情がほとばしり出てくる。仕事をしていても理屈に合わないことが起こったり、手を抜いたりすると本気で怒る。その激しさゆえ、ときに部下を殴ってしまうこともあったという。(121ページより)

しかしそれでも、15歳で丁稚奉公となり、21歳で創業し、41歳で本田技研工業を興し、全社員に強烈な「ホンダフィロソフィー」を植えつけた宗一郎のリーダーシップには見るべきものがあるといいます。(121ページより)

熱さと思いやり

宗一郎のリーダーシップには二面性があるそうです。ひとつは、前を向いて個性をむき出しにし、あくなき追究をし、周囲を巻き込んで結果に結びつけるという側面。もうひとつは、そうであるのに人への目配り、気配り、思いやりが尋常でないこと。

また約束を守ることに厳しく、最も大切にしたのは時間だったといいます。

なぜ時間に拘ったかといえば、人生に残された時間の短さに比べ、その間に自分が成し遂げたいことがあまりにも多かったからだ。(123ページより)

人は大人になるにつれ、丸くなり割り切ったりあきらめたりするようになるもの。しかし、彼にはそれができない。分別臭くなるヒマもない高い志の持ち主で、わき上がってくる感情を自分でも抑え切れないほどだったというわけです。

それでも人がついてきたのは、なんとしてでも成功させようという志の高さと、実行する道筋の論理性と説得力のおかげ。そして会社では副社長の藤沢武夫、家庭では妻という強力なサポーターがあったからこそ、それが実現できたといいます。(122ページより)

「本田さんは常に未来を語る人、藤沢さんは過去にすべての鍵があると考える人」と周囲の身近な人は語っていたという。(124ページより)

極め付きのリアリスト

そして、彼のリーダーシップのもうひとつの側面である「目配り、気配り、思いやり」。

差別が諸悪の根源と考えていた彼は、社員一人ひとりを大事にしてきたといいます。そして相手の立場に立ち、そのときなにを伝えるべきか、なにを感じるかについては、人間の達人といっていいほどの感受性を持っていたのだとか。

人間というものの観察と理解において極め付きのリアリストであった。また、考えることは人間の権利であるだけではなく人間の楽しみでもあるので、そのことが人間尊重の原点であると考えてきた。(125ページより)

考える楽しみを持てば、理想や目標が持て、弱い人間も勇気が出て、強くなれる。強い精神は容易なことを嫌い、自分で困難な課題を発明していくという考え方です。(124ページより)

自分のために働け

彼は、「自分は人のためには仕事をしない。自分のために仕事をする」とも言い切っているとか。「どこの会社に『会社のためではなく自分のために働け』という社長がいるだろうか」と指摘したうえで、著者は、宗一郎の思想、志が現在のホンダに脈々と伝わっている理由はそこにあると結論づけています。(126ページより)

内容の説得力は、本田宗一郎について書かれたこの部分だけを見てもおわかりになるのではないでしょうか? もちろん、他の人の項についてもそれは同じ。リーダーシップの本質を理解するためには、格好の教科書になると思います。

(印南敦史)

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