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イノベーションを生むデザインに必要な4つのこと

イノベーションを生むデザインに必要な4つのこと

経営は何をすべきか』(ゲイリー・ハメル著、有賀裕子訳、ダイヤモンド社)の著者は、世界的な影響力を持つ経営思想家。『コア・コンピタンス経営』『リーディング・ザ・リボリューション』『経営の未来』と、過去の著作もベストセラーになりました。

そんな人物が本書で訴えかけているのは、グローバル社会でのマネジメントのあり方。本人の言葉を借りれば、「容赦ない変化、熾烈な競争、飽くなきイノベーションを特徴とする世界を勝ち抜く組織を築くための、多面的な話題を取り上げ」ているわけです。(「はじめに」より)

著者がなにより大切だと考えている要素は、「理念」「イノベーション」「適応力」「情熱」「イデオロギー」の5つだというのですが、なかでも個人的に強い関心を持てたのは、第II部「いまイノベーションが重要である」。特に共感できたのは、ここで展開されている、デザインとイノベーションとの関係についての考え方でした。要点を引き出してみます。

偉大なデザインを生み出す(83ページより)

デザインの威力と重要性に重きを置いているという著者は、偉大なデザインは「ほとんど感情的ともいえる反応」を引き起こすと主張しています。その理由は次の4つ。

予想もしなかったものである。

「秀逸なデザインの製品は気が利いていて目を見張らされる。見た瞬間に『何て粋なんだ!』と叫んでしまう」。この表現に見合った最大の好例として引き合いに出されているのは、いうまでもなくiPhoneです。

驚くほど有用である。

ジップロック、チボリ・オーディオ製の卓上ラジオ、フィリップスの電動歯ブラシ「ソニッケアー」、コーヒーマシンの「ネスプレッソ」、果てはグーグルのホームページまで。デザインに秀でた製品は工夫に富み、直感的に使うことができ、完璧に目的に沿ううえ、余計なものは一切ないといいます。

見た目が申し分ない。

真に優れたデザインが私たちの視覚にもたらすものは、「チョコレート・アイスクリームが味覚にもたらすものと同様の効果」なのだとか。ポルシェ911、ライカの「M9」、イームズの「ラウンジチェア」、ロロ・ピアーナのあらゆる製品もまたしかり。

際立って良心的である。

トヨタの「プリウス」やナイキのスニーカー「トラッシュ・トーク」(リサイクルした靴底と廃材でできている)がそうであるように、消費者は、地球環境を守ろうとする意志と、世界を変えようとする情熱が込められた、社会的責任に沿う製品を求めているもの。そして「素晴らしいデザインを生むのは天才的な資質ではなく共感力である」とも著者は訴えています。

そして、もうひとつ納得できたのが次の項目です。

アップルを解剖する(111ページより)

この10年ですさまじい成長を遂げてきたアップル。彼らと一般的な企業との差を、著者は次のように位置づけています。

・アップルならではの強み

情熱を持つ、先手を打つ、意表を衝く、現実にとらわれない 絶えず幅広い分野でイノベーションを実践する、細部にまで気を配る、エンジニアの発想とアーティストの感性を持つ

・一般的な企業の特徴

合理性を重んじる、慎重である、満足を届けようとする、地に足が着いている、必要ならイノベーションに務める、高い正確性を目指す、エンジニアの発想と会計士の感性を持つ

たいていの企業では会計士的な発想が主流で、アーティストの感性は足りない。経営陣はコストは知り尽くしていても、価値はほとんど理解しない。ここにアップルと一般的な企業との差があるというのが著者の主張。とても説得力を感じます。そしてここにも、広い意味での「イノベーションの可能性」が隠れているとはいえないでしょうか?

以上、デザインの側面から紹介してみましたが、本書はあくまで「経営のメソッド」。さまざまなま角度から、あらゆる考察がなされています。文体も親しみやすくスラスラ読めるので、ぜひ手にとってみてください。

(印南敦史)

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