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松尾仁松尾仁  - ,,  09:00 PM

「今、東京が面白い」。別府、鳥取のアートイベントを経て、若きディレクターが模索する可能性

「今、東京が面白い」。別府、鳥取のアートイベントを経て、若きディレクターが模索する可能性

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アーティスト・イン・レジデンスを取り入れることで、住まう人の日常の風景を変える『鳥取藝住祭』や、東日本大震災後に消灯した六本木のパブリックアート「Counter Void」を再点灯する『Relight Project』など、アートプロジェクトのディレクターとして活躍する林曉甫(はやし・あきお)さん。ライフハッカー[日本版]では、以前にも「アートとまちづくり」に携わるキーパーソンにインタビューをしてきましたが、彼らはそれぞれの町を拠点に活動をしている方々でした。一方で、林さんは東京を拠点に鳥取と東京のアートイベントをディレクションし、昨年にはNPO法人inVisibleを立ち上げて、海外に向けた日本のアート活動の情報発信にも目を向けています。アートとまちづくりを考えるうえで、それぞれの街は何を考えるべきなのか、そして海外は日本の活動をどう見ているのか、活動についてお話を伺いました。


林曉甫(はやし・あきお)
1984年、東京生まれ。立命館アジア太平洋大学アジア太平洋マネジメント学部卒。卒業後、NPO法人BEPPU PROJECTに参画し、別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』など、文化芸術を通じた地域活性化や観光振興に携わる。2014年から『鳥取藝住祭』の総合ディレクター、『六本木アートナイト』のプログラムディレクター、2015年よりRelight Project事務局長として活躍。2015年にNPO法人inVisibleを設立。


アートは住んでいる地域の課題を解決するためのツール


東京で生まれ育った林さんは、高校3年の頃、メキシコに1年間留学をしました。裕福でない地域でのステイだったこともあり、世界の経済格差や、南北問題、貧困問題について学びたいと考えて、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学に進学。今でこそアートに関わる仕事をしていますが、大学に入るまではほとんどアートに興味がなかったそうです。転機となったのは、以前にライフハッカー[日本版]でも紹介した、別府の現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』の発起人、山出淳也さんとの出会いでした。


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当時、林さんが別府駅前高等温泉前で週末のみオープンさせていたカフェ。この場所を通じて別府駅前高等温泉の危機を多くの人に知ってもらい、街に対して問題提起ができればと考えていたそう。


林:大学では世界の社会問題について学びたいと考えていました。ですが、別府の町の観光ブームがひと段落して商店街から人が減っている現状をリアルに感じていくなかで、自分の住んでいる場所が抱える課題をどう解決すべきかを考えたいと思うようになったんです。そして、当時老朽化による建て壊しが検討されていた別府駅前高等温泉を守るための活動を始めました。週末に別府駅前高等温泉の前で、手押し車式のカフェを開いて、建て壊しの危機を多くの人に知ってもらおうというプロジェクトです。大学生がやっていることもあって、メディアにもたくさん取り上げてもらいました。

あるとき、県の助成金をもうためのプレゼンの機会があって、そこで山出さんと出会ったんです。山出さんは、BEPPU PROJECTのプレゼンターとして来ていました。僕は当時、アートに関して全く関心がなかったので、内容はほとんど理解できなかったのですが、めちゃくちゃかっこいいプレゼンだったんですよね。写真もいいし、「別府にこんな場所があるんだ」いう、新しい町の魅力を発見できるプレゼンでした。


これを機に、山出さんは林さんが運営するカフェによく来るようになり、そのなかで「2006年に『全国アートNPOフォーラムin別府』を開催するので、カフェの出店をお願いしたい」と相談を受けたそうです。最初はカフェの出店のみだったその話は、いつの間にか飲食店ブースのマネジメントに、さらにNPOフォーラムのマネジメントにと、どんどん巻き込まれるカタチで、林さんはイベントの中心人物として関わるようになっていきました。


林:山出さんの「アートで地域のために何かができるんじゃないか?」という考え方に可能性を感じたんですよね。カフェよりも面白いんじゃないかなと。それで、山出さんが代表を務めるBEPPU PROJECTで働き、『混浴温泉世界』に携わることを決めました。


2009年から2015年まで、3年に1回のペースで開催された『混浴温泉世界』。林さんは、初回と2回目に携わり、2回目の2012年には事務局長も務めました。そして2013年に他の地域の事例も見ようとBEPPU PROJECTを離れて東京に戻り、『あいちトリエンナーレ2013』の参加アーティストNadegata Instant Partyのプロジェクト参加などを経て、2014年からは総合ディレクター『鳥取藝住祭』に関わるようになったのです。


アーティストが「藝住」することで、街の日常が変化する。


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NPO法人inVisible代表、林曉甫さん。


『鳥取藝住祭』のコンセプトは、「日常を拓くこと」。鳥取県の各地域で活動するNPOや個人が、国内外のアーティストを地域に招き、アーティスト・イン・レジデンスを実施することで、住んでいる人々の日常を豊かにしようという試みです。


林:僕はBEPPU PROJECTでもアーティスト・イン・レジデンス事業に携わっていたんですが、アーティストがその街で暮らしながら作品制作をすると、少しずつ町に変化が起こります。たとえば学童保育で子どもたちが絵を習えたり、議員さんの選挙看板が突然格好よくなったり(笑)。招致するアーティストは必ずしも現代美術の世界で華々しく活躍している人とは限りませんが、確実に小さな変化が起きるのが面白いんですよね。


地域のキーパーソンが、責任を持ってイベントを運営。


現在、林さんは東京に拠点を置き、月に1回ほど鳥取に通うという生活を続けています。BEPPU PUROJECTに参画していた頃とは違ってその場所に住んでいないことから、あくまで「外の人」という視点を失わないように意識しているそうです。


林:『鳥取藝住祭』は、鳥取県内の各エリアにそれぞれ個性的なキーパーソンがいて、彼らが主体となってプロジェクトが進行しています。住んでいる人以上に、その土地に対して責任を持てる人はいませんから、いいカタチだと思っています。主役はあくまでも土地の人々。その点を意識しながら、いい意味で「外の人」の僕が媒介となって、そこにはない情報やネットワークを加えることで、ある種、サステナブルな環境をつくっていくことができるんじゃないかと考えているんです。


では、各エリアのキーパーソンはどのような活動をしているのでしょうか。


林:たとえば、大山町では「築き会」が主体となってアーティストを招いています。『鳥取藝住祭』では地域や住民と関わりながら、1本のアニメーション作品を滞在制作してもらう「大山アニメーションプロジェクト」が行われました。今年はコマ撮りの手法を用いた作品が完成したんですが、人形や背景の素材には全て、近くの海岸で拾った漂流物を使っています。


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アニメーションをテーマにしたアーティスト・イン・レジデンスは、全国でも珍しい事例。


林:米子市では、在住、もしくは米子市出身の建築家によって結成された「米子建築塾」が主体となって、建築を通じて地域の課題に向き合う〈AIR475〉プロジェクトが行われています。今年はカナダからアーティストのカーン・リー氏を招いて、弓ヶ浜半島にある市内の遊休農地を利用したランドアートが完成しました。鳥取市鹿野町の廃校を活用して2006年から演劇活動をしている「鳥の劇場」も藝住祭には欠かせない存在ですし、市の中心街では元病院を会場に現代アートの展覧会や地域住民向けのワークショップを開催する「ホスピテイル・プロジェクト」が活動を行っています。


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Khan Lee, 一場春夢, 2015 (AIR475Project in Yonago, Japan) 撮影:株式会社SWIFT


現代美術アーティストだけでなく、アニメーターや映画監督、ダンサー、役者、写真家など多様なジャンルのアーティストが参加していることも『鳥取藝住祭』の魅力のひとつ。


林:僕は、誰もが心のなかに自分なりのアートの種を持っていると思っています。三ツ星レストランのシェフも、子どものいるお母さんも、ひとり暮らしの学生も、「料理をする」ということは同じですよね。何かを生み出すことは誰にでもできること。アーティストが街に住むことで生まれた小さな変化を感じることで、個人の中にあるアート性が醸し出されてくると、単純に世界は面白くなると思うんですよね。だから、幅広いジャンルのアーティストが関わることで、アウトプットの接点が広がるといいなと思っています。


海外へのメディア発信が、求められている。


『鳥取藝住祭』と並行して、林さんは現在、六本木けやき坂に常設された宮島達男氏のパブリックアート「Counter Void」を5年ぶりに再点灯させようとする「Relight Project」に携わっています。生と死をテーマにしたこの作品は東日本大震災後に、作家の意志によってその灯りを落としました。アーティストや有識者、市民が再点灯について議論することで、社会におけるアートの存在理由を見つめ直そうという試みです。


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参加者が3.11に対するそれぞれの想いや考えを書き込み、ウェブ上で共有するワークショップも開催
©Relight Project


林:林:宮島達男さんの「Counter Void」は人間の「生と死」をテーマに作られました。震災後、犠牲者への鎮魂の意を込めて、宮島さん自身の手によって消灯した作品が5年ぶりに点灯します。今回の点灯は、宮島さん本人がつけたいと言ったわけではなく、つけるべきか、つけないべきか、Relight Projectに関わるメンバーにまかされるカタチで議論が進んできました。震災以降、人はどう生きるのか、アートはどうあるべきなのか、そういうことを考える企画になればいいなと思っています。3月11日に作品が再点灯したときに、そこに作品があったことを改めて認識し、そして3日後に消灯するときに、消えた意味を思い出すのかもしれません。アートと社会との関わり方を考える展示になるといいなと思います。

このプロジェクトで問いかけようとしているのも、「アート×地域」のひとつの側面だと思っています。地方であればあるほど生活圏や経済圏が別れますが、東京はある程度統一されているので、地域やコミュニティという言葉の持つ意味合いが少し異なります。今、東京の都市開発は、似たようなモデルが多い。駅前に巨大な商業ビルがあって、そこにテナントが入る、というようなモデルです。だからこそ、町に象徴的なアート作品があることで、新しいコミュニケーションが生まれて欲しいんです。東京でアートイベントを開催する場合、地方よりも厳しい制約が課されるのが実情なのですが、それを越えてこそ、新しいアートと社会の可能性が生まれるのだと思っています。このダイバーシティをどう作るのか、探っていければいいですよね。

そしてもうひとつ、東京の街で目指したいのは、海外に向けての情報発信。先日、オーストリアのザルツブルグで開催された若手の文化関係者が集まるセミナーに参加したのですが、日本で行われているアートプロジェクトに関する情報が海外にはほとんど届いていないことを実感しました。海外のアーティストは日本でのアーティスト・イン・レジデンスにとても魅力を感じていますし、場合によっては海外の予算でアーティストを誘致できるケースも生まれそうでした。そのチャンスを繋げるためにも、しっかりと情報発信を行える仕組みを、これから5年、10年かけてつくって行きたいと思っています。


BEPPU PROJECTでアートプロジェクトや芸術祭運営のノウハウを学び、現在は東京を拠点に『鳥取藝住祭』と、『Relight Project』のディレクションに携わる林さんは、1984年生まれの31歳。地域の人々と協力しながらアートとまちづくりの可能性を広げ、世界への情報発信を加速させようとする先に、アートプロジェクトの新たなステージが始まる予感がしました。


(取材/松尾仁、文/宗円明子)

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