
Jacob Tomskyさんは、10年以上ホテルに勤務し、駐車係からフロントのマネージャーまで経験してきたホテルマンです。Tomskyさんは著書『Heads in Beds』の中で、ホテルというおもてなしビジネスは、私たちが想像する以上に切実で狂気じみた実態であると教えてくれました。
今回は面白おかしく、驚くべきベルボーイの不文律、滑稽に思える駐車係の行動、掃除係の少し汚い知られざる秘密などを暴いていきます。
とはいえ、あくまでもTomskyさんの意見ですので...あしからず。
私は10年以上ホテルに勤務してきました。
常にお客さまを中心に考え、チェックイン・チェックアウトをし、飲み物をサーブし、白いシーツと白いパンティーを分け、車を停め、ルームサービスの食事の味見をし(提供前だけでなく、悲しいかな提供後にも)、トイレ掃除をし、レイトチェックインを取り消し、目覚ましコールをし、ミニバーのチョコを食べていないかチェックし、冗談に愛想笑いをし、お金を受け取ってきました。
ニューオーリンズからニューヨークまでさまざまなホテルで働き、ホテル業界のあらゆる側面を見て、ルールを学んできました。今後は一切関わることがないと思うので、今回はホテル業界の知られざる実態と裏側について、お話していきましょう。
おいしい話を教える前に、まずはホテルの従業員を困らせるお客さんの態度について、警告もかねてお教えしましょう。
お客さんが言わない方がいい言葉

「私のクレジットカードが使えない?そんなはずはない、もう一度やってみて」
クレジットカードが一度拒否された場合は、間違いなくもう一度拒否されます。ですから、もう一度やるように従業員に頼むのはやめましょう。クレジットカードはしわくちゃの古いお札とは違います。銀行システムは何度も突き返してくる自動販売機ではありません。
銀行やカードのシステムはきちんと稼働しており、あなたのカードや銀行口座が機能していないのです。そちらに電話してください。ちなみに、その場合はホテルの電話は使えません。
「アップグレードしてくれるって聞いたんだけど」
一体どこの誰がそんなことを? うちの従業員ですか...。その従業員とやらは、あなたがドアマンにチップを払うようにと言ってくれ、と口にしているようですが。
「私のこと、覚えてませんか?」
1日平均500人のお客さまの相手をします。2年以上前に滞在したのであれば、これまでにのべ30万人以上のお客さまを接客しているので、そう簡単には思い出せないし、覚えていません。いや、ちょっと待てよ...いやいや、やっぱり思い出せません。
お客さんがやらない方がいい行動

チェックインしている時に携帯電話で話し続けない
誰かに片手間に対応されている時、相手がどんな気持ちになるか分かりますよね?
「あー、はいはい、あの人たちはできないって彼女には言ってあるんだけど。彼らがどんな人かよく知ってるからさ」などと、意識も会話も電話に向かっている人から、チラリと投げかけられる視線や眉毛の動き、気のないうなずきなどで対応されている人の身になってください。
ちょっと電話を保留するか、後でかけ直すかして、あと5%でも意識をフロントのチェックインに向けられないものかと思います。5分後に電話は終わったとしても、自動チェックイン機のように扱われたフロント係は、そんな人にはあまり良くない部屋をあてがうことになります。
クレジットカードを乱暴に出さない
クレジットカードを指で折り曲げながら音が出るように机へたたきつけたり、ポイと投げ出したりしたらどうなると思いますか? 相手に嫌われますよ。
お金を計算している時に手を出さない
まだお金の計算をしている時に、目の前に手を出したりしないでください。それでは気が短いのをあらわにしているだけです。きちんとあなたに返すお金を数えているのですから、リラックスして待っていてください。お金を前に手を出していたら、5歳の子どもみたいです。
フロント係に悪態をつかない
私は、あまりにも態度が悪い人の部屋を、事前に予約していたゴージャスな部屋から変更したことがあります。そのお客さんは、最初に自分たちには、バスルームからセントラルパークが見える部屋が用意されていたことを知りません。
私はそのお客さんが、自分の奥さんをどなりつけたり、肘をつかんで手荒く連れて行ったりしているのを見て、その部屋に値しない人だと思い、変更しました。
また、ニューヨークでは部屋番号1212になると、間違い電話がひっきりなしにかかってくるということを知りました。
なぜかというと、ほとんどのお客さんが、部屋からホテル外部に電話をかける時には、最初に9をダイヤルしてからかけなければならないと知らないからです。ニューヨーク市内の電話番号は「1-212」で始まります。
本来なら「9-1-212...」とかけなければならないところを、「1-212...」とかけてしまう人が多いので、部屋番号1212へのホテル内直通電話がかかってしまうのです。1212番の部屋のお客さんは夜中の3時でも、間違い電話に悩まされることになります。フロント係に悪態をつくと、このような部屋にされる可能性もあります。
お客さんが知っておいた方がいい裏技とマナー
※編集部注:この裏技はTomskyさんがアメリカのホテルを例に言っているものであり、編集部で推奨するものではありません。実践したことにより問題が起きた場合でも、一切の責任・賠償は負いかねますので、あらかじめご了承ください。
ミニバーを使ってもお金を支払わない
ミニバーの料金というのは、請求書でも問題になることの多い料金です。なぜかというと、人間が作業しているからです。センサーが設置されていない一昔前のミニバーは、係の人間が1日1回飲み物やスナックをチェックしていました。その係の入力ミスや、補充の遅れ、二重の補充など、あらゆるミスがミニバーの料金請求では起こっていました。お客さんが「こんなものは食べて/飲んでませんけど」と言う時は、その言葉を半分も聞かないうちに、私は料金を削除しにかかります。
有料映画の料金も支払わないで済むことがある
まず、普通に有料の映画を楽しみます。フロントに電話をして「間違ってボタンを押して/クリックしてしまいました」、「映画を見ていたら途中で切れたんですけど」、「映画が終わる前に画面が固まって再生しなくなったのですが」のどれでもいいので言ってみましょう。「もう一度、再生しますので少々お待ちください」と言われたら、「もう寝るので/出掛けるので結構です。料金を取り消してもらえますか?」と言います。もしくは別の映画を見たいと言います。これで1本分はうきます。
当日のキャンセル料金を払わないようにする
この裏技は事前に料金を支払うホテルや、オンラインの予約システムでは使えません。電話などで「普通に」予約したり、料金は当日ホテルで支払ったりする場合のみ使えます。
予約した日に急にキャンセルをしたくなったら、ホテルに電話をして「家族が急病になり、仕事の日程が急に変更になったなり、その日にホテルに泊まれない」ということを伝えます。その代わり、1週間後(もしくはキャンセル料が取られないだけの日数をあけた後)に変更したいと言うのです。
大抵のホテルは罰金なしで予約の日にちを変更してくれます。ここまでくればもうけものです。後は次の日でもいつでもいいので、キャンセル料が取られないうちにもう一度電話をして、この延期した予約をキャンセルすればいいのです。
クレームを言いたい時はミントを食べてから
口臭のキツい口で言われるクレームより、爽やかなミントの息とともに言われるクレームの方が、相手も聞く耳を持つというもの...というのは個人的な意見ですが、とにかくミントを食べてからに越したことはありません。
「いかに飛行機が遅れて大変だったか」という話をしない
そんな悲惨な話は、私はまったく聞きたくありません。
お客さんから名前で呼ばれてもあまり気分が良いものではない
ホテルマンは大抵胸に名札を付けているものですが、だからと言って、これは断りもなく名前を呼ぶために使うものではありません。どんな目的であれ、ホテルの従業員を個人名で呼ぶのであれば、一応事前に「○○○さん、とお呼びしてもいいですか?」と聞いてから呼んでください。
フロント係がよくつくウソの決まり文句
- すべての部屋は基本的に同じ大きさです。
- もちろんお客さまのことは覚えています!おかえりなさいませ!
- 申し訳ありませんが、どうにもいたしかねます。
- ご意見などありましたら、何なりとお聞かせください。
- ベルマンに不行き届きがあり、大変失礼しました。マネージャーにもきちんと報告いたします。
- そのようなつもりではありません。
- すぐに郵送いたします。
- どういたしまして。
- 本当に大変申し訳ございませんでした。
- またのお越しをお待ちしております!
Jacob Tomskyさんの著作『Heads in Beds』より
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Confessions of a Hotel Insider | The Week
Jacob Tomsky(原文/訳:的野裕子)
Image: Shutterstock.com