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よりよい結論を導くために弁護士がやっている「決断までのプロセス」

よりよい結論を導くために弁護士がやっている「決断までのプロセス」

スパッと決める技術』(谷原誠著、あさ出版)の著者は弁護士ですが、破産申立てをすることになっていた依頼人の自殺に直面し、後悔した経験を持っているのだそうです。

「破産しても明るく生きている人はたくさんいますよ。人生の再スタートです。大丈夫!」と言ってあげるだけで、状況は変わったかもしれないのです。私はこの出来事があってから、どんな小さなことでも、素早く決断することを心がけるようになりました。そして、「できることは、すぐに行動しよう」と決めたのです。(5ページより)

そしてそんな思いから書かれた本書を、次のような人に読んでもらいたいといいます。

・優柔不断でなかなか決められない人

・いったん決めても、その決断の内容を後悔してしまう人

・なぜかいつも間違った決断をしてしまう人

・最高の決断をしたい人

・自分らしい生き方をしたい人

つまり「決断」の重要性を、きわめて弁護士的な立場から解説しているわけです。第4章「どうすれば正しい決断を下せるか?」中の「弁護士はどのようにして決断するか」を見てみましょう。

「決断を下す」ために弁護士がとるプロセス

弁護士の仕事では、決断を下すために「どの結論がもっとも優れているか」を判断するプロセスが、ある程度体系化されているのだとか。そしてその点について、「会社を辞めた従業員から未払い残業代の請求をされた会社の社長」から相談を受けた場合を例に説明しています。

1.問題点の発見(111ページより)

こうした状況では、問題になりそうなのは次の2点だといいます。

・勤務時間以外で働いた時間があったかどうか

・その時間は会社の指揮命令下にあったのか、あるいは自分で勝手に残っていたのか

会社が「自己負担で残業すべきだ」と主張したとしても、それは法律上通らないこと。そこで、その点を説明して会社の納得を得るようにするそうです。

2.仮説の抽出(113ページより)

この段階では、考えられる限りの仮説を抽出することが大切。このケースでいえば「会社は残業を禁止していたので、定時以降は会社の指揮命令は一切ない」という仮説か、あるいは「毎月一定の残業時間(みなし残業時間を定めており、残業代はその規定に従って支払済みである)などの仮説が考えられるのだそうです。

3.証拠収集(113ページより)

仮説を抽出したら、その証拠集め。この場合なら、募集要項、労働条件通知書、誓約書、就業規則、賃金規定、タイムカード、業務日程などです。重要なのは、有利な証拠だけではなく、不利な証拠もすべて集めていくことだといいます。

4.仮説と証拠との論理的整合性の検証(114ページより)

2で抽出した仮説と、3で収集した証拠が論理的に矛盾しないかの検証。整合性が取れない証拠は排除します。そしてこの作業を続けていくと、証拠と矛盾する仮説がどんどん排除され、有力な仮説だけが残ることに。

5.直感(115ページより)

証拠と合致する仮説が2つ以上残ったら、どちらが正しいかを直感で決定。意外な気もしますが、人は人生経験のなかで「直感」の力を磨いているので、これが頼りになるのだそうです。重要なのは、「直感」があてずっぽうの勘ではなく、私たちが培ってきた膨大な経験と知識によって、正しいと思われる結論を自然と導き出す能力だということ。

全方位に目を配ろう(116ページより)

著者が弁護士として意識しているのは、全方位に目を配ること。たとえば先ほどの元従業員からの残業代請求の件だと、クライアントは会社側。しかし、だからといって会社の事情だけを検討していると、足もとをすくわれかねない。会社の事情と考えると同時に、元従業員の視点も加味すべきだというわけです。

自分の判断が周囲に与える影響は?(118ページ)

これらは、我々の「決断の現場」にはまったく無関係であるようにも思えます。しかし著者は、「この考え方は、あなたが決断を下す場面でもおおいに役立つでしょう」と断言しています。

理由は明快。なにかを決断する際には必ず、「その決断によってまわりがどのように感じ、どう反応するかをシミュレーションしておく必要がある」からです。「相手の立場に立って考えていけば、周囲の反応を予測することができる」ということ。逆から考えれば、そういった説得力を持たない場合、どんな場面においても「スパッと決める」ことは難しくなるわけです。

このように本書では、弁護士という特殊な立場に基づいた決断のあり方が細かく説明されています。非常にユニークな視点ですが、参考になる考え方がきっと見つかるはずです。

(印南敦史)

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