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大嶋拓人大嶋拓人  - ,,,,,,,  11:00 PM

国内500社が導入した「暗闇の企業研修」が今注目されている理由

国内500社が導入した「暗闇の企業研修」が今注目されている理由

160307dialogue_walk.jpgIllustration by Diane Tran-Duc


ダイアログ・イン・ザ・ダーク(Dialog in the Dark)」をご存知でしょうか? 何も見えない完全な暗闇の中に身を置く「暗闇体験」を提供するプログラムで、参加者は完全に光を遮断した照度ゼロの漆黒の空間の中へ入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもと、「光のない世界」を探検します。

これまで全世界39カ国、130都市以上で開催され、2016年現在で800万人を超える人々が体験したこのイベントは、「暗闇のソーシャルエンターテインメント」として世界的に知られています。

そんな「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」が今、多くの企業から熱い注目を浴びています。その理由は「創造力を発揮して、イノベーティブな企業になるためのヒントが暗闇にある」ということに気づき始めたからです。「暗闇」と「イノベーション」。何の関係もなさそうな2つの言葉は、なぜつながっているのでしょうか?

今回、ライフハッカー編集部では、そんな疑問を探るべく、ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンで代表を務める志村真介(しむら・しんすけ)氏にインタビューを行いました。

聞き手である私自身も、この暗闇の企業研修を実際に体験して、今回の取材に望みました。


志村真介

コンサルティングファームフェロー等を経て1999年からダイアログ・イン・ザ-ダークの日本開催を主宰。1993年に新聞記事でダイアログ・イン・ザ・ダークのことを知り、発案者であるアンドレアス・ハイネッケ氏に手紙を書いて日本開催の承諾をもらう。2009年より東京外苑前の会場にて常設展示を開始。体験者はこれまで17万人を超える。2013年より大阪「対話のある家」を積水ハウスと展開中。著書に『暗闇から世界が変わる:ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』(講談社現代新書)がある。


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ダイアログ・イン・ザ・ダークの東京・外苑前会場


視界を閉ざすことで現れる、普段とは違う思考


── 暗闇の企業研修が始まった背景は?

志村氏:2007年、世界経済フォーラム(ダボス会議)が行われたとき、ダイアログ・イン・ザ・ダークが採用され、世界のトップリーダーたちが暗闇の中に入りました。その成果は予想以上のものとなり、暗闇での企業研修を発展させるきっかけになりました。今、世界のビジネス環境は大きく変わりつつあります。これまでの成功体験や方程式では問題が解けない世の中になっている、ということです。例えば、これまでのビジネスなら米国の先進的な業界のところに行って、展示会に行くなり研修すればちょっと先が見えた。アパレル業界なら、ヨーロッパに行くと次のトレンドが見えた時代があったのですが、そうはいかなくなったわけですよね。

だからこそ、創造力やイノベーションが必要になってくる。そのためには、固定観念や既成概念をリセットしないといけないのですが、これがなかなかできないんですよね。まず、立場をリセットするのは難しいし、業種・業態を超えた目標を立てるのも難しい。「お客さまのことを考えて」とか「お客様の立場に立って」といった言葉は言うのは簡単で、実行するのはとても難しいのです。

でも、暗闇というツールを使えば、実はいとも簡単に思考を変えて、このような固定観念をリセットできます。


── 暗闇では、なぜ思考が変化するのですか?

志村氏:暗闇の中ではまず、情報のインプットが変わるために、それを処理する脳の使い方が変わります。普段、私たちは目から入った情報を視覚野で処理していて、ここがものすごく酷使されています。フルカラーだし、リアルタイムだし、コンピューターの世界で言うと一番CPUを食う処理ですよね。それを一度断ち切って情報を入れないようにすると、脳の使い方のバランスが調っていきます。視覚を閉ざして情報のインプットを極端に少なくすることで、他の感覚機能を使うことができるようになる

これは大切な人の話を聞くときに目を閉じてみたり、音楽を聴くときに目を閉じてみたりっていう、たぶん人間なら本能としてやってることでもあります。


仲の悪い2人を協力させる方法は、飲みニケーションじゃない


志村氏:もう1つの点から言うと、昔は強烈なリーダーがいて、その彼がリーダーシップを発揮すれば、他の社員は付いていけばよかった。しかし今は、1人のリーダーでは勝てないのですよね。あるとき脳科学者の茂木健一郎さんがダイアログ・イン・ザ・ダークの効果を「チームの力」に関して話されたことがあります。たとえば、会社で次の3つのチームを作ったとします。

A チーム・・・その業界に精通した人を集めたチーム
B チーム・・・知能指数が高い人を集めたチーム
C チーム・・・チームのメンバー同士でお互いの気持ちがわかり合えるチーム

各チームにいろんな課題を与えると、昔なら A チームか B チームが勝ったのですが、今は C チームが勝つ

それは課題を解決するのに複数の分野の知識が必要になってきてるということもあるし、問題が複雑化しているというのもあります。自社だけが儲けることができても地球環境に悪いとか、多様性を認めないといけないとか、ビジネス自体がいくつも観点をクリアしないといけないゲームになってきているわけです。

でも、昔みたいに飲みニケーションをすればいいかというとそうでもない。ある心理学者の研究によれば、気の合わない2人が無理に飲みに行くと、2人の関係は余計に悪くなります。でも上司は年代のギャップがあるので、飲ませりゃなんとかなるだろうと思っているのですよね。ここに大きな落とし穴があります。反りが合わない2人を仲良くさせる唯一の方法は、共通の目的を持たせて時間を区切って協力させること。目的達成の、2人はサポーティブな関係になります。

暗闇研修で行っているのはまさにこれで、暗闇という環境で視覚障がい者のトレーナーが参加者にいくつかのミッションを与えます。共通の目標があって、時間が制限される中で、プレッシャーがかかってくるとお互いに協力せざる得ない、コミュニケーションを取らないと前に進まないわけです。


── 今回、暗闇研修を実際に受けてみて、おもしろいなと思ったのは、自分の意見がとても言いやすかったことです。私が参加したのは暗闇研修の導入を検討している企業向けの体験研修で、人事担当者が多かったからか、私が一番若いぐらいでした。人事部長クラスの人も何人かいたので、同じ課題を明るいところでやったとしたら、たぶんここまで意見を言いやすくなかっただろうなと思ったんです。


志村氏:おっしゃる通りです。先ほどお伝えした固定観念が外れたということですよね。そして自分の立場や役割を越えて暗闇の中で話し始めると、もう少し俯瞰した視点ができます。見えないが故に、状況が正しく判断できるようになるのです。


── 本質的な議論ができる。

志村氏:そうなんです。だから、誰が言ったかではなく、その意見に対していいよねって言えるようになる。個人を褒めてるわけではなくて、その考え方や思考を褒めているのです。考え方に合意することができると、暗闇から出てきても行動は変わりますよ。


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暗闇の中では、「誰が話しているか」より「何を話しているか」に注目しやすい。


日本の中にある「異文化」


── 今お話を聞いていて、この暗闇での体験は「留学」と似ているなと思いました。日本から離れてみると、日本を客観的に見ることができるようになるみたいな。

志村氏:そうそう。暗闇の中に行くというか、異なる文化に足を踏み入れるツアーみたいな感じですね。「視界があるのが当たり前の世界」から離れて、不便で不自由に見える世界を訪れてみる。そこでは、常識的にはこうだろ、と思っていたことが通じない。そんな世界を体験すると、視界のある世界が客観的に見えるようになるのかもしれません。まさに「暗闇留学」ですね。


── 日本の中にも異文化はたくさんありますよね。外国人がたくさんいる、という意味ではなく、同じ日本人で同じ日本語を話しているのに「この人は異文化から来たんじゃないか」っていうくらいわかり合えない人がいます。

志村氏:そうですね。例えば、企業買収のニュースをよく聞きますが、M&Aをかけたほう、かけられたほう、業界は同じ2つの会社でもそれぞれ文化が違いますよね。特に過去10回以上も合併を繰り返し大きく成長している金融関係の企業の場合、旧何々銀行の人と別の銀行の人が集まって、1つの仕事をこなすときに、同じ日本語を話しても、やはり文化が違うんですよ。

文化の違う人たちが出会うとき、新しいコミュニケーションの在り方をつくらないと合併した意味は薄れてしまいます。しかしながら、異なる文化を理解するためにコミュニケーションの訓練をしている企業はまだまだ本当に少ないのです。


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見ないことでより美味しく感じられる、暗闇のランチ。


「個を生かす研修」と「個を殺す研修」


── 日本独特の研修としてたまにニュースでも聞くのが、「精神的な研修」だと思っています。スキルアップ研修のようなものではなく、どちらかと言うと新入社員研修に多いものです。たとえば、5日間お寺にこもって他の同期たちと寝食をともにして、朝は早朝5時に起きて座禅をして、もちろん私語は厳禁。怖い監督者が見ているところで課題をやらないといけないくて、なぜか大声で課題を発表させられて、めちゃめちゃ怒られて全否定されて、精神的に追いつめられる。でも最後にちょっとだけ褒められて、みんなで号泣するみたいな。こういう研修を専門に請け負う会社もあるくらいですから、実際に経験した人も多いと思います。私はこういう研修を「個を殺す研修」だと思っているのですが、ダイアログの暗闇研修はこれとは完全に真逆で「個を生かす研修」なんだと、実際に体験してみて思ったんです。

志村氏:おっしゃるとおりです。「個を殺す研修」の目的は、ある意味、従業員を標準化することにあるのかもしれません。一昔前は、このように従業員を標準化して仕事させれば、高い生産性が保てて、ビジネスもうまくいっていたのでしょう。でも今は、それだけでは対応できなくなってきている。強いリーダー1人にすべてを任せ、従うだけでは組織の成長も個人の成長もありません。

日本の企業は「改善は得意だけど、イノベーションを起こすのは苦手」と言われています。要するに、何か目標を決めたらそれに向かって一直線で、自分が関係ないと思えるところには見向きもしない。それはある意味、無駄がないので生産性が高い状態ではあるけど、イノベーションやクリエイティブなアイデアというのは、一見関係のないところにあるものなんです


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インタビューに答えてくれた志村氏。暗闇に入る前の待合スペースにて。


── 最後に、ライフハッカー読者に向けてメッセージをお願いします。

志村氏:あるビジネスマンが、会社を退職するときにダイアログ・イン・ザ・ダークを退職のパーティーに使われたことがあります。その時は、ビジネス研修も取り入れながら行いました。その人は、会社では全て部下に必要なビジネスのスキルを教えたと。でも、1つだけ教えてないものがあると気づいたそうです。それは、リーダーも「助けてくれ」って言ってもいい、ということ。

彼は、研修を通して「1人では怖くてできない」と思える課題があったそうです。自分はやっぱりこれまでずっと完ぺき主義だったので、人に助けてもらうことは大嫌いで、自分が取りあえず率先して行く、これで組織の階段を登ってきた。ところが暗闇の中で怖くてしょうがなかったみたいで、そこにたまたま近くにいた普段だとか弱そうに見えた女の子に助けてもらったそうです。

その経験から、「できないことはできないって言えばいい。リーダーはできないと言うべからずと思っていたけど、助けを求めれば、助けたほうも助けられたほうも良かったと思える」と。だから、ビジネスのシーンでも「助けて」って言っていいんだよ、と部下たちに伝えていました。

これはビジネスだけの話ではなく、社会全体の話にもつながります。日本にはこれだけの経済力があって、これだけの社会インフラがあるのに、世界で最も子供たちが孤独を感じている。そして毎年自殺していく人たちが何万人もいる。原因は何かっていうと、「助けて」って言えないことにある

暗闇って不思議なことに「助けて」って言いやすいんですよ。ありがとうも言いやすい。企業の研修で、「助けて」と「ありがとう」。これはもう幼稚園で教わるような話ですが、「助けて」と「ありがとう」が言えれば、ビジネスは今よりもっとうまくいくし、その人の周囲が幸せになることで社会がより良いほうに変わっていく。

だから、本来ダイアログはビジネス研修に限らず、社会全体をより良く変えていくプラットフォームなんです。


ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇研修)

(聞き手・写真/大嶋拓人、イラスト/Diane Tran-Duc)
Illustration by Diane Tran-Duc

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