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ライフハッカー編集部  - ,,,,,  11:00 PM

スタートアップ大国イスラエルが仕掛ける世界制覇系ビジネスの秘密

スタートアップ大国イスラエルが仕掛ける世界制覇系ビジネスの秘密

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国民1人あたりのベンチャー投資額が世界一の「スタートアップ大国」として知られるイスラエル。人口800万人のこの小国には、100億円を超える金額で買収される企業も生まれています。

どんなイスラエル企業が注目を集めているのでしょうか? そして、なぜイスラエルからこんなにもスタートアップが生まれるのでしょうか? 10年以上前からイスラエルに注目し、現地で日本企業向けのコンサルティングを展開する株式会社イスラテックの代表、加藤清司さんにイスラエルの今を伺いました。


加藤清司(かとう・せいじ) |株式会社イスラテック 代表取締役

1980年11月19日浜松生まれ。浜松北高、静岡理工科大学卒、2006年、「ある技術」に注目し、そのルーツを調べ、イスラエルにたどりつき、イスラエルへと旅立ち2ヵ月過ごす。帰国後、「イスラエルのハイテク」をテーマに情報発信を開始すると、企業や行政からイスラエルに関する調査の仕事依頼がくるようになり、株式会社イスラテックの創業に至る。開始時から一貫して、一次情報を得ることを重視し、独自のイスラエルスタートアップのデータベースを構築している。現在、日本を代表するテクノロジー企業を対象に、イスラエルのスタートアップとのアライアンスを支援。2017年1月、『スターアップ大国イスラエルの秘密(洋泉社)』を出版。


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加藤氏と著書『スタートアップ大国イスラエルの秘密』。


日本の大企業はすでにイスラエルにて手を伸ばしている


── 加藤さんが立ち上げた会社、イスラテックはどんな事業をしていますか?

加藤さん:基本的にやっていることは、日本企業に向けてイスラエルのスタートアップ企業の情報を調べることを一番の柱にしています。例えば、研究開発力を高めたいとか、イノベーションを起こしたいとか、投資していきたいといった日本企業のニーズに基づいた調査です。もちろん、調査の中に、イスラエル企業の目利きもあれば、コンサルティングもあれば、その先のコーディネート、現地に一緒に付いていって企業に会わせたりとか、連絡を取ったりとか、会社によっては交渉の代行、現地の拠点をつくるところを手伝ったり、戦略を立てたり、競合分析もしたりとか、けっこう幅広くやります。


── あまり日本でイスラエルの情報って出ていないですよね。加藤さんの本『スタートアップ大国イスラエルの秘密』がAmazonの部門別ランキング1位になりましたが、まだまだ知られてない。

加藤さん:そうですね。まだあまり知られてないんですが、日本の大手自動車メーカーのトップも3カ月に1回イスラエルに通っているそうです。それくらいコミットしているのが現状です。

── ここ数年で言うと、加藤さんはイスラエルのどんな技術・企業に注目されていますか?

加藤さん:自動運転の分野でMobileye(モービルアイ)という企業があります。自動運転技術の根幹は、カメラを使って物事をしっかり捉えて判断する技術です。日本の大手自動車メーカーがその技術を開発したとき、複眼のカメラ、つまりカメラが2つないと実現できない技術だったわけです。つまり、人間の目と一緒で立体にして距離を測ろうとすると、1つの目だとすごく難しいんですね。でも、このMobileyeという会社は、1つのカメラで同じことができる、という理論をしっかり構築していたんです(同社は、2017年3月にIntel(インテル)に150億ドルで買収されました)。


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Mobileye製カメラの動作イメージ。


日本の自動車メーカーはそれが信じられなかったようです。自社でどうしてもできなかったので。だから、できるならやってみろ、ということで研究費を出したそうですよ。そしたら本当に作ってしまった、というわけです。


── すごい技術力ですね。

加藤さん:そうなんです。まず、カメラが1個でいいなら、かかるコストが半分なんですね。そうすると、自動車メーカーはコスト競争で確実に有利に立てるわけです。実際、Mobileyeはこの分野の市場で世界シェアの80%以上をとっています。


── 他に、同じように優れたイスラエル企業はありますか?

加藤さん:はい。Autotalks(オートトークス)という会社があります。この企業は、自動車同士の高速通信技術を開発している企業です。例えば、高速道路で近くを走っている車同士がブレーキの情報を通信して共有し合えたら車はもっと安全になりますよね。でも、事故りそうになったときにその通信が3秒もかかったら意味がありません。このような通信には速さと並列性が必要で、つまり、1台だけ高速で通信できても意味がなく、2台目も同じくらい速く、同時に通信できる必要があるわけです。

Autotalksの技術は、1000台くらいの車と同時に高速通信ができます。彼らのチップが1つあると、スマホとも自動車とも、道とも、いろんなところとの通信が高速にできると言われていて、画期的な技術ですね。


── 自動車以外の分野ではいかがですか?

加藤さん:OrCam(オルカム)が面白いです。メガネ型のウエアラブル機器で、眼鏡を通して見た文字情報を音声で読み上げてくれます。使い方としては、例えば新聞を読むときに、文字を指差すだけで音声で読み上げてくれます。他には、Google Analyticsの全ウェブ版と言われるSimilarWebなんかは身近に使え、競合サイトの訪問者数などを簡単に調べることができるウェブツールです。


── アグリテック(農業技術)はどうですか?

加藤さん:イスラエルは国土が小さくて砂漠が多いにもかかわらず、食料自給率100%オーバーで食料輸出国なんですね。オランダ、イタリアと並んで、いわゆる農業先進国と言われていて、その土台は高度な農業技術で支えられています。例えば、水技術だと、茎の栄養度を測って、それに応じた栄養を茎の根本に与えていく技術があります。点滴潅水技術と言われるもので、植物の茎の根元だけに水を垂らすシステムなんです。これは、Netafim(ネタフィム)というイスラエルの会社が開発しました。


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マサダ砦の遺跡から死海方面を映した写真。都市部と砂漠が同居しているイスラエル


あと、先ほど自動車分野のお話にも少し関係してくるのですが、画像解析などの技術も農業に活かされています。例えば、ビニールハウスでトマトを栽培するとして、トマトの画像を解析して、「このトマトは栄養度が足りないからもう少し栄養を増やしたほうがいい」とアドバイスしてくれるシステムもあります。さらに最近だと、上空にドローンを飛ばして、畑の土壌の栄養度を測り、ここはほかの土壌に比べて栄養度が足りないからここはもうちょっと肥料をまいてください、といったフィードバックがもらえる技術も出てきました。


── すごいテクノロジーですね。日本の農業が遅れてるように感じます。

加藤さん:農業技術については、私が知っているだけでもこれくらいあるので、実際にはもっと多いと思います。


物事の本質を考えるプリミティブな発想


── では、イスラエルでこれだけのイノベーションが起こる理由はやっぱり教育なのでしょうか?

加藤さん:そうですね、教育の要素がとても大きいと思います。イスラエル人って物事の本質を考える人たちなんですね。だから、例えば日本人で言うと「Aという問題を解決したい」と言うと、イスラエル人から逆に質問されて、「Aを起こしている本当の問題はなんだ?」って絶対言われるんですよ。彼らがやっているのはそういうプリミティブな発想なんです。

1つの例でいくと、私が1月に行ってきたイスラエルの会社で打ち合わせしたとき、CEOとアルゴリズムチームリーダーという人が出てきたんですね。アルゴリズムリーダーって何ですか? と聞いたら、「この会社のアルゴリズムを全部見ているんだ」っていうんですよ。ソフトウエアだろうがハードだろうが全部関係なく、その人がすべてのアルゴリズムを見ているんです。

つまり、ソフトウェアエンジニアという概念だけで考えているのではなくて、アルゴリズムで全体を見ている人がいるんですね。


── イスラエル人の組織的な強さはどんなところから来ていると思いますか?

加藤さん:分かりやすいところでいくと、イスラエルは徴兵制があって、高校卒業のあとに男性3年、女性は2年ぐらい徴兵制に出るんですね。軍隊に入ると、上長の命令は絶対で従うことになるんですが、企業になると上長とはケンカすることが多いそうです。上司の言っていることが間違ったら徹底的に食って掛かる。日本だとあり得ないですが、CEOだろうが間違ったことを言ったら部下に責められます。お互いそこまでディスカッションするんですね。


── そこまでのフラットさはアメリカ人にもなさそうですね。

加藤さん:そうですね。つまり、表裏がないんですね。だから、イスラエル人の言うことは、言葉どおり受け取ったほうがいいです。たとえば、日本の人がイスラエルの企業を訪問したときの面白いエピソードがあって、「I'm looking forward to meeting you(次に会うのを楽しみにしているよ)」って言います。

そう言うと向こうの人が勘違いしちゃって、「俺にまた会いたいのか」、「俺に投資してくれるのか」って思っちゃうんですよ(笑)。また会うのを楽しみにしているよって言ったら、次はいつ会うんだってことになってしまうので、社交辞令では、言わないほうがいいんです(笑)。なぜなら、言葉通り受け取って、誤解されてしまうから。


── それでいて、チームワークもあるのですか?

加藤さん:そうですね。組織で普段はケンカするんですけども、危機が起きたときに1つになるのが非常に強いんですね。普段はバラバラで、言い方は悪いですが、自己主張が激しくて、自分勝手で、行きたい方向にみんなが1人歩いていく。でも、目的が決まると一気にチームで動くのが強い。これも軍隊の影響だと思います。


身近に「成功した起業家がいる」というモチベーション


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イスラエルスタートアップの祭典DLD2016のGoogle社のブース入り口。


── 今の20代、30代のいわゆるミレニアル世代のイスラエルの起業家たちに共通するモチベーションってどんなものでしょうか? 例えば、欧米の会社にイグジットする、とか、社会問題を解決するとかいろいろあると思いますが。

加藤さん:これは100社あったら100通りの考え方があると思います。会社を立ち上げてイグジットで売り抜こうって思っている人たちも結構いますし、20年、30年も経営しようっていう考えの人たちもいます。ただ、1つあるのはイスラエルの場合、身近で成功した人が日本以上に多いんです。知り合いで起業家っていらっしゃいます?


── 仕事柄、取材などで知り合う起業家は多いですね。

加藤さん:その中で100億円以上のイグジットした人はいますか?


── そこまでの人はちょっといないですね(笑)。

加藤さん:イスラエル人の場合、そこで「いる」と答えらえる可能性が高いんですね。そうすると「あいつが会社を100億円で売った」とかいう会話になるんですね。イスラエルでは100億円以上の価値で売却された会社が去年だけでもう10社以上は生まれているので、株を5%持っているだけでも結構なお金持ちになっちゃうんですよ。


── なるほど。では、加藤さんが面白いなと思うイスラエルのテックシーンの魅力を語るとしたらどんなところでしょうか?

加藤さん:イスラエルの企業は「斜め上」のアイデアを出してくるところが面白いですね。まったく自分たちが考えも付かないようなところから考えているところです。もう1つ、これはユダヤ人特有かもしれないんですけど、世界制覇系のビジネスが多いんですよ。


── 世界制覇系(笑)。日本からはなかなか出にくいビジネスですね。

加藤さん:業界をひっくり返すようなビジネスという意味です。例えば、日本の人たちが一生懸命「これとこれとこれをこうやって、こうして、こうやろうね」っていうときに、イスラエルは「これ1個あれば終わりだよね」みたいなのを平気でつくってくるんです。先ほどお話しした、Mobileyeなんてまさに典型ですね。


── イスラエルは「中東のシリコンバレー」とも言われていますが、アメリカのシリコンバレーとの違いはどんなところにありますか?

加藤さん:シリコンバレーはビジネス的なイノベーションが多いと言われています。UberにしてもFacebookにしてもそうなんですが、イスラエルの場合はテクノロジーを基礎にしたイノベーションが多いと言われていて、起こるイノベーションの種類が違うんですね。


── 技術をPRしたりセールスしたり、マーケティングしたりする力はどうですか?

加藤さん:もともとセールス、デザイン、マーケティングが弱かったんですが最近はUIも勉強してしっかり整えてきますね。賢い企業はデザインチームをニューヨークに置いて、開発はイスラエルでやってますね。


異端や反対意見を認める多様性


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テルアビブ中心部のオフィスタワーからテルアビブ北部まで続く住宅街の様子。右側には高層ビル、マンションが立ち並ぶ。


── テクノロジーに精通してるとか、プログラミングが強いという背景にはどんな教育があるんでしょうか?

加藤さん:これは私の持論なんですが、どこの国でも優秀な層の人数は変わらないはずなんですよ。日本とイスラエルを比べた時、日本はイスラエルの15倍くらい人口が多いんですが、超優秀なトップ層の厚さは変わってくる。例えば、その国にいるトップ10に入るようなプログラマーがいたとして、日本の場合10人しかいないとすると、たぶんイスラエルの場合は500人とか1000人ぐらいいるんですね。 それがなぜかと言うと、強いところを伸ばそうという国民性や、多様性を受け入れる姿勢だと思います。

イスラエルの研究者とかで特徴的なのは、当時、亜流とか邪道と言われていた方法で研究している人たちであることです。こういう人たちが受け入れられているところが、イスラエルの多様性と結び付いています。 ブラッド・ピットが主演したゾンビ映画「World War Z(2013)」という映画で、主人公がイスラエルに行くシーンがあるシーンをご存知ですか? 


── はい。どこの政府もゾンビの存在を信じないから次々と感染者が増えて崩壊していく中で、イスラエルだけは早期に対策して生き残るという設定でしたね。

加藤さん:そう。そのイスラエルが生き残った理由として紹介されているのが「The Tenth Man(10人目の男)」というイスラエル独自のルールなんですね。これは、「10人中9人が賛成したら、10人目は絶対それを反対する意見を言わないといけない」というルールなんです。このルールは、過去に起きた戦争の教訓として生まれたもので、物事を全会一致で決めてしまうと大きなリスクがある、というメッセージなんですね。


── 最後に、今後のイスラエルの展望や今年加藤さんが目指していることなどあればお願いします。

加藤さん:今、イスラエルの街がけっこう変わってきてるんですね、年間経済成長率も2010年以降は3%以上で、私がよく行くテルアビブも行くたびに景色が変わるんですよ。最近でいくと、中国とかインドなどのアジア勢もイスラエルに興味を持っているのでイスラエルのプレゼンスはもっと高くなるかと思います。

私がイスラテックとして今年やろうとしていることとしては、まず日本からイスラエルに行く人の数を増やしたいなと思っていて、やっぱりイスラエルって中東の遠い国なので、行ってみないとわからないことが多い。一度行ってみないとセカンドステップが出ないと思うので、できるだけ多くのビジネスマンをイスラエルに送ることなのかなと思っています。

少し宣伝になりますが、2017年6月にイスラエルでサイバーウィーク2017があり、(株)カウリス社とビジネスツアーを共同企画しております、ご興味ある方は、4月19日4月28日に都内で説明会を予定しておりますので、是非お越しいただければと思います。


── ありがとうございます。




世界のスタートアップシーンで確実に存在感を増しつつあるイスラエル。人口知能や自動運転などの新しい分野はもちろん、農業などの分野でもイノベーションが起きている点は、まさに物事の本質を考えるマインドによるものと言えるかもしれません。今後もイスラエル企業に注目していきましょう。


(聴き手/米田智彦、文/大嶋拓人)
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