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複数のWindowsマシン間のアプリ同期を可能にした『Synclogue』は世界を狙う

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複数のWindowsマシン間のアプリ同期を可能にした『Synclogue』は世界を狙う

「そういえば、なかった」というのが最初の印象。先日発表された『Synclogue』(シンクローグ)は、異なるWindowsマシン間でアプリケーションを同期できるツールです。

時勢に目を向ければ、注目されているのはブラウザベースのウェブアプリ開発。たとえばGoogleはブラウザ上でのアプリケーション利用を進めています。Gmailもしかりだし、Googleドライブに至っては、文書もスプレッドシートもスライドも作成可能。機種に依存しネイティブで動くアプリケーションは不要になるだろうという流れは、確かにあるといえます。

そんな中、「ローカルにインストールしたクライアントアプリ」を「ハード間で同期して利用する」意味と意義はどこにあるのか。開発元であるSynclogueのファウンダー、山本泰大さんに会ってきました。

Synclogueでできること

まずは、Synclogueがどのように動作するかを簡単に紹介。

iPhoneやAndroidのユーザーであれば、その動作を想像しやすいかもしれません。「アプリケーションをクラウド上で同期する」「これまで使っていたソフトウェアを異なる端末にインストールするときに、余計な手間を省く」。それをSynclogueは、Windowsで実現する。

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操作は簡単です。自宅のPCでSynclogueをダウンロード。起ち上げたら、使っているアプリケーションをドラック&ドロップで[インポート]する。あとは、外出先のものでも新しく買ったものでも、複数台のWindows PCやタブレットで[ログイン]して[ダウンロード]。以上です。どこにしまったか分からないインストール用DVDロムを探す必要も、インストールのあとに延々続く「次へ」「次へ」のクリック地獄もありません。設定はそのままに、アプリケーションを利用できます。

それでは、山本さんへのインタビューです。

──最近だとAdobeがスタートしたクラウドサービス「Creative Cloud」でも、複数ハードをまたいだアプリケーション利用が可能になりました。ただ、相手がWindowsとなると、対象となるアプリケーションの数はそれこそ星の数ほどありますよね。

ウェブサイトを見てもらうと、『対応アプリケーション』と『動作が報告されているアプリケーション』の2つがリスト化されています。後者については、ユーザーの方をはじめ、「動いたよ」という報告をいただいた後私たちでも動くことが確認されたら、掲載しています。対応アプリケーションの幅については、当初、エンジニアの方々に向けて発信していたこともあって、彼らの声をすくい上げてきたという背景があります」

──開発者、エンジニア向けのツールということですか?

「私自身、エンジニアではないんですよ。でも、周りはエンジニアばかりだから、開発者向けソフトについての知識は溢れている。一方でビジネスパーソン、経営者層がよく使っているアプリケーションって何があるのかというと、まったくの門外漢なんです。Synclogueを使ってみると、思いもしなかったアプリが動くこともあります。動かなければ声を聞かせて欲しい、対応する機会をもらいたい」

──"エンジニア"ではない山本さんは、普段ローカルでどんなアプリケーションを使っているのか、教えて下さい。

「たとえば会計ソフトもそうだし、名刺管理ソフトも使っています。名刺管理ソフトでいえば、データはローカルに保存されるわけで、出張先のマシンで見られないとなると連絡先すら分からなくなってしまいます。新しいマシンに移行するとなると、さらに苦労しますよね」

──そんなときこそ『Evernote』の登場、となるのでは?

「Evernoteだとどうしても弱い。たとえばOCR(光学での文字読み取り)での管理でも、目当ての連絡先を探すときのソートもそう。名刺を読み込む作業的なコストはそう大差はないのに、専用ソフトだとできることのレベルが遙かに高いというのが、使ってみて感じるところです。出張中であれば、タブレットやノートPCを開いて作業をしますが、会社のPC上のアプリケーションを使えないことにストレスを感じてきました。帳簿ひとつつけるにも、会社に戻ってようやく作業ができるわけです。でも同期ができればそういった問題ないし、たとえマシンが壊れてしまっても環境を再現できるので、バックアップという意味でも安全だと考えています」

壁に貼られたロードマップ

──開発のきっかけを教えて下さい

「Synclogueに着手し始めたのは、まさに自分のパソコンを落として壊してしまったのがきっかけでした。重要なファイルはNASに保存していたので復元できたのですが、アプリケーションだとそうもいかなくって。部屋中の引き出しからDVDロムを探すことから始めて、ひとつひとつインストールして...。必要なアプリケーションはフリーソフトでも相当な数があったし、有料ソフトだとさらにたくさんありました。インストールだけでなく、さらにひとつひとつ再設定しなければならないのは、とても手間だったんです。

その面倒な作業に自分自身が苦しんだし、同時に、いまやパソコンを2台以上持っている人も多くいると思ったら、ここにビジネスのチャンスがあるだろう、と。調査に6カ月。実現可能だという話になってから、資金調達などのアプローチを重ね、リリースを迎えました」

──ブラウザベースのアプリ開発が脚光を浴びつつあるなか、あえてクライントアプリの同期サービスに着目したのはなぜですか?

「まず編集能力の高さでいうと、クライアントアプリに長があるということ。先ほどの名刺管理ソフトが良い例で、できることのレベルが違うと感じるんです」

──Googleの各種サービスはいかがですか。ブラウザ上で使えるアプリケーションが必要なだけ揃っていて、それぞれ機能的にも優れているという印象がありますが。

「Googleの各種アプリケーションは、OSに依存しないという点でとても優れていますよね。MacだろうがWindowsだろうが、なんでも使える。確かに機能的にもよくできていますが、その技術的な<壁>はあまりに大きすぎると思うんです」

──壁、ですか。

「あれだけの高機能を実現するのは、限られた大手にしかできないことだと思います。小さなベンダーが立ち向かおうにも、早晩資金が尽きてしまうでしょう。

Googleのサービスをはじめ、ブラウザベースのアプリケーションにはもうひとつ問題があって、インターネットに依存せざるをえないのです。たとえば会計用のアプリでもウェブベースのものもいくつかあるのですが、ブラウザで動くとなると、ネット環境が整っていなければ[次のページ]に進むのでさえ、すごく時間がかかってしまう。どこかにメモをしておいて、ネットワークが安定したところで作業をした方がよっぽど早いんですよね(笑)。

インターネット環境という点でいえばアメリカや東京はまだ良い方で、アジア諸国への出張を繰り返していると、空港やホテルでさえ不安定で作業に時間がかかります。日本でも、地方での滞在中や新幹線の中でもストレスを感じることがあると思います」

──では、どちらが優れているというわけでもない、と。

「いまは、棲み分けて利用することが大事なのでしょうね。クライアントアプリケーションの良いところを取りつつ、何かあったときのためにクラウドを使う、クラウドはバックアップと同期のために使うためにある、という位置づけになるのでしょう」

──使い分けという点で、もうひとつだけ。セキュリティの観点からすると、複数のマシンを使う際にブラウザで完結できるのは大きなメリットがあると思いますが。

「『セキュリティの高さ』と『使い勝手の良さ』はトレードオフだと思っています。法人に寄ればよるほどセキュリティのニーズは高くなるけれど、個人のユーザーであれば便利さや作業のスムーズさを重視するでしょう。その両方をとろうとすると曖昧なものになってしまうので、私たちは後者、『便利さ』を追求していきたいと思っています」

山本さんのデスク

Synclogueが目指す先は

複数のWindowsマシンでの同期を可能にする。これ、本来なら当のマイクロソフトが実装をしてもおかしくない機能だと思います。実際に彼らも目をつけていないわけもなく、Synclogueは日本マイクロソフトから技術支援を受けているほか、山本さん自身も2、3カ月に一度はシアトル本社を訪れ、定期的なコミュニケーションをとっているとのこと。

「近い将来、『端末』の幅は広がると思っています。パソコンやタブレットという形にとらわれず、テーブルや壁が端末として機能することになるはず。そうした多端末時代の到来をイメージすれば、<同期><共有>というSynclogueの価値がよりいっそう高まると思っています」(山本さん)

Synclogueは現在日本語版のみが提供されていますが、今年中の英語への対応が予定されているそうです。また、翻って現在は、3カ月の無料トライアルを実施中です。詳しくは下記リンクから確認ください。そして、同期できないアプリケーションを見つけたら、対応依頼もぜひ。要望は、Twitterにて[#synclogue]をつけて連絡すればいいようです。

Synclogue

Synclogueのダウンロード

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(年吉聡太)

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