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印南敦史印南敦史  - ,,,,,  06:30 AM

高さ106センチの視点が生んだ、「バリアバリュー」という思考法

高さ106センチの視点が生んだ、「バリアバリュー」という思考法

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私は、骨が弱くて折れやすいという魔法にかけられて生まれてきました。
今日まで骨折は20回くらい、手術も十数回と、人生の5分の1は病院で過ごしてきた計算になります。幼稚園から小学校低学年の頃までは、何とか歩けていたのですが、小学校4年生の頃から車いすに頼らざるをえなくなりました。
今、車いすに乗っている私の目線の高さは106センチです。
(「はじめに」より)

そう明かすのは、『バリアバリュー 障害を価値に変える』(垣内俊哉著、新潮社)の著者。思春期には「車いすでなければよかったのに」と思い詰め、自ら命を絶とうとしたこともあったといいます。でも、あるとき「自分はなんのために生きたいのか」と考えた結果、足であることが自分のすべてではなく、「歩けなくても、できることがある」という思いに至ったのだとか。

ずっと車いすに乗ってきたからこそ、社会に隠れている不便さや不自由さに気づけるのではないか。高さ106センチの世界で生きているからこそ、他の人とは違う視点で物事を見られるのではないか。それを活かせば、他にはないビジネスを創造できるかもしれない――そのように考えて、学生時代にミライロを立ち上げました。(「はじめに」より)

ユニバーサルデザインという未開拓市場に切り込んだ同社は、設立6年目にして年商2億円の企業に成長したといいます。そんな実績を打ち立てた著者が本書で伝えたいのは、「バリアバリュー」という思考法。狭義では「障害」を意味する「バリア」を「短所」「苦手なこと」として広く解釈し、「バリアフリー(障害を取り除く)ではなく、「バリアバリュー」(障害を価値に変える)と捉えているのです。

バリアをバリューに変える心構えを説いた第4章「隠れた価値を見つける」のなかから、いくつかの要点をご紹介しましょう。


バリアは「人」ではなく「環境」にある


日本人の9割が「右利き」。だから「ハサミや定規、包丁が使いづらい」というようなことだけではなく、駅の改札でICカードをタッチする場所も、自動販売機の硬貨の投入口も右にあります。

左利きは障害ではないけれども、大多数の右利きに合わせてつくられた環境に、左利きの人にとっての不便や不自由が生じ、それが一種のバリアになっている。そこで、いまでは左利き用のハサミや定規、包丁が売られ、左利き用グッズの専門店も生まれています。左利きであるという小さなバリアですら、ビジネスにつなげていくことができるということです。

私たちは、なにかしらのバリアを感じたとき、どうしても「自分のほうが環境に合わせなければいけない」と考えてしまいがち。しかしそうではなく、「自分に合った環境はないか」「環境を自分に合わせられないか」という方向からも、物事を考えてみてはどうかと著者は提案しています。そのような視点から見てみれば、バリアからも多くの気づきや学び、チャンスを見いだすことができるというわけです。(96ページより)


弱点と強みをセットで考える


「人見知りで、話すのが苦手」「細かいことが気になりすぎて、仕事が遅い」「あれこれ目移りして、粘りや落ち着きに欠ける」などのバリアは、誰にでもひとつやふたつはあるもの。それらを克服しようと、話し方教室に通ったり、仕事術の本を読みあさったりして、なんとか能力を高めようと努力している人もいます。

しかし、そうやって努力するだけが解決法なのだろうかと、著者は疑問を投げかけます。すべてのバリアが努力で克服できるならまだしも、現実的にはどれだけがんばっても克服できないバリアもあるはず。たとえば著者も、自分の足で歩くためにあらゆる努力をしたものの、それは叶わなかったといいます。

だからこそ、自分の弱点を克服することにばかり目を向けるのではなく、「その弱点に意外な強みが隠されているのではないか」と考えることが大切だというのです。そのような発想の転換ができるようになれば、きっと価値を生み出すことができるということ。

たとえば「人と話すのが苦手」という弱点の裏側には、「巧言令色(こうげんれいしょく)を潔しとしない」、つまり言葉を飾って取り繕おうとする姿勢に価値を置かないという誠実さがあるのではないかと指摘しています。そして著者自信、ビジネスにおいて「誠実さ」ほど大切なバリューはないと考えているのだそうです。

同じように「仕事が遅い」には、「人よりていねいな仕事をしている」といいうバリューが隠れているかもしれない。だとすれば、「量より質」で成果を上げる方法を考えればよいということです。

また「粘りや落ち着きに欠ける」人は、目先の仕事だけでなく、幅広い視野を持っていることの表れだともいえます。だから、その意識が向いている先を掘り下げれば、意外なバリューが見つかるかもしれない。

もちろん、実際にバリューを生み出すことは容易ではないはずです。しかしそれでも、常に「弱点と強みをセットで考える」ことはバリアをバリューに変えるポイントなのだと著者は主張します。(104ページより)


「正しさ」を武器にしない


車いすに乗っていると、レストランなどで「店内に段差があるから」「忙しくて対応できないから」というような理由で入店を断られることがあるそうです。しかし著者は、ガッカリすることもあるけれど、「入店拒否をするなんて、この店は正しくない」などと思わないようにしているといいます。

それどころか、「今度この店にバリアフリー化の提案をしようかな」と考えたりもするのだとか。なぜなら、世の中を恨んだり、誰かを責めたりしたところで、バリアはバリューに変わらないから。

なお、もしその店にバリアフリー化の提案をするとしても、「障害者を差別することは"不正"だから対応すべきだ」というような営業の仕方は絶対に避けるそうです。いうまでもなく、それでは「正しさ」を武器にすることになってしまうから。たしかに「正論」は強い力を持っているけれど、ビジネスの現場にでは、往々にしてそれは悪い武器になってしまう危険があるということ。

では、どうすればいいのでしょうか? この問いに対して著者は、「正しさ」ではなく「メリット」を提示すればいいと説いています。だから著者も自身のビジネスにおいては、「もしここをバリアフリー化すれば、いままで取り逃がしていた障害者や高齢者のお客様が来店できるようになります」と証拠(エビデンス)となるデータを揃え、相手に納得してもらうのが基本なのだといいます。

そうやって店舗や施設の条件に見合った方法を提案すれば、たいていは受け入れてもらえるもの。もちろん「正しさ」は悪いことではありませんが、それがマイナスになってしまうこともあるということです。(107ページより)


「泣き落とし」は使わない


バリアをバリューに変えようとする際、もうひとつ気をつけなければならないことがあるといいます。それは、「泣き落とし」は使わないということ。ビジネスにおいては特に、絶対に相手を同情させてはいけないと考えているのだそうです。

著者のような車いすに乗った人がビジネスをしていると、相手の同情心を刺激してしまうことはあるそうです。たとえばある企業にユニバーサルデザインの共同開発を持ちかけたときに、先方から「これは社会貢献だから、利益を出すことにこだわっていません」といわれたこともあるのだとか。

しかし著者は、「利益が出なければやる意味がありません。ぜひ利益が出るような商品をつくりましょう」と答えたのだといいます。なぜなら、どちらにとっても利益が出るような関係を築きたいと考えていたから。同情心はビジネスのプラスにはならないという考え方です。そうでなくとも、採算を度外視してしまうと、結果的に予算がすぐ底をつき、プロジェクトが中止に追い込まれる可能性もあるはず。

ビジネスでもボランティアでも、社会的活動を続けていくには必ずお金が必要。どんなに有意義な話でも、どんなに多くの同情を集めることができても、お金がなくなればそこで終わってしまうわけです。だからこそ著者は、ビジネスパートナーとは対等に「儲け話」ができるのがベストだと考えているのだといいます。ビジネスにおいては相手に「同情」を期待してもいけないし、させてもいけない。いかに相手に「信頼」してもらい、「納得」してもらい、「共感」してもらうかが重要だということです。(110ページより)




障害であろうが、弱点であろうが、人が生きていくうえで「バリア」になっているという点では同じ。そもそもバリアは必ずしも克服しなければならないものではなく、そこに隠れた「価値」や「強み」と向き合うほうがいい。そんな考え方には、強く共感できます。

生きていれば誰しも、なんらかの「バリア」に直面するもの。しかし大切なのは、そこで愚痴ることではなく、「なにができるか」を考えてみること。そういう本質的な部分を再確認するという意味においても、ぜひ多くの方に読んでいたきたいと思います。


(印南敦史)

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