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「うつ」で記憶が低下してしまう? その理由とは

「うつ」で記憶が低下してしまう? その理由とは

Popular Science:うつ病の症状のひとつとして、記憶障害が挙げられることがあります。ただし、一様に記憶の全てに影響を及ぼすということではないようです。

最近行われた研究によると、うつに悩む人々にとって、細部まで鮮明に特徴を記憶しておくのは難しくとも、大まかな全体像は覚えていられるということがわかりました。ブリガムヤング大学のブロック・カーワン教授と同研究室の元大学院生D.J.シェルトン氏は記憶テストの研究を行いました。

その中のひとつが、モニタ上に連続して映し出す様々な画像を被験者に見てもらう実験です。このとき、2回目は既に見せた画像もいくつか混ぜ、被験者には、新しく見たものと既に見たものとを見分けさせるようにしました。

結果的には、83人の被験者の中でもよりうつ症状が重いと分かっている被験者も、「新しく見た画像」と「既に見た画像」との差に大抵気づくということが分かりました。しかし、「似たように見えるけれど全く同一ではない」画像も、「既に見た画像」だと分類してしまいがちだということも分かったのです。

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「似てるけど、全く同じではない」(Shelton and Kirwan, 2013.

カーワン教授は「(うつの傾向がある人は)記憶障害なのではありません。ただ細部を見逃しているだけなのです」と述べています。

うつ症状と記憶の低下との関係

「似通った記憶を区分する処理能力は、特にうつ症状の人々に見られる海馬(脳の中で記憶や情報の統制を司る部分)のサイズが小さいことと関係がある」と、この研究で指摘されています。

海馬とは脳の領域の中でも記憶の情報処理にとって極めて重要な部分です。カーワン教授のいくつかのこれまでの研究成果(リンク先英語)においても、海馬がパターン分離能力(小さな差異を区別する能力)に関係していることが明らかになっています。人がうつ状態にある間は、海馬がパターン分離能力に作用するのと同時に、海馬内では新しい神経細胞が作り出されていないのではないかという仮説の元に研究は行われています。

しかし、この研究には少なからず限界があります。というのも今回の研究では、うつ病と病院で診断された患者を対象に行ったわけではなく、被験者のグループはあくまでうつ症状のレベルとしては平均的で、彼らの評定ではかなり穏やかなうつの兆候を見せていました(なかでも抗うつ剤使用中の15人の患者は、彼らのデータセットからは外されていました。抗うつ剤がニューロン新生、つまり神経細胞の生成に作用するとされていたからです)。

よって、うつ病とニューロン新生、パターン分離能力の間における因果関係を立証するのは極めて困難であるとされています。カーワン教授らは「今後この領域の研究においては、精神疾患、パターン分離、抗うつ剤、ニューロン新生の相互関係を見極めることが重要だ」としています。

Why Depression Ruins Your Memory | Popular Science

Shaunacy Ferro (訳:椎野陽菜)

Photo by Thinkstock/Getty Images.
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