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印南敦史  - ,,,,,  06:30 AM

「一見さんお断り」の店は本当にある? 知っておきたい京都人の考え方

「一見さんお断り」の店は本当にある? 知っておきたい京都人の考え方

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京都に行く前に知っておくと得する50の知識 - 初心者からリピーターまで、京都に行くならどっち!?』(柏井壽著、ワニブックス)の著者は、生粋の京都人。現在は京都市北区で歯科医院を開業するかたわら、京都の魅力を伝えるエッセイを執筆したり、京都や旅をテーマにしたテレビ番組や雑誌の監修も務めているのだとか。そんな著者は、京都について次のように記しています。

京都は迷う街である。
と言っても、道に迷うという意味ではなく、いつ行くべきか、何を見るべきか、どう動けばいいのか、何を食べるのか、どこに泊まればいいのか、などなど、旅に出る前に迷い、京都についてからも迷い、そして帰ってからもまた迷う。そんな迷いである。(「はじめに」より)

しかし迷うことがたくさんあるのは、それほど京都が奥深く、幅広いから。さほど大きくない街のなかに、旅の愉しみがぎっしりと詰まっているということです。そこで本書では、京都人としてのバックグラウンドに基づき、旅行者が迷ってしまいがちなポイントや、ありがちな悩みに対して「二者択一」形式で回答しているわけです。

きょうはそのなかから、なにかと気になる京都人の「人あたり」に関するトピックスを抜き出してみたいと思います。



京都には一見さんお断りの店が「たくさんある」「滅多にない」どっち?


祇園あたりの店を表現する際に、「一見(いちげん)さんお断り」という言葉がよく使われます。いうまでもなく、紹介者がない状態で、初めて訪れると断られるお店のこと。それは、「あるとも言えるし、ないとも言える」のだそうです。

祇園を筆頭に、著名な料亭や割烹は基本的に予約制をとっているもの。いきなり飛び込みでそうした店に行き、入れてもらえたとしたら、よほど幸運だと思ったほうがいいわけで、そういう意味でなら「一見さんお断り」の店はたくさんあるということ。

しかし、店に予約の電話を入れたとき、「馴染みでないから」と門前払いするような店はほとんどないはずだといいます。「評判を聞いて」とか「雑誌の紹介記事を見て」などと付言して頼めば、紹介者がいなかったとしても受け入れてくれるのが京都の店だというのです。そういう意味では、「一見さんお断り」の店はほとんどないということになります。

ただし、唯一「一見さんお断り」を貫いているのが花街のお茶屋さん。それはお茶屋遊びの花代、飲食費、交通費など、すべての料金を客に替わってお茶屋が立て替えて払うシステムだからで、信頼関係のない初見客を受け入れないのは当然の話。料理屋とは仕組みが違うわけです。

とはいえ、「せっかくの京都なのだから、お茶屋遊びも経験したい」というのなら、(もちろんそれなりの出費は覚悟する必要があるものの)宿泊先のホテルや旅館から紹介してもらうという手もあるそうです。あるいは、一軒でも京都に馴染みの店があれば、そこの主人やお上から紹介してもらうのもひとつの手。数珠つなぎ的においしい店を巡るというのは、料理屋同士が親しくしている京都ならではのことだといいます。


京都の家でお茶漬けを勧められたら、「食べる」「食べない」どっち?


京都人の性格を表すエピソードとして有名なのが、「京のぶぶ漬け」です。

─京都人の家を訪ねていて、思いがけず長話になってしまった。時間はちょうどお昼前後。と、京都人からお誘いがあった。「お茶漬けでもどうです?」。と、しかし、これは早く帰れという意味で、実際にお茶漬けなど用意されていない。「では、遠慮なくいただきます」などと、決して言ってはいけない─(178ページより)

「京都人は一筋縄ではいかない」という例として使われるネタ話ですが、これは事実とは異なり、明らかにつくられた話だと著者は断言しています。なぜかといえば、京都人なら食事どきによその家を訪ねたりはしないから。

用件があって訪ねる際は、必ず事前に連絡し、どの程度の時間を要する話かをそれとなく先方に伝えておく。訪問を受ける側はそれに合わせ、玄関先で済ますか、座敷にあげるか、食事を用意しておくかなどを検討する。訪ねる側も訪ねられる側も、そのあたりを心得たうえで応対するので、「玄関先で長話」という状況にはならないというのです。

ましてや仮にそういう事態に陥ったとしても、「ぶぶ漬け」を持ち出すことはないといいます。もし切り上げたいときには、「主人に頼まれたことを忘れてた」など「用事」を使うものだから。互いを傷つけることなく、嫌な思いもせずに済ませるための方便だということ。

京に都が定められて千年以上ものあいだ、しばしば京の街は戦の場となってきた。時の為政者たちが、あるいは天下人たちが、京の街を我がものにしようとして戦いを続けてきた。そこに巻き込まれてきたのが、都人だ。
戦争や戦乱は、敵味方が一定することはなく、昨日の敵は今日の友、という言葉どおり、敵味方が入れ替わり、あるいは入り乱れ、その都度、都に住む人々は戦々恐々として暮らしてきた。(181ページより)

だからこそ京都人は、「なによりの方策は、敵味方を明らかにしないこと」だと気づき、曖昧な言葉遣いをして、旗色を明らかにしてこなかった。それが現代にも残っているため、「京都人の言葉には裏がある」とされるのだそうです。(178ページより)


歓迎されているのは「おいでやす」「おこしやす」どっち?


京都を訪れる旅人が知っておきたい京言葉のひとつが、「よろしいな」という相づちだといいます。

たとえば割烹店のカウンターで夜の食事をしていたとき、店の主人との会話のなかで、「昼ごはんは、ある料亭で食べた」という話をしたとします。そして、いくらかの自慢の気持ちも込めて「とってもおいしかったです」と言ったところ、店の主人の口からは「よろしいな」との返答が。

この場合の「よろしいな」は肯定ではなく、ましてや羨んでいるはずもないでしょう。京都の店で、他の店のことをとやかくいうことは慎みたい。店の主人としては肯定も否定もできないからで、それを話題にすることは避けてほしいという意味で「よろしいな」を使ったというのです。

とはいえ「よろしいな」が、まったく違った意味で使われる場合も。いい例が、京都人同士の知人がばったり出会ったような場面。

「お出かけですか?」
「ちょっとそこまで」
「よろしいなぁ」

どこへ行くのか尋ねながら、答えを期待しているわけでもなく、曖昧な返答にもかかわらず「よろしいな」と相づちを打つ。どんな答えが返ってきても、「よろしいな」。つまり本音は、「どうでもよろしい」だというのです。

そして、同じように聞こえて、微妙にその使われ方が異なる京言葉も。「おいでやす」と「おこしやす」がそれにあたるのだそうです。

「おいでやす」は、店に入ってきた客すべてに掛ける言葉。「おこしやす」は、ようこそよく来ていただきました、という歓迎の言葉。
ふたつの言葉は、どちらも歓迎しているように聞こえるところがミソ。「おいでやす」という言葉をかけられて気を悪くする客はいない。しかしそこには明確な区別があり、「おこしやす」とは言ってもらえないのだ。

(185ページより)

京都の店で差別を受けることはないものの、区別されることはあるといいます。しかし、その区別を客に気づかせないという配慮は、いかにも京都らしいと著者。このような細かい区別をするため、京都人は「イケズ」だと言われることもありますが、決してそういうわけではないというのです。

それは、相手を傷つけることなく、自分も傷つかずに済む方便を練り上げてきた結果。そこを理解しないと、京都人気質の本当のところはわからないし、場合によっては京都嫌いになってしまうかもしれないそうです。(182ページより)




「見るべき場所」「食べるべきもの」なども含め、京都人だからこそ伝えることのできる情報満載。京都へ旅行するのなら、ぜひとも読んでおきたい1冊です。


(印南敦史)

  • ,,,,, - By

    香川博人

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