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BALMUDAが他の家電メーカーと違うワケ:代表・寺尾玄氏インタビュー

家電ベンチャーBALMUDA(バルミューダ)が生み出す製品には、常に既存のものとは一線を画す「何か」があります。

画期的な羽根を搭載することで今までにない風を生む扇風機「GreenFan」。吸引と送風用に2枚のファンを搭載して毎分6000リットルの吸引力を誇る空気清浄機「JetClean」。どれも他社製品には見られないオリジナリティを持っていて、美しいミニマルデザインが購入意欲をそそります。でも、果たしてそれだけが同社の製品の魅力なのでしょうか。

創業者であり今も開発のトップを担う代表、寺尾玄氏にインタビューをすることで、他にない「何か」の正体に迫ってみたいと思います。

短い人生の中で「世界中の人にほめられたい」

──新規参入が珍しいといわれる家電業界で、BALMUDAはベンチャーとして「GreenFan」をはじめヒット商品を出し続けています。寺尾さんを動かす原動力は何なのでしょうか。

寺尾:Life is Short」。これが私の座右の銘です。今年40歳になるのですが、仮に60歳で身を引くことを考えると、20年しか残されていません。そうなると時間は短いです。あと20年でなにができるかなって考えますね。だから常に急いでいます。

それと、本当に20年で実現できるのかわからないくらい大きな夢があります。

短い人生の中で「世界中の人に誉められたい」

──大きな夢ですか。

寺尾:BALMUDAという会社を通じて世界に大きく貢献したいと考えています。そして、究極の目標は、「世界中の人にほめられること」です。できるかどうかはわかりませんが(笑)。人間にとって人に必要とされてほめられることほど社会活動中で価値があるものはないと思っています。

──そこが原動力なんですね。

寺尾:そうです。自分はこの場所でいったい何をしたいのか、何が欲しいのかをずっと考えてきて、たどり着いた答えです。思えばこの「願望」が自分の原動力だし、この会社のエンジンになっているのかな。

ロックスターになりたかった少年は、後に扇風機を作り始めた

──そのような「願望」はいつ頃からあったのですか?

寺尾:きっと子どもの頃からです(笑)。良いことをして誰かにほめられたいって、すごくピュアで誰にでもある願望だと思います。求めるものが変わっていない。成長していないのかもしれませんね(笑)。

──音楽の道から家電メーカーをたちあげるまでの経緯を聞かせてください。

寺尾:音楽をやっていた時は、ロックスターになりたいと思っていました。当時は気づいていませんでしたが、ロックスターになって世界に貢献したかったんだと思います。自分が音楽から貰ったいい影響や、勇気や、励ましを人に提供できたら最高だなと思っていました。でもなれなかった。音楽という夢が目の前で終わっていきました。

そうは言っても何がしたいというエンジンは回り続けている訳で、次の夢を探していました。そのときもの作りに行きついた。町工場に飛び込んでチタン削り出しのキーホルダーとか色々作ってみたんですよ。その中にパソコンの冷却台があったんです。

──パソコンの冷却台?

寺尾:インターネットが普及して初代iMacが出てきた頃の話です。パソコンが音楽スタジオになり、図書館になり、製図板にもなるようになった。このすごい道具で世界が変わるのではないかなと思ってすごくドキドキしていました。中でも特にMacに惚れていて、もっと使いやすくしたいと思ったんです。そこでPC周辺機器から始めました。

ロックスターになりたかった少年は、後に扇風機を作り始めた

──そこからどうして扇風機を作り始めたのですか?

寺尾:BALMUDAの製品に対する想いは扇風機GreenFanが出る前とそれ以降で大きく2つに分けられます。GreenFanを生み出すまでは「自分が欲しいものを作る」ことだけを考えていました。GreenFanを作り始めてからは、「人に必要とされるもの」にフォーカスしています。

GreenFanを構想している時、何が必要とされているかを考え、地球温暖化と化石燃料の枯渇が浮かびました。エネルギーに対しての不安や渇望っていうのはこれから高まっていくと思います。10年後、夏はもっと暑くなるのにエアコンが使えない時代がやってくるじゃないのかな。そこで、なるべく少ないエネルギーで人の暑い・寒いを解決しようと考えたのです。

とはいえ、扇風機を作るのに必要な金型代が調達できないのはわかっていたので、なかなか手をつけられませんでした。そんなとき、リーマンショックによって会社が倒産寸前に追い込まれました。どうせ倒れるなら最後は前に倒れようと、当時一番やりたかった扇風機を作り始めたんです。

今の原型となる二重構造の羽根はあっという間に完成しました。構想期間は長かったのですが、いくつかのヒントからアイデアを思いつき、試作してみたのが、ほぼ現在の形だったのです。思い描いていた風が出たので、会社が倒産するか、むしろ発展して未来へ扉を開くかになりました。すごくいいか、すごく駄目かどっちかなので、死に物狂いで頑張りましたね。でもすごく楽しかったです。先の見えない道を全速力で走る爽快感は今でも忘れられません。あの時のことは私の誇りですね。

「機能、性能はナンバーワンをいつも目指します」

──家電ベンチャーとして事業を続けていく上で、難しいことは何でしょうか?

寺尾:実現できるかわからないことをいつも目指しているので、やはり開発が一番むずかしいですね。空気清浄機を作る時も国内ナンバーワンの性能を目指しました。成果を得られたとしても、立案時にはできるかどうかわからないものですよね。

──「目指すのはナンバーワン」ですか!?

寺尾:機能、性能はナンバーワンを目指します。もちろんそれだけでなく、使いやすさと、美しさにも注力します。

そして、一番いいものが出たら、選んでくれる方は絶対にいると思います。

──今選ばれている理由は、自分のやってきたことと時代がマッチしてきたということでしょうか。

寺尾:そうかもしれません。しかし最近よく実感するのは、会社の力が付いてきたということですね。今の開発陣の半分は電装チームです。家電の「電」なのだから、この部分こそ効率化してブレイクスルーしたいという想いがあったんです。例えば、今回のGreenFan2 とGreenFan miniのアップデートは現在の開発チームがなければできなかったと思います(※)。ちなみにJetCleanからは完全に自社開発。回路はもちろんソフトウェアまでやっています。

※編集者注:同社は新製品の開発だけでなく、既存の商品のアップデートも行なっている。この度リリースされたGreenFan2 は最小消費電力を2W、GreenFan miniは1Wと、前バージョン以上に抑えています。こういった既製品への揺るぎない愛情もなかなか他社では見られない、BALMUDAらしさではないでしょうか

「機能、性能は絶対ナンバーワンをいつも目指します」

本社はいつも武蔵野市周辺

──オフィスを武蔵境にかまえた理由を聞かせてください。

寺尾:当時住んでいた武蔵野市の自宅で創業して、初めて事務所を借りたのが東小金井。次に引っ越したのが吉祥寺で、手狭になって今のオフィスになっています。いつもこの周辺です。

──23区内に構えようとは思わないのですか?

寺尾:BALMUDAは販売会社でなく、もの作りの会社です。結局のところ、私たちのミッションは「何を作るか」。もの作りにいい環境というのを考えていくと、23区である必要はないと思います。都心は車も渋滞するし、人が多いでしょう。それに広いところを借りると家賃も高い。我々はむしろ実験用にスペースが必要なんですよね。

世界。そして、まだまだやらなきゃいけないこと

──「世界」をどう意識していますか?

寺尾:世界中でBALMUDA製品を販売したいと思っています。韓国では去年から始まっていて、ドイツにも現地法人を立ち上げました。他には、中国での販売計画も実行準備段階に入っています。

一般的に海外でものを売ろうとすると、テストマーケティングをして、現地のディストリビューターと契約して売ってもらうという形が普通。でもブランディングにしろマーケティングにしろ、一番一生懸命になるのは自分事だと考えられる人間、すなわち自社の人間なんですよね。

現地法人を立ちあげて自分たちで苦労しながら開拓することで、最終的にはこっちのほうが速かったと言えるんじゃないかなと考えています。珍しいやり方だけど、BALMUDAらしいと思うんですよね。

──BALMUDAは今後、どのようになっていくのでしょうか?

寺尾:誰しもが抱く「暑い寒い」を解決しようにも、まだ扇風機と空気清浄機しか出していない状態です。まだまだやらなきゃいけないことがあるので、順次やっていく予定です。ちなみに、今年の秋にもすごい製品が出る予定です

──最後にもうひとつ質問させてください。今までやってきたことで「間違い」はありましたか?

寺尾:「間違い」って何なのでしょうか? 企業なので、赤字や黒字になるという指標はありますが、それが正しいか間違いかっていうのは人それぞれだと思います。事業として成功する失敗するっていう意味では、もちろん成功したいです。人々にほめられるという目的を果たすためには成功し続なければいけないと思っています。

成果は結局、自分のセンスと時代性とが噛み合うかに左右されるものだと思います。でも、大前提として「自分は貫かなくちゃダメ」です。これは音楽やってる時に学んだことですね。

それで間違えた、成功できなかったということになっても、しょうがないと思っています。その時は、潔くあきらめましょう(笑)。

世界。そして、まだまだやらなきゃいけないこと

インタビュー中ずっと感じたのは寺尾氏の考え方が、どこまでも真っ直ぐでブレがないということです。強い信念、寺尾氏の言葉を借りると「世界中の人に誉められたい」想いが製品に共通する機能性、環境性、デザイン性を含めた「BALMUDAらしさ」を生んでいるのではないでしょうか。難しい理屈や、考え方を抜きに、想いに向けて突き進む同社の秋に出る予定の新製品にも期待です。

(五十嵐弘彦)

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