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印南敦史印南敦史  - ,,,  06:30 AM

世界をよりよくする「効果的な利他主義」という生き方

世界をよりよくする「効果的な利他主義」という生き方

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「もしも宝くじで6億円当たったら、どう使う?」
そんな、ありきたりな会話をしているとき、妻はこう答えました。
「ローンとか返すお金を払って、必要な額を少し残して、あとは寄付する。お金がありすぎるとよくないことが起こるし、困っている人に使ってもらったほうがいいから」

「人の役に立ちたい」と漠然と感じてはいても、現実的には自分のことで精一杯だった私にとって、その言葉はある意味で衝撃的でした。「利他主義」という言葉を意識するようになったのも、おそらくそれがきっかけだったと思います。

あなたが世界のためにできる たったひとつのこと―<効果的な利他主義>のすすめ』(ピーター・シンガー著、関美和訳、NHK出版)に強く共感できたのは、きっと、そんなことがあったから。しかし個人的な話を差し置いても、本書が誕生したことには時代的な必然を強く感じます。

ザ・ニューヨーカー誌から「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、タイム誌から「世界の最も影響力のある100人」のひとりに選ばれた著者が、「効果的な利他主義」について説いた書籍。きわめて現代的な考え方である利他主義について、わかりやすく解説しています。

エキサイティングな新しいムーブメントが起きています。それが、「効果的な利他主義」です。(中略)効果的な利他主義は、非常にシンプルな考え方から生まれています。「私たちは、自分にできる<いちばんたくさんのいいこと>をしなければならないという考え方です。(中略)私たちの余分なリソースのかなりの部分を、世界をよりよい場所にするために使うことが、最大限の倫理的な生活と言えるでしょう。(「はじめに」より)

今世紀のはじめに成人となった「ミレニアル世代」が推し進めている利他主義のムーブメントには、たしかに共感できる部分が少なくありません。ただ、解決しておきたい疑問が残っているのもまた事実。そこで、まずは第1章「効果的な利他主義とは?」内の「いちばんたくさんのいいこと」から答えを探し出してみたいと思います。<いちばんたくさんのいいこと>についての「よくある質問」を紹介し、それに答えた箇所です。


<いちばんいいこと>とは、どんなことでしょう?


この問いに対する答えは一様ではないものの、効果的な利他主義者にはいくつかの共通する価値観があるといいます。ひとつは、「他のことがすべて同じなら、より苦しみが少なくなり幸福な世界の方が、苦しみが多く幸福の少ない世界よりもいい」ということ。また、「他のことがすべて同じなら、寿命は短いよりも長い方がいい」ということ。

こうした価値観に基づくと、効果的な利他主義者がきわめて貧しい人たちを助けるチャリティに向かうのもうなずけるはず。同じ金額なら、途上国のきわめて貧しい人を助ける方が、それ以外のほとんどのチャリティに寄付をするよりも、はるかに苦しみを減らし、はるかに多くの命を救えるからです。(18ページより)


どの人の苦しみも同等なのでしょうか?


「遠くの場所や外国で起きているから」、あるいは「人種や宗教が違うから」といって、苦しみが少ないとは考えないのが効果的な利他主義者。動物の苦しみも同じで、種が違うからといって、その苦しみに向ける関心が少なくていいとも思わないのだとか。(19ページより)


自分の子どもを優先させてはいけないという意味?


「『自分にできるいちばんいいことをする』というのは、自分の子どもを優先させてはいけないという意味でしょうか? 家族や親しい友人を他人よりも大事にするのが悪いことだとは思えないのですが」という問いに対し、著者はこう答えます。

「効果的な利他主義者は、他人の子どもより自分の子どもが特別な存在だということを認めないわけではない」と。親なら誰しも自分の子どもを愛していますし、「自分の子どもも他人の子どもも分け隔てなく考えろ」という方が非現実的だから。また当然ながら、自分の子どもを大切にするなということでもないといいます。

いずれにせよ、効果的な利他主義者にとって<いちばんいいこと>をするのは人生の大切な一部。とはいっても、彼らも人の子であって聖人ではないわけです。24時間365日、なにをするにも社会貢献を第一に考えているわけではないということ。

他の人々と同じように、効果的な利他主義者もまた、くつろいだり、自分のしたいことをするために時間もお金も割いているもの。しかし、他にも助けを必要としている子どもがいるなか、「自分の子どものためにすべきことには限界がある」と考えるのが効果的な利他主義者だということ。

親は子どもにすべてを残すべきだという一般的な思い込みには反対です。遺産の大部分を、そこからより多くの恩恵を受けられる人たちに与えるべきだと考えるのです。(20ページより)

この考え方は、効果的な利他主義が理想論ではなく、きわめて現実的な価値観であることを物語っています。(19ページより)


正義、自由、平等、知識といった、その他の価値については?


ほとんどの効果的な利他主義者は、こうした価値もいいことだと考えているのだといいます。なぜなら、人々がよりよい人生を送り、抑圧されずに毎日を過ごし、自尊心と自由を持ってやりたいことをやり、苦しみや早すぎる死を経験せずに済む、そんな社会をつくるためには、こうした価値観が欠かせないから。(21ページより)


誰でも効果的な利他主義を実践できますか?


時間とお金さえあれば、誰にでも実践することが可能。しかし残念ながらほとんどの人は、あまり深く考えずにチャリティを選んでいるのだそうです。そういう意味では、誰もがいますぐに効果的な利他主義者になれるとは思いにくいかもしれません。とはいえ、富裕国の寄付文化に影響を与えられるほどに、効果的な利他主義者の数は増え続けているのだそうです。


嘘をつかなければならない場合は?


「誰かの苦しみを和らげるために、嘘をついたり、罪のない人を傷つけたりしなければならない場合はどうでしょう?」という問いに対し、著者はこう答えています。

たいていの効果的な利他主義者は、「(罪のない人を殺したり傷つけるなど)倫理的な規範を破れば、ほぼ悪い結果になる」と考えているもの。行為の善悪をすべて結果で判断するような徹底した功利主義者でさえ、「遠い未来のなにかいいこと」のために、いま目の前にある怪しげな理屈には首をかしげるといいます。

レーニンやスターリンや毛沢東やポル・ポトのもとで、未来のユートピア社会の理想が、最悪の独裁政権の正当化に利用されたことは歴史が証明しています。そしていまでもテロリストは、自分たちがよりよい未来をつくるのだという妄想によって、犯罪を正当化しています。効果的な利他主義者の誰ひとりとして、そんな悲劇を繰り返したいとは思っていない。著者はそう断言しています。


利益の使い方


たとえば、私が途上国に工場を建てて、地域の他の雇用主よりも高い給料を払い、労働者を極度の貧困から救い出したとします。たとえ私がその工場から利益を得ていたとしても、効果的な利他主義者といえるのでしょうか?

この問いに対して著者は、「その利益をあなたはどう使うのでしょう?」と質問を投げかけます。もしも工場を建てる目的が、途上国の人を極度の貧困から救い出すことであるなら、さらに多くの人を救うために利益の大部分をふたたび投資するはず。もしもそうだとしたら、効果的な利他主義者だということ。

しかし、その利益を使ってありったけの贅沢な暮らしを送るなら、たとえ一部の貧しい人に恩恵を与えていたとしても、それは効果的な利他主義者ではないわけです。

なお、この両極の間には、さまざまな中間の立場が存在するもの。利益の一部だけを再投資してより多くの人がまともな収入を得られるように助ける人もいれば、従業員よりもいい暮らしができる金額を手元にとどめる人もいるはず。でも、どちらも効果的な利他主義者の範疇に入るそうです。なぜなら、完璧でなくとも、少なくとも最低限の倫理的な生活を送っているから。(22ページより)

こうしてみると、効果的な利他主義は決して人を縛りつけるものではなく、ライフスタイルのひとつとして機能するものだということがわかるはずです。そして、もうひとつ注目ししておくべきことがあります。


質素に暮らす


効果的な利他主義について見るべき点は、それがムーブメントとして大きな広がりを見せていること。そして、その特徴のひとつが、「質素に暮らす」という点。それほど収入が多くなかったとしても、限られた収入のなかから驚くほど多くの金額を効果的なチャリティに寄付できるというのです。事実、第3章内には、ある効果的な利他主義者のお金の使い道が円グラフで示されていますが、それを確認すると、彼らが多額の寄付をしながら、きわめて質素に暮らしていることがわかります。

そこで重要なのは、チャリティが「義務」ではなく、「心地よいライフスタイル」としての価値を生み出していること。端的にいえばミニマリストの生き方にもつながるものがあり、だから若い世代の共感を得ているのだろうと思います。

もちろん、失敗もありました。以前は買い物の最中に、いつもこう考えていました。「世界中の貧しい母親が子どもにワクチンを必要とするほどに、私にとってこのアイスクリームが必要なのかしら?」。ですから、スーパーに買い出しに行くと気が狂いそうになってしまうので、(中略)次の半年間に寄付に回す金額を事前に決めて、残りのお金で生活費を組むことにしました。(46ページより)

ここには効果的な利他主義者の苦悩と矛盾が垣間見える気がします。白状すれば少し笑ってしまったのですが、効果的な利他主義に、「それでも彼らをそこに向かわせる力」が備わっていることは事実。だからこそ、この動きは重要。悩み、失敗し、それでも人のために前に進もうとすること、それがこのムーブメントの意義なのだろうと感じます。(37ページより)




折しも、東日本大震災からきょうで5年。あの日以来、私たちはそれぞれのやりかたで、「人のためになる」ことの重要性を意識しはじめたのではないでしょうか? いまふたたび、本書を媒介して「自分にできること」を考えなおしてみるのもいいかもしれません。


(印南敦史)

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