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印南敦史  - ,,,,,  06:30 AM

大人になってからでも、脳を鍛えれば記憶力はアップするかもしれない

大人になってからでも、脳を鍛えれば記憶力はアップするかもしれない

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「覚えたはずなのに、すぐ忘れてしまう」「なかなか頭に入らない」という方は決して少なくないはずですが、もし記憶力を高めたいなら『「覚えられる」が習慣になる! 記憶力ドリル』(枝川義邦著、総合法令出版)が役に立つかもしれません。脳神経科学を専門とする脳科学者である著者が、記憶力をアップさせるための方法を紹介したもの。

私たちの脳には、興味があること、必要なことを優先して覚えていくという性質があります。そうでないものは後回しになって、記憶できずに脳から消えていってしまうこともあるのです。
このしくみは誰でも持っているものですが、脳を鍛えることで、うまくコントロールすることもできるようになっていきます。(「はじめに」より)

本書の特徴は、イラストや写真を主体とした問題が中心になっているところ。それらを解きながら、無理なく記憶力をアップさせていくことができるわけです。きょうは、その前段階に当たる第1章「人はなぜ忘れてしまうのか? 記憶のしくみ」に焦点を当て、基本的なことがらを抜き出してみましょう。



子どものころを思い出すと記憶力がアップする?


「子どものころにはいろいろなことをすぐ覚えられたのに、最近は記憶するのが苦手だな」と感じることはないでしょうか? 著者によれば、子どものころに多くのことを「そのまま」覚えることができたことには、明確な理由があるのだそうです。

そもそも脳でつくられる記憶にはいくつかの種類があり、そのなかにはトランプの神経衰弱ゲームのように、単なる数字やマークの羅列など、子どもの脳だからこそ覚えやすいタイプの記憶があるというのです。そして、このタイプの記憶は大人になると覚えにくくなるものなので、大人はそれを「記憶力全般が衰えた」と感じてしまうということ。しかし、これは脳の性質が変わることが原因なので、嘆く必要はないのだとか。

もうひとつのポイントは、「子どもは楽しんで覚えている」ということで、これは記憶するときの秘訣ともいえるそうです。子どもはひとたび興味を持ったものは、集中力と記憶力によって一気に脳に刻んでいくというのです。でも、それは大人も同じ。好きなものには興味を持って接するので、すぐ上手になり、記憶にも残りやすいわけです。つまり、子どものころの状態を取り戻せば、大人になったいまからでも、記憶力をアップさせることができるということ。

ところで、「楽しい」という気持ちは、同時に生じるいくつもの変化が合わさることで生じるのだそうです。なかでも「楽しい」気持ちになることに深い関係があるといわれているのが、"ドーパミン"と呼ばれる物質。脳でドーパミンが増えると、「楽しい」という気持ちだけでなく、記憶力もアップすることが知られているといいます。だとすれば、脳でドーパミンが増えるようにすることが、「楽しんで記憶する秘訣」だということになるはず。では、どのようにしてドーパミンを増やせばよいのでしょうか?

ドーパミンは、脳のなかにある「報酬系」と呼ばれる神経ネットワークでつくられ放出されているのだそうです。報酬系とは、報酬によって欲求が満たされることが期待されるときなどに活性化し、快い感覚をもたらす神経系統のこと。この報酬系の神経ネットワークが活発に働けば、脳内で働くドーパミンの量も多くなるというわけです。

そして報酬系の神経ネットワークは、「ご褒美」との関係が深いものなのだといいます。なにかご褒美が手に入ると期待できる状況では、脳でも報酬系の神経ネットワークがさかんに活動しているということ。

「おいしいスイーツをたくさん食べること」だとか、あるいは「仕事でほめられること」だとか、ご褒美と感じるものごとは人によってさまざま。しかし、それでいいのだそうです。なぜなら、ご褒美と感じるものの種類がバラバラでも、脳のなかではどれも報酬系の神経ネットワークの活動を活発にしてくれるから。別な表現を用いるなら、脳のなかでは、このネットワークが働くことが、その人にとっての「報酬=ご褒美」だということになるのです。

いわば、スイーツやほめられることは、脳のネットワークを働かせるためのスイッチのようなもの。そのスイッチが入れば、脳で報酬系の神経ネットワークがさかんに働き、ドーパミンが増えていくというわけです。だからこそ、大人になっても、子どものときのように楽しむ姿勢を持つことで、脳のなかでドーパミンが増え、記憶力アップにつながる。著者はそう解説しています。(16ページより)


大人になったらなぜ、学校で勉強したことを忘れるのか?


記憶とは、その環境に最適な振る舞いができるためのしくみなので、必要な情報が優先的につくられる性質があるのだそうです。新しいことを覚えて脳に定着させるための場所は「海馬」。新しい記憶をつくるときに、「その情報は自分にとって必要かどうか」を選別して脳に刻み込む準備を進めるところだといいます。

普通に生活していれば、脳には多くの情報が入ってきます。しかし、そのすべてを記憶として脳に収めていたら、脳は数分で満タンになってしまうといわれているのだとか。そこで海馬が、本当に記憶として長期的に脳に残す価値があるのかどうかを見極めるということ。海馬が認めてゴーサインを出した情報だけが、記憶として脳に定着するわけです。

私たちは、外界から絶えず五感の情報を取り入れながら生活しています。いうまでもなく五感とは、目で見る(視覚)、耳で聞く(聴覚)、鼻で匂いを嗅ぐ(嗅覚)、舌で味わう(味覚)、皮膚などで触る(触覚)ことをしたときの感覚。これらはアンテナの役割を担っていて、私たちを取り巻く状況をキャッチするために、それぞれの感覚が得意とする情報が流れてこないか待ち受けているのだそうです。

そして、五感のアンテナがキャッチした情報のほとんどすべては、海馬に送られることに。そのなかで必要な情報は、海馬の神経ネットワークを活発に働かせることによって、記憶として脳に刻まれていくというわけです。

この場合の「必要な情報」とは、「繰り返し脳に入ってくる情報」のこと。頻繁に脳に入ってくる情報は、繰り返し海馬に送られて「必要な情報」として認められ、"記憶"として脳に定着していくことになるということ。

たとえば学校で学んだ「知識」の多くは、仕事をしているとたいして使う場面もなく、いつの間にか忘れられていくものだといいます。それは知識の土台としてなくてはならないものですが、実社会でその知識自体を使う場面は少ないわけです。特に勉強する際、テストのために一夜漬けで頭に詰め込んできたタイプの人は、テストが終わると、その情報にほとんど触れないまま卒業することが多いもの。しかしそれでは、海馬がその情報を「必要」と認めることもないため、記憶には残らないというわけです。

なお、せっかく定着した記憶も失われてしまう可能性があるのだそうです。海馬が「必要な情報」として認定したものは「長期の記憶」として脳に長く留まることになります。しかし脳では、次から次へと新しい記憶がつくられているわけです。そのため、たとえ脳のなかでうまく整理されていたとしても、たまに引き出さないと、新しくできた記憶に埋もれたり、思い出せなくなってしまうというのです。場合によっては、「もう必要ない情報」となって頭のなかから消えていってしまうこともあるのだとか。

脳にはくり返し接する情報を、そのときの自分にとって「必要な情報」として記憶する性質があるため、「必要ならば、たまに思い出す」ことが大切だというわけです。学校で学んだことがらにしても、たまに思い出すことで記憶として残りやすくなるといいます。その際、興味を持って、さらにそれに関連することを調べたり覚えたりすることを楽しめれば、さらに記憶は定着しやすくなるそうです。(23ページより)


記憶のしくみとは?


記憶には、3つのステージがあるといいます。まず最初の「記銘」は、脳に入ってきた外部からの情報を、記憶の情報として脳に獲得していくステージ。次に、その情報を蓄えておく「保持」のステージ、そして、それらの情報を思い出す「想起」のステージと続くのだそうです。

一般的に「記憶力がよい」「よく覚えられる」といわれる人は、「記銘」のステージが優れている場合が多いものだといいます。記憶力が良いだけでなく、覚え方がうまいということもあるのだとか。そして、かなり昔のことをいつまでも覚えていられる人は、「保持」や「想起」のステージがよく働いていることもあるそう。

逆に「ど忘れ」して覚えていたはずのことが言葉に出てこない場合は、「想起」のステージがうまく働いていないということ。よく知っているはずの友人の名前が出てこないことがありますが、それはこのケース。また宴会などで盛り上がり、「飲みすぎて、昨夜のことはほとんど覚えていない」という場合は、「記銘」のステージがうまく働いていないということ。

これは、お酒のアルコール(=エタノール)が、記憶をつくるための神経ネットワークの働きを弱めてしまうからだと考えられているのだそうです。特に、記憶ができるときに活性化して情報を運ぶ役割を持つ、タンパク質の働きが妨げられてしまうというのです。

脳で記憶がつくられるときには、五感のアンテナから入ってきた情報が海馬に送られてくるそうです。そして海馬では、その情報を長期の記憶として脳に刻んでよいかどうかの選別をしていくわけです。つまり、脳のなかに短い時間しか留めておけない「短期記憶」を、何年もの長い間留めておける「長期記憶」に変換していくわけです。

記憶に残そうとするときには、海馬では神経ネットワークが特別な働きをしているといいます。特に「可塑性(かそせい)」と呼ばれる性質が働くと、海馬のしくみが記憶に残そうとしてくれるわけです。この可塑性とは、強い刺激で起きた変化をそのまま残す性質のこと。粘土のかたまりを指で押すと形が変わりますが、指を引き抜いても形はそのまま残ります。この性質が「可塑性」。

つまり可塑性とは「変化を保存する性質」だということ。勉強したりして脳の海馬で可塑性が働く状態になると、新しく学んだ内容が脳に保存されます。それが、脳のメカニズムだということです。(43ページより)




こうした基本を紹介したうえで、次章以降では、記憶力を高めるための親しみやすい問題が続々と登場します。それらを楽しみながら解いていけば、いつしか記憶力がアップしているというわけです。そちらにも、ぜひチャレンジしてみてください。


(印南敦史)

  • ,,,,, - By

    香川博人

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