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庄司真美

庄司真美

 - ,,,,  11:00 AM

300万再生を記録した「仕込みiPhone」仕掛け人の森翔太さんに聞く、動画クリエイターの仕事術

300万再生を記録した「仕込みiPhone」仕掛け人の森翔太さんに聞く、動画クリエイターの仕事術

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今回ご紹介するのは、映像作家の森翔太さん。Youtubeにアップされた自作自演の「仕込みiPhone」シリーズをご記憶の方も多いのではないでしょうか。カシャカシャと音をたてながら、iPhoneを素早くスライドさせて手に取る動きは、往年の名画『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロが銃を取り出すシーンのパロディです。

森さんが企画、出演、制作・編集した「仕込みiPhone」シリーズは、Youtubeで公開後、1年のブランクを経てギズモードで紹介されます。それを皮切りに、国内外で約300万回再生され、大手企業のCMにもかたちを変えて起用されました。


「仕込みiPhone」は、1〜4号機&仕込み1Padまでのシリーズ4部作構成。


「仕込みiPhone」ブレイク後、大手クライアントの動画広告を多数手がける人気映像作家となった森さん。そんな森さんに、これからのウェブメディアで、ますます成熟しそうな動画コンテンツのあり方や独自の仕事術について伺いました。


── 元々は役者としてやっていきたい意向が強かったのですか?

:そうなんです。大学は芸大だったので、狂言とか能の表現について勉強していましたが、映像やアートについてはまったく専門外なんです。現在、自分が映像を作るようになったことに驚いてるぐらいです。だからブレイク後は逆に大変でした。そこから今まで知らなかった映像の勉強をせざるを得なくなったかたちです。


── ちなみにブレイク前の劇団員時代はどのような生活をしていたんですか?

:それはもう生活するのに必死でした。下北沢の4畳半2万円の風呂なしアパートに住みながら、ニートとフリーターを行き来してましたね(笑)。その頃、さまざまなオーディションにトライしてみたのですが、4、5回たて続けに落ちたとき、さすがに、世の中にはいい役者が五万といるし、「役者としてやってけないかもしれない」と思い始めたんです。演劇からは少し距離を置こうということで、それで、「仕込みiPhone」を制作し始めました。役者から制作サイドにシフトするという意味でもこれはターニングポイントだったと思います。


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── 「仕込みiPhone」シリーズのヒットについては、どのあたりが多くの人に受けたと認識していますか?

:いきなり再生数が伸びたわけではなく、ブレイクするまで1年ぐらい期間がありました。だから、自分のなかではすでに過去のものになっていた作品が注目されたので、ピンと来なかったのが正直なところです。ただ、映画『タクシードライバー』のパロディなので、海外で引きが良かったことも大きいと思います。

それから2012年当時は動画元年で、VINEなどで女子高生が自撮り画像をアップするのが流行り、空前の自撮りブームが来ていたんですよ。僕の作品が自撮り作品だったので、そのブームにたまたま乗れたことも大きいかもしれません。それから、人気急上昇中だったiPhoneを使ったことも。さらに当時、人気のユーチューバーたちが続々注目され始めた時期だったんです。「仕込みiPhone」のブレイク以降、たびたびイベントに呼ばれるようになりましたが、10回に1回は「ユーチューバーの森さんです」と紹介されてましたからね。「えっ、俺ってユーチューバーだったんだ?」って思いましたけど(笑)。


── CMをディレクションするスキルやノウハウも自分なりに切り拓いていったんですか?

:サントリーの広告で手がけた「仕込み筋肉」の動画は、初の大きな広告案件でしたが、正にそんな感じでしたね。実は、コンペで企画が通ったのが発端なんです。広告ですから、当然、自分のやりたいことがやれるわけじゃない。実際、最初の方のシーンはストーリーやアイデアの直しが頻繁にされましたし、いろんな人が関わる制作現場も初体験でした。


ヘアバンドが脳波を検知し、CO2圧縮ボンベの弁が開く機構の「仕込み筋肉」。森さんの発案をもとに、ユカイ工学が開発。筋肉を模したエアバッグがふくらむと同時に煙が発生し、強そうな変身を演出している。サントリーのC.C LemonのCMにも起用された。


従来的なCM制作の流れがまるでわからなかったので、制作会社に依頼せず、代理店とのやりとりから編集にいたるまで、すべて自力でやったのですが、死ぬほど苦労しました(笑)。普通はあれぐらい大手のCM制作ともなれば、大手制作会社が関わりますよね。今思えば相当無茶だったと思うのですが、なにしろ、まったくわからなかったので、そういうものだと思っちゃったんです。毎日叱られたり、スケジュール表とかカット表をせっつかれたりして、それはもう大変でしたね。

自撮りのスタンスとはまるで違うので、かなり勉強になりましたし、鍛えられました。後々、「あれはこうだったんだよ」という話を聞いて、気づいたことが多々ありましたね。当然ながら、自己完結の自撮りの世界とは180度違いました。


── 憧れの映画監督やクリエイターはいるんですか?

:もちろん好きな映画監督とかはいます。ただ、「この人みたいになりたい」みたいなのはないですね。「人に影響受けたくないぜ」みたいな、謎のジェーム・ズディーンみたいな反抗心もありますが。ただ当時、いきなりいとうせいこうさんが所属するバンドのPVを制作することになり、ご本人とイベントなどで共演させていただいたことがあるんですけど、「同じ土俵に立てそうもない。こわい」と、気が遠くなりました(笑)。


── 確かに活躍し続ける実力者は引退しないので、そのポストが空かず、若手が入り込めないという軋轢はどの業界にもありますよね(笑)。「テレビパン」はどんな経緯で制作したんですか?

:実物のパロディ映像をリアルに作れるolo監督と一緒に好きで作ったものです。そしたら誰かがTwitterに投稿して拡散されまして。僕が犯人役で出ているので、リアルに僕が逮捕されたように写っていて怖かったですね(笑)。ネットの掲示板でもスレッドが立って、悪いことをすると、こうやって知れ渡るすごい時代になったんだな、と実感しました。


実物そっくりのニュース映像を制作し、世間を驚かせた「テレビパン」の映像。犯人役として森さんも出演。


── 確かに実際に信じてしまうほどの完成度ですよね(笑)。やはり、あえてみんなを驚かせるようなおもしろいことをして、バズらせようという意識が強いんですか?

:自分が作るものに関しては、よく、「話題づくりをしてるんですか?」と、聞かれるんですけど、僕自身はバズらせようと思って映像を作ったことは一切ないんです。もちろん、依頼が来て制作するのであれば、より多くの人の目に触れるのは大切ですし、「バズるといいですね」と言います。ただ、そこが一番のモチベーションでは、正直ありません。


── Youtubeの再生数の実績はやはり大きいし、制作を依頼する人は森さんが数字を持っている人だと期待しませんか?

:期待いただくのはもちろん嬉しいし、仕事として受けるからにはがんばりますけど、「仕込みiPhone」の再生数が増えたのも1年がかりだったので、「何をすれば絶対にバズるか?」ということにとらわれたくないというか。

むしろ、作ったものをいろんな人に観てもらうことの難しさを日々実感しています。一時期、PVなどの数字を意識して作った時期もあったんですけど、やっててあまり楽しくなかったんですよね。やっぱり自分自身、興味がもてないとモチベーション的にきついし、続かないと思います。

やはりバズる作品って、過去の事例が元になっていて、延長線上にそうした事例や元となる文脈があるものが多いんです。僕の場合、そうした過去の事例に自分を乗せることが困難なんですよ。もちろん、ある程度、事例に則ったものを作ればバズるという法則もあって、それに助けられるときもあるんですけど、果たしてそれが、今後のためになるのかな?と、考えてしまいますね。それだったら、事例のない新しいモノを作って、勝負してみたいという気持ちの方が強いんです。


── 企画を思いつく瞬間はどんなときですか?

:基本的には日常で起きることやネットで見聞きする、おもしろいなと感じたものから着想します。それから、締め切りが決まっているとがんばれる方ですね。納期が短いと、裏ワザを使わざるを得ないケースも多いんです。そういうときに、苦肉の策でアイデアを絞るのが好きですね。

たとえば以前、Open Reel Ensembleというバンドの「帰って来た楽園」のミュージック・ビデオを作ったのですが、制作から納品まで4日しかないというタイトスケジュールでして。そこで考えついたのが、365度動画でした。内容は、僕が実家に帰省するというシンプルな内容ですが、カーソルを合わせるとあらゆる角度から動画が見れるビジュアルになっています。


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── アイデアの引き出しは、どこからストックしているんですか?

:ちょうど別の仕事であらゆる角度から撮れるカメラを使っていて、おもしろいなと思っていたんです。「仕込み筋肉」の制作のときも、その前にユカイ工学の作品を見る機会があったから提案できました。日々、イベントで見聞きしたものはすごく参考になっています。

ミュージック・ビデオは予算も時間も少ないケースが多くて、そもそも正攻法では作れないんですよ。でも、そういうときこそ、新しい発想が生きるケースが多いんですよ。


── 時間も予算もない動画制作の案件が増えているなかで、旧体制的な制作の仕方だと太刀打ちできないがゆえに、それが可能な森さんのようなクリエイターの需要が高まっている側面がある気がします。

:同じことを実際に担当者の方から言われたことがあります。最初にいただいたPVのお仕事は、「森くんだったら全部ひとりでできるし、すぐに何かやってくれるだろう」といった期待感があったと思います。


── しかも企画出しを筆頭に、出演やナレーション、さらに制作・編集までマルチでこなせる森さんの希少価値は高いですよね。

:ありがとうございます。たとえば、納品まで1週間しかないなかで、クオリティを担保するのは難しいと思うんです。とはいえ、商材のブランディングにも影響しますし、クリエイターとしても、出来上がりが不安な仕事を受けたいと思う人はあまりいないでしょう。その点僕は、自分の作ったものはどう思われようと、「もうしょうがない...でも、がんばったんやで...」と、手離すことができて、あまり気にしないメンタルを持っていますので(笑)。


── 「ネットで好かれる有名人10人」に選ばれたそうですが、それとは別に「映像作家100人」にも選ばれたことと、どちらが嬉しいですか?

:難しい(笑)! 映像作家としてかなぁ。映像制作を通じて広く知ってもらえたことで、その思いに近づけたかな、と思っていますので。もちろん、クリエイティブは日々精進なので不安もありますが。どの界隈でも、やればやるほどすばらしいクリエイターがたくさんいることを思い知らされて、首を締められる思いです(笑)。


── そもそもは1人で映像制作したのが発端だと思いますが、ディレクションする立場になって、新たな発見はありましたか?

:カメラマンをはじめ、各スタッフは、その道のプロなので、お任せしちゃうケースが多いです。そのうえで期待以上の仕事をしてくれて、おもしろいものが生まれるのが好きですね。


── 森さんは、俳優としての才能がありながら、人の才能や能力を引き出すプロデューサーの素養が強いですよね。

:個々の才能を発揮しながら、好きなことをやって、しかもいいものが作れるのが最高だと思うんです。元をたどると、俳優時代も脚本通りにかっちりやるより、いかに崩すかという作業の方が好きでした。そういう環境にいたから、オーソドックスなものにするよりも、どんなふうになるんだろう?などと、ワクワクしながらやるラフなスタイルの方がやってておもしろいですね。クライアントワークだともちろんそういうわけにはいかないのですが、「できるだけ余裕をもたせてください...頑張ってるんやで...」ということは主張していますね。


── 最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

:ここ数年、制約の多い広告仕事を重ねるなかで、逆に自分自身がやりたいことが見えてきました。あらためて、原点に立ち返り、個人ワークを久々にやりたいと思っています。

それから、短編動画だけでなく、ドラマなどの長編映像も作ってみたくなりました。ウェブコンテンツって、2分間程度の尺のなかで、誰が観ても楽しめる突発的なネタ系など、パターンが構築されていると思うんです。これまで僕もそれに則って制作してきましたが、ここにきて、別のことをやってもいいんだと思えるようになりました。

もともと好き勝手におもしろい映像を作るのが僕の原点。CMにしても、そもそもターゲットとなる一般の人に響く映像が趣旨のはずなのに、気づいたら内輪に向けて作っていたことに気づいたんです。あらためて、大衆に楽しんでいただけるものを制作するスタンスを大事にしようと考えています。


(文/庄司真美、聞き手・写真/米田智彦)

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