• GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie
  • GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie

印南敦史印南敦史  - ,,,,,  06:30 AM

『男はつらいよ』の寅さんは、元祖草食系男子だった?

『男はつらいよ』の寅さんは、元祖草食系男子だった?

160224book_to_read.JPG


『男はつらいよ』といえば、1969年に第1作が登場して以来、1995年の最終作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』まで48作も続いた国民的映画。渥美清さんの演じる寅さんの魅力的なキャラクターは、いまなお多くの人々に支持されています。

「男はつらいよ」の幸福論 寅さんが僕らに教えてくれたこと』(名越康文著、日経BP社)は、テレビのコメンテーターとしてもおなじみの精神科医によるユニークな「寅さん本」。全作を再確認し、そこから現代の日本人に必要な「幸せになるための知恵」を導き出しているのです。

『男はつらいよ』全作をつぶさに観てみると、驚くべきことに、これまでは気がつかなかった意外な発見が次々とありました。(中略)底が深く、広がっていて、今を生きる僕たちの世界に見事につながっています。だからこそ、これからどんなふうに生きるべきか、見事に示してくれているのです。(「はじめに」より)

第一章「寅さんが結婚できないのは『草食男子』だから?」のなかから、きょうは寅さんの恋愛に対する考え方、そして現代人との共通点に目を向けてみましょう。


恋人いない歴・40年の理由


映画『男はつらいよ』の見どころのひとつといえば、当代きっての名女優たちが演じる「マドンナ」。幼稚園の先生からキャバレーの歌手まで役どころはさまざまですが、そんなマドンナをすぐに好きになってしまう寅さんこと車寅次郎については、「惚れっぽく、情熱的にアタックしたりするものの、最後にはいつもふられてしまう男」というイメージが定着しています。

そして著者は精神科医としての立場から『男はつらいよ』シリーズを細かく確認した結果、ひとつの結論にたどりついたのだそうです。寅さんというキャラクターはある意味で、日本の草食系男子の元祖であり、50年近く前から「恋愛に臆病で、一歩を踏み出せない」男性を先取りしていたということ。

ちなみに『男はつらいよ』はテレビドラマとしてスタートし(余談ながらドラマの最終話では、ハブに噛まれて死んでしまいます)、そののち1969年に映画化されています。注目すべきは、その時点で寅さんがアラフォーだったという設定。その歳で独身、住所不定、職業はテキ屋という、特異なキャラクターだったわけです。

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」(12ページより)

おなじみの口上は「日本一有名な自己紹介」として知られていますが、これを単なる言葉として分析すると、「出身地、名前、ニックネーム」以外はなにも語っていないと著者は指摘しています。現代の日常的な挨拶の場面では、考えられないような話し方だということです。

「わたくし、不思議な縁をもちまして、生まれ故郷にわらじを脱ぎました。あんたさんと御同様、東京の空の下、ネオンきらめき、ジャズ高鳴る花の都に、仮の住まいまかりあります。故あって、わたくし、親分子分を持ちません」(13ページより)

これが、上記に続く口上。いうまでもなく、東京にある仮の住まいとは<とらや>(第40作目以降は<くるまや>)のことで、会社のような組織に属していないことも伝わってきます。著者はそれを、「自分について補足説明しているというより、やはり拠り所のなさを強調している自己紹介です」と指摘していますが、たしかにこんなところからも、はっきりとそのキャラクターが垣間見えるわけです。

東京にきた理由は「不思議な縁」で、親分子分がいない理由は「故あって」。曖昧模糊としてつかみどころがなく、就職の面接だとしたら間違いなくアウト。しかしそれでも相手を納得させてしまうような、不思議な力があるともいえます。(11ページより)


現代人との共通点


寅さんが登場した時期の日本といえば、高度経済成長期のまっただなか。「モーレツサラリーマン」などという言葉が流行したことからもわかるとおり、その時代に生きた40代男性といえば、懸命に働き、マイホームを構え、家族を養っていた人がほとんどでした。

しかしそんな時代にありながら、寅さんは妻も子もなければ恋人もいない。住宅ローンどころか、月々の家賃の支払いすらない。しかも勤務先がないので、通勤や残業とも無縁で、上司も部下も同僚もいない。保険や年金、税金などをどうしていたのかは不明ながら、まさに拠り所のないフーテンだというわけで、世間からは浮きまくりの人物だということ。

当時の感覚からしても異端だったわけですが、現代においても、寅さんのようなプロフィールを持つ人はかなりの少数派であるでしょう。しかし寅さんのプロフィールのうち、「独身、恋人なし」という点を取り上げてみると、そこだけは現代でもそう珍しくないと著者は指摘しています。

そして、ここで引き合いに出されているのが、リクルートブライダル総研による「恋愛調査2013」のデータ。それによると20~40代の未婚者のうち、恋人がいる人は全体の27.5%だというのです。つまり、独身男女の約7割は恋人がいないということになるわけです。しかもそのうち、いままで誰ともつきあった経験がない人は、29.6%なのだとか。20~30代も含めた調査ですが、40代でも「独身、恋人なし」という人は思いのほか多そうではあります。(13ページより)


寅さんは「年齢=恋人いない歴」?


なお寅さんについていえば、「年齢=恋人いない歴」の男性である可能性も。その理由について著者は、映画全48作を通じ、小学校の同級生や友だちの妹などは登場するものの、"元カノ"という設定のマドンナはひとりも存在しないことを指摘しています。

「恋人も配偶者もいないアラフォー」というだけでインパクトがあるようにも感じますが、上記の調査によれば、20代男性の44.3%が異性とつきあった経験がないのだとか。いわば、現代の未婚の20代男性の半分近くは"寅さん予備軍"ということになるわけです。

「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」と紀元前六世紀を生きた孔子は言いましたが、今の世の中、「もう四十歳になったから迷ったりしません」という人はほとんどいないのではないでしょうか。アラフォーでも自分探ししたり、SNSで恋をしたり、「四十にしてますます惑う」というのが今のリアルでしょう。僭越ながら。「孔子さん、四十歳は不惑どころか大惑、心は大揺れの大激震ちゃいますか」と申し上げたいほどです。(14ページより)

そういう意味では、次から次へと恋をするけれど恋人もできず、ましてや結婚なんてしそうもない寅さんは、時代を50年近く先取りしていたのかもしれない。そしてそれを前提として著者は、「では、なぜ寅さんには恋人ができないのでしょうか」と改めて疑問を投げかけます。

男女問わず、恋人がいない人は「出会いがない」ことを理由にします。職場にいい人がいない、異性とめぐり合う機会がない、忙しいなどなど。しかし寅さんの場合は、いくら映画だとはいっても出会いには恵まれています。なのに、それを生かすことができない。つまり寅さんは、両思いの「その先」が怖いのだと著者はいいます。

恋愛が成就してしまうのがいや。女性とつきあうところまでは踏み込めない。それが寅さんの恋の大きな特徴だということ。しかしそこにも、現代の独身男女に共通するものがあるとはいえないでしょうか? (14ページより)


女性に告白されると逃げる


マドンナのことがたまらなく好きになり、見返りを求めることもなく、寅さんはひたすら親切にします。なのに、向こうがその気になったとたん、一目散に逃げ出す。そんな寅さんには、本気で相手を幸せにできないと考えているようなふしがあると著者はいいます。自分の経済力のなさや、職業的な引け目がコンプレックスとなり、告白を受け入れられないということ。

寅さんが活躍した1970年代は、専業主婦が急増した時代。1955年には517万人だった専業主婦は、70年代にはおよそ倍の903万人にまでなったそうです。それ以前は、夫婦で農業や自営業を営む家庭も多かったものの、高度経済成長期になると状況は激変。夫はサラリーマンとして稼ぎ、妻は家庭を守るという役割分担が確立したわけです。当時は女性の仕事の選択肢もまだまだ狭く、働けたとしても「家庭科仕事か」の二者択一を迫られたのです。

そんな時代だからこそ、男に必要とされたのも「結婚したら妻子を養う」という覚悟。寅さんのように仕事も生き方も不安定な人は、プレッシャーが倍増したわけです。また、女性にひたすら尽くされることに喜びを感じる男性がいる一方、逆にそれを重荷に感じて逃げ出したくなるタイプもいるはず(著者もそうなのだとか)。寅さんがまさにその典型で、尽くされると逃げ出したくなるということ。(20ページより)




「『男はつらいよ』は実話じゃないから」と突き放すのもひとつの手段ではあるでしょう。しかし、こうして見てみると、寅さんと現代人との間に少なからず共通点があることもわかるはず。

だからこそ、『男はつらいよ』シリーズを細かく考察したうえで書かれた本書を熟読してみれば、生きていくうえでのさまざまなヒントを引き出すことができそうです。


(印南敦史)

MORE FROM LIFEHACKER

powered by

Kotaku

Recommended

© mediagene Inc.