• GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie
  • GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie

ライフハッカー編集部ライフハッカー編集部  - ,,,  08:00 PM

見るTEDから参加するTEDへ。二児の母がつかんだメインカンファレンスへの切符

見るTEDから参加するTEDへ。二児の母がつかんだメインカンファレンスへの切符

160210ai_tokimatsu1.jpg


皆さん、初めまして。TED翻訳者の時松 愛(ときまつ・あい)と申します。TED動画字幕翻訳やTEDxKyoto Blogの翻訳などを担当しており、ランニング専用ベビーカーを使ったエクササイズ教室「ベビラン」の経営もしております。2月15日〜19日にカナダ・バンクーバーで行なわれるTEDのメインカンファレンス「TED2016: Dream」に参加することになりましたので、何回かに分けてレポートをお送りしたいと思います。

近年、TEDは世界的なブームとなっており、ライフハッカー[日本版]でも多くのTED動画が紹介されてきました。そこからアイディアやモチベーションをもらった、という方も多いのではないでしょうか。こうした動画は、カンファレンスと呼ばれるイベントで撮影され、一般に公開されます。

そうしたイベントの中でも一番影響力が強いのがメインカンファレンスです。ビル・ゲイツリチャード・ブランソン「私の娘、マララ」を話したジアウディン・ユスフザイにいたるまで「著名人」もボランティアとして登壇したことがあり、多くのすばらしいアイディアが語られてきました。

しかし、メインカンファレンスへの参加は非常に難しいのです。世界中から集う参加者は約1800名。参加費だけで約100万円が必要になり、日本から参加する場合はさらに渡航費・滞在費もかかります。そもそも参加権はお金を積んだだけでは得られません。メインカンファレンスへの参加が認められるかどうかはアイディアを波及させる力があるか、今まで届かなかった層へ波及させることができるかどうか、TEDコミュニティーに尽力しているかどうかなどによります。そのためか、日本では動画再生回数は多くても、メインカンファレンスの内実は日本ではあまり知られていないように感じます。

私は貴重な参加の機会をいただいたので、動画にはならないメインカンファレンス内部のレポートをしたいと思います(トークはいずれ動画になって公開されるのでそちらをご覧ください)。TEDではほかの講演会では考えられないほど休憩時間が長いのですが、実は休憩時間こそがTEDの真骨頂なのです。参加者たちは今見たトークをネタに、気軽に声を掛け合い、アイディアについて活発に意見を交わすのが伝統となっています。異なるバックグラウンドとパワフルな行動力を持った方々にお話を聞いて、最新のアイディアなどをご紹介できれば、TEDの理念にも合うのではないかと思います。

今回はその前日譚として、「私が参加することになった経緯」をお話したいと思います。実は、私は参加費用などをTED本部に負担していただいています。これはとても珍しいことですが、こうした計らいはTEDの理念「広める価値のあるアイディア(Ideas Worth Spreading)」をよく表しているようにも思います。どうして参加資格を得るのが難しいTEDメインカンファレンスに、少なくない費用を出していただいてまで、私は参加することが可能になったのでしょうか?


自称起業家を名乗る家事のできない41歳の主婦がTEDに関わったきっかけ


160213ai_tokimatsu4.jpg

これまでの経験を活かして講演活動も行っています。これは医療系従事者のための交流会、OpenConnectSにて


現在、私は兵庫県在住、二児の母です。2000年〜2007年まで慢性疲労症候群(CFS)という原因不明・治療法未確立の病に罹って、闘病しました。現在は少しずつ解明されつつありますが、私が発症したときにはまだ謎が多く、治癒も難しいとされていました。父子家庭、弟は重度心身障害を持つという家庭で育った私は温かな家庭を持つことをずっと夢見ていました。その父も早くに他界し、私は取り残されました。必死の婚活の末、結婚したのが今の主人です。大学病院の疲労専門外来で専門医と相談したところ、出産自体には医学的に問題がないということで子どもを持つことを決意し、長男を授かりました。その際、長時間の陣痛がきっかけでCFSが寛解(症状がほぼ消失したと医学的に認められる状態)しました。出産を機に悪化したり、発症する方もいるので安易にお勧めはできませんが、私は非常に幸運でした。


160210ai_tokimatsu3.jpg

ランニング専用ベビーカーはすべて無料レンタル制にしているベビランスクール


息子をベビーカーに乗せて外出できるようになったことが嬉しくて、走りたいと願うようになり、安全性をリサーチし日本初ランニング専用ベビーカーを使ったエクササイズ教室「ベビラン」を始めました。ベビランを始めて体力が回復したことから娘も授かり、今は四人家族となり、賑やかな毎日を送っています。


TED翻訳者となる


しかし2013年8月、私は突然、敗血症で生死の境をさまようことになりました。私の場合はCFSは一旦寛解し、健康な日々を過ごしておりました。もうこれで病気とは無縁の生活を送れるはずでした。CFSは時に何十年も闘病することがある病気ですが、敗血症はそれまで健康であった人でも、風邪やインフルエンザ、事故による受傷からなどの感染症などをきっかけにして数日のうちに死に至る確率の高い病気です。あれだけの大病が癒えたのに、また病気!? 今回はまったくの晴天の霹靂、腎盂腎炎からの敗血症でした。目の前が真っ暗になりました。退院したあとも、説明のつかない痛みが5カ月以上に渡って続きました。少しでも動くと激痛が走るため、ひたすら横になるしかありませんでした。そこで思い出したのが亡き父の「どんな病気があっても、障害があっても、人はボランティアを楽しむことができる」という言葉です。身体全体を動かすのは厳しかったものの、頭も手も動きます。

TED自体はその数年前から友だちにシェアされた動画で知っていたような記憶がありますが、あくまでも受動的に見る側であって、参加側になれることは知りませんでした。いつの間にかTEDxの運営に関わっている友人が増え、私も裏方になれることを知りました。実家もボランティアでイベント裏方をしょっちゅうやっていたので、何もしないことに居心地の悪さを感じていました。字幕翻訳なら寝たままでもできます。私は早速TED オープン翻訳プロジェクト(TED OTP)に登録し、ボランティア翻訳者として動画に字幕をつけ始めました。


突然のメインカンファレンス招待メール、しかしYESと言えない...

160210ai_tokimatsu4.jpg

2回目の敗血症で入院中、自分が訳した感染症対策についてのTEDトーク、ミリアム・シディベの「手洗いの持つシンプルな力」を見直してパワーを得る。


しかしどういうわけか1回では済まず、2013年から2015年にかけて3回の敗血症に襲われました。そして療養しながらオンラインで字幕翻訳や各地のTEDxに翻訳チームを作る手助けをしていたある日突然、TED2016の参加候補者リスト入りしたというメールが届きました。しかし、冒頭にも書いたように参加費は約100万円です。入院費が嵩んだことや、私の看病のために主人が何度も転職活動を強いられたことから我が家の財政は日に日に悪化しており、ついに自宅を売却に出したばかりでした。

「どうしよう、TEDの参加者候補リストに載ってしまったみたい...」、そう告げると主人は狂喜乱舞! すぐに「行ってこい!」と言います。「それは行きたいけれど...無理よ」 そうです、我が家はクレジットカードも使えないほどひっ迫した状況にあったのです。

でも、考えてみてください。たった1回のイベントの参加費が約100万円となれば、それは法外な値段でしょう。しかし世界で最も優れたアイディアを持つ人々と濃厚な時間を軽自動車と同じくらいの値段で過ごせるとしたら? そして、ゲストリストは毎年激しく入れ替わります。今年リストに載ったからといって、来年も載っている可能性は極めて低いのです。

そこで、本部にメールを送ってみることにしました。すでに本部ブログには記事を寄稿しており、私がどのような状況で翻訳しているかはすぐにわかってもらえます。「売却が終わるまで支払いを待ってもらえませんか?」とダメ元で聞いてみたのです。

すると、「わかりました。では、TEDが参加費などはすべて負担します」という返事が返ってきたのです! さらに「最高の医療チームが控えています。車いすで来てもまったく問題はありません」との言葉ももらいました。応募に必要なエッセイの審査もなく、夢みたいな気持ちでした。いつかTEDに行ってみたいと思ってはいましたが、あと数十年はかかるだろうと思っていたからです。

自宅の売却は二転三転し、ついには神戸市から差し押さえとなりました。弁護士さんによると、遅れながらも納税しており、差し押さえになる延滞額ではなかったらしいのですが、主人が今後の納税計画について相談に行ったところなぜか差し押さえとなってしまいました。車検は切れ、外出に必要な車いすも区役所に返却することになり、私は完全に引きこもるしかなくなりました。しかし泣いている暇はありません。幸いにも痛みが和らいできたので少しずつリハビリを始め、失敗し、再開する、その繰り返しでした。耳は常にTED、目は転居先探し、子どもたちにじゃれつかれながらの準備です。その後、なんとか家の売却と引越しをすることができ、まだ開けきらない段ボール箱に囲まれてこの原稿を書いています。


個人の体験に終わらせない。広めてこそのTED


これからTEDメインカンファレンスの模様を順次お伝えしていく予定です。TEDのモットーは「広める価値のあるアイディア (Ideas Worth Spreading)」。ご縁をいただけたからにはTED/TEDxコミュニティーの一員として、アイディアを広めていく使命を負ったと考えています。セレブでもなんでもない、家事すら思うようにできなくなってしまった主婦がメインカンファレンスで何を感じるのか、これを私個人だけの体験とするのはTEDの理念に反しています。

本部からも正式に寄稿許可をいただき、準備は万端です。オンラインでは参加者たちの交流が始まっており、さまざまなアドバイスが共有され始めています。カジュアルな服装で靴はヒールなしの履きやすいものであること。 そして何度も「眠ること」が強調されています。あまりに盛りだくさんのスケジュールであるため 「全部を体験しきれないことを受け入れてください」という現実的なアドバイスもされているくらいです! 不安と期待が入り混じった気持ちでカウントダウンが始まりました。ぜひ私と一緒にTEDをお楽しみいただければと思います。これからどうぞよろしくお願いいたします。


160210ai_tokimatsu_profile.jpg

時松 愛(ときまつ・あい) 父子家庭出身、弟は重度心身障害者。その父も早くに他界し、自身も原因不明・治療法未確立の病を得て7年間の闘病生活を送る。亡き父から約3億円の負債を相続し、時に車いすに乗りながら英語講師として教壇に立つ。31歳で結婚し、専門医と相談の上で出産を決意。出産を機に病が治り、再び自由に外出できるようになる。それを機に日本初ランニング専用ベビーカーを利用したエクササイズ教室、「ベビラン」を創業。順調に時流に乗り始めた矢先、今度は敗血症という致死率の高い病を得て生死の境をさまよう。後遺症が長引いたことを利用して、世界的なプレゼンイベントであるTED字幕翻訳ボランティアを始める。2015年までに3回の敗血症を経験。TED2016参加者に選出される。

Facebook | HP | TED/TEDx 字幕翻訳トーク一覧



時松さんによる「TED2016: Dream」レポートは、2月19日以降に順次公開していく予定です。TED発の最新アイディアなどをいち早くお伝えしますので、お楽しみに!


(時松愛)

MORE FROM LIFEHACKER

powered by
    
    
    
  

Kotaku

Recommended

© mediagene Inc.