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あのグラミー受賞ラッパーが、自作曲の権利をオークションにかけて◯◯の道へ

あのグラミー受賞ラッパーが、自作曲の権利をオークションにかけて◯◯の道へ

たとえば小説家などと同じように、著作権は音楽家にとっての生命線。最近では自主レーベルをつくって自身の楽曲を管理するアーティストも出てきていますが(日本でいえば、矢沢永吉さんがその筆頭です)、それは自身が作り上げた作品の価値を守るための唯一の権利だから。いわば「音楽家である自分自身」を継続させるためには、絶対に手放してはならないものなのです。

にもかかわらず、それを売り払ってしまおうというラッパーが現れたというのですから驚き。しかも彼は、ヒップホップのことをよく知らない人ですら名前を知っているであろう大物です。なのに、「ある目的」のためにそれをチャラにしようとしているわけです。さて、誰がそんな突拍子もないことを企んでいるのでしょうか?先に答えを明かしてしまうと、それはCoolio(クーリオ)。90年代にヒップホップを聴いていた人なら、その名には聞きおぼえがあるのではないでしょうか。いや、ヒップホップという限定された範疇だけではなく、洋楽という広いくくりで捉えてもいいかも。なぜなら彼は、映画『デンジャラス・マインド』にもフィーチャーされた1995年のヒット曲"Gangsta's Paradise"によって、グラミー賞まで受賞しているのですから。

ロイヤリティがもたらす年間収入は平均約227万円

ちなみに"Gangsta's Paradise"は、スティーヴィ・ワンダーの"Pastime Paradise"をサンプリングした非常にわかりやすい楽曲でした。その前の年に流行った"Fantastic Voyage"にしても、レイクサイドという有名なファンク・バンドの同名曲を用いたものでした。つまり彼はギャンススタ・ラッパーとしてのポジションをキープしつつも、単にハードコアなだけではない親しみやすいアプローチを実践した人物でもあるのです。

ところがそんな人物が、ロイヤリティ(著作権などの権利の使用料)のオークション・サイト「The Royalty Exchange」において、自身が残してきた「クーリオ・カタログ」全123曲の権利をオークションにかけると発表したというのです。意味が全然わかりません

当然ながらそこには上記"Gangsta's Paradise""Fantastic Voyage"などの代表曲も含まれており、ロイヤリティがもたらす年間収入は平均2万3227ドル(約227万円)に相当するのだといいます。

なおオークションは米東部時間の8月28日正午からスタートし、翌29日の14時に終了する予定だそうです。入札は14万ドル(およそ1370万円)からのスタートらしいので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか? やり方次第では、一生暮らせるだけのお金持ちになれるかもしれません。

ラッパー、料理人になる

という冗談はさておき、気になるのは彼がそのような決心をした理由ですが、これがぶっ飛びすぎている。なぜって、売り上げを「料理人活動」のために使いたいというのですから。でも彼のキャリアを振り返ってみると、これは決して唐突なことでもないんですよね。

なにしろ、2009年には『Cookin' With Coolio』という料理本を出版し、インターネットで脱力感満点の同名料理番組を送り出し、さらには2012年にはセレブが料理の腕を競いあうTVプログラム『Rachael vs. Guy: Celebrity Cook-Off』で準優勝するなどの実積を持つ料理好き。

『Cookin' With Coolio』では調理中に具材の近くでベラベラと喋り続けるので、「こりゃ絶対につば飛んでんな...」と衛生的不安を感じずにはいられないなどツッコミどころはいろいろあるのですが、きちんとしたバックグラウンドを(一応)持っているわけです。

とはいえ、この売り上げで新しい料理本を出版し、みんなでダラダラ盛り上がっているようにしか見えない料理番組版『Cookin' With Coolio』を復活させようという発想はやっぱりブチキレすぎ。だからなおさら、「大丈夫なのかなー」という気分になってしまうわけです。

それに先述したとおり、自作曲を売っぱらうということはラッパーとしての引退宣言とも言い切れなくはないわけで。そう考えるとなおさら、本気で信じていいものなのかと戸惑ってしまうのです。

ラッパーたちの「宣言」

かつて巨額の富を得たMCハマーはそののち破産し、携帯電話の営業などを経て現在は検索エンジン開発中(つまり、いまだに迷走中)。「これからは牧師として生きていく」と宣言して引退したメイスは、数年後にシレッと復活...というようにラッパーの「宣言」はあんまり信用できなかったりします。そもそも、そういう姿勢自体が「芸」でもあるので。さて、今回のクーリオの場合は、はたしてどうなるのでしょうか?

Coolio Catalog Up for Sale|The Royalty Exchange

(印南敦史)

Photo by cinemafestival / Shutterstock.com.
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