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大嶋拓人  - ,,,,,  12:00 PM

世界最大の語学学習アプリ「Duolingo」の研究者に聞いた、外国語学習に成功する人としない人の違い

世界最大の語学学習アプリ「Duolingo」の研究者に聞いた、外国語学習に成功する人としない人の違い

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1億人以上が学ぶ世界最大の語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」。ビッグデータから導き出される効果的な学習プログラムに定評があり、Duolingoでの34時間の学習は大学の外国語学習コースの1学期分に相当する、という調査結果も出ています。

今回ライフハッカーでは、Duolingoでソフトウェアエンジニア兼リサーチサイエンティストとして活躍する萩原正人さんの来日に合わせて本人にインタビューする機会を得ました。機械学習、自然言語処理の専門家でもある萩原さんに、Duolingoのデータ解析から得られた知見についてお聞きました。日本人にとっての英語学習の難しさや、学習のコツについても聞いていますので、ぜひ自分の英語学習に役立ててください。


萩原正人(はぎわら・まさと)

2009年名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程修了。博士(情報科学)。Google、Microsoft Research、バイドゥ、楽天技術研究所(ニューヨーク)にて、検索エンジンおよび自然言語処理の研究に携わった後、2015年2月より Duolingo にてソフトウェアエンジニアとして自然言語処理技術を活かしたバックエンドの開発に従事。統計的自然言語処理、特に、形態素解析、翻字、外国語学習、大規模コーパスからの語彙知識獲得などに関心がある。著書に翔泳社「自然言語処理の基本と技術」(2016)。訳書に、オライリー『入門 自然言語処理』(2010)、『入門 機械学習』(2012)がある。


日本人にとって外国語学習が難しい理由


── 語学って、言葉によって「学び易さの方向性」があるなと思っています。例えば、友達のフランス人が日本語を勉強しているんですが、日本語の発音が明らかに上手いんですね。どんな日本語を教えてもそれなりにちゃんと発音する。でも逆に、日本人の僕がフランス語の単語を発音しようとするととても難しく、ひどい発音しかできないわけです。これはなぜなのでしょうか?

萩原:発音は自分の母語の影響を受けやすいんです。大人になった時点で自分の母語に無い音の認識・発音が極端に難しくなっちゃうんですよ。最も顕著な例が英語のLとRの発音で、日本語にはない区別なので、日本人には聞き取るのが難しいんです。LやRの他にも、日本語の「あ」に対応する音が英語には4、5種類あるんですよね。平べったい「あ」とか、大きい「あ」とか、ちょっとあいまいな「あ」とか。

そういった意味で、日本語は言語に使う音の種類が割と少ない言語なので、外国人にとって日本語の発音はそんなに難しくないのです。だから反対に、日本語が母語の日本人にとっては、外国語には聞き慣れない発音が多いので外国語を学習する上では不利になるかもしれません。

日本人に圧倒的に有利な外国語としてオススメなのはスペイン語で、スペイン語の発音はかなり日本語に近いですし、例えばBとVが同じなんですよね。BとVは両方とも日本語でいうとばびぶべぼの音なのでわかりやすいはずです。スペイン語を勉強した人は発音にあんまり苦労しないんです。


── 今回、Duolingoの大規模データを使って、日本人にとって難しい発音の分析ができたそうですね。

萩原:はい。やはり、LR、THの発音が苦手なのと、スペルと発音が必ずしも一致しない単語が難しいようです。例えば、「woman」という単語の複数形の「women」という単語はウィメンと発音するのですが、スペルだけを見るとウィと発音するとはわからないですよね。英語にはこういう「スペルと発音が一致しない単語」が多くあります。日本人にかぎらず世界中の英語学習者にとって、そういった点はわかりにくい。

つまり、日本人が英語を学ぶ場合、まず発音が日本語にない発音がある、という点が1つ目の壁です。LとRやTHもそうですし、「あ」に対する音が4つや5つあるという点もそこに含まれます。それに加えて、スペルと発音が一致してないのでわかりにくいという、二重苦のわかりにくさがあるわけです。そこがとても難しい。

逆にスペイン語ですと、例外的な発音が非常に少ないので、日本人的にアルファベット読みするとだいたい合ってるんです。


── イタリア語もそんなところがありますよね。

萩原:イタリア語もそれに近いですね。イタリア語、スペイン語はかなりそういう意味では簡単です。発音も割と日本語に近い発音が多いので、そういった意味で二重苦の苦しみはあんまりないのかなと思ってますね。


英語だけで考えるコツは、英語で新しい経験すること


── 日本人にとっての英語の難しさは他にどんなところがありますか?

萩原:英語と日本語って世界中の言語の中でもかなり違う言語なんですよね。英語話者から見て一番習得が難しい言語が、日本語、中国語、韓国語、アラビア語なんです。それはやっぱり1つは文字が難しいっていうのもあるんですけど、語順がまったく逆ですし、考え方がやっぱり違ったりするんですよね。

これはちょっと文化的な話になるかもしれないんですけど、欧米だと、ほとんどの言語や国で住所は小さいほうから書きますよね。ストリートとか番地みたいな小さい概念から考えて、あとから修飾していく。スペイン語とかも名詞を言ったあとで形容詞で修飾するんですよね。でも、日本語だと逆になります。こうなると、もう思考の過程から完全に切り替えなきゃいけないんです。

日本語を英語に直訳しても伝わらないので、頭の中にある抽象的な意味をそのまま英語で表現する回路を鍛えるのが正解になります。


── つまり、日本語を介さずに英語だけで理解する、ということですよね。でも、日本語で生活している普通の日本人にとって、日本語で考えて理解するのが自然であって、それを英語だけで考えて理解するのはとても難しいように思えます。何か具体的なコツはありますか?

萩原:一番極端な例は、英語圏で生活することですね。生活のリアルな場面と単語の使用っていうのが結び付くようになります。これは、いい例かどうかわからないですが、母乳を取り出す機械ってありますよね? 電気で母乳を吸いだしてボトルにためておく機械。英語では「breast pump」と言うんですが、日本語で何と言えばいいのか私はずっと知りませんでした。私の場合、子どもがゼロ歳の時からアメリカで子育てをしてたので、breast pumpって呼ぶのが普通で、夫婦間でもbreast pumpって言ってたんですよ。日本語では搾乳器と呼ぶそうですが、名前は知らなくても、搾乳機の役割とか概念は完全にわかって、英語で理解・表現できていたんですね。それは日本語に翻訳して理解していたわけではないわけです。

他にも、飲食店に行くと子ども用の特別なイスがありますよね。英語では「high chair」って言うんですが、日本語でハイチェアって言っても通じないんで、ベビーイスとかベビーチェアみたいなことを言うと理解してもらえます。そういう意味では、これまでやったことのないことを英語でやってみる、というのは日本語に翻訳せずに英語を覚える1つの方法かもしれません。私の例で言うと、新しい経験は子育てだったわけです。

お金もそうですよね。100ドルって言われて、 普通はだいたい100を掛けて日本円に直して理解するんですけど、しばらく住んでいると日本円に直して考えなくてもドルのまま安いとか高いとかがわかってきます。新しい言語を覚えるということは、このプロセスに似ているかなと思っています。


── 海外旅行でも、何日か滞在すると、日本円に変換せずに高いか安いかが判断できるようになりますね。

萩原:ですよね。そのためには、やっぱりたくさんのインプットを通じて経験を積むのと、練習しかないかなと思っています。


学習のモチベーションを保つコツは「詰め込みすぎないこと」


── ただ、外国語学習のモチベーションを保つのは難しいですよね。

萩原:そうですね。今回、Duolingoのユーザーデータを解析して、外国語学習に成功する人としない人の違いがわかってきました。現実問題として、Duolingoを使っているユーザーの中でもかなり多くのユーザーが途中で勉強をやめてしまうんですね。そこで、途中で挫折して外国語学習をやめてしまうユーザーと、やめずに続いているユーザーさんの行動履歴を分析しました。

結論から言うと、詰め込み勉強をしないのが大事なんです。つまり、勉強をやり過ぎない。継続して勉強できているユーザーは、毎日少しずつとか、2日とか3日に1回といったペースでコンスタントに勉強できてるんですね。

逆に挫折しやすいユーザーさんは最初の1週間に長時間詰め込んで勉強して、次の1週間はぜんぜん勉強しなかったりするわけです。それで、次の週にはほとんどのことを忘れてしまって、モチベーションが下がってしまう。これは心理学の分野でもかなり研究はされてるんですけど、ある程度間隔を空けてコンスタントに勉強するのが長期記憶に一番残りやすいんです。


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一番右側のセッション数/日の相対標準偏差、というグラフで、継続ユーザーの1日のセッション数の「ぶれ」は離脱ユーザーと比較して少ない。※注 「セッション」とはDuolingo上で、レッスンや練習を選択すると現れる一連の問題の集まりのこと。


── 「一気にやるより少しずつコツコツやったほうがいい」という点は、まさにダイエットと一緒ですね。

萩原:そうなんです。ダイエットするぞって決めて、1日に何時間も走らないですよね。それよりも1日30分、週に2回、3回、30分でもいいんでジムに行ってコンスタントに運動して、習慣化するのが大事なんです。


── やる気がある人にとってはもどかしいですね。たくさん勉強しようって思ってしまうけど、それをしてがんばりすぎてしまうと挫折する可能性が逆に高くなってしまうかもしれない、という意味で。

萩原:そうですね。例えば、来週テストがあるとか海外旅行に行く、といった場合は、もっと詰め込んでも大丈夫だと思います。ただ、Duolingoのデータが示してるのは、週に1回の勉強では不十分、ということです。ある程度流暢になって覚えたあとに、重要な単語を復習する目的であれば週に1回でも別にいいんですが、学習初期の段階で1週間に1回だけ、週末に勉強するのでは不十分です。週1回だけ勉強しているユーザーは正答率が低いというデータが出てるので、最低でも週2、3回やりましょう、というのが個人的なオススメです。


── 1日のどの時間に勉強するのがいいか、といったデータはありますか?

萩原:今回の調査では、アプリを使うユーザーを時間帯に分けて解析しています。具体的には、ユーザーの中から4つほどのクラスターを抽出して、正答率を比較しています。


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4種類のクラスターの内訳は、朝9時〜午後5時までに勉強するユーザー、午後8時ごろに勉強をするユーザー、週末にだけ勉強するユーザー、いつ勉強するかわからないランダムに勉強するユーザー。


4つのクラスターの中で、もっとも成績が良くて優秀なユーザーはどれだと思いますか? 実はランダムな時間に勉強するユーザーなんです。スキマ時間に少しずつ勉強しているユーザーだと思うのですが、何時に勉強するかはあまり重要ではないということがわかりました。ただ、夜中の3時に勉強したユーザーの正答率は低いので、この時間はちゃんと寝てくださいね(笑)


発音は「誤解されない程度」を目指すこと


── 前回、英語学習で挫折する原因は「語学の適性がないからではない」とおっしゃっていました。ただ、言語がものすごく得意な人はたまにいますよね。いわゆる「ポリグロット」と呼ばれる、難なく何カ国も話せてしまう人が1つの例ですが、そういう人たちの頭の中はいったいどうなっているのでしょうか?

萩原:ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれないんですけど、「語学の適性」は確かにあります。僕が言いたかったのは、一般的な日本人が語学で挫折するのは適性のせいじゃない、ということだったんですね。外国語の学習能力を正規分布のような形で示したとします。端っこにいる人たちで特に能力低いほうは例えば学習障害ですとか、外国語学習障害っていうのもあって、アメリカではそういうのが認められていて、外国語はもう絶望的に学習できない人っていうのがやっぱりいるんですよね。そういう人は、外国語学習障害として認定されると、大学の第2外国語の単位が免除されたりする。

でも、やっぱり大部分の人が挫折してしまうのは、適性の問題ではないんですね。モチベーションとか環境が原因なんです。ポリグロットのほうは、完全に逆で、語学に超適性がある人で、音を聞いてそれを記憶する能力などに高いパフォーマンスを発揮するそうです。


── 日本人の場合、発音が苦手だから話したがらないという人がいますよね。発音は本当にがんばって練習すればうまくなるものなのなのでしょうか? それとも、ある程度のところで諦めて、そんなのは気にせずに話していくのが正解なのでしょうか?


萩原:発音については臨界期仮説のようなものの影響が強いと言われています。これは、第2言語の習得の研究で、特に思春期を越えて、例えば移民として移住したりとか、別の言語の勉強を始めてもネイティブ並みの発音には到達しない、ということ。たまに到達する人はいるんですけど、大人になって(例えば高校生とか中学生から)英語をゼロから勉強し始めても、残念ながらほとんどの人はネイティブ並みの発音には到達しないんです。

つまり、その人の発音をネイティブが聞いたら「ネイティブじゃないね」とわかってしまう。私の英語も聞いたら日本人だねって言われるので、それはしょうがないです。でも、意味は完全にわかってもらえるので、そこはネイティブ並みの発音を目指すのではなくて、ちゃんとその言語で仕事ができる、ストレス無く意思疎通ができるレベルを目指すのが現実的なところなんじゃないかなと思ってます。

特に、LとRの発音やTHの発音とか、その発音ができないと意味が変わってしまって誤解されてしまう発音があるので、そういう部分についてはちゃんと練習したほうが良くて、それは別に思春期越えてもちゃんと到達できるんですね。なので、その言語において正しい発音は何か、自分の母語にない音がある、というのは最小限な知識として持っていたほうがいいと思います。

そのためには、実際にネイティブが話してる動画を見たり、実際に人と話すときに口を見て話したり、ネイティブに直してもらったり。そういう意味ではフェイス・トゥ・フェイスの練習はいいと思いますね。そういったプロセスを通じてだんだんと発音が近くなっていくのだと思います。




張り切って詰め込んで勉強するユーザーは語学学習に挫折しやすいというのは意外でしたが、語学学習はダイエットと同じだと思えば納得できます。急激なエクササイズは効果が高い分、やめてしまったときの脱力感・喪失感も大きいもの。長期的に付き合っていく必要がある語学学習だからこそ、ダイエットと同じで短時間の学習を習慣化して継続する必要があるということでしょう。

また、「英語を英語のまま理解したほうがいい」という英語学習のアドバイスは理解しにくいものですが、英語の上達には、翻訳せずに理解したり話したりするのが欠かせないのも事実。その点、英語を使って今までしたことのない新しい経験をしてみる、という萩原さんのアドバイスは一度試してみる価値がありそうです。


(文・聞き手・写真/大嶋拓人)

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