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神山拓生

神山拓生

 - ,,,,  08:00 PM

「リモートで働く人が1日1000円で滞在できる」という新しい取り組みを始めた街、富山県南砺市に行ってわかったその魅力と課題

「リモートで働く人が1日1000円で滞在できる」という新しい取り組みを始めた街、富山県南砺市に行ってわかったその魅力と課題

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格安で移住体験施設を貸し出している自治体は多くありますが、富山県南砺(なんと)市は「同市に滞在してリモートで働いてみたい人たちにも市の移住施設を貸し出す」という点が特徴的です。一般に、移住体験施設は「移住を検討している人たち向け」なので、市が支援してくれる条件がゆるい、とも言えます。

単に移住にフォーカスするのではなく、「働き方」に着目し、訪れる人のライフスタイルの中で南砺市を体験してもらおうという、新しい試みです。クラウドを利用して働く人たちが増え大企業がリモートワークを導入し始める(PR記事へのリンク)など、「自由な働き方」が注目を集める時代を象徴するかのように、ランサーズと協働し「さすらいワーク」と名付けられたこの取り組みを取材するため、実際に南砺市に行ってみました。


南砺市は富山県の南西部、岐阜県・石川県に接する地域。世界遺産・白川郷まで高速道路で約20分という好立地。


「移住を検討」していなくても、「南砺市で仕事をする」なら1日1000円で滞在できる


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南砺市の全景。水田の中に農家が点在している散居村と呼ばれる、独特の風景(普通は、農村はある程度集合している)。


東京から富山駅まで2015年に開通した北陸新幹線で2時間。南砺市に行くためには、富山駅から在来線「城端線(じょうはなせん)」に乗り換えて1時間、もしくは富山市か高岡市でレンタカーを借りて45〜60分です。東京から4時間強と近くはありませんが、気分転換を求めて1〜2泊するならちょうどいい距離でしょう。

南砺市の移住体験施設を借りるにあたって、Facebookで市の担当者さんと簡単にやりとりをしました。下調べの段階で前から行きたいと思っていた白川郷に近いことがわかっていたので、訪問理由は「半分仕事、半分観光」とお伝えしました。その上で、移住体験ハウスの利用申請書を提出し、入居の審査を受けました。訪問理由には「移住」の文字は書きませんでしたが、すぐにOKが出ました。このように、移住を検討していなくても、「移住体験ハウス」が使えてしまうわけです。


「車がないと何もできない」ではなく、「車があれば30分でいろんなことができる」


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南砺市南西部の里山地域にある「太美山(ふとみやま)移住体験ハウス」。アズマダチというこの地域独特の建築様式の古民家を改修したもの。7DKという広さが魅力的。ケーブル回線のため、ネット環境がやや不安定だったのが残念。4Gも届いている。


利用できる体験ハウスは市街地・里山地域・山間部の3カ所。公共交通を利用できる市街地が交通面では明らかに良さそうでしたが、この地方ならではの体験をしたかったので里山地域にある古民家「太美山体験ハウス」を選びました。


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南砺市の里山地域・嫁兼(よめがね)の風景。水田の中に点在する農家の中には、所有者が都市部に生活拠点を移すなどして空き屋状態になっているものもあるが、年に数回手入れされているものがほとんどであり、廃墟のようになっている家屋はほとんどない。地元の人と仲良くなれば、利用されていない物件を格安で借りることができる。


バスは1時間に1本なので、レンタカーを借りました。2泊3日だと軽でも1万数千円はかかるので迷いましたが、「車があれば30分の移動で必要なものは揃う町だ」ということがわかったので、正解だったと思います。


生活用品は車で15分のバイパスで。大きな買い物は金沢市か高岡市でOK


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滞在した太美山体験ハウスの軒下から見える風景。田舎そのものだが、バイパスや高速道路に近く、それほど不便ではなかった。コンビニがないことが都市生活に慣れている筆者には少しつらかったくらいだ。


太美山体験ハウスがあるのは里山地域とはいえ、車で福光駅・城端駅から15分ほど。車がほとんど走っておらず信号も少ないため、渋滞とは無縁です。体験ハウスからバイパスにあるスーパーやドラッグストアまでは15分ほど。実は石川県の金沢市内まで45分で行くことができ、まとまった買い物は金沢でできます。高岡市や富山市にも45分〜60分でアクセス可能なので、車さえあれば生活に困ることはないと思います(なお、冬は豪雪地帯なので四駆推奨だそうです)。

なお、これは南砺市でもあまり交通の便が特によろしくない里山地域の数字。市街地を拠点にするならそれぞれ5分〜15分ほど短くなります。


多種多様なアクティビティに30分〜40分でアクセスできる


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南砺市から20分でアクセスできる世界遺産・白川郷。体験ハウスからは最寄りの高速・福光ICより20分。大きな合掌造りの内部を気軽に体験でき、村内は庭園のように美しい。


白川郷観光は私の目的の1つでした。実は、白川郷は「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として南砺市内にある2つの合掌集落とセットで世界遺産に登録されています。せっかくなので、白川郷だけでなく、南砺市内にある2つの合掌集落(相倉[あいのくら]合掌集落・菅沼合掌集落)も訪れることにしました。


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南砺市から車で南に40分で行ける世界遺産・相倉合掌集落。南砺市南部にある五箇山山中にある。白川郷に比べて観光地化されておらず、住民が農業などを営んでいる様子が感じられる。白川郷同様に民宿もあり、宿泊することもできる。


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相倉合掌集落から車で20分ほどのところにある、菅沼合掌集落。世界遺産に登録されている3つの合掌集落の中では1番規模が小さい(最大は白川郷)。庄川という川に突き出た、独特の地形が特徴的。村の中を歩いていると、水の音が聞こえてくる。


印象としては、相倉・菅沼のほうが観光地化されていないように感じました。五箇山は、戦国時代から近代まで黒色火薬作りと養蚕を生業としていたことで有名ですが、その様子を伝える展示館などもちょっと垢抜けない印象。個人的には観光客が少なく、静かに現地の雰囲気を味わえる富山県南砺市側のほうが楽しめました。

観光のほかにも多くのアクティビティがありました。山に近いところには温泉がいくつもあり、キャンプ場ボルダリング施設などもあります。市の担当者に相談すれば、農業や伝統技術の紙すき・彫刻などを体験させてもらえるそう。いずれも車で30〜40分圏内です。冬には太美山体験ハウスから15分の距離にあるスキー場でウィンタースポーツを堪能することもできます。


クリエイティブな仕事の場としての南砺市


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市街地である城端地区のやや外れにある「南砺市クリエイタープラザ」(愛称:桜クリエ)。市営の施設のため審査がありますが、シェアオフィスが月額35000〜50000円、コワーキングスペースが月額5000円で24時間利用できる。カフェや収録スタジオなどもあります。「さすらいワーク」を利用して南砺市を訪れ、桜クリエのオフィス・コワーキングスペースの利用を希望する場合、市がスペースを確保することも検討中。また、「桜クリエを利用して働きながら、南砺市に滞在してみたい」という理由で体験ハウスを借りることも可能。


里山地域を拠点とした生活・観光を中心に南砺市を見てきましたが、最後にクリエイティブな仕事の場としての南砺市を紹介します。南砺市には有名なアニメ制作会社「P.A. WORKS」がオフィスを構え、山間部には劇団SCOTが拠点とする「利賀芸術公園」があるなど、クリエイティブな集団がベースにしている土地という一面があります。


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クリエイタープラザのコワーキングスペース。ホワイトボードには利用者によるアイディアの殴り書きが残されていた。左手奥に見える扉の先はシェアオフィス、南砺市で起業した会社が利用中。


南砺市クリエイタープラザのシェアオフィスには、映像制作会社やシステム会社などが入居しており、コワーキングスペースにはミュージシャンや編集者などが静穏な制作環境を求めて定期的に訪れているとのこと。クリエイタープラザの周辺には、コンビニやレストラン、ホテルなどがあり、南砺市の中では作業環境として完結できるだけの施設も揃っています。


軽い気持ちで訪れた自分と、地元の人の意識の差


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体験ハウスのある嫁兼地区の交流BBQ大会の様子。市の担当者さんからお誘いがあり、飛び入りで参加。


観光だけでなく、たまたま開催されていた地域の交流会にも参加させてもらいました。体験ハウスには、通りがかった人が様子を見に来て声をかけてくれたりもしました。そんな風にして地域の方とお話をすると「東京からやってきて帰っていくだけの自分」と「ずっと南砺市で暮らしている人たち」の意識の差を痛感せざるをえませんでした。

多くの地方都市と同様に南砺市でも人口の減少・高齢化が課題になっています。地元の人たちは、「移住体験ハウス」に滞在している私が「移住を考えている人」なのだと思ってか、農業の後継者不足の問題や、地場で働くことの重要さ、いかに南砺市が魅力的な土地であるかなどを静かに語ってきます。たとえば、体験ハウスの向かいに住んでいたおばあさんはこんな話をしてくれました。

「この辺りにはいくつも空き家がある。体験ハウスもそうだったし、その隣の家ももう使われていない。あそこに見える家は旦那さんが亡くなって、奥さんが1人で住んでいるけれど、もう畑の手入れをしていなくて、草が伸び放題になってしまっている。こうやって、どんどん人がいなくなっていくのだろうね」

地元が徐々に衰退していくのは仕方ないことだと割り切っているように感じられ移住を考えていなかったにも関わらず、「自分だったらこの土地に対して何ができるだろうか?」と考えてしまいました。


「リモートで自由な働き方をする人」と地方が出会うことの意味


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帰り際に地元の人からおみやげとしていただいた野菜。体験ハウスを借りるにあたって、市の担当者さんから交流会参加や農業体験などの打診が来るが、参加は任意で、断っても良い。実際、私も農業体験はスケジュールの問題からお断りしている。


今回南砺市がスタートした「さすらいワーク」は、編集者である私のように「リモートで自由な働き方ができる人にとりあえず南砺市に来て働いてもらおう」という試みです。しかし、実際に「自由に働ける人の代表」として訪問してみると、市が受け入れようとしている「自由に働く人たち」と地元の人の間に大きな意識のズレがあるように感じました。

私の場合、移住を検討するつもりもなく南砺市を訪れましたが、地元の人たちは「移住体験ハウスにやってきた人=移住してくる人」と認識していました。そのため、「定住して地域の負担を背負ってくれること」を期待されているように感じ、少し困惑しました。そもそも移住の検討はマストではないと言われていたので、なおさらでしょう。

しかし、今回の試住体験は良い意味で刺激的でした。軽い気持ちで訪れたからこそ、南砺市の住みよさや魅力をフラットな目で発見できました。冬にも訪れて、豪雪地帯の生活を体験してみたいと思っています。

また、不意打ち的に高齢化・人口減少問題を目の当たりにして「自分が南砺市のために何ができるだろう?」と考えるきっかけになりました。この記事を書いているのは、「自分の働き方の範囲で自分が南砺市にできること」が情報発信だったからです。

南砺市の「さすらいワーク」には、訪れる人と受け入れる地元の意識のズレという課題がありますが、新しい形で地方と出会える良い機会であることは間違いありません。興味を持たれた方は、観光目的でも移住目的でもない、新しい目線で南砺市を訪れてみてください。「自分が地方のためにできること」を発見するきっかけになるかもしれません。

以下のリンク先に移住体験ハウス利用の詳細が記されているので、お申し込み・お問い合わせはそちらからお願いいたします。


手続き・申請・業務 - 南砺市「南砺に住んでみられ」体験ハウス | 南砺市

(神山拓生、取材協力/ランサーズ&南砺市・南砺で暮らしません課)

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