部下を効果的に育てるために「捨てるべき思い込み」と「果たすべき役割」

『指導しなくても部下が伸びる!』(生田洋介著、日経BP社)の著者は、さまざまな研修を行なってきた結果、人は「教わる」よりも自身の「経験から学ぶ」ほうが、影響力が大きく、満足感が高いことを実感したのだそうです。つまり「指導しない」とはリーダーが「楽をする」ということではなく、部下の成長のために「効果的な育成をする」ということ。
たしかに、それはとても大切なことかもしれません。しかし実現するためには、リーダーの心構えがとても大切なのではないでしょうか? そこでリーダーに求められるべきものが記されている序章「"指導者"ではなく"促進者"になれ」から、要点を引き出してみましょう。
マネジャーはなぜ大変なのか?
中間管理職であるプレイングマネジャーはプレーヤーとして優秀な人が多いため、部下に高いパフォーマンスを求めがち。そして結果的には「そんな簡単なことがなぜできない?」と部下にストレスを感じ、本来は部下が担当すべき仕事を自分で抱え込んでしまうのだとか。そういうタイプの多くは、自分で考え、実践して成長してきたので、育成の経験やバリエーションに乏しいのだそうです。
だからこそ、チームの育成を望むのならば、まずは自分自身を見つめなおすところからはじめてみるべきだと著者は説いています。(14ページより)
今までの"思い込み"を捨てよ
物事をいつもとは違う視点から見てみると、意外な気づきがあるもの。従来の"思い込み"を捨てることが大切だということで、著者はありがちな3つの思い込みを紹介しています。
- 「自分は、リーダーとしてトップの成績を残さなければならない」?/成績さえ残していれば認められると考える人は少なくありませんが、数字だけで本当の評価を得ることはできません。必要なのは、チームをしっかりマネジメントできる能力。一時的に自分の成績が落ちることがあっても、マネジメントに時間を割くべきだといいます。
- 「部下は、細かく指導しなければ思うように動いてくれない」?/育成とは、思いどおりに動く部下をつくることではありません。部下がのびのびと個性を発揮できる環境を整備することこそが、マネジャーの役割。
- 「メンバー各自ががんばっていれば、チームの目標は達成される」?/
- 目標を達成し、チームで成功体験を共有するためには、チーム力の底上げが不可欠。そこで、チームでの目標達成に目を向ける習慣をつけるべきだそうです。
(16ページより)
指導しなくても人は成長する!
研修プログラムを提供する際、著者は「促進者」という立場をとっているそうです。そして自身の役割を、次の5点であると定義づけています。
- 参加しやすい環境をつくる
- プログラムの全体像とゴールを明確にする
- 目標を達成するために最適なプロセスを事前に組み立て、参加者と共有する
- 教えるのではなく、まずは考えさせる(=参加者の積極的な参加を促す)
- 参加者やチームの状態を常に観察し、適宣介入したり、プログラムを調整する
(18ページより)
これらは、部下の指導にも応用できるのではないでしょうか?
"促進者"の心構え
促進者という立場でチームのメンバーと向き合う際には、次のような考え方が大切だそうです。
- 誰もがいい仕事をしたいと考えていて、そのための知性と能力を持っている
- 立場や役職にかかわらず、誰の意見にも同じだけの価値がある
- 意思決定はひとりで行なうよりも、チームで行なった方が質の高い結果が出る
- 人は、みずから考えたことに対しては主体性と情熱を持つようになる
(20ページより)
チームが人を育てる
部下が成長しないかぎり、チームとして成果を上げることはできないといいます。メンバーの成長を促す最も簡単な方法は、経験を積ませることだそうです。
さて、本書には「これだけはやってはいけないリーダーのNG行動チェックリスト」もついています。
- 自分からあいさつしない
- 部下と、仕事以外の話をしない
- 部下の話を途中で遮り、最後まで聴かない
- 部下をけなす、非難する
- 部下を人前で叱咤する
- 部下の弱みばかりを指摘する
- 自分のやり方を部下に押し付ける
- チームの方向性を示さない
- 部下に仕事を任せず自分で抱え込む
- 会議で一方的に話し続ける
- 部下と一緒に会社についての愚痴を言う
- 部下の失敗を見て見ぬふりをする
- 部下の手柄を横取りする
- 自分の間違いを認めない
- いつも、しかめっ面をしている
(22ページより)
ひとつでも当てはまったら、本書を読む価値があるそうなので、ぜひチェックし、そして読んでみてください。
(印南敦史)