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開發祐介開發祐介  - ,  07:00 PM

本のプロが語り合う「読書術」。対談:書評家×選書家

本のプロが語り合う「読書術」。対談:書評家×選書家

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ライフハッカー[日本版]で年間300冊近く書評を書いているライターの印南敦史氏がこの度、『遅読家のための読書術』という書籍を出版しました。

この本では、本を読みたい、あるいは読む必要があるけれど読むペースが遅くてなかなか思うように読み進められない、という方に向け、印南氏流の読書術=「フローリーディング」について解説しています(フローリーディングについてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、ご覧ください)。

今回は書籍の出版を記念し、選書家=ブックセレクターとしてさまざまなギャラリーやシェアオフィス、カフェなどでその空間に合った本や本棚をセレクトしている、川上洋平さんとの特別対談の模様をお送りします。互いに"本"を1つの生業としている両者に、「読書」についてざっくばらんに語り合ってもらいました。


印南敦史(いんなみ・あつし)
1962年生まれ。東京都出身。作家、ライター、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は多方面で活躍中。2012年より、ライフハッカー[日本版]に週約5本のペースで書評を寄稿。好評を得ている。『伝わる文章を書く技術』 (中経出版) 『ブラックミュージック この一枚』『あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』(以上、光文社)、『音楽系で行こう! 』(ロコモーションパブリッシング)など著書多数。

川上洋平(かわかみ・ようへい) ブックピックオーケストラ代表。ギャラリーやシェアオフィス、カフェでの本の選書をはじめ、「文庫本葉書」、「文庫本画廊」といったオリジナル商品の販売、図書館や文学館、美術館でのワークショップから本の企画まで、選書だけに留まらず、本を使ったさまざまな形式を用いて、人が本と出会う体験を企画・デザインしている。

インターネットが普及して情報がどんどん入ってくる中で、本をスムーズに読んでいくのは難しい


book_to_read_talk_6.jpg印南氏の新著『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)


川上:今回、どういうきっかけでこの本を執筆されたんですか?

印南:本がすごく好きで、物心ついた時から読み始めてはいたものの、その一方で「自分は読むのが遅いな」と常々感じていたんです。でも周りにそれを話してみると、みんな同じことを思っているらしくて。多分これは年齢がどうとかよりも「時代」の影響じゃないかと思うんです。インターネットが普及して、情報がどんどん入ってくる中で、そこにプラスして本をスムーズにどんどん読むというのは、人間のキャパシティを超えてしまうのではないか、そう思ったことが最初のきっかけです。

川上:僕は選書家として、普段は「空間」にマッチする本を選ぶということをやっているんですが、個人のお客さんに対しても、その方の「今の気分」などを聞いて本を選ぶということをしています。そうすると、「自分は本が読めないんです」という方がよくいらっしゃって。「一行の解釈ですごく悩んじゃって」とか「先になかなか進めないんです」とか言われるんです。

だから、印南さんの新刊で書かれている「読み方の重要性」にはとても共感しました。僕も「読み方」を伝えるということは意識して取り組んでいて、本をそこまで重く捉えなくて良いことや「全部読もうと思わなくていいんですよ」などと伝えてあげると、意外と多くの方に響きます。

印南さんとはアプローチの仕方が異なるだけで、考え自体はすごく近いなと思い、嬉しくなりました。やっぱり本を読む方が少なくなっているというのは僕も感じるので、まずこの本を読んでもらって、読書の世界に入ってもらいたいです。

「フローリーディング」に関する具体的なテクニックもたくさん書かれていますが、一番大切なのは「熟読」にこだわらないことですね。

印南:そうですね。これは変な言い方になりますが、それに気付けたのはライフハッカー[日本版]のおかげでもあるんですよ。僕もずっと「熟読しなくちゃいけない」と思っていた人間なんですけど、毎日ライフハッカーで書評を書いてると、「(時間的に)そうも言ってられないな」と。

実際に本を読んでいても感じるところですが、時間かけて読むよりも、フローリーディングの方が頭に残る場合もあるんですね。「速読術」というのは本来あんまり好きじゃないんだけど、フローリーディングについては、「こういう読み方もあっていいんだ」ということがわかりました。

川上:僕も速読的なものにはどこか違和感があったのですが、「フローリーディング」は、方法論としても整理されていて勉強になりました。今の時代、読書の入り口に立っているような方に会うことが多くて、「本はあんまり読まないんです」という方も多いんです。そういう方々には、深く読むというのももちろん面白いけど、いろんな形の読み方がありますよ、ということを伝えています。フローリーディングもその一つの読み方なのだと思い、腑に落ちました。

僕は読書を海で例えることがあって、みんないつも深海にダイブしようと思って本を読もうとするんですよ。でもそうするとすぐ溺れてやめてしまう。でも、浅いところには浅い場所だからこそ生息している魚がいるし、中間の深さにはまた中間だからこその魚がいます。もちろん珍しい深海魚も面白いけれど、深く潜らなくてもきれいで美しい魚がたくさん見られる。そういう風に捉えていくと、だんだんと本という海を楽しめるようになっていきます。それこそ、浜辺で海を眺めてるだけでも楽しいんです。


「自分が読んでいる」と実感できれば、もっと楽しく本が読める


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左/印南敦史氏、右/川上洋平さん


印南:昔から読書に関しては「入り口」を用意するということにすごくこだわりがあります。「こうじゃなくちゃダメだよ」ではなく、「ここが入り口だから入ってみれば?」というアプローチを大切にしてるんです。

川上:それはすごい大事なことですね。僕は「自分がどう感じるか」ということがすごく大切だと思っています。本って詳しくないと話しちゃいけない、みたいな雰囲気が知らないうちに浸透している気がしていて。かなりの読書家の方でも、「僕は全然本読めてないんだけどね」といったことを言ったり、「知識を深く知っていなきゃいけない」と思っている人がすごく多くて。

はじめは誤解が多いくらいの方が楽しめるのではないかと思います。たとえば、ある人が「最近すごく面白い作家を見つけたんだよ、夏目漱石っていうんだけど、次に新刊が出たらぜひ買おうと思う」て言っていたら「あら恥ずかしい」って反応しちゃうと思うんですけど、漱石のような後世まで名が残るような作家の場合、時代背景は古くても、今の作家と比べても遜色なく読ませる力を持っていることが多いんです。だからもしかしたら、"生きてる"と思って読んだらすごく楽しいのではないかと思うんですよ。つい大枠の情報から入ってしまうけど、なにも知らない方が感動のインパクトというのは大きいんじゃないかと思います。

印南:「全然読んでない」って言ってる人が実はすごく読んでたりもするし、やっぱり風潮のせいというか、言えない空気があるんだと思います。

川上:僕自身、本を紹介する時にはいろいろと調べて勉強したりもするんですけど、紹介できる範囲というのはたかが知れています。本には、本の中身だけじゃなくて本を手にした人の体験というのも大きく影響しているので、以前ライフハッカーのみなさんにも体験していただいた「Sewing books」という、一般の方に本を紹介し合ってもらうようなワークショップも開催しています。

その時も、印南さんの言うような"縛られている"方って、本の情報から紹介してしまうんですよね。こういう作家でこんな内容なんですと、ついあらすじ的なことを言おうとしてしまう。けれどそうではなくて「なんでこの本に出会ったのか」とか「どうして読もうと思ったのか」というところに注目すると、聞いてる方もすごく楽しくて、たとえそれが何の本かわからなくても読みたくなってくるんです。読んだ人を感じると興味も持てるように、「自分が読んでいる」と実感できる読み方ができれば、もっと楽しく本が読めると思うんです。

ふだん本を扱う中で、インターネットでも情報を調べるんですが、古い本を多く扱うこともあってか「こんなに有名な作家の本なのに誰も語ってないし、どのサイトもあらすじを説明してるだけ」ということが多くて。読者自身の視点から書かれた文章というのが、意外と少ないなと思います。

印南:それも結局、下手なこと言っちゃうと恥ずかしいって気持ちがあるからじゃないかな。もし視点がずれていたらどうしようとか。わかる部分もあるんですけど、本当は、「あいつわかってないな」くらいの方が面白い(笑)。

この本にも書いたのですが、日本の学校では「読書」というものを高いところにあるものとして教える風潮があると思っていて、それが良くないですね。もっと軽く読めばいいのに。

川上:日本の場合、読書に対するそうした教育が浸透しているからこそ、出てきている問題なのかな、という気はしますね。


ビジネス書だけでなく、小説が好きな人にも読んでもらいたい


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印南:本の内容を自分の血肉にしていくためには、やはり「感性」で読むことが大切だと思います。知識として詰め込もうとすると、逆に身につかないと思う。「ここが好き」とか「この場面が素晴らしい」とかって感じながら読んでいくと、自然と身になっていくと思います。

川上:「自分の身につける」というのは、僕もどうしたらよいかなと悩むポイントです。店頭で本を販売することもあるんですが、たとえば古書の全集なんかは、つくりも美しく内容も素晴らしいんですけど、ほとんど買われないんですね。そういう本をどうしたら読んでもらえるだろうと考えた時に、全集になっているような名作は一節だけでも力のあるものもが多く、お風呂に温泉の素を入れて楽しむような感覚でパラパラっと読むだけでもとても気持ち良く楽しめる、ということに気づいたんです。明確に言葉にはならないけど、「感性」で読むというのは、そういう感覚に近いのかなと。

印南:ページをめくる感じとか、紙の匂いとか装丁の美しさとか、その本を読んでいる時間を楽しむっていうことですよね。

川上:それもありますね。名のある作家だと装丁家もいつも一緒だったりして、本がキャラクターみたいに見えてくるんですよね。印南さんと僕の本に対する感覚は近いと思います。紙の匂いや装丁の美しさを感じることの大切さ、なにより本に書き込みができないと書かれていたことにとても共感しました。

印南:折るのが精いっぱいです(笑)。

川上:「読書術」「速読」とかって、本を「情報」として捉えるだけで、本の"モノ"としての価値を無視するようなイメージがあったんですけど、印南さんの場合かなり本というモノが好きなんだということが感じられました。

おそらく印南さんの書評の読者層はすでに幅広いと思うんですけど、ビジネス書の周辺だけじゃなくて、古書とか小説が好きな人にもぜひ読んでもらいたい。文化的なものや難解な本でも、たとえば要点がまとまっている新書から読むとしたら、この読書術はとても有効だと思いました。そうするうちにいずれ長編小説とかにも手が伸びるようになるんじゃないかと。幅広くいろんな人に手に取ってもらいたいです。

印南:ありがとうございます。あと、「本とどう向き合ったらいいのか」と悩んでる人にも読んでほしいです。たとえば、読んだ本はとっておかなくちゃいけないとか思ってる人。読書家=本たくさん持ってる、という時代ではないと思うんです。逆にどんどん削っていって、残ったもの=自分自身なんだと思います。

川上:そうですね、特に東京は場所代も高いし、そういった「本の整理」というのは考えないといけないですね。僕も古書を扱っていることもあって、本は持って眠らせるよりも循環させた方がいいと思っています。この本に書いてあった「オススメの本は逆にあげてしまう」というのはすごいいいなと思いました。

印南:知り合いの若いビジネスマン連中は、本をたくさん買えるほどお金があるわけではないみたいなので(笑)。でも、読み終えたっきりただ保管しておくよりは全然いいかなと思います。


良い本にいきなり出会おうと考えない


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印南:読書量を増やしたい、という人が自分の好みの本と出会うには、Amazonもいいんですけど、リアルな書店に行くと、本のデザイン面も含めて出会いがありますよね。

川上:本を見て「なにかがひっかかる」という感覚はすごく重要ですね。余裕があれば本屋で買えばいいし、そうでなければ古書店とか、とにかくアクセスが簡単で直感を信じて手にとれる環境に足を運んでみるといいです。

大事なのは良い本にいきなり出会おうとしすぎないこと。読んでみてダメだったらやめる、ということを繰り返していると、自分にとってダメな本・良い本もわかってくる。人と一緒で、「嫌いだなこれ」っていうのがわかってくると、違う側面に気付いたり、「あそこは嫌だけどここは良いヤツじゃん!」みたいに思えたりします。

印南:わかります。僕も「流行っているから」という理由でベストセラーを読むようなタイプではないんですが、それでも、読まなければなにも言えないじゃないですか。だから買う時は、「なんで俺こんなに興味ないんだろう?」っていうことを検証するために読むというか(笑)。それも大切なことなんじゃないかと思うんです。

川上:そういえば本の中で、源氏鶏太さんの名前を出していたのが驚いて(笑)。源氏鶏太さんて今本当に手に取る人が少ないというか、忘れられた作家のひとりじゃないですか。

印南:あの人は、当時の大流行作家だったのに、いまは全然評価されてませんよね。

川上:そうですね。一時は松本清張さんの次に税金を納めていたなんて話もあるくらいですし。

印南:今の宮部みゆきさんとか東野圭吾さんくらい人気だったと思います。

川上:サラリーマン小説の先駆けと言われた人ですね。そこに当たっているのはすごいなと思いました。

印南:源氏鶏太さんは中学の時に最初に読んで、それからずっと好きで。勧善懲悪のシンプルなストーリーとか、昭和の情景が見えてくる描写とか、まったく飽きません。できることなら、没後弟子になりたいくらいなんですよね。昔家が火事になって本が燃えちゃったことがあったんですけど、だからまた集め直したりもしました。

川上:源氏鶏太さんの本は売れたので、古書店でわりと出回ってますが、文化系の本の中にもあまり名前が出てこないので、サラリーマン小説が多いとはいえ、こういうビジネス系の本の中で名前が出て来るとは驚きました。

印南:娯楽小説なので、文学的価値はあまりないですからね(笑)。

川上:でも今読み直すと面白い部分はたくさんあると思います。近いところでいうと、獅子文六さんは最近再評価されて復刊してますしね。印南さんの書評される本の文脈から遠く離れたところの本に出会って読まれているというのがすごいと思いました。

Amazonなどのオンライン書店だとレビューとかを気にしてしまいますが、リアル書店でなんとなく気に入ったものを手に取るということは大切だと思います。

印南:そうですね。

川上:みんな「いい本を教えてください」と言いがちですけど、すごくつまらない本と出会うのも体験としては重要だと思っていて。「すごく嫌」とか「つまらない」のは、人だったら辛いですけど、本なら途中で読むのをやめられるじゃないですか(笑)。嫌な人と出会ってしまうのはキツいけど、本だったら積んでおけばいいですしね。

印南:さっきのベストセラー作家の話じゃないけど、たとえば「赤川次郎なんて全然興味ないよ」とか敬遠してたようなこともあったんだけど、あるとき「俺はどうして赤川次郎に興味がないんだろう?」と思って、それを検証しようと思って100円で買って読んで見たら、結構面白かったみたいなことがある。売れてるということは人気があったということで、そこには必ずなにか理由があるわけですよ。そこを見極めるのが大切ですね。

川上:ブックオフとかの棚が埋まってたりしますもんね。赤川次郎、西村京太郎レベルになってくると、一般の本屋さんより在庫が多いんじゃないかってくらい(笑)。「良い本を読みたい」という発想だとバリエーションが少なくなってしまう気がします。たとえば源氏鶏太は、ある時代においてはたくさんの人が読みたい良い本だった。でも今の時代では、決して誰にとっても良い本というわけではないとすると、良い本を決めるというのは逆に選ばれない本を決めてしまうということでもあるので、これはもったいないなと思います。

印南:良い本は自分で決めるということですよね。人の言うことにあまり囚われない方がいい。


入り口は1つじゃなくていい


印南:出版不況と言われつつも、「買う人は買ってるよな」という意識もどこかにあるんです。もちろんトータルでの売り上げは落ちてるんだけど。そのあたり、どう思います?

川上:本と出会うきっかけがあまりないんじゃないかな、と思います。先日も開催したんですが、お酒を用意しつつ、お客さんにフラっと来ていただいて本を紹介する「SAKE TO BOOKS」というイベントをやっているんです。

お客さんの今日の気分とか「最近こんなことがあって」みたいなお話を聞いて、それに合わせてオススメの本を紹介し、お酒とともに本を楽しんでもらう。もし気に入ったら買ってくれてもいいし、そうでなければ買わなくてもいいですよとお伝えしていますと。本が売れない時代ですし、買わずに帰ってしまう人が多いと思いきや、だいたい9割くらいの人が本を買って帰ってくれるんですよ。

印南:その場所の「体験の一部」として買っていくのかもしれませんね。

川上:それもあると思います。さっきAmazonの話がありましたが、Amazonで買ってしまうと、あそこで買ったんだという体験は残らないですよね。やはりリアルなお店で買うのとはニュアンスが変わってきます。

読みたいけど読めないとか、買いたいんだけどなにを買っていいのかわからない、そういう方ってすごく多いと思います。それこそ今回の印南さんの本のように、みんなが困っていた「読み方」の枷を外してあげるということを、いろんな形でできると面白いんじゃないかと思っています。

印南:「こうじゃなくちゃいけない」というのは、入り口は1つしかないと言っているようなもので、僕はもっと自由であるべきだと思うんですよね。書評でも、僕が意図したこととはまったく違うところを好きになってくる人もいるかもしれないし。

川上:僕もそう思います。先ほども話した、自分の好きな本を持ってきて紹介し合うワークショップをやった時の話なんですが、『暮しの手帖』の元編集長で、今クックパッドにいらっしゃる松浦弥太郎さんの『今日もていねいに。』という本を持って来られた女性がいたんです。

古書を扱っていると、松浦さんのファンの方にお会いすることが多くて。だからその本を持ってきた女性も、きっと松浦さんの本が好きでこの本を読んで来られたんだろうなと思いながら、「この本とはどうやって出会ったんですか?」と聞いたんです。

そしたら、「私オフィスでも家でも、扉をドカンとかガシャンとか、大きな音で締めちゃって、お前はガサツだガサツだと周りから言われるんです。そんな自分を変えたいと思ってた時に『今日もていねいに。』というタイトルを見て、これで変われるんじゃないかと思って買ったんです」という答えが返ってきて。その方は、松浦さんのこと全然知らなかったんですよ。でも、こんな風に松浦さんの本を紹介されたことないなと思って。その方の話に感動しました。

印南:それはいい出会いですね!


電子書籍が先にあって後から紙の本が出てきてたとしたら、「紙の本ヤバい!」ってなると思う


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川上:僕は、本のつくりというところもすごく大切にしています。料理と一緒で、味だけじゃなくて盛り付けも大事だと思います。一流のフレンチが簡易のプラスチックのお皿で出てきたら残念を超えて味も変わってしまうのではと。だから、たとえばオノレ・ド・バルザックのような文豪中の文豪の本は、できれば文庫じゃなくて昔の金箔で装飾されているような分厚い重厚な装丁の本をオススメしています

印南:先ほどの「SAKE TO BOOKS」と同じで、それ自体が本を媒介した1つの"体験"なんですよね。

川上:電子書籍についてもよく質問をされるんですけど、僕が思うのは、本は「情報の集合体」という捉え方もできるけど、そこには手間がかかっているということが大事なんですよね。

いろいろなメディアがあっていいんですけど、作家が書く時の気持ちってメディアのあり方によって変わってくると思うんですよ。たとえば僕は活版の本も扱うことが多いんですけど、活版の本の場合は文章ができた後に、それをわざわざ版をつくって印刷する人がいるということを前提につくられている。例えば、自分が作家だと想定した時に、自分の文章を誰かが手間をかけて形にしてくれることを意識すると、当然書き手の気持ちは変わりますし、書かれた文章そのものも全然違うものになると思います。

印南:全然違うものですよね。僕も何度か電子書籍に移行しようと考えたんですが、どうも合わなくて無理だった。

川上:電子書籍もあくまで1つのツールであって悪いわけじゃないけど、「すべての本がこれで読めますよ」とか「読書のカタチが変わる」とか、使い方のマニュアルが1つになってしまうのが問題なんじゃないかと思うんです。

それと、今まではみんな紙の本に慣れていたから、「電子書籍すごい!」と感じただけで、電子書籍が先にあって後から紙の本が出てきてたとしたら、「紙の本ヤバい!」って思ったんじゃないかと(笑)。実感として、紙の本こそメディアとしてすごいんじゃないかと思っています。

印南:当たり前すぎて気づいてないのかも。

川上:そうですね。手製本の手順とか見せてもらうと、1ページ1ページ縫っていくんですよ。長いスパンで見ると、糊なんかも化学物質が入ってるかどうかで本の持ちが違ったりしますしね。

あと、電子書籍は寝ながら読むと、落とした時に重いから危ないとか(笑)。紙の本の方が優れている点は上げたらキリがありません。


読書をすることの意義


印南:僕は、読書の意義は、心が豊かになることだと思います。読んでもなにも得られない場合もあるかもしれないけど、得られなかったと思っても、実はなにかを得ている。それが一番の醍醐味だと思います。あと、読んだことによる達成感もある。そして達成感があると、自信につながります。そうした1つ1つの積み重ねが、読書の魅力だと思います。

川上:まず、「読む」ということと「体験」を切り分けないでほしいんです。読んだ瞬間、それが自分のものになって、自分の体験と照らし合わせることになる。だから、本を読むだけじゃダメで、何かしらの体験というのがまず第一にあるべきです。体験が積み重なっていく時に、体験を見つめなおし深化させるために、ものすごく役に立っていくのが読書なんじゃないかなと思います。

たとえば科学やビジネスの知識はあたかも「重要なもの」「なくてはならないもの」で、幅の広い読書はあくまで趣味、実学ではないと考えられている印象がありますが、僕は読書一般を科学やビジネスと比べた時に、それより下にあるとは思えないんです。

荒川洋治さんが書かれた『忘れられる過去』という本を読んだ時に、やはり読書そのものがすごく重要な実学なんだと確信しました。印南さんが言われた「なにかを得ている」というのは人間の根本にあるもので、それは科学やビジネスの知識よりも価値のあるものなのかもしれないですね。

印南:体験ということで言うと、「この本のこのページ、丸ノ内線のあそこで読んでたな」とか「この頃はああだった」みたいなのって、思い出しますよね。そう考えるとやっぱり読書って、ものすごく人生と関わってるなと思います。




「書評家」と「選書家」、それぞれ異なる立場から「本」に携わっているお二人ですが、根本にある考え方はとても近いものがあると感じました。

読書家になるために必要なのは、偏見なくいろいろな本に触れること。そして、他人じゃなく"自分"が面白いと感じるかどうか、それこそが大切であるということがわかりました。そうした姿勢で本と向き合っていくうちに、自然と読書量が増えていくのはないでしょうか。


(文/開發祐介、写真/吉川晶子)

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