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米田智彦米田智彦  - ,,  09:00 PM

アフリカ・フィンテック最前線。ケニアの経済を変えた「M-PESA」の衝撃

アフリカ・フィンテック最前線。ケニアの経済を変えた「M-PESA」の衝撃

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2016年8月中旬、私はケニアのナイロビにいました。今回のアフリカへの出張のきっかけは、以前ライフハッカー[日本版]で取材したモザンビークに銀行を作ろうとしている合田真さん率いる日本植物燃料株式会社の仕事の現場を見ること、そして、8月27日、28日の2日間、アフリカ初の開催となったナイロビでのTICADⅥ(アフリカ開発会議)への参加でした。

しかし、TICADが開催される前に訪れたケニアの農村部で衝撃に出会いました。

ケニアの電子マネーシステム「M-PESA(エム・ペサ)」です。M-PESA(MはmobileのM、PESAはスワヒリ語でお金の意味)とは端的にいうと、携帯電話で送金から出金・支払までできるモバイルマネーサービスのことです。ケニア農村部の無電化の村の至るところに、M-PESAの代理店があったのです。


ケニアのGDPの4割がM-PESAで取り引きされている


日本で電子決済といえば、LINE payやSquare、楽天スマートペイなどがありますが、日本ではどれも十分に行き渡っているという状況にありません。

しかし、アフリカの事情は大きく異なります。電気や水道といったインフラが整備される前にモバイル決済が進化を遂げていたのです。

ケニアの場合、まず、治安が悪く現金を持っていると強盗に遭うこと。特に無電化の農村では、地中に穴を掘り、お札をいれた壺を埋めて貯金するため、盗まれたり水に濡れたりなどといった、状況がありました。


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ケニア農村部の風景。道路は舗装されておらず、無電化、水道も通っていない村も多い。


しかし、ケニアでは、家族や知人への仕送りなど、少額送金のニーズはとても高かったのです。

それでも、多くの人は銀行口座を持てずにいました。世界で約20億人が銀行口座を持ってないと言われますが、アフリカはそのもっとも顕著な例です。

そもそも都市銀行のネットワークが脆弱で利用者が都会の富裕層などに限られています。ましてや、アフリカは時折ハイパーインフレが起こる土地柄です。預金ができず、現金しか持てないという状況は改善するべき問題でした。

近年、携帯電話が急速に普及。電話網だけはかなり充実してきました。無電化の村でもソーラーパネルで充電して携帯を使う人々を数多く目にしました。

ボーダフォングループ傘下のケニアの通信会社最大手「Safaricom」の契約者数は2001年には1.7万人しかいませんでしたが、2010年に一挙に1200万人に増え、さらに2015年には倍の2500万人まで膨れ上がりました。ケニアの人口は4400万人にも満たないのにかかわらず、です。


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M-PESA代理店での取材風景。右が筆者。


そこで、Safaricomの通信回線を使って、通貨のやりとりを始めたのが「M-PESA」です。


M-PESAを使ってできること


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M-PESAのメニュー画面


M-PESAの主な機能は以下になります。

  • 送金
    相手の携帯番号、送りたい金額、設定した暗証番号を入力したショートメッセージを送信するだけでM-PESAの口座から任意の相手に送金することができます。
  • 引き出し
    M-PESA代理店で現金を引き出せます。金額、取扱店番号、暗証番号を画面上で入力し、身分確認をすれば現金を受け取ることができます。
  • 通話料購入
    M-PESAアカウントにある金額から通話料を購入できます。自身の通話料だけでなく、他人の通話料も購入することができます。
  • 銀行口座機能
    預金をしたりローンを組むことなどができる口座機能です。これはM-PESAとは別の登録が必要となります。
  • 支払・決済
    電気代や水道代、学費などの支払いを自動的に決済してくれる機能です。

M-PESAは2007年にサービスが開始されました。M-PESAがいかに凄いかは以下の数字が物語っています。

まず、ケニア国民の70%が利用し、その貨幣流通量は年間5兆3000億円にものぼります。なんと、ケニアのGDPの4割以上がM-PESAによって取引されているとも言われているほどです。最近ではケニアの国境を越えて南アフリカ、アフガニスタン、インド、最近ではルーマニアへまでその利用が広がっています。

ここで、皆さんは「ケニアはハイテクを使ってフィンテック分野で成長を遂げているのか?」とお思いになられるかもしれませんが、そうではありません。

スマートフォンはまだケニア人にとっては高価なため、通話とテキストメッセージのやり取りが中心の、いわゆるフィーチャーフォン(日本でいうところのガラケー)の利用者がほとんどです。

しかし、ケニアの携帯電話の普及率はものすごいものがあります。2台持ちの人も多いため、携帯電話の所持率は成人人口では100%超えているとも言われているほどです。とにかく、現地に行くと老いも若きも「ケータイ大好き!」ということを実感しましたし、ケータイを持つことがある種のステイタスになっています。ケニアの有名なマサイ族たちでさえケータイを持っています。彼らはパソコンも持たず、インターネットに接続もせずに、ガラケーの通話とSMSでコミュニケーションをとっているのです。

では、なぜ高機能のスマホではなく、ガラケーでお金のやり取りができるのか。


M-PESAの簡単な口座開設


まずは、簡単な口座開設。Safaricomのショップや、農村部の商店街には必ずあるM-PESAのエージェントがいるお店に行きます。


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M-PESAの利用記録帳。身分証明書No、Deposit/Withdraw(引き落とし額)、取引ID、利用者のサイン等々を記録。この利用記録帳は埋まり次第、Safaricomに返却される。


パスポートで本人確認をし、SIMカードとPIN番号を提出します。そして、現地通貨のケニアシリングの現金をデポジットする。たったそれだけでM-PESAを使うことができます。その時間、たったの約5分です。

私も実際にM-PESAのアカウントを作って、せっかくなので1000ケニアシリング(日本円にして約1000円)をデポジットしました。入金時には手数料もとられません。

さらに、そのうち100ケニアシリングを送金してみました。送金といっても、相手の電話番号に金額を送るだけ。シンプルなテキストメッセージを使うのみで数秒で済みました。


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送金完了を知らせるショートメッセージの画面


取引額は10%の10ケニアシリングを執られましたが、金額が上がれば手数料は下がっていきます。


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M−PESAは公共料金の支払いも可能。


このような手軽さで爆発的にケニアで普及したM-PESAですが、ほかにも浸透した理由があります。


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理容室も兼ねているユニークなM-PESA代理店


まず、携帯電話を持ってさえいれば誰でもエージェント(代理店)になれるということ。

その店舗数は10万軒以上。ちなみに日本のコンビニの点数は5万店ですので、いかにM-PESAの代理店が溢れているのかがわかるかと思います。

また、ほとんどの店舗は日本のコンビニにあたるキオスクを片手間でやっている人ばかりです。

M-PESA目的で来店してもらうついでに何買い物をしてもらったり、買い物ついでにM-PESAを使うといった感じです。


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キオスクの店番をするお母さん。ここでもM-PESAを取り扱っている。この店でのM-PESA利用者数は繁忙日で1日70人、通常20~30人ほどで、デポジットする金額は1人あたり5000~10000ケニアシリングだという。


前述したように、都市部だけではなく農村部でもM-PESAは完全に浸透しています。

戦後の日本の送金窓口は各地の郵便局でしたが、それに似たような感じで、そこにコンビニ機能が合体したようなイメージです。

つまりどこでもM-PESAで現金のやり取りができるので、ケニアでは、現金もクレジットカードも必要ないのです。

ここでいくつかの疑問点も浮かぶかと思います。

M-PESAはインターネットバンキングなのか?

答えはNOです。M-PESAは実は携帯回線を使うだけで、インターネット回線を使わないシステムです。Safaricomにさえつながっていれば使用できます。


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商店街の一角には必ずと言っていいほど、M-PESAの代理店がある。


次に、ケニアという国の電子マネーはSafaicom社が握っているのか?

これも答えはNO。M-PESAはSafaricomの管轄外にあります。M-PESAに預けられた資金は政府の規制のもとにあり、商業銀行へ預けられ、信託されています。

つまり信託されているので、通信会社のSafariコムが倒産してもM-PESAは保全されるというわけです。

さらに、M-PESA資金は誰が供給するのか?

答えは、商業銀行から供給されています。資金移動はすべてSafaricomによって監視されており、ケニア中央銀行へも定期的に報告がなされています。銀行ではありませんが、銀行なみのマネーロンダリングの監視が行われています。

それから、M-PESAのシステムは大丈夫なのか? という疑問もあると思いますが、システムが崩壊したりエラーを出す可能性はとても低いと考えられます。

そして、トランザクション(取引)の量は桁外れです。回数ベースであれば、国内取引額のなんと70%にものぼります。しかし、ケニア国内の銀行預金と比べると、M-PESAの全口座残高は0.2%にしかすぎません。前述のようにケニアでは少額取引への強いニーズがあったというわけです。


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取材で訪れたケニア東部の農村部のマチャコスにて


一方で、代理店はどうやって現金を管理しているのでしょう。

M-PESAのエージェントは、事前にM-PESAを自分で購入しており、顧客が現金を引き出すとき、エージェントは顧客からM-PESAを買う、その引き換えに現金を売っている、という仕組みです。エージェントはM-PESAと現金の残高を常に保有しているのです。

それから、なりすましの危険性はどうでしょうか。

口座開設の手続きは非常に簡単ですが、利用するには身分証明書が必要になります。ほかにもSIMカード、PIN番号が必要となります。これはある意味、銀行口座を開くより認証が厳しいかもしれません。


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強盗が多発するため、鉄格子があるのがケニアのキオスク


それからSafaricom以外の通信で使えるかというと、これは使えません。M-PESAはSafaricomの回線上のシステムなのです。


M-PESAのまとめ


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ナイロビの中心部でもM-PESA代理店はかならず目に入る。


M-PESAについてまとめると、

  • ケニアでは通信インフラが未発達なために逆に急発展した。
  • インターネットにアクセスせずとも携帯回線で使える。
  • ケニアでは公共料金や教育費などの支払いから、給料の受け取りまで今やM-PESAで賄われている。
  • 商業銀行と連携
  • 信託で資産は保護される。
  • ケニア国内のどこでも使える。
  • 生活に現金が要らないほどの普及度
  • 普及までのスピードが猛烈に早い。

...と書き進めてきた最中、Facebook創業者のマーク・ザッカーバークがナイロビを訪れ、M-PESAを買収したがっているというニュースが飛び込んできました。

ザッカーバーグ氏も熱い視線を送るM-PESA。そして、さまざまな要因から、独自の発展を遂げるアフリカのマイクロファイナンスが世界のフィンテックをリードする日が来るかもしれません。M-PESA、これからも要チェックです。


(取材・文・写真/米田智彦、協力/株式会社トーラス 木村幹夫、儀保貴一郎)

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