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新幹線の清掃スタッフが7分でやっていること:仕事への「意気込み」を再考する

新幹線の清掃スタッフが7分でやっていること:仕事への「意気込み」を再考する

この夏休みに新幹線で帰省された方も多いと思いますが、新幹線を利用するたびに驚かされるのが掃除の早さと手際のよさではないでしょうか? 単に早いだけでなく礼儀もきちんとしているので、とてもいい気分になれます。

この意見に多少なりとも共感してしていただけるとしたら、いや、「それは知らなかった」という方も含め、ぜひ読んでいただきたいのが『新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?』(遠藤 功著、あさ出版)。

鉄道整備株式会社(通称テッセイ)という会社に所属し、新幹線の車両清掃をしている人たちの仕事ぶりや、それらにまつわるエピソードをモチーフにしたドキュメンタリー。ミュージカルにもなり、すでに10万部を突破しているベストセラーです。

到着列車の作業中のことです。

お客さまに声をかけていただきました。

「以前、あなたがたが清掃する姿を見ていました。

動きの速さに驚き、乗車したら車両はさっぱりとしてきれいです。

素晴らしいですね。

もう一度会えたらいいなと思っていましたら、今日、会えました。

あなた方のグループは素晴らしいです。

よく新幹線を利用していますので、これからもよろしくお願いします」

私たちは一列になって頭を下げて、その言葉を胸にいただきました。

(52ページより)

魅せる清掃

東京駅の東北・上越新幹線などの折り返し時間は12分。降車に2分、乗車に3分かかるため、清掃時間はわずか7分しかないのだそうです。つまりその間に、車両清掃、トイレ掃除、ゴミ出し、座席カバーの交換、忘れ物のチェックなどを完璧に終えることがテッセイの車両清掃チームの任務。

しかも原則として、約100席ある普通車1両をひとりで担当するというのですから驚きです。また、トイレ掃除担当のスタッフにしても同じ。どんなに汚れていても7分以内で完璧に終えなくてはならないというのですから、その大変さは想像に難くありません。

21番線で社内清掃作業中、

ホームから熱心に作業を見ている海外からのお客さまがいらっしゃいました。

作業終了後、整列、退場の一礼をすると、

ホームで待っていた30人くらいの海外のお客さま全員から

大きな拍手と歓声をいただきました。

見えているからがんばるわけではありませんが、

見えているからもっともっとがんばらなくてはとも思います。

(68ページより)

礼に始まり、礼に終わる

テッセイの車両清掃チームは担当車両が到着する3分前にホーム際に一列に整列し、列車がホームに入ってくるとお辞儀をして出迎えます。清掃のため車両に乗り込む際も、お客さまひとりひとりに「お疲れさまでした」と声をかけます。そして7分間の車両清掃終了後は整列し、ホームで乗車を待っているお客さまに「お待たせしました」と声をかけ、再度一礼してから次の持ち場へ移動。そんな礼儀正しさが、大きな評価につながっているわけです。

なぜそんなことが可能なのかといえば、それは「自分たちの仕事は清掃だけではない。お客さまに気持ちよく新幹線をご利用いただくことだ」と全員が理解しているから。もちろんそこにたどり着くまでの道のりは楽ではなかったといいますが、経営陣は柔軟な発想力を駆使し、さまざまな局面を乗り越えていきます。

作業終了後、Tさんたちが整列し、丁寧にお辞儀をしたとき、

それを見ていた親子連れのお母さまが

小学校低学年くらいのお子さんに言いました。

「ほらね、礼に始まり、礼に終わるのよ」

お客さまは列車が入線してから作業が終わるまで

私たちを見ていてくださったのでしょう。

Tさんはそれだけで目頭が熱くなりました。

子どもの頃の思い出は鮮烈に覚えているものです。

私たちの行動や仕事がその子の脳裏に一生焼き付くのかもしれないと思うと、

「新幹線劇場」で演じることも誇りに思えてくるのです。

(86ページより)

読み終えたあと、深い感動に包まれるはず。しかし、単に「泣ける」「暖かい気持ちになれる」ということだけが本書の魅力ではありません。根底にあるものは誇りを持って仕事に向き合う人たちの「現場力」であり、それを実現させているのは経営陣のアイデアや意気込み。そこに机上の空論とは異なる強い説得力があるからこそ、パワフルなビジネス書としての側面をも備えているわけです。

(印南敦史)

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