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ライフハッカー編集部ライフハッカー編集部  - ,,,,,  10:00 PM

『テロリストの息子』ザック・エブラヒムさんが語った、「人と人との間にある壁」を乗り越えて行動すべき理由

『テロリストの息子』ザック・エブラヒムさんが語った、「人と人との間にある壁」を乗り越えて行動すべき理由

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連日のように難民やテロ、地域紛争のニュースが報じられています。日本に住んでいてもテロや戦争という言葉が身近に感じられるような時代となり、今の不安定な国際情勢をどうやって理解すればいいか、考えあぐねている人も多いのではないでしょうか。

そんな中、平和活動家のザック・エブラヒムさんが来日しました。2015年12月に刊行された『テロリストの息子』(ザック・エブラヒム著、佐久間裕美子訳、朝日出版社)という著書で、少年・青年時代の壮絶な経験を綴っています──子どもの頃に、過激派組織のメンバーだった彼の父親はユダヤ教の指導者を殺害して逮捕されただけでなく、1993年の世界貿易センター爆破計画にも関与したのです。「憎しみ」から生まれた父親の行動の結果、家族は差別や偏見に晒され、崩壊の危機に陥りました。「暴力は何も解決しない」。凄惨な経験を経て学んだことを彼がTEDトークでシェアしてくれていることは、以前にライフハッカー[日本版]でも紹介しましたが、2016年1月24日に初来日し富山県氷見市で開催されたTEDxHimiにも、スピーカーとして参加し、他者を理解すること・他者と共生することの大切さを語ってくれています。

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ザック・エブラヒム(Zak Ebrahim)
1983年3月24日アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。工業エンジニアのエジプト人を父に、学校教師のアメリカ人を母に持つ。7歳のとき、父親がユダヤ防衛同盟の創設者であるラビ・メイル・カハネを銃撃し殺害した。彼の父、エル・サイード・ノサイルは服役中に1993年の世界貿易センターの爆破を仲間とともに共同で計画する。エブラヒムはその後の少年時代を街から街へと移動して過ごし、彼の父を知る人々からは自分が何者かを隠して暮らした。彼は現在、テロリズムに反対する立場をとり、平和と非暴力のメッセージを拡散させることに自分の人生を捧げている。

『テロリストの息子』(ザック・エブラヒム著、佐久間裕美子訳、朝日出版社)より引用
(C) Ryan Lash



テロに関する諸問題ついて日本にいる私たちができることはあるのでしょうか? そして、「その人の宗教や文化について知らない他者」に対する理解や共生をいかにして実現していくべきなのでしょうか? 今回は、ザックさんにそうした疑問をぶつけてみました。


日本はテロや難民問題に多くの貢献ができる特別な国


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TEDトークで語った「受け入れる心と親切心を持つことが力になる」ことを世界の人々に広めているというザックさん。来日の直前には、ダボス会議で難民問題を扱うNPO「Crossroads Foundation」と協働したという。


── 日本には欧米や中東のテロリズムに対してそれほどピリピリしたムードがないと思います。それについて、ザックさんはどう思いますか?

ザック:日本に来る前に、ダボス会議に出席してきました。そこで話し合われた大きな問題は、難民についてです。世界全体で、少なく見積もっても6000万人の難民がいると言われており、住む場所を追われています。

私は、企業の重役や著名な政治家などの、社会や組織で大きな政治力を持っている人に、難民の生活がどのようなものかを体験してもらうプログラムを提供しています。彼らの意思決定が人々の生活にどのような影響をあたえるのかを、実感してもらう必要があると考えています。難民を救っていこうとする姿勢を持つことが、テロリズムや戦争が引き起こす負の連鎖を食い止めるためにも非常に重要だと考えているからです。

ここで日本に目を向けてみましょう。グローバリズムやインターネットによって、世界はどんどん小さくなってきています。ですから、テロが今は対岸の火事であっても、今後日本にその影響がふりかかってこないとは言い切れません。

もっと言えば、テロリズムから距離がある日本だからこそ、できることがあるのです。

日本の社会は戦後繁栄をとげましたが、高齢化が進み、誰も住んでいない空き家が数百万軒もあるとうかがっています。難民には家と働く場所、そして生活を立て直すための安全な環境が必要です。そうした条件を日本は偶然にも備えています。日本には難民問題に対して「今できること」があるということです。

日本には、難民が希望を見つけ、未来を創ることができる環境があります。今こそ寛容さが必要ではないでしょうか。難民を受け入れることは日本にとっても利益があることです。彼らは、日本に不足している働き手として、また空き屋問題を解決する借り手として、少子高齢化社会の日本に経済的な利益をもたらすはずです。

── 日本人は、テロや難民問題に対してはあまり行動してこなかったのかもしれません。もっと行動すべきですね。

ザック:我々の世代が行動しなければ、次の世代にツケが回ってしまうかもしれません。

このような問題の場合、国などの大きな組織の対応を待っていても、何も変わりません。まずは個人が動くことから始まります。ひとりひとりが、自分たちの恵まれた人生と経済的・社会的優位性を理解し、持たざる者がいるという事実を見つめ、自分ができることからスタートしてみてはどうでしょうか? 今はインターネットがあり、シリアやイラクの人々と直接つながる方法はいくらでもあります。難民を受け入れ助けるためにできることもあるかもしれません。

私は日本が、難民やテロといった問題に対し、たくさんの解決法と示唆を与えられる特別な国だと思っています。個人と社会、政府が一体となって、これからこの問題にどういう解決法を打ち出すか楽しみにしています。


「私たちは異なっている」というのは、これまでに語られた中で一番大きな嘘


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TEDxHimiに登壇された際のザックさん (C) TEDxHimi


── アメリカではテロリズムをめぐってさまざまな議論がされていると思いますが、ザックさん自身は特にどのような問題に焦点を当てていますか?

ザック:テロリズムをめぐる問題は、簡単に白黒を付けられるような単純なものではありません。それは、世界も人間も、そんなに単純ではないからです。しかし、多くの人が単純な見方で片付けようとしています。

── それについて、人々の"テロに対する恐怖"を利用する政治家を、ザックさんが批判している記事を読んだことがあります。もう少し見解を聞かせてもらえますか?

ザック:ISが罪のない人々を攻撃し、ケガを負わせたり殺したりした場合、「被害者」はその当人だけではなく、その人が属している社会そのものまで広がります。実はそれがテロリストの目的です。

"恐れ"は、社会の中に壁を作ってしまうのです。たとえばテロリストを恐れる人々は、その恐れをイスラム教と結びつけて「イスラム教の人はテロリストに違いない」と考えるようになります。

政治家がこの"恐れ"を利用して支持を集めると、結果的にISが自らの行為を正当化することにつながり、彼らがメンバーを増やすための道具を与えてしまうことになります。

── "恐れ"や人種・宗教の違いによって生まれてしまった「壁」に、私たちはどのように対処すべきなのでしょうか?

ザック:私たちは、知らないものを恐れます。たとえば、多くのアメリカ人は、ムスリム(イスラム教徒)についてよく知りません。ムスリムがアメリカの人口に占める割合は、たった1パーセントです。ほとんどのアメリカ人にはムスリムの友だちはおらず、そのコミュニティとも交流がないため、どういうものかをほとんど知りません。

大切なのは、もし知らないなら、学ぼう、交流しようということです。人種や宗教、持っているお金の多寡などによって、壁を築くべきではないのです。

私はずっと、「ムスリムとユダヤ人は友だちになれない」と教えられて育ちました。しかし大学生のときに、はじめてユダヤ人の友だちができ、自分が言われ続けてきたことは真実ではなかった──私たちは人として同じだ──ということに気づいたのです。

また最近、こんな言葉を耳にしました。

「私たちは異なっている」というのは、これまでに語られた中で一番大きな嘘である。

もちろん、人種や文化といった違いはあるでしょう。しかし、人間性の深い部分では、私たちはみな一緒なのです。中東、アメリカ、日本、どこで生まれ育ったとしても、身の安全や住む場所、独立した生活を営むための仕事、子どもの将来のために必要な教育など、私たちはみな人として同じことを望むのです。


ミサイルではテロリズムをなくせない


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TEDxHimiのアフターパーティ会場で、氷見の寒鰤をさばくところを見学するザックさん (C) TEDxHimi


── テロリズムをなくす方法はあるのでしょうか?

ザック:ISのようなグループは、私たち自身が"恐れ"や宗教・人種の違いなどで作り出した壁を利用して、私たちを分断しようとしています。それに対抗するには、逆のことを行えばいいのです。ISが社会を分断したいのであれば、私たちは、社会を共生へ導けばいいのです。

── ISは爆弾や銃で攻撃を行っていますが、どうやって彼らと共生すればいいのでしょうか?

ザック: 彼らを軍事的に攻撃する、という方法はうまく機能しないと思っています。爆撃すれば、罪のない市民も殺すことになり、生き残った人たちは、怒りを胸に秘めることになるでしょう。ISの兵士になろうとする動機も生まれます。

また、ミサイルを使ってISといった組織を潰すことができたとしても、そのイデオロギーを潰すことはできません。9.11のあと、アメリカ最大のミッションは、アルカイダを潰すことでした。爆弾と銃弾を使って拠点を叩き、組織のほとんどを破壊しましたが、それでテロリズムを撲滅することができたでしょうか?

残念ながら、アメリカのゴールは「テロリズムをなくすこと」ではなく、「テロリストを殺すこと」でした。この2つには、大きな違いがあります。本当のゴールは、テロリズムを「なくす」ことであって、テロリストを「殺す」ことではありません。「殺す」ことで憎しみが生まれ、憎しみはテロリズムを「生かし続ける」ことでしょう。

私には、爆弾が種を撒いているように見えます。爆弾が地面に落とされるたび、テロリストが生まれます。ISといったグループを、ミサイルで牽制することはできるかもしれません。しかし、イデオロギーやルサンチマン(強者に対し仕返しをしようとする弱者の心)は、争いを餌にして個々人の心の中に巣食う怒りや恐れを通じて、社会全体へと浸透していきます。

「テロリストをなくす」もっとも有効な手段は、「彼らの組織に新しい兵士が参加するのを防ぐこと」です。そのためには、罪のない人を傷つけてはいけません。新たな怒りや恐れを生み出すような行為をやめることです。


憎しみは、何ももたらさない、価値のないもの


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── それが、私たちが難民を助ける方法でしょうか?

ザック:そのひとつです。私たちは難民に安全な住環境や仕事、教育を提供できますが、 ISにはできません。もし私たちに助けられる難民がいるとすれば、少なくともその中からはISのようなグループに加わる動機がなくなるはずです。

難民の中には今、そのような組織に加わるしかないほど追い込まれている人たちもいるのです。彼らには生計を立てる仕事もなく、教育の機会もなく、家族は殺され、恐怖の中で怒りを抱いています。

彼らが必要としているものを彼らに与えましょう。彼らが未来に希望を持てるようにすることが、とても大切なのです。暴力は、新たなテロリストを生み出すだけなのですから。

── すでに心の中にある「憎しみ」には、どう対処していったらいいのでしょうか。

ザック:私は、生い立ちからして「憎しみ」で満たされていました。特定の宗教や人種、セクシュアリティの違いを言い訳に、人を「憎しみ」の対象にしていたのです。

しかし、「憎しみ」が私のエネルギーを激しく奪っていたことにあるとき気付かされました。負の感情にエネルギーを費やすくらいなら、もっとポジティブなことに使ったほうがいいのではないかと思います。TEDトークでお話しし、著書『テロリストの息子』にも書いたエピソードなのですが、私の母が「人を憎むのはもううんざり」と漏らしたことがあるのです。その言葉によって私の視野は開け、世界が明るく見えるようになりました。もう人種や宗教で人を憎まなくていいんだと。自分の心の中にある憎しみを手放せば、世界はもっと住みやすい場所になるのだと。憎しみは、何ももたらさない、価値のないものなんです。

── 最後に、ザックさんからメッセージをいただけるとしたら、どんな言葉やフレーズが思い浮かびますか?

ザック:「自分に厳しくしないでください」ということです。自分に厳しくしすぎると、ネガティブで狭い考え方にとらわれがちになります。だからこそ、皆さんにも、この言葉を意識していただきたいなと思います。




ザックさんの著書『テロリストの息子』には、逮捕されても自身の偏見に囚われ続ける父親の姿や、憎むことに疲れた母親の痛ましい言葉など、少年時代の壮絶な経験から、友人を得て自分の人生を歩み始めるところまでが綴られています。今回、ザックさんがお話ししてくれたことは、すべてザックさんの実体験の延長線上にあり、それは、テロリズムの問題を私たちひとりひとりがどのように考えるべきかについて、独自のインサイトを与えてくれるはずです。

直接お会いしたザックさんはとても落ち着いた雰囲気で、細かな質問にも丁寧に、信念を持って答えてくださいました。彼は今後も自分の考えをシェアし続けてくれるはずですが、それによって世界にいい影響を与え続けるに違いありません。


(聞き手:神山拓生・米田智彦、撮影:米田智彦)
(C) Ryan Lash

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