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はんだごてと3Dプリンタで広告をつくる人たちに会ってきた

デジタル領域での広告展開を担うスパイスボックスが3Dプリンタやレーザーカッターを導入した「ラボ」を社内に起ち上げたのは、今年7月のこと。

3Dプリンタがあれば失くしてしまったシャツのボタンから拳銃までつくれるわけで、いまや「だれでもメーカーになれる」時代の空気が、むんむんとしています。とはいえ、"デジタル広告の作り手"がものづくりに手を染める理由とは、何なのか。

プロトタイピングラボ『WHITE(ホワイト)』と名付けられた一室で何が行われているのか、見てきました。

部室だ、と思った

WHITEにあてられたスペースは、決して広くはありません。少し広めの会議室程度の空間にクツを脱いで入ると、そこには白壁と緑の人工芝。車座で会議できるテーブルと、方々に置かれた工作機器の数々。

揃ってます
レーザーカッターと3Dプリンタ。左手奥はそのままオフィススペースにつながっている

デジタルに似つかわしくない
電動ドリル、グルーガン、メジャー...。ファブラボ御用達のアイテム

キネクト
ハックの定番、キネクトとともに「necomimi」も

アニメ目
両目に位置するディスプレイにアニメ風の「目」が表示され、装着すればキャラクター気分を味わえる

Arduino
基盤
Arduinoをはじめとする基盤の数々。Amazonをはじめ秋葉原などでも調達

ファービー解体
右に見えるはファービー。あわれ分解しつくされた姿に

3Dプリンタは3D Systems製の「CubeX」が1台。テーブルに無造作に置かれていた人型の樹脂のカタマリはそのまま左から、順番に試作を重ねた成果物。はじめ樹脂が網状の平面にしかならなかったものを、立体になるまで試行錯誤を重ねたのだとか。

3Dプリンタ
のっち進化
鉛筆で書かれた「のっち」の名がうっすら見える

試作の頼りにしたのは製品マニュアルとウェブ上で得たノウハウのみ。つまり、ここにいるスタッフは皆"その道のプロ"ではない、というのに関心をそそられました。

ここでは広告のクリエイターたちが新しい技術に出合い、どう使いこなせばいいのか、何ができるのかを自ら工夫して切り拓いていく、とでもいえばいいでしょうか。ただし、そんなに格好つけた言い方はふさわしくなくて、新しくて面白そうなおもちゃを手当たり次第にいじってみる、男子校の部室のような雰囲気こそがたとえとして近しいと思いました。

矢野さん
テクニカルディレクターの矢野さんは、始終ラボで「分解」にいそしんでいた

広告を、すぐつくる

山崎さん
クリエイティブテクノロジストの山崎さんは、ラボ内のツールを丁寧に解説してくれた。ただし鼻炎持ちなので「削ったときのホコリには弱い」のだとか

WHITEの主要メンバーは全部で6人。そのうち2人が手を動かして揃えられたツールを使い、ものとして創り出せる技術をもっているのだといいます。代表の神谷さんによると、「ここで誰かがふと思いついたアイデアを口にすれば、そのアイデアをすぐにかたちにできる」。コミュニケーションの行き違いなく、(多少荒削りであっても)理想のかたちを創り出せることが、これからのクリエイティブに欠かせないのだといいます。

神谷さん
バランスボールに乗っかっているのが、神谷さん。WHITEの代表を務めるクリエイティブディレクターである

「企画から始まって実際に世に送り出すまで、とにかく時間をかける仕事が多いのが広告の世界。ウェブであれ何であれ、その時差がときに厄介で、企画したときに描いた姿と完成したものとの間に乖離が生まれることもあります。だからこそ、プロトタイプを創って検証できる場所は非常に有効」(神谷さん)

クライアントに対して企画を提案するそのときに、プロモーションのためのアイテムを試作して披露する。実際に行ったケースでも、これまでにないスピード感を実現できたといいます。

深く、かかわる

データを立体に出力する技術そのものはとりわけ新しいものでなく、ただ、そのためのツールが安価で提供されるようになっただけのこと。でも、結果として、個人がものづくりに深く関われるようになったのは事実です。同時に、作り手と使い手の境界があいまいになった。デジタル/アナログだとか、クライアント/ユーザーだとかを、隔てるものがなくなりつつあります。

あいまいになった境界をいかに自分たちに引き寄せるか。そして、いかに楽しむか。WHITEでの試みには、そのためのひとつのやり方を見た気がしました。

はんだごて

プロトタイピングラボラトリー「WHITE」

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