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組織論や意志決定を学ぶ、DeNA南場智子さんの『不格好経営』

組織論や意志決定を学ぶ、DeNA南場智子さんの『不格好経営』

まず、肩の力を抜いた軽快な文体が魅力的。そのスタンスは、ビジネス書や自己啓発書にありがちな「媚びるような、あるいは自己陶酔するような」姿勢とは対極にあるといえます。

何の話かといえば、マッキンゼーのコンサルタントを経て、インターネット・ビジネスの先駆者的存在であるDeNAを成功に導いた著者による『不格好経営 ──チームDeNAの挑戦』(南場智子著、日本経済新聞出版社)のこと。

カテゴリー分けするならビジネス書になるのでしょうが、それ以前に著者の、そしてDeNAの物語として楽しむことができます。そして成功談も失敗談もユーモラスに描かれているため、ひとつひとつのエピソードから、まるでその場にいるかのような説得力を感じるのです。

朝4時ごろ、シャワーでも浴びて出直そうと私はいったん自宅に戻ることにした。旦那がいつも通り凄まじい寝相ですやすや寝ていた。その横で「システム詐欺にあった」とつぶやいた。小さな声だったが旦那はむくっと起き上がり、予算規模などいくつかの質問をしてきた。パニックのなかで要領を得ないながらもなんとか全容を話し終わると、旦那は3つのことを言った。

  1. 諦めるな。その予算規模なら天才が3人いたら1ヵ月でできる。
  2. 関係者、特にこれから出資しようとしている人たちに、ありのままの事実を速やかに伝えること。決して過小に伝えるな。
  3. 「システム詐欺」という言葉をやめろ。社長が最大の責任者、加害者だ。なのにあたかも被害者のような言い方をしていたら誰もついてこないぞ。

これだけ言うと、またひっくり返って寝てしまった。

(32ページより)

上記は個人的に印象的だった部分ですが、たとえばここを読んでみても、本書の「ストーリーとしてのおもしろさ」が伝わるのではないでしょうか? そんなわけで紹介したい箇所がたくさんあるのですが、そうもいかないので、ここでは第7章「人と組織」からいくつかを厳選してみたいと思います。

まず最初は、意思決定についての考え方

継続討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に1週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。(中略)だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。

(198ページより)

次に、集めた人材に対してアドバイスしていること

  • 何でも3点にまとめようと頑張らない。物事が3つにまとまる必然性はない
  • 重要情報はアタッシェケースではなくアタマに突っ込む
  • 自明なことを図にしない
  • 人の評価を語りながら酒を飲まない
  • ミーティングに遅刻しない

(208ページより)

そして、人を口説くときに心がけていること

人を口説くのはノウハウやテクニックではない。「策」の要素を排除し、魂であたらなければならない。きれいごとを言うようで気恥ずかしいが、私が採用にあたって心がけていることは、全力で口説く、誠実に口説く、の2点に尽きる。

(211ページより)

「人が育つ組織」についての考え方も、いたってシンプルです。

なぜ育つか、というと、これまた単純な話で恐縮だが、任せる、という一言に尽きる。

人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。(中略)だからDeNAでは、その人物が精一杯頑張ってできるかできないか、ギリギリの仕事を思い切って任せることにしている。

(214ページより)

なお、「任せる」ことについては、第8章「これから」でも触れられています。

会社の雰囲気がすこぶる良いのは、(中略)「任せる」ことをさらに徹底しているからではないかと感じている。(略)

  1. 全員が主役と感じ、ひとりひとりが仕事や成果にオーナーシップを感じるようなチームの組成、仕事の単位となっているか。
  2. チームの目標はわかりやすく、そして高揚するに足る充分に高い目標となっているか。
  3. チームに思い切った権限委譲をしているか。信じて任せているか。

この3点を満たしつつ、全チームの目標達成が全社の目標達成につながる組織設計をしなければならない。

(242ページより)

これらは「まとめ」にあたる部分なのでまた別ですが、ここに至るまでの章にはDeNAの紆余曲折が克明に表現されており、とても読みごたえがあります。つまり、そうしたプロセスを経てきたからこそ、上記のような考え方も力を持ちうるというわけです。

(印南敦史)

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